コリーニ事件

ドイツのナチス犯罪を裁く法廷ものですが、いささか変わった想定です。

子供時代に武装SS(ナチス突撃隊)将校に、目の前で非道に父を虐殺されたイタリア人コリーニ。ドイツでの裁判を却下され、失意のうちに亡くなった姉を含む、仇討ちを遂げます。

殺されたのは、富裕で人格高潔なドイツ人実業家と、その方に家族同然に面倒見てもらった移民トルコ人二世の若き弁護士。彼が、我が恩人を殺したコリーニの国選弁護人となります。

ドイツらしい丁寧で粘り強い調査で、この父同様の実業家が、かつてSS少佐でコリーニの父を殺戮した張本人であることを、法廷で証明して見せます。

しかし法改正により、もはやナチス時代の戦争犯罪人を裁くことが出来なくなっていることが、確認されます。苦渋の末、裁判長はコリーニに無罪を宣告します。

その翌日、コリーニは釈放を待たず、獄中で自死します。

日本人の仏教的宗教感で捉えるならば、仇を討ち無罪を勝ち取った上は、もう思い残すことはない。父と姉のもとへ旅立とう・・・。でしょうか。とても、緻密な作品です。(O)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です