実家を信託したら?

Q:実家を信託するとどのような効果がありますか?

A:認知症になる前に実家の所有者である親が、実家を信託することで、親が認知症になってしまっても、受託者が実家を売却することや貸し出すことも可能になります。信託財産にした時の受益者である親が死亡した後も次の受益者を定めていれば、実家の相続手続きは簡単な手続きですむことになります。

解 説                             

1.実家が空き家になる

親は田舎の実家に住んでおり、子供は都会で生活をしている場合、実家を引き継ぐ家族がいないと空き家となり、社会的にも大きな問題になってしまいます。親が倒れた場合や認知症になってしまった場合に、空き家になった実家を賃貸等で活用したり、実家を売却することもできなくなる可能性があります。

2.いざ実家を売るにはどうなる?

実家を売却する必要があっても持ち主である親が認知症になって意思確認ができなくなると売却はできません。売却するためには、認知症になった親の代理人を務めさせるための成年後見人の選任を家庭裁判所に申請をして、家族以外が成年後見人に選任された場合、後見人に、親が死亡するまで報酬を支払い続け、親の財産すべてを後見人が管理することとなります。

3.もめなくても遺産分割できない?

例えば、高齢の父所有の実家を信託せずに遺言もなく死亡し、相続になり、その段階で残された高齢の母も寝たきりや認知症で意思疎通ができない場合、相続人との遺産分割協議ができなくなります。

4. 実家を信託して管理・処分権限を受託者に移す

認知症等になる前に、実家等凍結すると困るような財産を信託しておけば、信託財産は受託者の名義に変わり、信託契約で決められた権限に従って、売却、管理、修繕等を受託者が行うことが可能になります。

※本文は様々悩みを“親愛信託”で解決!! 信託活用Q&A

(編著 よ・つ・ばグループ 協同組合親愛トラスト©)のP38、P39の文章を一部修正しております。

詳細は本文をご覧ください。

上記著者

一般社団法人よ・つ・ば民事信託北海道 理事 市下順紀

高齢の不動産オーナーと健康寿命

みなさんこんにちは。沖縄より行政書士・宅建士の石原です。

去る2022年12月10日(土曜日)は、よつばグループの全国総会が東京で行われました。沖縄から私を含む2名の理事が総会に参加しました。東京が開催地とのことで、以前から行きたかった「三菱UFJ信託銀行信託博物館」に行ってきました!

信託に関する貴重な資料をたくさん見ることができました。専門家だけではなく、一般の方にもおすすめです。

URL:https://www.tr.mufg.jp/ippan/about/hakubutsukan/

さて、沖縄は世界でも屈指の長寿県と言われておりますが、みなさん本当に長生きです。

私の曾祖母は105歳までいきていました。沖縄の平均寿命は下記の通りです。

平均寿命(男性) 79.40 年 

平均寿命(女性)87.02 年

しかし、日常生活に制限のない期間の平均、「健康寿命」はいかがでしょうか

健康寿命(男性):70.81 年

健康寿命(女性):74.86 年

男性も女性も、寿命と健康寿命では10年前後差があるのです。

健康な間はいいのですが、その後の10年間は心配です・・

最近、収益物件を持ついわゆる大家さんからよくこんなご心配の声をいただきます。

「自分がなくなった後は、妻に収益物件を残したい。しかし、妻も高齢なので管理できるのだろうか」

妻が生きている間は、息子や孫ではなく、妻自身に権利を持ってほしいと思う、一方で、管理できるのが心配とのことですね。そして健康寿命と平均寿命を考えると・・。

親愛信託なら解決できます。

親愛信託であれば、所有権を「名義」と「権利(受益権)」に分けることができます。

ご自身が元気な間に信託契約を設定すればいいのです。

夫(ご自身)=委託者兼当初受益者

息子=受託者(名義人)

妻=二次受益者

息子=帰属権利者

このようにご自身と息子で信託契約を締結することで、ご自身の死後も、息子に管理をしてもらいながら、妻に受益権を持たせることができます。収益不動産の利益は、妻の生活費に充てることもできます。

認知症対策で使われることが多い信託ですが、「望みをかなえる財産管理ツール」としてご活用いただくことも可能なのです。

一般社団法人よつば親愛信託おきなわ 代表理事石原桃子

出典:

平均寿命は、平成 22 年都道府県別生命表 より

健康寿命は、平成 22 年厚生労働科学研究費補助金「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究」より

親なきあとへの備えも大事だが親の終活問題も考えよう

先日、親なきあとの備えについて障がい者の家族の支援や情報提供を行なっている方のセミナーを受講しました。

その方は二人の知的障がい者のお母さんでした。自身の経験から同じように「親なきあと」の心配をしている方が大勢いることを知り、講演活動等を通じて、将来に備えることの重要性を訴えているそうです。

彼女は、「親なき」という言葉は「親亡き」だけではなく親が生きているときのことも考えていかないといけない。だから「親なき」だとおっしゃっていました。確かにそのとおりです。

知的障がい者をお持ちの親は自分達が亡くなったあとのことを考えています。

しかし、親である自分達が認知症等になった場合等自分達のことも考えておかないといけません。

■親の死亡後について

・障がいのある子にどの財産をどう残すのか?

・障がい者本人は財産管理ができないので、誰に管理してもらうか?

・障がい者が亡くなった後の財産の承継をどうするのか?

・障がい者の葬送(葬儀・墓地・法要等)はどうするのか?

等を考えておく必要があります。

■親自身の終活について

・自分が認知症等になった場合の財産管理はどうするのか?

・自分達の面倒は誰にしてもらうのか?

・子ども達の面倒を誰にしてもらうのか?

・相続はどうするのか?

・葬送(葬儀・墓地・法要等)はどうするのか?

等を考えておく必要があります。

まずは家族でどうしたいのかを考えましょう。

そして、それをどのように実行していけるのかを様々な法律・制度を活用して実行できるように検討して行きましょう。

・親愛信託(家族信託)

・成年後見制度

・遺言

・日常生活自立支援制度

等どの方法がよいかを検討し、実行して行きましょう。

親愛信託は、

・親自身が認知症になった場合に財産(受益権)管理ができます

・親が亡くなった後に障がい者に財産(受益権)を承継できます

・障がい者の財産(受益権)の管理もできます。

・障がい者が亡くなった後に他の方へ財産(受益権)を承継できます

等とても有効な手段だと思います。

ただ、実際に活用するにあたっては、いろいろなシチュエーションや他の制度との併用も考えながら進めて行きます。

親が元気な今のうちに検討をしていただきたいです。

一般社団法人よつば親愛信託大分 理事 阿部豊志