離婚した方に喜ばれる親愛信託

昨今、結婚して子ができた後に離婚する方も多いと思われますが、本日は、そのような方に喜ばれる親愛信託の利用例を2件紹介いたします。

1.離婚後、再婚したが、現配偶者との間には子がいない場合、通常の相続ですと自分の死後、現配偶者と子(前配偶者との間の子)が相続人となります。そして、現配偶者の死後は現配偶者が相続した財産は現配偶者の兄弟姉妹等に承継されてしまい、自分の子がその財産を承継できなくなる可能性があります。

しかし、親愛信託を利用すれば、自分の死後、現配偶者が承継した財産が、現配偶者の死後は自分の子に承継されるようにすることができます。自分→現配偶者→子の順に二段階で財産を承継させるスキームが実現可能なのです。

2.離婚後、独身の場合、自分の死後、財産は子のみに相続されます。しかし、子が未成年で、且つ、子の親権を前配偶者が持っている場合、子が相続した財産は親権者である前配偶者が管理することになります。この場合、前配偶者に浪費癖があったりすると、子が相続した財産を前配偶者が浪費してしまう可能性があります。

しかし、親愛信託を利用すれば、信頼できる方(受託者)に財産を管理してもらい、自分の死後、もう一人の信頼できる方(受益者代理人)に未成年の子が承継した財産の利用権を代理してもらうことで、子が承継した財産を前配偶者の管理下から外し、前配偶者から守ることができます。

以上のようなスキームは、信託以外の方法では不可能と考えられています。家庭環境が複雑化した現代においては、親愛信託の活用の場面はこれからますます増えていくと思われます。本稿をご覧いただき、ご興味を持たれた方は、ぜひ一度、当組合のコンサルタントにご相談ください。ご相談をお待ち申し上げております。

(一社)よ・つ・ば親愛信託ちば 代表理事 山口英一

始期付きの信託契約のリスク

 民事信託の相談を受けていると、当事者(特に当初受託者)又は委託者の顧問の税理士の先生から信託を始期(1月1日)付きの契約にしたいとの要望のあるケースがあります。

 理由としましては、特に個人で収益物件を持たれている方を委託者とする場合に多いのですが、計算が煩雑になる為最初の信託の計算期間を確定申告の計算期間である毎年1月1日に揃えたいという事が多いです。

 この場合、信託契約日から信託開始日までに委託者に何かあった場合のリスクのご説明が不可欠となります。

 特に収益物件等の不動産がある場合、信託契約が終わっていても、信託が開始した1月1日以後にあらためて受託者名義に不動産の移転登記及び信託をすることについて委託者に意思確認及び委託者の判断能力の確認をする必要があります。(仮に信託開始日に委託者が判断能力を喪失されていた場合、信託自体は開始してますが、所有権移転、信託登記ができず、登記の為に成年後見人を選任しなくてはならなくなってしまう恐れもあります。)

 信託契約から登記までの期間としては、始期付きの契約の場合も数か月程度の事が多いですが、この期間内に委託者の状態が変化してしまうリスクを甘くみてはいけないと思います。

 ご高齢の方ですと、お元気でらっしゃっても急に認知症の症状が出てしまう場合が少なくありません。実際に相談者と老人ホームでお会いした際に全く問題なく会話ができていたにも関わらず、数か月後に再度お会いすると私を相談者の息子様と間違われてしまったケースも最近ありました。

 また委託者の判断能力はしっかりしてらっしゃっても怪我をされて入院されただけで、数か月にわたりご家族も含め面会できなくなってしまったケースがこのコロナ禍の数年に頻繁にありました。

 面会ができませんと委託者の意思確認や判断能力の確認も難しくなります。さらに入院前は問題がなくても入院中に判断能力も低下してしまう可能性もあります。

 

 その場合でも家族がみな信託について了解しているのだから、登記申請をしても実際は問題にならないとお考えの方もいらっしゃると思います。

 では委託者が交通事故で昏睡状態になってしまった場合も所有権移転と信託の登記申請は可能だと思われますでしょうか?

 私個人としましては、始期付きの契約のリスクを考え、計算がご面倒でも始期付きの契約を極力避けて頂く方がいいではないかと考えております。

 相談者や依頼者には、始期付きの契約にすると、信託の計算の煩雑さを避けられるかも知れませんが、決して小さくないリスクがある旨をお伝えして最終的なご判断を頂いております。

一般社団法人よつば香川民事信託推進協議会 代表理事 門馬良典