親とのコミュニケーション

 父親に遺言書を書いてもらおうと思っているのですが、

話しを聞いてもらえますか。

息子さんから相談を受け、私は話しを伺いに行きました。

父親は腕一本で事業を成功させて財を築いた昭和の男性で、

ザ・ガンコな方でした。息子さんが父親の横やりを上手く

受け流して、現況と父親の希望を話してくれました。お話

しを伺ったところ、これは信託を活用した方が良いと思い

息子さんには説明させて頂きましたが、それを父親が理解

してくれるよう話すのは無理です、と言われてしまいまし

た。

 この親子の姿を見て、自分と母の事を顧みました。

私の父は20年ほど前に亡くなりましたが、祖父の立ち上げ

た事業を拡大し、母はそれを支え、現在は私の兄が継いでい

ます。母は父から相続した自己名義の不動産を事業に賃貸し、

担保提供もしています。80歳を過ぎてはいますが、頭も体も

しっかりしています。今のうちに信託をしておいたほうが良

い、と思いつつ、もう2年ほど過ぎてしまっています。自分

の親にさえ、どう話したら良いのか悩む事を、何度か会った

だけのお客様にご理解頂くのはとても難しい事です。だから

こそ納得して頂けるよう自身が信託の良さを理解し、お客様

との信頼関係を築いたうえで、親愛信託という、この優れた

手続きを是非活用して頂けるよう、努めていこうと思います。

一般社団法人よ・つ・ば親愛信託こうち 理事 北浜直樹

自分の亡き後に大切なペットを託す

昨年夏に友人の飼っていた猫(マル)が天国へ召されました。子どもがいない友人夫婦にとっては家族同様であったマルが居なくなってお二人ともとても寂しがっていたのですが、特に奥様はいつも一緒にいたこともあって気持ちの落ち込みも激しかったようです。

友人はそんな奥様を見てとても心配していました。

 年末に買い物に出かけた際にたまたま開催されていた保護猫の譲渡会でマルとよく似た猫に出会ったのです。奥様はその猫に惹かれてしまい、その猫を引き取りたいと申し出ました。しかし、友人夫婦は還暦世代だったこともあり、夫婦に何かあったときに面倒を見てくれる後見人を付けるようにという条件がありました。

後見人を頼める子どもも友人夫婦にはいません。姪や甥に頼むとしても今後いろいろとペットにはお金がかかることにもなるし、費用を持ってほしいとは言えるわけもありません。

 友人は新しく家族となる猫に財産を残したいと考えたのですが、そもそもできるのか。

姪や甥に渡せばいいのだろうけど、やっぱり心配でどうしたらよいかと相談に来ました。

1)ペットに財産を遺せるのか?

現在の日本の法律では動物(ペット)は家財等と同じに「動産」として扱われますので、いくら遺言に書いてもペットに財産を遺すことはできません。

2)ペットの飼育を委託する人に財産を遺す

①ペットの飼育を委託する人に「負担付死因贈与」や「負担付遺贈」で財産を遺すことは可能です。

 *「負担付死因贈与」

ペットの飼育をしてもらうことを条件に、贈与者の死亡後に財産を贈与すること。

  「負担付遺贈」

   ペットの飼育をしてもらう義務を負担させた遺贈

どちらとも遺産をもらう代わりにペットの面倒を見てもらうというものですが、不安要素もあり遺産をもらった人が本当に面倒を見てくれるかどうかは分からないという問題点があります。

②ペット信託®

  ペット信託®とは、ペットの飼い主にもしもの事態があった時に備えることができるペットのための信託です。

信託とは自分の財産の一部又は全部を信頼できる人に託して、自分が決めた目的に沿って管理・運用してもらう制度です。この仕組みをペットのために活用して飼い主の入院・施設への入居、および飼い主の死亡後に託した財産でそのペットを飼育してもらう方法です。

姪や甥など親族に飼育を委託できる場合でももちろんですが、ペット信託で飼育を委託できる団体もあるようです。

友人夫婦は姪と相談してペット信託契約を結ぶこととなり、晴れて新しい家族を迎えることができました。

今回のように新たにペットを迎える時ばかりではなく、飼い主が高齢化していく段階で、身近に頼る方がいない飼い主が、自分自身にもしもの事態が起きた際に備える役割がペット信託にはあります。

いつ何が起こるか予想はできないので、大切な家族(ペット)を守るためにも今後の対策は検討したいですね。

一般社団法人親愛信託東京 代表理事 北浦千加