親愛信託と空き家予防

全国的に空き家が増えて社会問題になっています。空き家のまま家が放置されると家の老朽化が早まるだけでなく、ゴミ問題、放火、治安悪化などの原因となります。また周辺一帯の地価が下落してしまう可能性もありますし、特定空き家に指定されると制度上の不利益を受ける可能性もあります。なにより知らず知らずのうちに近所の住民さんたちに迷惑をかけている状況になっていることが問題ですよね。
さて、空き家になってしまう原因ですが、様々なものがあります。所有者が遠方に住んでいて管理をしていない、相続人がいない、兄弟で共有しているが売却を反対している人がいる・・・などなど。今回はその中でも「所有者が認知症になっていて売却ができない」という原因にスポットをあててみましょう。
例えば、お母さんが所有している一戸建てに一人暮らしをしているとします。お母さんはこのたび施設に入所することになりました。まだ思い出のある家は売りたくはないが、生活費がなくなった場合には息子たちに迷惑はかけたくないので、売却して生活費に充ててほしいと考えています。さて、このまま時間が経って、お母さんが認知症になってしまったらどうなるでしょうか?
認知症の方の名義の不動産を売却することはできません。(意外とこのことを知らない方が多いです。)残された方法としては、成年後見人を選任してもらって成年後見人が売却する等の方法をとるしかありません。成年後見制度は本人を守るための優れた制度ですが、このようなケースでは手続きが煩雑なうえ、使いにくかったり、費用負担が大きくなったすることがあります。
このような状況を予防するために、親愛信託を検討してみてはいかがでしょうか?お母さんが元気なうちに、息子さんに自宅を信託します。財産的な権利をお母さんが持ったまま、手続き等を行う権限を息子さんに移します。(このとき財産的な権利は動いていませんので、贈与税も発生しません。)こうすることで、息子さんはその信託契約に従って自宅の売却手続き等を行うことができます。空き家の予防だけでなく、母さんの老後の資金の確保にもつながります。
何事も問題がおきてから対処するより、予防した方が費用も労力も少なくてすみますよね。
詳しくはよ・つ・ばグループへお尋ねください。

よ・つ・ば親愛信託普及連合 司法書士 田代 洋平

自筆証書遺言に関するルールの変更について

このたび、民法(相続法)改正・遺言書保管法の制定により、自筆証書遺言に関するルールが大きく変わりました。
1.自筆証書遺言の方式緩和(2019年1月13日施行)
自筆証書遺言についても、財産目録については手書きで作成する必要がなくなりました。
現行の制度ですと遺言書の全文を自書する必要があり、財産目録も全文自書しなければならず、遺言者にとって重い負担となっていました。
しかし、このたびのルールの変更により、自書によらない財産目録を添付することができるようになりました。パソコンで目録を作成したり、通帳のコピーを添付することも可能です。偽造防止のため財産目録には署名押印をする必要はありますが、全文自書することを思えば大幅に負担は削減されることでしょう。

2.法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設
2020年7月10日施行(法務局における遺言書の保管等に関する法律)
自筆証書遺言を作成した方は、法務大臣の指定する法務局に遺言書の保管を申請することができます(作成した本人が遺言書保管所に来て手続を行う必要があります。)
遺言者の死亡後に、相続人や受遺者らは、全国にある遺言書保管所において、遺言書が保管されているかどうかを調べること(「遺言書保管事実証明書」の交付請求)、遺言書の写しの交付を請求すること(「遺言書情報証明書」の交付請求)ができ、また、遺言書を保管している遺言書保管所において遺言書を閲覧することもできます。
*遺言書保管所に保管されている遺言書については、家庭裁判所の検認が不要となります。
*遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付がされると、遺言書保管官は、他の相続人に対し、遺言書を保管している旨を通知します。

以上のように、自筆証書遺言の要件が緩和され、また、法務局における保管制度が創設さ
れることにより、自筆証書遺言が多少は使いやすくなるものと思われます。
自筆証書遺言にするか公正証書遺言にするか、作成される方のニーズに応じて使い分け
ていただければとは思います。

一般社団法人 おかやま民事信託協会・よ・つ・ば 司法書士 髙野 佑介