~条文~ 第195条/第196条 よ・つ・ば的解説付

【受益証券発行信託における受益権の譲渡の対抗要件】 重要度1          

第195条 受益証券発行信託の受益権の譲渡は、その受益権を取得した者の氏名又は名称及び住所を受益権原簿に記載し、又は記録しなければ、受益証券発行信託の受託者に対抗することができない。

 第185条第2項の定めのある受益権に関する前項の規定の適用については、同項中「受託者」とあるのは、「受託者その他の第三者」とする。

 第1項の規定は、無記名受益権については、適用しない。

商事信託以外では使われる可能性が全くない規定。

【権利の推定等】 重要度1                           

第196条 受益証券の占有者は、当該受益証券に係る受益権を適法に有するものと推定する。

 受益証券の交付を受けた者は、当該受益証券に係る受益権についての権利を取得する。ただし、その者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りでない。

商事信託以外では使われる可能性が全くない規定。

~条文~ 第193条/第194条 よ・つ・ば的解説付

【共有者による権利の行使】 重要度1

第193条 受益証券発行信託の受益権が2人以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該受益権についての権利を行使する者1人を定め、受益証券発行信託の受託者に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該受益権についての権利を行使することができない。ただし、当該受託者が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。

商事信託以外では使われる可能性が全くない規定。

第二節 受益権の譲渡等の特例

【受益証券の発行された受益権の譲渡】重要度1                  

第194条 受益証券発行信託の受益権(第185条第2項の定めのある受益権を除く。)の譲渡は、当該受益権に係る受益証券を交付しなければ、その効力を生じない。

商事信託以外では使われる可能性が全くない規定。

~条文~ 第191条/第192条 よ・つ・ば的解説付

【受益者に対する通知等】 重要度1                       

第191条 受益証券発行信託の受託者が受益者に対してする通知又は催告は、受益権原簿に記載し、又は記録した当該受益者の住所(当該受益者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該受託者に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。

 前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。

 受益証券発行信託の受益権が2人以上の者の共有に属するときは、共有者は、受益証券発行信託の受託者が受益者に対してする通知又は催告を受領する者1人を定め、当該受託者に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければならない。この場合においては、その者を受益者とみなして、前二項の規定を適用する。

 前項の規定による共有者の通知がない場合には、受益証券発行信託の受託者が受益権の共有者に対してする通知又は催告は、そのうちの1人に対してすれば足りる。

 この法律の規定により受益証券発行信託の受託者が無記名受益権の受益者に対してすべき通知は、当該受益者のうち当該受託者に氏名又は名称及び住所の知れている者に対してすれば足りる。この場合においては、当該受託者は、その通知すべき事項を官報に公告しなければならない。

商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。

【無記名受益権の受益者による権利の行使】 重要度1               

第192条 無記名受益権の受益者は、受益証券発行信託の受託者その他の者に対しその権利を行使しようとするときは、その受益証券を当該受託者その他の者に提示しなければならない。

 無記名受益権の受益者は、受益者集会において議決権を行使しようとするときは、受益者集会の日の1週間前までに、その受益証券を第108条に規定する招集者に提示しなければならない。

 商事信託以外では使われる可能性が全くない規定。

~信託法条文~ 第189条/第190条 よ・つ・ば的解説付

【基準日】 重要度1                              

第189条 受益証券発行信託の受託者は、一定の日(以下この条において「基準日」という。)を定めて、基準日において受益権原簿に記載され、又は記録されている受益者(以下この条において「基準日受益者」という。)をその権利を行使することができる者と定めることができる。

 前項の規定は、無記名受益権の受益者については、適用しない。

 基準日を定める場合には、受益証券発行信託の受託者は、基準日受益者が行使することができる権利(基準日から3箇月以内に行使するものに限る。)の内容を定めなければならない。

 受益証券発行信託の受託者は、基準日を定めたときは、当該基準日の2週間前までに、当該基準日及び前項の規定により定めた事項を官報に公告しなければならない。ただし、信託行為に当該基準日及び基準日受益者が行使することができる権利の内容について定めがあるときは、この限りでない。

 第1項、第3項及び前項本文の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

商事信託以外では使われる可能性が全くない規定。

【受益権原簿の備置き及び閲覧等】重要度1                    

第190条 受益証券発行信託の受託者は、受益権原簿をその住所(当該受託者が法人である場合(受益権原簿管理人が現に存する場合を除く。)にあってはその主たる事務所、受益権原簿管理人が現に存する場合にあってはその営業所)に備え置かなければならない。

 委託者、受益者その他の利害関係人は、受益証券発行信託の受託者に対し、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。

 受益権原簿が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求

 受益権原簿が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

 前項の請求があったときは、受益証券発行信託の受託者は、次のいずれかに該当すると認められる場合を除き、これを拒むことができない。

 当該請求を行う者(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。

 請求者が不適当な時に請求を行ったとき。

 請求者が信託事務の処理を妨げ、又は受益者の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。

 請求者が前項の規定による閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき。

 請求者が、過去2年以内において、前項の規定による閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。

 第186条第3号又は第4号に掲げる事項(第185条第2項の定めのない受益権に係るものに限る。)について第2項の請求があった場合において、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

 商事信託以外では使われる可能性が全くない規定。

【スタッフブログ】受益者連続型信託

先日、ある方から相続対策をご相談いただき、受益者連続型の信託が適していると考えましたので、そのようなご提案をさせていただき、いくつかの契約にわけて信託組成を実行しました。

預貯金については金銭信託、会社を経営されているご家庭でしたので自社株式については株式信託、そして複数個所にわたり保有されている不動産については将来的に不動産ごとにそれぞれ別の第二次受益者を選択できる余地を残しておくため、不動産ごとに契約を別にして組成しました。

 ここまではよかったのですが、今回の委託者様は証券会社を通じて上場株式を保有されていたため、お客様(委託者様)が信託組成を希望されている旨の相談を証券会社に打診したところ、証券会社側として信託組成を認めるいくつかの要件リストが送られてきました。

その要件の1つに「当初の委託者兼受益者の死亡により信託が終了する旨の定めがあること」というものがありました。つまり受益者連続型信託は認めない、ということです。

相続対策ツールとして信託はとても可能性をもっている制度だと思いますが、受益者連続型の手法を否定されると、その可能性は大幅に狭くなります。リスク回避したいという証券会社の立場もわからなくないですが、一方で、お客様が置き去りになってしまっているという感がどうしても否めません。

信託という法制度の理解がもっと普及し、お客様の「思いを実現させる」ために微力ながら力を注いでいきたいと感じた一件でした。

名古屋 会員 T

~信託法条文~ 第187条/第188条 よ・つ・ば的解説付

【受益権原簿記載事項を記載した書面の交付等】重要度1              

第187条 第185条第2項の定めのある受益権の受益者は、受益証券発行信託の受託者に対し、当該受益者についての受益権原簿に記載され、若しくは記録された受益権原簿記載事項を記載した書面の交付又は当該受益権原簿記載事項を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。

 前項の書面には、受益証券発行信託の受託者(法人である受託者にあっては、その代表者。次項において同じ。)が署名し、又は記名押印しなければならない。

 第1項の電磁的記録には、受益証券発行信託の受託者が法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。

 受益証券発行信託の受託者が2人以上ある場合における前二項の規定の適用については、これらの規定中「受益証券発行信託の受託者」とあるのは、「受益証券発行信託の

 商事信託以外では使われる可能性が全くない規定。

【受益権原簿管理人】 重要度1

第188条 受益証券発行信託の受託者は、受益権原簿管理人(受益証券発行信託の受託者に代わって受益権原簿の作成及び備置きその他の受益権原簿に関する事務を行う者をいう。以下同じ。)を定め、当該事務を行うことを委託することができる。

商事信託以外では使われる可能性が全くない規定。

~信託法条文~ 第185条/第186条 よ・つ・ば的解説付

第八章 受益証券発行信託の特例

第一節 総則

【受益証券の発行に関する信託行為の定め】 重要度1               

第185条 信託行為においては、この章の定めるところにより、一又は二以上の受益権を表示する証券(以下「受益証券」という。)を発行する旨を定めることができる。

 前項の規定は、当該信託行為において特定の内容の受益権については受益証券を発行しない旨を定めることを妨げない。

 第1項の定めのある信託(以下「受益証券発行信託」という。)においては、信託の変更によって前二項の定めを変更することはできない。

 第1項の定めのない信託においては、信託の変更によって同項又は第2項の定めを設けることはできない。

商事信託以外では使われる可能性が全くない規定であるが、親愛信託でも受益証券を発行できない訳ではないという部分に注意が必要かもしれない。

【受益権原簿】重要度1                             

第186条 受益証券発行信託の受託者は、遅滞なく、受益権原簿を作成し、これに次に掲げる事項(以下この章において「受益権原簿記載事項」という。)を記載し、又は記録しなければならない。

 各受益権に係る受益債権の内容その他の受益権の内容を特定するものとして法務省令で定める事項

 各受益権に係る受益証券の番号、発行の日、受益証券が記名式か又は無記名式かの別及び無記名式の受益証券の数

 各受益権に係る受益者(無記名受益権の受益者を除く。)の氏名又は名称及び住所

 前号の受益者が各受益権を取得した日

 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

商事信託以外では使われる可能性が全くない規定。

~信託法条文~ 第183条/第184条 よ・つ・ば的解説付

【帰属権利者】 重要度4                            

第183条 信託行為の定めにより帰属権利者となるべき者として指定された者は、当然に残余財産の給付をすべき債務に係る債権を取得する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

「残余財産の給付をすべき債務に係る債権」という用語が微妙であるが、別段の定めがない限り、信託の清算決了と同時に帰属権利者が財産を取得すると考えて差し支えない。

 第88条第2項の規定は、前項に規定する帰属権利者となるべき者として指定された者について準用する。

帰属権利者が自分の権利の存在を知らない場合に、清算受託者に通知義務を課している。

 信託行為の定めにより帰属権利者となった者は、受託者に対し、その権利を放棄する旨の意思表示をすることができる。ただし、信託行為の定めにより帰属権利者となった者が信託行為の当事者である場合は、この限りでない。

受益権放棄の規定を準用している。

 前項本文に規定する帰属権利者となった者は、同項の規定による意思表示をしたときは、当初から帰属権利者としての権利を取得していなかったものとみなす。ただし、第三者の権利を害することはできない。

前項に同じ

 第100条及び第102条の規定は、帰属権利者が有する債権で残余財産の給付をすべき債務に係るものについて準用する。

 信託財産のみでもって給付するということである。

 帰属権利者は、信託の清算中は、受益者とみなす。

 この「みなし規定」が存在するので、清算期間中も受益者が存しない信託とはならない。

【清算受託者の職務の終了等】 重要度2                     

第184条 清算受託者は、その職務を終了したときは、遅滞なく、信託事務に関する最終の計算を行い、信託が終了した時における受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)及び帰属権利者(以下この条において「受益者等」と総称する。)のすべてに対し、その承認を求めなければならない。

 受益者等が前項の計算を承認した場合には、当該受益者等に対する清算受託者の責任は、免除されたものとみなす。ただし、清算受託者の職務の執行に不正の行為があったときは、この限りでない。

 受益者等が清算受託者から第1項の計算の承認を求められた時から1箇月以内に異議を述べなかった場合には、当該受益者等は、同項の計算を承認したものとみなす。

清算受託者の職務終了に関する一般的規定である。

~信託法条文~ 第181条/第182条 よ・つ・ば的解説付

【債務の弁済前における残余財産の給付の制限】 重要度2             

第181条 清算受託者は、第177条第2号及び第3号の債務を弁済した後でなければ、信託財産に属する財産を次条第2項に規定する残余財産受益者等に給付することができない。ただし、当該債務についてその弁済をするために必要と認められる財産を留保した場合は、この限りでない。

清算受託者の職務に関する一般的規定。

【残余財産の帰属】 重要度4                          

第182条 残余財産は、次に掲げる者に帰属する。

 信託行為において残余財産の給付を内容とする受益債権に係る受益者(次項において「残余財産受益者」という。)となるべき者として指定された者

信託行為に「残余財産の給付を受ける受益者」として指定された者を指すが、親愛信託においては事項の帰属権利者を使うのが一般的である。

 信託行為において残余財産の帰属すべき者(以下この節において「帰属権利者」という。)となるべき者として指定された者

信託の清算決了後の残余財産を取得する者で、帰属権利者が取得した段階で、信託財産は民法上の財産に戻ることになる。

 信託行為に残余財産受益者若しくは帰属権利者(以下この項において「残余財産受益者等」と総称する。)の指定に関する定めがない場合又は信託行為の定めにより残余財産受益者等として指定を受けた者のすべてがその権利を放棄した場合には、信託行為に委託者又はその相続人その他の一般承継人を帰属権利者として指定する旨の定めがあったものとみなす。

このような「みなし規定」が存在しているということは、帰属権利者が残余財産を取得するまでは、その財産は信託財産であり、民法上の相続財産ではないということ。

 前二項の規定により残余財産の帰属が定まらないときは、残余財産は、清算受託者に帰属する。

民法上の財産となる場合には権利者不明では困るので、最終的な財産取得者として清算受託者を指定している。

~信託法条文~ 第179条/第180条 よ・つ・ば的解説付

【清算中の信託財産についての破産手続の開始】 重要度2             

第179条 清算中の信託において、信託財産に属する財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算受託者は、直ちに信託財産についての破産手続開始の申立てをしなければならない。

 信託財産についての破産手続開始の決定がされた場合において、清算受託者が既に信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者に支払ったものがあるときは、破産管財人は、これを取り戻すことができる。

清算受託者の職務に関する規定で、債務超過の場合の取り扱いを定めている。

【条件付債権等に係る債務の弁済】 重要度2                   

第180条 清算受託者は、条件付債権、存続期間が不確定な債権その他その額が不確定な債権に係る債務を弁済することができる。この場合においては、これらの債権を評価させるため、裁判所に対し、鑑定人の選任の申立てをしなければならない。

 前項の場合には、清算受託者は、同項の鑑定人の評価に従い同項の債権に係る債務を弁済しなければならない。

 第1項の鑑定人の選任の手続に関する費用は、清算受託者の負担とする。当該鑑定人による鑑定のための呼出し及び質問に関する費用についても、同様とする。

 第1項の申立てを却下する裁判には、理由を付さなければならない。

 第1項の規定による鑑定人の選任の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

 前各項の規定は、清算受託者、受益者、信託債権者及び第182条第1項第2号に規定する帰属権利者の間に別段の合意がある場合には、適用しない。

清算受託者の職務に関する一般的な規定。