~信託法条文~ 第105条/第106条 よ・つ・ば的解説付

第三節 二人以上の受益者による意思決定の方法の特例

第一款 総則

第105条 重要度1 

受益者が2人以上ある信託における受益者の意思決定(第92条各号に掲げる権利の行使に係るものを除く。)は、すべての受益者の一致によってこれを決する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

受益者の意思決定に関する原則は全員一致だが、別段の定めを認めている。

 前項ただし書の場合において、信託行為に受益者集会における多数決による旨の定めがあるときは、次款の定めるところによる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

 第1項ただし書又は前項の規定にかかわらず、第42条の規定による責任の免除に係る意思決定の方法についての信託行為の定めは、次款の定めるところによる受益者集会における多数決による旨の定めに限り、その効力を有する。

 第1項ただし書及び前二項の規定は、次に掲げる責任の免除については、適用しない。

 第42条の規定による責任の全部の免除

 第42条第1号の規定による責任(受託者がその任務を行うにつき悪意又は重大な過失があった場合に生じたものに限る。)の一部の免除

 第42条第2号の規定による責任の一部の免除

この条文も商事信託を前提としている。

第二款 受益者集会

【受益者集会の招集】重要度1                          

第106条 受益者集会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。

 受益者集会は、受託者(信託監督人が現に存する場合にあっては、受託者又は信託監督人)が招集する。

商事信託以外で受益者集会が関係する可能性はないであろう。

~信託法条文~ 第103条/第104条 よ・つ・ば的解説付

第四款 受益権取得請求権

【受益権取得請求】 重要度1                          

第103条 次に掲げる事項に係る信託の変更(第3項において「重要な信託の変更」という。)がされる場合には、これにより損害を受けるおそれのある受益者は、受託者に対し、自己の有する受益権を公正な価格で取得することを請求することができる。ただし、第1号又は第2号に掲げる事項に係る信託の変更がされる場合にあっては、これにより損害を受けるおそれのあることを要しない。

 信託の目的の変更

 受益権の譲渡の制限

 受託者の義務の全部又は一部の減免(当該減免について、その範囲及びその意思決定の方法につき信託行為に定めがある場合を除く。)

 受益債権の内容の変更(当該内容の変更について、その範囲及びその意思決定の方法につき信託行為に定めがある場合を除く。)

 信託行為において定めた事項

基本的には商事信託で、受託者が一部の受益者に不利になる決定をした場合に、受益者が受託者に対して受益権の買取を求めることができるとする規定であり、株式会社の株主の買取請求権と似ている。

 信託の併合又は分割がされる場合には、これらにより損害を受けるおそれのある受益者は、受託者に対し、自己の有する受益権を公正な価格で取得することを請求することができる。ただし、前項第1号又は第2号に掲げる事項に係る変更を伴う信託の併合又は分割がされる場合にあっては、これらにより損害を受けるおそれのあることを要しない。

 前二項の受益者が、重要な信託の変更又は信託の併合若しくは信託の分割(以下この章において「重要な信託の変更等」という。)の意思決定に関与し、その際に当該重要な信託の変更等に賛成する旨の意思を表示したときは、前二項の規定は、当該受益者については、適用しない。

 受託者は、重要な信託の変更等の意思決定の日から20日以内に、受益者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。

 重要な信託の変更等をする旨

 重要な信託の変更等がその効力を生ずる日(次条第1項において「効力発生日」という。)

 重要な信託の変更等の中止に関する条件を定めたときは、その条件

 前項の規定による通知は、官報による公告をもって代えることができる。

 第1項又は第2項の規定による請求(以下この款において「受益権取得請求」という。)は、第4項の規定による通知又は前項の規定による公告の日から20日以内に、その受益権取得請求に係る受益権の内容を明らかにしてしなければならない。

 受益権取得請求をした受益者は、受託者の承諾を得た場合に限り、その受益権取得請求を撤回することができる。

 重要な信託の変更等が中止されたときは、受益権取得請求は、その効力を失う。

受益者と受託者との対立が前提とされていない親愛信託で問題になることはないであろう。

【受益権の価格の決定等】 重要度1                       

第104条 受益権取得請求があった場合において、受益権の価格の決定について、受託者と受益者との間に協議が調ったときは、受託者は、受益権取得請求の日から60日を経過する日(その日までに効力発生日が到来していない場合にあっては、効力発生日)までにその支払をしなければならない。

 受益権の価格の決定について、受益権取得請求の日から30日以内に協議が調わないときは、受託者又は受益者は、その期間の満了の日後30日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。

 裁判所は、前項の規定により価格の決定をする場合には、同項の申立てをすることができる者の陳述を聴かなければならない。

 第2項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。

 第2項の規定による価格の決定の裁判に対しては、申立人及び同項の申立てをすることができる者に限り、即時抗告をすることができる。

 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有する。

 前条第7項の規定にかかわらず、第2項に規定する場合において、受益権取得請求の日から60日以内に同項の申立てがないときは、その期間の満了後は、受益者は、いつでも、受益権取得請求を撤回することができる。

 第1項の受託者は、裁判所の決定した価格に対する同項の期間の満了の日後の利息をも支払わなければならない。

 受託者は、受益権の価格の決定があるまでは、受益者に対し、当該受託者が公正な価格と認める額を支払うことができる。

10 受益権取得請求に係る受託者による受益権の取得は、当該受益権の価格に相当する金銭の支払の時に、その効力を生ずる。

11 受益証券(第185条第1項に規定する受益証券をいう。以下この章において同じ。)が発行されている受益権について受益権取得請求があったときは、当該受益証券と引換えに、その受益権取得請求に係る受益権の価格に相当する金銭を支払わなければならない。

12 受益権取得請求に係る債務については、受託者は、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。ただし、信託行為又は当該重要な信託の変更等の意思決定において別段の定めがされたときは、その定めるところによる。

13 前条第1項又は第2項の規定により受託者が受益権を取得したときは、その受益権は、消滅する。ただし、信託行為又は当該重要な信託の変更等の意思決定において別段の定めがされたときは、その定めるところによる。

前条と同じく、受益者と受託者との対立が前提とされていない親愛信託で問題になることはないであろう。

【スタッフブログ】ミステリアスな国、日本

 安倍前首相の電撃辞任により、菅政権が発足しました。

今回のブログは副代表の日下が担当します。政治と憲法と信託には繋がりがあります。

明治の『大日本帝国憲法』は、ドイツの憲法をお手本に制定されました。

戦後、『日本国憲法』の制定については、諸々の議論がありましたが、GHQのマッカーサー草案に基づき制定されたものです。

 「政治家」と一括りにしがちですが、「国会」と「地方自治」は憲法において、章も違いますし、性質、権限も違います。「国会」は、議院内閣制をとっており、国民は直接には総理大臣を選任できません。「地方自治」は、首長を直接、選挙で選ぶことができ、辞めさせる「リコール」も認められています。よって、「地方自治」を担う議員、首長まで住民がコントロールできるようになってます。

 しかし「国会」の議員は、「地方自治」と違って直接に辞めさせることはできません。

なぜなら「国会」の議員の選挙は、国民の「信託」によって、選ばれているからです。

『全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない』このことは、公務員すなわち「国会」の議員を指しています。よって、国民に信託された議員を容易く辞めさせることはできない、という「選挙」に隠された重要な事があります。

 よって、選ぶ国民にも責任があります。

 ふと、思ったのですが、「平成」という元号を示した当時の官房長官で後の首相になった小渕恵三元首相は、突然、他界されました。何かの因縁があるのなら、菅首相も「令和おじさん」と言われ、元号を示しました。その後、今日現在、総理の座にいらっしゃいます。

 ○○伝説というものかもしれませんが。

 そこはさておき、菅政権には期待しております。縦割り行政の廃止、既得権益の打破、

悪しき前例主義の見直し。全て現在の日本の社会には必要なことです。

 河野太郎行革担当大臣が「はんこの廃止、FAXの廃止、書面の廃止、対面の見直し」と菅首相の負託を受けて、実務の改革を実行されています。FAXは、外国に行って目に出来るのは、「産業博物館」等です。既に産業遺産になってます。

 技術最先端の国とされる日本で現役が使用されていると外国の方が聴くと「日本はミステリアスな国ですね」と、言われるそうです。

 技術とその運用が上手くできていない国、日本はやはり不思議な国でしょう。

 そこには、やはり「既得権益」「悪しき前例」が存在するのかもしれません。

 是非、そこを重大課題とする菅政権には期待したいものです。

協同組合親愛トラスト 副代表 日下淳

~信託法条文~ 第101条/第102条 よ・つ・ば的解説付

【受益債権と信託債権との関係】 重要度2                    

第101条 受益債権は、信託債権に後れる。

信託財産に対する債権者が受益者よりも優先されるとの規定で、株式会社の株主と債権者との関係に似ており、信託終了後の清算時には問題になるであろう。

【受益債権の期間の制限】 重要度2

第102条 受益債権の消滅時効は、次項及び第3項に定める事項を除き、債権の消滅時効の例による。

物権的性質を持つ「受益権」とは異なり、「受益債権」は単なる債権であるから、民法の消滅時効に準じるとしている。

 受益債権の消滅時効は、受益者が受益者としての指定を受けたことを知るに至るまでの間(受益者が現に存しない場合にあっては、信託管理人が選任されるまでの間)は、進行しない。

 受益者となったことを知らないケースも考えられるので、そのための措置と思われる。なお、民法上の債権では、相続によって債権者となった者が債権者であることを知らなくても時効は成立するので、その点でも民法との差異が見られる。

 受益債権の消滅時効は、次に掲げる場合に限り、援用することができる。

 受託者が、消滅時効の期間の経過後、遅滞なく、受益者に対し受益債権の存在及びその内容を相当の期間を定めて通知し、かつ、受益者からその期間内に履行の請求を受けなかったとき。

 消滅時効の期間の経過時において受益者の所在が不明であるとき、その他信託行為の定め、受益者の状況、関係資料の滅失その他の事情に照らして、受益者に対し前号の規定による通知をしないことについて正当な理由があるとき。

受託者による時効援用のルールであるが、商事信託の世界の話であろう。

 受益債権は、これを行使することができる時から20年を経過したときは、消滅する。

 除斥期間の規定である。

~信託法条文~ 第99条/第100条 よ・つ・ば的解説付

第二款 受益権の放棄

第99条 重要度3

受益者は、受託者に対し、受益権を放棄する旨の意思表示をすることができる。ただし、受益者が信託行為の当事者である場合は、この限りでない。

受益権は所有権とは異なり「放棄」が可能であるとしている。「受益者が信託行為の当事者」というのは、委託者が当初受益者を兼ねているケースが想定され、その場合には放棄は認められない。

 受益者は、前項の規定による意思表示をしたときは、当初から受益権を有していなかったものとみなす。ただし、第三者の権利を害することはできない。

 放棄が認められるのは、信託行為の当事者ではない受益者であるから、信託行為で指定された二次受益者や、受益者指定権者によって指定された受益者を指すと考えられ、放棄により当初から受益者にはならないとされている。「第三者の権利を害する」とは、受益権が既に差押えの対象となっているケースなどが想定される。

第三款 受益債権

【受益債権に係る受託者の責任 重要度3

第100条 受益債権に係る債務については、受託者は、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。

受益債権とは信託財産から発生する受益者の財産的権利であるから、信託財産のみから履行されるのは当然であり、受託者が個人の財産で履行する義務を負うことはなく、21条第2項に対応している。

~信託法条文~ 第97条/第98条 よ・つ・ば的解説付

【受益権の質入れの効果】 重要度3                       

第97条 受益権を目的とする質権は、次に掲げる金銭等(金銭その他の財産をいう。以下この条及び次条において同じ。)について存在する。

 当該受益権を有する受益者が受託者から信託財産に係る給付として受けた金銭等

 第103条第6項に規定する受益権取得請求によって当該受益権を有する受益者が受ける金銭等

 信託の変更による受益権の併合又は分割によって当該受益権を有する受益者が受ける金銭等

 信託の併合又は分割(信託の併合又は信託の分割をいう。以下同じ。)によって当該受益権を有する受益者が受ける金銭等

 前各号に掲げるもののほか、当該受益権を有する受益者が当該受益権に代わるものとして受ける金銭等

受益権は民法上の債権とは性質が異なるので、質権の効力に関しても受益権全体ではなく、金銭給付を受けられる権利に限定されている。

すなわち、受託者に対する意思表示などの、金銭給付とは異なる権利については、質権の対象とはならないということである。

第98条 重要度2

受益権の質権者は、前条の金銭等(金銭に限る。)を受領し、他の債権者に先立って自己の債権の弁済に充てることができる。

質権者の権利行使の対象を金銭のみに限定している。

 前項の債権の弁済期が到来していないときは、受益権の質権者は、受託者に同項に規定する金銭等に相当する金額を供託させることができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。

弁済期未到来分について、質権者の救済措置を講じている。

~信託法条文~ 第95条/第95の2/第96条        よ・つ・ば的解説付

【受益権の譲渡における受託者の抗弁】 重要度2

第95条 受託者は、前条第1項の通知又は承諾がされるまでに譲渡人に対し生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。

前条と同じく、債権譲渡の規定を準用している。

【共同相続における受益権の承継の対抗要件】 重要度5              

第95条の2 相続により受益権が承継された場合において、民法第900条及び第901条の規定により算定した相続分を超えて当該受益権を承継した共同相続人が当該受益権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該受益権を承継した場合にあっては、当該受益権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして受託者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が受託者に通知をしたものとみなして、同法第899条の2第1項の規定を適用する。

民法改正を受けて新設された条文である。

信託行為に基づく受益権の移動は「相続」ではないが、これを相続と見るとする考え方も根強く残っているので、それに配慮した条文ではないかと思われる。

敢えて「相続による受益権が承継された場合」と表記することによって結論を回避しているようであるが、そもそも信託法の立法的な部分からの解釈の揺れが感じられる条文である。

【受益権の質入れ】 重要度4                          

第96条 受益者は、その有する受益権に質権を設定することができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。

 前項の規定にかかわらず、受益権の質入れを禁止し、又は制限する旨の信託行為の定め(以下この項において「質入制限の定め」という。)は、その質入制限の定めがされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった質権者その他の第三者に対抗することができる。

受益権は譲渡と同様に質入も可能としており、また別段の定めによる質入の制限や禁止も可能としている。

なお、民法改正に合わせて、条文の一部が改正されている。

~信託法条文~ 第93条/第94条 よ・つ・ば的解説付

第二節 受益権等

第一款 受益権の譲渡等

【受益権の譲渡性】 重要度4

第93条 受益者は、その有する受益権を譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。

 原則として受益権の譲渡は自由である。

 前項の規定にかかわらず、受益権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の信託行為の定め(以下この項において「譲渡制限の定め」という。)は、その譲渡制限の定めがされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。

別段の定めで受益権の譲渡を制限や禁止することが可能であり、これが「信託の制限機能」の根拠となる。

善意の第三者に対抗できないとしているのは、取引の安全を考えての措置であると考えられるが、今般の民法改正に応じて改正されている条項である。

【益権の譲渡の対抗要件】 重要度3

第94条 受益権の譲渡は、譲渡人が受託者に通知をし、又は受託者が承諾をしなければ、受託者その他の第三者に対抗することができない。

民法の債権譲渡の対抗要件の規定を準用している。

 前項の通知及び承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、受託者以外の第三者に対抗することができない。

前項に同じ。

~信託法条文~ 第91条/第92条 よ・つ・ば的解説付

【受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託の特例】

重要度MAX

第91条 受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から30年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。

民法とは異なる財産承継の方法であることを示している最重要条文の一つであり、民法では不可能な受益者連続を認めており、また受益権の消滅・発生は、所有権の世界では絶対に考えられない仕組みであって、信託受益権が民法上の相続の対象とはならないとする有力な根拠となる。

カッコ内の「順次他の者が受益権を取得する仕組み」とは、あまり論じられることがないが、消滅・発生ではない形で受益権が承継されて行く方法を選択することもできるとの定めであると考えられ、これをもって受益権が民法上の相続の対象になるものとは考えられない。

条文の後半は、いわゆる「30年ルール」であるが、あまりにも無制限に受益者連続の規定を有効とすると、半永久的に財産の帰趨が拘束されるため、制限を設けたものらしい。

しかし、「消滅するまでの間、その効力を有する」という文言の解釈については、信託全体が終了するとする説が有力ではあるが、52条などとは違って163条の信託終了事由に挙げられていないことから、単に受益者連続の定めの効力のみが無くなって、信託自体は終了しないとの考え方も成り立つ。

【信託行為の定めによる受益者の権利行使の制限の禁止】 重要度2         

第92条 受益者による次に掲げる権利の行使は、信託行為の定めにより制限することができない。

 この法律の規定による裁判所に対する申立権

 第5条第1項の規定による催告権

 第23条第5項又は第6項の規定による異議を主張する権利

 第24条第1項の規定による支払の請求権

 第27条第1項又は第2項(これらの規定を第75条第4項において準用する場合を含む。)の規定による取消権

 第31条第6項又は第7項の規定による取消権

 第36条の規定による報告を求める権利

 第38条第1項又は第6項の規定による閲覧又は謄写の請求権

 第40条の規定による損失のてん補又は原状の回復の請求権

 第41条の規定による損失のてん補又は原状の回復の請求権

十一 第44条の規定による差止めの請求権

十二 第45条第1項の規定による支払の請求権

十三 第59条第5項の規定による差止めの請求権

十四 第60条第3項又は第5項の規定による差止めの請求権

十五 第61条第1項の規定による支払の請求権

十六 第62条第2項の規定による催告権

十七 第99条第1項の規定による受益権を放棄する権利

十八 第103条第1項又は第2項の規定による受益権取得請求権

十九 第131条第2項の規定による催告権

二十 第138条第2項の規定による催告権

二十一 第187条第1項の規定による交付又は提供の請求権

二十二 第190条第2項の規定による閲覧又は謄写の請求権

二十三 第198条第1項の規定による記載又は記録の請求権

二十四 第226条第1項の規定による金銭のてん補又は支払の請求権

二十五 第228条第1項の規定による金銭のてん補又は支払の請求権

二十六 第254条第1項の規定による損失のてん補の請求権

受益者の権利の行使を保証する条文であるが、限定列挙された以外の権利については行使を制限できるということでもある。

~信託法条文~ 第89条/第90条 よ・つ・ば的解説付

【受益者指定権等】 重要度MAX

第89条 受益者を指定し、又はこれを変更する権利(以下この条において「受益者指定権等」という。)を有する者の定めのある信託においては、受益者指定権等は、受託者に対する意思表示によって行使する。

民法と異なる財産の管理・承継方法の規定として最も典型的な内容を示している、最重要条文の一つである。

「指定権者」「変更権者」として信託行為で指名された者が、受益者指定権及び受益者変更権という、民法上の所有権では絶対に有り得ない、財産権者を当事者の同意なくして移動させる権利を行使できるとしており、これこそが信託の本質なのである

 前項の規定にかかわらず、受益者指定権等は、遺言によって行使することができる。

遺言を使って「指定権」「変更権」を行使することもできるとしている。

 前項の規定により遺言によって受益者指定権等が行使された場合において、受託者がこれを知らないときは、これにより受益者となったことをもって当該受託者に対抗することができない。

遺言で受益者の指定や変更があった場合の特則であるが、一般的には使われないものと思われる。

 受託者は、受益者を変更する権利が行使されたことにより受益者であった者がその受益権を失ったときは、その者に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

「受益者変更権」は受益者の意思に関係なく行使されるので、受託者に通知義務を課しているが、別段の定めも認容している。

 受益者指定権等は、相続によって承継されない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

「指定権」「変更権」は一身専属権であることを示している。

 受益者指定権等を有する者が受託者である場合における第1項の規定の適用については、同項中「受託者」とあるのは、「受益者となるべき者」とする。

 受託者が「指定権者」「変更権者」となることも許容されており、要するに誰でも指定権者や変更権者になり得るということである。

【委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定めのある信託等の特例】 重要度5

第90条 次の各号に掲げる信託においては、当該各号の委託者は、受益者を変更する権利を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

この条文は、以前は「遺言代用信託」と呼ばれており、現在では一般的となった承継型の信託行為を指している。

信託法の構成からは89条によって受益者は随時変更できるものであり、本条各項の要件に該当する委託者には受益者変更権が与えられているとされているため、法的には委託者が随時に受益者を変更することができることになっている。

ただ、実務的には生前贈与になる受益者変更権が行使されることは稀であろうし、別段の定めでもって受益者変更権の行使をさせないことも可能である。

 委託者の死亡の時に受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得する旨の定めのある信託

これが一般的な承継型信託の仕組みである。

すなわち、一般的な親愛信託契約においては、委託者は受益者変更権を持っているということになる。

 委託者の死亡の時以後に受益者が信託財産に係る給付を受ける旨の定めのある信託

先に受益者を変更しておき、その「給付を受ける権利」のみを留保しておく形であるが、この方法では先に権利移転が生じて課税の対象となるため、まず実務では用いられない。

 前項第2号の受益者は、同号の委託者が死亡するまでは、受益者としての権利を有しない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

前項第2号の受益者は、完全な受益権を保有しているとは言えないので、別段の定めがない限り受益者としての権利を有しないとしているが、実務で用いられることはないであろう。