~信託法条文~ 第87条/第88条 よ・つ・ば的解説付

【信託の終了の特例】重要度2

第87条 受託者が2人以上ある信託における第163条第3号の規定の適用については、同号中「受託者が欠けた場合」とあるのは、「すべての受託者が欠けた場合」とする。

 受託者が2人以上ある信託においては、受託者の一部が欠けた場合であって、前条第4項ただし書の規定によりその任務が他の受託者によって行われず、かつ、新受託者が就任しない状態が1年間継続したときも、信託は、終了する。

受託者複数の場合の信託終了などに関する規定を決めている。

第四章 受益者等

第一節 受益者の権利の取得及び行使

【受益権の取得】 重要度3                           

第88条 信託行為の定めにより受益者となるべき者として指定された者(次条第1項に規定する受益者指定権等の行使により受益者又は変更後の受益者として指定された者を含む。)は、当然に受益権を取得する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

信託行為によって受益者となった者が、当人の承諾などなくとも当然に受益権を取得すると規定しており、受益権が宙に浮かないようにしているが、別段の定めが認められていることから、他の方法での承継も可能と読み取れる。

 受託者は、前項に規定する受益者となるべき者として指定された者が同項の規定により受益権を取得したことを知らないときは、その者に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

受託者の義務として受益者となる者への通知が必要としている。

~信託法条文~ 第85条/第86条 よ・つ・ば的解説付

【受託者の責任等の特例】 重要度2

第85条 受託者が2人以上ある信託において、2人以上の受託者がその任務に違反する行為をしたことにより第40条の規定による責任を負う場合には、当該行為をした各受託者は、連帯債務者とする。

 受託者が2人以上ある信託における第40条第1項及び第41条の規定の適用については、これらの規定中「受益者」とあるのは、「受益者又は他の受託者」とする。

 受託者が2人以上ある信託において第42条の規定により第40条又は第41条の規定による責任が免除されたときは、他の受託者は、これらの規定によれば当該責任を負うべき者に対し、当該責任の追及に係る請求をすることができない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

 受託者が2人以上ある信託における第44条の規定の適用については、同条第1項中「受益者」とあるのは「受益者又は他の受託者」と、同条第2項中「当該受益者」とあるのは「当該受益者又は他の受託者」とする。

受託者複数の場合の任務違反責任に関する規定を決めており、親愛信託においては想定できないケースである。

【受託者の変更等の特例】 重要度2                       

第86条 受託者が2人以上ある信託における第59条の規定の適用については、同条第1項中「受益者」とあるのは「受益者及び他の受託者」と、同条第3項及び第4項中「受託者の任務」とあるのは「すべての受託者の任務」とする。

 受託者が2人以上ある信託における第60条の規定の適用については、同条第1項中「受益者」とあるのは「受益者及び他の受託者」と、同条第2項及び第4項中「受託者の任務」とあるのは「すべての受託者の任務」とする。

 受託者が2人以上ある信託における第74条第1項の規定の適用については、同項中「受託者の任務」とあるのは、「すべての受託者の任務」とする。

 受託者が2人以上ある信託においては、第75条第1項及び第2項の規定にかかわらず、その1人の任務が第56条第1項各号に掲げる事由により終了した場合には、その任務が終了した時に存する信託に関する権利義務は他の受託者が当然に承継し、その任務は他の受託者が行う。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

受託者複数の場合の受託者変更に関する規定を決めている。

~信託法条文~ 第83条/第84条 よ・つ・ば的解説付

【信託事務の処理に係る債務の負担関係】重要度3

第83条 受託者が2人以上ある信託において、信託事務を処理するに当たって各受託者が第三者に対し債務を負担した場合には、各受託者は、連帯債務者とする。

受託者複数の場合の債務の負担に関する規定を決めており、ここでも我が国の債権法との矛盾点が見られる。

 前項の規定にかかわらず、信託行為に受託者の職務の分掌に関する定めがある場合において、ある受託者がその定めに従い信託事務を処理するに当たって第三者に対し債務を負担したときは、他の受託者は、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。ただし、当該第三者が、その債務の負担の原因である行為の当時、当該行為が信託事務の処理としてされたこと及び受託者が2人以上ある信託であることを知っていた場合であって、信託行為に受託者の職務の分掌に関する定めがあることを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がなかったときは、当該他の受託者は、これをもって当該第三者に対抗することができない。

受託者複数の場合の債務に関しての債権者を保護する規定を決めている。

信託財産と固有財産等とに属する共有物の分割の特例】 重要度1

第84条 受託者が2人以上ある信託における第19条の規定の適用については、同条第1項中「場合には」とあるのは「場合において、当該信託財産に係る信託に受託者が2人以上あるときは」と、同項第2号中「受託者」とあるのは「固有財産に共有持分が属する受託者」と、同項第3号中「受託者の」とあるのは「固有財産に共有持分が属する受託者の」と、同条第2項中「受託者」とあるのは「固有財産に共有持分が属する受託者」と、同条第3項中「場合には」とあるのは「場合において、当該信託財産に係る信託又は他の信託財産に係る信託に受託者が2人以上あるときは」と、同項第3号中「受託者の」とあるのは「各信託財産の共有持分が属する受託者の」と、「受託者が決する」とあるのは「受託者の協議による」と、同条第4項中「第2号」とあるのは「第2号又は第3号」とする。

受託者複数の場合の共有物分割に関する規定を決めている。

【スタッフブログ】「親愛信託実践型連続講座」の第4回目を行いました

こんにちは、よつば親愛信託ちばの岩井と申します。


先日、「親愛信託実践型連続講座」の第4回目を行いました。


残すは試験のみとなりました。


ソーシャルディスタンスと空気の入れ替え等、コロナ対策を徹底させながらの講座です。


事例について、どのような解決方法があるかを考え、皆さんで真剣に問題に取り組む中で、民事信託のことだけでなく、保険や税金のことなど、たくさんの学びがありました。


その学びを、悩んでいるお客様にきちんと活かせるよう、頑張っていきたいと思います。

連続講座の様子

一般社団法人よつば親愛信託ちば 理事 岩井 勇大

~信託法条文~ 第81条/第82条 よ・つ・ば的解説付

【職務分掌者の当事者適格】 重要度2

第81条 前条第4項に規定する場合には、信託財産に関する訴えについて、各受託者は、自己の分掌する職務に関し、他の受託者のために原告又は被告となる。

受託者複数の場合の訴訟に関する規定を決めている。

信託事務の処理についての決定の他の受託者への委託】 重要度3

第82条 受託者が2人以上ある信託においては、各受託者は、信託行為に別段の定めがある場合又はやむを得ない事由がある場合を除き、他の受託者に対し、信託事務(常務に属するものを除く。)の処理についての決定を委託することができない。

受託者複数の場合の他方への委託の制限を定めている。

~信託法条文~ 第79条/第80条 よ・つ・ば的解説付

第六節 受託者が二人以上ある信託の特例

【信託財産の合有】 重要度3

第79条 受託者が2人以上ある信託においては、信託財産は、その合有とする。

受託者複数の信託の場合、受託者個々に「持分」はなく、「合有」であることを示しており、ここでも受託者が民法上の所有権者とは異なる地位であることが証明されている。

【信託事務の処理の方法】 重要度3                       

第80条 受託者が2人以上ある信託においては、信託事務の処理については、受託者の過半数をもって決する。

受託者複数の場合は、会社の業務執行のように、基本的には過半数決議としている。

 前項の規定にかかわらず、保存行為については、各受託者が単独で決することができる。

保存行為については決議を免除している。

 前二項の規定により信託事務の処理について決定がされた場合には、各受託者は、当該決定に基づいて信託事務を執行することができる。

意思決定と実際の信託事務の執行を区別している。

 前三項の規定にかかわらず、信託行為に受託者の職務の分掌に関する定めがある場合には、各受託者は、その定めに従い、信託事務の処理について決し、これを執行する。

親愛信託で複数受託者を採用する際には、本項による定めを作っておく必要があると思われる。

 前二項の規定による信託事務の処理についての決定に基づく信託財産のためにする行為については、各受託者は、他の受託者を代理する権限を有する。

 前各項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

ここでも別段の定めを優先しているので、親愛信託で複数受託者を採用する際には注意しなければならない。

 受託者が2人以上ある信託においては、第三者の意思表示は、その1人に対してすれば足りる。ただし、受益者の意思表示については、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

受託者複数の場合の外部の第三者との関係を定めており、内部の存在である受益者と区別している。

~信託法条文~ 第77条/第78条 よ・つ・ば的解説付

【前受託者による新受託者等への信託事務の引継ぎ等】 重要度3

第77条 新受託者等が就任した場合には、前受託者は、遅滞なく、信託事務に関する計算を行い、受益者(2人以上の受益者が現に存する場合にあってはそのすべての受益者、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人)に対しその承認を求めるとともに、新受託者等が信託事務の処理を行うのに必要な信託事務の引継ぎをしなければならない。

受託者交替の際の手続きを規定しており、別段の定めが認められていないところから、親愛信託でも一応は押さえておくべき事項である。

 受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人。次項において同じ。)が前項の計算を承認した場合には、同項の規定による当該受益者に対する信託事務の引継ぎに関する責任は、免除されたものとみなす。ただし、前受託者の職務の執行に不正の行為があったときは、この限りでない。

 この規定は受益者が存在しない信託を前提としており、親愛信託とは馴染まない。

 受益者が前受託者から第1項の計算の承認を求められた時から1箇月以内に異議を述べなかった場合には、当該受益者は、同項の計算を承認したものとみなす。

形式的な見なし規定である。

【前受託者の相続人等又は破産管財人による新受託者等への信託事務の引継ぎ等】 重要度1

第78条 前条の規定は、第56条第1項第1号又は第2号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合における前受託者の相続人等及び同項第3号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合における破産管財人について準用する。

破産前提の規定であり、親愛信託とは馴染まない。

~信託法条文~ 第75条/第76条 よ・つ・ば的解説付

第五款 受託者の変更に伴う権利義務の承継等

【信託に関する権利義務の承継等】 重要度2 

第75条 第56条第1項各号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、新受託者が就任したときは、新受託者は、前受託者の任務が終了した時に、その時に存する信託に関する権利義務を前受託者から承継したものとみなす。

受託者が交替するまでにタイムラグが生じた場合には、原則として新受託者が遡及して権利義務を承継したものと見做すとしている。

 前項の規定にかかわらず、第56条第1項第5号に掲げる事由(第57条第1項の規定によるものに限る。)により受託者の任務が終了した場合(第59条第4項ただし書の場合を除く。)には、新受託者は、新受託者等が就任した時に、その時に存する信託に関する権利義務を前受託者から承継したものとみなす。

受託者辞任の場合には、例外として新受託者就任時に権利義務を承継したものと見做される。

 前二項の規定は、新受託者が就任するに至るまでの間に前受託者、信託財産管理者又は信託財産法人管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。

 タイムラグの間に為された行為の有効性を保証している。

 第27条の規定は、新受託者等が就任するに至るまでの間に前受託者がその権限に属しない行為をした場合について準用する。

受益者による受託者の違反行為の取消権に関しての準用規定である。

 前受託者(その相続人を含む。以下この条において同じ。)が第40条の規定による責任を負う場合又は法人である前受託者の理事、取締役若しくは執行役若しくはこれらに準ずる者(以下この項において「理事等」と総称する。)が第41条の規定による責任を負う場合には、新受託者等又は信託財産法人管理人は、前受託者又は理事等に対し、第40条又は第41条の規定による請求をすることができる。

 損失てん補責任に関しての準用規定である。

 前受託者が信託財産から費用等の償還若しくは損害の賠償を受けることができ、又は信託報酬を受けることができる場合には、前受託者は、新受託者等又は信託財産法人管理人に対し、費用等の償還若しくは損害の賠償又は信託報酬の支払を請求することができる。ただし、新受託者等又は信託財産法人管理人は、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。

 費用償還などに対する準用規定である。

 第48条第4項並びに第49条第6項及び第7項の規定は、前項の規定により前受託者が有する権利について準用する。

前項に同じ

 新受託者が就任するに至るまでの間に信託財産に属する財産に対し既にされている強制執行、仮差押え若しくは仮処分の執行又は担保権の実行若しくは競売の手続は、新受託者に対し続行することができる。

強制執行などに関する準用規定である。

 前受託者は、第6項の規定による請求に係る債権の弁済を受けるまで、信託財産に属する財産を留置することができる。

前受託者の権利を保護する規定である。

【承継された債務に関する前受託者及び新受託者の責任】 重要度4         

第76条 前条第1項又は第2項の規定により信託債権に係る債務が新受託者に承継された場合にも、前受託者は、自己の固有財産をもって、その承継された債務を履行する責任を負う。ただし、信託財産に属する財産のみをもって当該債務を履行する責任を負うときは、この限りでない。

前受託者が負っている債務について、受託者の交替によっても消滅せず、引き続き前受託者が責任を負うとする規定である。

 新受託者は、前項本文に規定する債務を承継した場合には、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。

前受託者が引き続き債務を負うということから、新受託者は債務を承継せず、信託財産でもってのみ弁済をすれば良いとされている。

この条文は、信託と債務との関係性が非常に微妙であり、我が国の債権法の常識では律せられないことを示しており、重要な内容である。

~信託法条文~ 第73条/第74条 よ・つ・ば的解説付

【受託者の職務を代行する者の権限】 重要度1

第73条 第66条の規定は、受託者の職務を代行する者を選任する仮処分命令により選任された受託者の職務を代行する者について準用する。

これも、おそらく商事信託の場合の信託会社の倒産などを想定した手続きの規定である。

【受託者の死亡により任務が終了した場合の信託財産の帰属等】 重要度1

第74条 第56条第1項第1号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、信託財産は、法人とする。

 前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、信託財産法人管理人による管理を命ずる処分(第6項において「信託財産法人管理命令」という。)をすることができる。

 第63条第2項から第4項までの規定は、前項の申立てに係る事件について準用する。

 新受託者が就任したときは、第1項の法人は、成立しなかったものとみなす。ただし、信託財産法人管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。

 信託財産法人管理人の代理権は、新受託者が信託事務の処理をすることができるに至った時に消滅する。

 第64条の規定は信託財産法人管理命令をする場合について、第66条から第72条までの規定は信託財産法人管理人について、それぞれ準用する。

前条に同じ。

~信託法条文~ 第71条/第72条 よ・つ・ば的解説付

信託財産管理者の報酬等】 重要度1               

第71条 信託財産管理者は、信託財産から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。

 前項の規定による費用又は報酬の額を定める裁判をする場合には、信託財産管理者の陳述を聴かなければならない。

 第1項の規定による費用又は報酬の額を定める裁判に対しては、信託財産管理者に限り、即時抗告をすることができる。

これも、おそらく商事信託の場合の信託会社の倒産などを想定した手続きの規定である。

【信託財産管理者による新受託者への信託事務の引継ぎ等】 重要度1

第72条 第77条の規定は、信託財産管理者の選任後に新受託者が就任した場合について準用する。この場合において、同条第1項中「受益者(2人以上の受益者が現に存する場合にあってはそのすべての受益者、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人)」とあり、同条第2項中「受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人。次項において同じ。)」とあり、及び同条第3項中「受益者」とあるのは「新受託者」と、同条第2項中「当該受益者」とあるのは「当該新受託者」と読み替えるものとする。

前条に同じ。