~信託法条文~ 第177条/第178条 よ・つ・ば的解説付

【清算受託者の職務】 重要度4                         

第177条 信託が終了した時以後の受託者(以下「清算受託者」という。)は、次に掲げる職務を行う。

会社の取締役と清算人の関係と同じく、清算受託者という地位を認めており、一般的には信託終了時の受託者がスライドするが、受託者とは別の地位なので、別の者が就任することも可能であると考えられる。

 現務の結了

 信託財産に属する債権の取立て及び信託債権に係る債務の弁済

 受益債権(残余財産の給付を内容とするものを除く。)に係る債務の弁済

 残余財産の給付

会社の清算人の職務と同様である。

【清算受託者の権限等】 重要度4

第178条 清算受託者は、信託の清算のために必要な一切の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

清算受託者は、会社の清算人と同じく、既に信託は終了しているため、信託の目的に沿った職務はできず、清算に関する行為のみが許される。

 清算受託者は、次に掲げる場合には、信託財産に属する財産を競売に付することができる。

 受益者又は第182条第1項第2号に規定する帰属権利者(以下この条において「受益者等」と総称する。)が信託財産に属する財産を受領することを拒み、又はこれを受領することができない場合において、相当の期間を定めてその受領の催告をしたとき。

 受益者等の所在が不明である場合

 前項第1号の規定により信託財産に属する財産を競売に付したときは、遅滞なく、受益者等に対しその旨の通知を発しなければならない。

 損傷その他の事由による価格の低落のおそれがある物は、第2項第1号の催告をしないで競売に付することができる。

一般的には清算決了後は帰属権利者に信託財産は引き渡されるが、例外を設けている。

~信託法条文~ 第175条/第176条 よ・つ・ば的解説付

第二節 信託の清算

【清算の開始原因】 重要度4

第175条 信託は、当該信託が終了した場合(第163条第5号に掲げる事由によって終了した場合及び信託財産についての破産手続開始の決定により終了した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)には、この節の定めるところにより、清算をしなければならない。

会社の解散と清算の関係と同じく、信託は終了しても、その後に清算が必要であることを示している。

【信託の存続の擬制】 重要度4

第176条 信託は、当該信託が終了した場合においても、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。

清算が決了しない限り、信託財産は民法上の所有権には戻らないということで、ここでも会社の清算と同じ考え方をしている。

~信託法条文~ 第173条/第174条 よ・つ・ば的解説付

【新受託者の選任】 重要度1                          

第173条 裁判所は、第166条第1項の規定により信託の終了を命じた場合には、法務大臣若しくは委託者、受益者、信託債権者その他の利害関係人の申立てにより又は職権で、当該信託の清算のために新受託者を選任しなければならない。

 前項の規定による新受託者の選任の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

 第1項の規定により新受託者が選任されたときは、前受託者の任務は、終了する。

 第1項の新受託者は、信託財産から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。

 前項の規定による費用又は報酬の額を定める裁判をする場合には、第1項の新受託者の陳述を聴かなければならない。

 第4項の規定による費用又は報酬の額を定める裁判に対しては、第1項の新受託者に限り、即時抗告をすることができる。

親愛信託とは無縁の規定。

【終了した信託に係る吸収信託分割の制限】重要度1                

第174条 信託が終了した場合には、当該信託を承継信託とする吸収信託分割は、することができない。

親愛信託とは無縁の規定。

【スタッフブログ】ペット信託セミナー開催

11月1日(日)に富山県のサンフォルテ富山で一般社団法人よつば民事信託とやま主催で 「ペット信託」のセミナーを開催致しました。

当日はグループ代表の特定行政書士 松尾 陽子先生に講師をして頂きました。

飼い主様(委託者)が万一お亡くなりになった場合や、認知症になられてペットの飼育が不可能になった場合に備え、元気なうちにペット信託契約をして、信頼の置ける方や団体(委託者)にペットの飼育を任せ、飼育費として財産を管理する仕組みについて詳細をご説明頂きました。

来場された参加者の方からは

「ペット信託という方法があるとは知らなかった。」

「犬猫の里親のボランティをしているので、仲間にペット信託の事を伝えたい。」

など、参加して良かったという感想を沢山頂きました。

また当日は地元のテレビ局や新聞社などに取材して頂き夕方のニュースや新聞の朝刊に掲載して頂きました。

民事信託の注目度の高まりを肌で感じる事ができました。



一般社団法人よつば民事信託とやま
代表理事 山本和博

~信託法条文~ 第171条/第172条 よ・つ・ば的解説付

【保全処分に関する費用の負担】 重要度1                    

第171条 裁判所が第169条第1項の規定による保全処分をした場合には、非訟事件の手続の費用は、受託者の負担とする。当該保全処分について必要な費用も、同様とする。

 前項の保全処分又は第169条第1項の申立てを却下する裁判に対して即時抗告があった場合において、抗告裁判所が当該即時抗告を理由があると認めて原裁判を取り消したときは、その抗告審における手続に要する裁判費用及び抗告人が負担した前審における手続に要する裁判費用は、受託者の負担とする。

親愛信託とは無縁の規定。

【保全処分に関する資料の閲覧等】 重要度1                   

第172条 利害関係人は、裁判所書記官に対し、第170条第3項の報告又は計算に関する資料の閲覧を請求することができる。

 利害関係人は、裁判所書記官に対し、前項の資料の謄写又はその正本、謄本若しくは抄本の交付を請求することができる。

 前項の規定は、第1項の資料のうち録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、これらの物について利害関係人の請求があるときは、裁判所書記官は、その複製を許さなければならない。

 法務大臣は、裁判所書記官に対し、第1項の資料の閲覧を請求することができる。

 民事訴訟法第91条第5項の規定は、第1項の資料について準用する。

親愛信託とは無縁の規定。

~信託法条文~ 第169条/第170条 よ・つ・ば的解説付

【信託財産に関する保全処分】 重要度1                     

第169条 裁判所は、第166条第1項の申立てがあった場合には、法務大臣若しくは委託者、受益者、信託債権者その他の利害関係人の申立てにより又は職権で、同項の申立てにつき決定があるまでの間、信託財産に関し、管理人による管理を命ずる処分(次条において「管理命令」という。)その他の必要な保全処分を命ずることができる。

 裁判所は、前項の規定による保全処分を変更し、又は取り消すことができる。

 第1項の規定による保全処分及び前項の規定による決定に対しては、利害関係人に限り、即時抗告をすることができる。

親愛信託とは無縁の規定。

第170条 重要度1                               

裁判所は、管理命令をする場合には、当該管理命令において、管理人を選任しなければならない。

 前項の管理人は、裁判所が監督する。

 裁判所は、第1項の管理人に対し、信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況の報告をし、かつ、その管理の計算をすることを命ずることができる。

 第64条から第72条までの規定は、第1項の管理人について準用する。この場合において、第65条中「前受託者」とあるのは、「受託者」と読み替えるものとする。

 信託財産に属する権利で登記又は登録がされたものに関し前条第1項の規定による保全処分(管理命令を除く。)があったときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、当該保全処分の登記又は登録を嘱託しなければならない。

 前項の規定は、同項に規定する保全処分の変更若しくは取消しがあった場合又は当該保全処分が効力を失った場合について準用する。

親愛信託とは無縁の規定。

~信託法条文~ 第167条/第168条 よ・つ・ば的解説付

【官庁等の法務大臣に対する通知義務】 重要度1

第167条 裁判所その他の官庁、検察官又は吏員は、その職務上前条第1項の申立て又は同項第2号の警告をすべき事由があることを知ったときは、法務大臣にその旨を通知しなければならない。

親愛信託とは無縁の規定。

【法務大臣の関与】 重要度1                          

第168条 裁判所は、第166条第1項の申立てについての裁判をする場合には、法務大臣に対し、意見を求めなければならない。

 法務大臣は、裁判所が前項の申立てに係る事件について審問をするときは、当該審問に立ち会うことができる。

 裁判所は、法務大臣に対し、第1項の申立てに係る事件が係属したこと及び前項の審問の期日を通知しなければならない。

 第1項の申立てを却下する裁判に対しては、第166条第4項に規定する者のほか、法務大臣も、即時抗告をすることができる。

親愛信託とは無縁の規定。

~信託法条文~ 第165条/第166条 よ・つ・ば的解説付

【特別の事情による信託の終了を命ずる裁判】 重要度1              

第165条 信託行為の当時予見することのできなかった特別の事情により、信託を終了することが信託の目的及び信託財産の状況その他の事情に照らして受益者の利益に適合するに至ったことが明らかであるときは、裁判所は、委託者、受託者又は受益者の申立てにより、信託の終了を命ずることができる。

 裁判所は、前項の申立てについての裁判をする場合には、受託者の陳述を聴かなければならない。ただし、不適法又は理由がないことが明らかであるとして申立てを却下する裁判をするときは、この限りでない。

 第1項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。

 第1項の申立てについての裁判に対しては、委託者、受託者又は受益者に限り、即時抗告をすることができる。

 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有する。

訴訟を前提とした規定。

【公益の確保のための信託の終了を命ずる裁判】重要度1              

第166条 裁判所は、次に掲げる場合において、公益を確保するため信託の存立を許すことができないと認めるときは、法務大臣又は委託者、受益者、信託債権者その他の利害関係人の申立てにより、信託の終了を命ずることができる。

 不法な目的に基づいて信託がされたとき。

 受託者が、法令若しくは信託行為で定めるその権限を逸脱し若しくは濫用する行為又は刑罰法令に触れる行為をした場合において、法務大臣から書面による警告を受けたにもかかわらず、なお継続的に又は反覆して当該行為をしたとき。

 裁判所は、前項の申立てについての裁判をする場合には、受託者の陳述を聴かなければならない。ただし、不適法又は理由がないことが明らかであるとして申立てを却下する裁判をするときは、この限りでない。

 第1項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。

 第1項の申立てについての裁判に対しては、同項の申立てをした者又は委託者、受託者若しくは受益者に限り、即時抗告をすることができる。

~信託法条文~ 第163条/第164条 よ・つ・ば的解説付

第七章 信託の終了及び清算

第一節 信託の終了

【信託の終了事由】 重要度5                          

第163条 信託は、次条の規定によるほか、次に掲げる場合に終了する。

信託の終了事由を規定する重要な条文。信託の終了原因を限定列挙していると考えるなら、本条に示されていない信託終了事由は存在しないということになる。

 信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったとき。

「信託の目的の達成・不達成」は、やや抽象的な概念であるので、注意が必要。

 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき。

 これが我が国の信託法独自の規定である、いわゆる「1年ルール」であり、この条項があるために自己信託の普及が遅れていると言える。

 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき。

 こちらも「1年ルール」であるが、受託者が欠けている状態でも1年間は信託は終了しないとされていることは、民法上の契約行為では有り得ない規定であり、注目する必要。

 受託者が第52条(第53条第2項及び第54条第4項において準用する場合を含む。)の規定により信託を終了させたとき。

受託者による信託の終了が52条で規定されており、ここで再度信託終了事由として挙げられている。ということは、91条で規定されている「30年ルール」によって信託が終了するという説は根拠を失うことになる。

 信託の併合がされたとき。

 第165条又は第166条の規定により信託の終了を命ずる裁判があったとき。

 信託財産についての破産手続開始の決定があったとき。

 委託者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた場合において、破産法第53条第1項、民事再生法第49条第1項又は会社更生法第61条第1項(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第41条第1項及び第206条第1項において準用する場合を含む。)の規定による信託契約の解除がされたとき。

 信託行為において定めた事由が生じたとき。

親愛信託においては、終了事由は信託行為の中で決めておくべき。

(委託者及び受益者の合意等による信託の終了) 重要度5             

第164条 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。

委託者と受益者の合意で信託を終了することが可能なので、委託者兼受益者の成年後見人による信託の終了が可能とする解釈が成り立ってしまうことに注意しておく必要。

 委託者及び受益者が受託者に不利な時期に信託を終了したときは、委託者及び受益者は、受託者の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。

 前二項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

親愛信託においては、この別段の定めが必須。

 委託者が現に存しない場合には、第1項及び第2項の規定は、適用しない。

~信託法条文~ 第161条/第162条 よ・つ・ば的解説付

新規信託分割後の従前の信託及び新たな信託の信託財産責任負担債務の範囲等】

重要度2                                      

第161条 新規信託分割がされた場合において、第159条第1項第6号の債務は、新規信託分割後の従前の信託の信託財産責任負担債務でなくなり、新規信託分割後の新たな信託の信託財産責任負担債務となる。この場合において、従前の信託の信託財産限定責任負担債務であった債務は、新たな信託の信託財産限定責任負担債務となる。

会社分割と同じく、当然の事を示している条文。

第162条 重要度1                               

第160条第1項の規定により異議を述べることができる債権者(同条第2項の規定により各別の催告をしなければならないものに限る。)は、同条第2項の催告を受けなかった場合には、新規信託分割前から有する次の各号に掲げる債権に基づき、受託者に対し、当該各号に定める財産をもって当該債権に係る債務を履行することを請求することもできる。ただし、第1号に定める財産に対しては新規信託分割がその効力を生ずる日における新たな信託の信託財産の価額を、第2号に定める財産に対しては当該日における従前の信託の信託財産の価額を限度とする。

 従前の信託の信託財産責任負担債務に係る債権(第159条第1項第6号の債務に係る債権を除く。) 新規信託分割後の新たな信託の信託財産に属する財産

 新たな信託の信託財産責任負担債務に係る債権となった債権(第159条第1項第6号の債務に係る債権に限る。) 新規信託分割後の従前の信託の信託財産に属する財産

債権者の異議に関して、会社分割の規定と似た内容を示している。