【親愛信託活用法】共有不動産の名義一元化

不動産は、一人の人が単独で所有する方がよい、と言われます。

とは言いながら、

・マイホームを買うとき親にお金を出してもらった…

・夫婦でお金を半分ずつ出し合ってマイホームを買った…

・親が亡くなってきょうだいで不動産を相続ことになってしまった…

・おじおばが亡くなって、いとこ同士で不動産を相続することになってしまった…

…等々をきっかけとして不動産を共有で持つ場合があります。

※共有とは、1つのものを複数の人で所有する状態をいいます。

1人の人が所有している場合は、【「所有権」で持っている(一人で所有している)】、などと言いますが、複数の人が共有している場合は【「持分(権)」で持っている(複数で共有している)】などと言ったりします。

では、なぜ、一人の人が単独で所有する方がよい、と言われるのでしょうか。

複数の人で不動産を共有したら、どのような不都合・不具合があるのでしょうか。

実際、不動産を共有にすると、

・売却処分がしにくい(全員の同意がいる)

・不動産を担保に入れてお金を借りることが実質的に難しい

これは、不動産全体を処分したり担保に入れたりということが困難になる、ということです。

すなわち、

        一人でも認知症だったり、意思表示できなかったりする人がいると不可

        一人でも反対の人がいると不可

        一人でも行方不明の人がいると不可

ということです。

勿論、不動産全体じゃないと処分できない、という法律はありません。持分でも、法律的には支障なく処分できることはできます。(※2023年4月27日から新設される「相続土地国庫帰属制度(相続した土地を国が引き取る制度)」を使う時は、共有者全員による申請が必要とされています。) 

ただ、不動産全体ではなく共有の持分だけを処分しようとすると、不動産全体を処分するよりもかなり安価で処分することになってしまうことが多いです。

また不動産の持分に抵当権などの担保権をつけることは民法上で勿論可能です。ただ、実際、銀行等の金融機関からお金を借りる時に抵当権等の担保権をつける場合は、持分ではなく不動産全部につけることが通例となっています。すなわち、お金を借りる人が共有者の中の一人だけだった場合でも、共有者全員に抵当権を設定する契約書にハンコをついてもらうことが必要となります。

また、共有不動産ですと、

・賃貸もしにくい(持分の過半数の同意が必要)

ということがあります。

一応、共有者のうち1人が単独でもできることもあります。

・土地の場合、境界特定、筆界特定の手続き

・建物の軽微な修繕(大規模修繕は注意)

・固定資産税については、代表者が一括で払うのが通常

管理保全行為と言いますが、そのような行為は共有者のうちのひとりでもできます。

ひとりの共有者が不動産をまもるために費用をかけた場合、別の共有者に請求をすることは法律的には可能です。立替た分の固定資産税も請求する権利があります。

ただ、実際のところお金をもらうことはむつかしいのではないでしょうか。

最近、電車などで見る広告に「持分を買い取ります!」というものがあります。

今まで書いたように、不動産を共有で持っていても、なかなかお金になりにくいので、手っ取り早くお金に変えるために、不動産の持分をそのような広告を出している業者さんに売ることもあるようです。

その場合、何が起こるでしょうか。

不動産業者が共有者の一人から、持分を買い取ると、その不動産会社が共有者の一人に変わります。

例えば相続などできょうだいで共有していたものが、きょうだいではなく、不動産会社さんに置き換わります。

その不動産会社は、共有不動産買い取りをはじめとする不動産の扱いに関して、プロフェッショナルです。

いろいろな手段で、他の共有者から共有持分を買取るように「交渉」をします。

身内だけで持っていたものに「プロ」が入り込み、買取の為の価格交渉をする、というわけです。

一般の不動産売買の知識が余り無い方にとって、非常に負担になると思われます。

また、共有状態のまま不動産を処分することなく、相続が何代か発生した場合更に共有する当事者が増加し、いざ、処分しようにも全員の合意を得ることが実質不可能になることがあります。

2024年4月1日から、不動産に関する相続登記が義務化されることになります。共有持分を持っている方々も同じように相続登記が義務化されます。売却の前に不動産登記をするだけでも相当な困難が生じることが予想されます。

これまで書きました通り、共有にすると色々と不都合、不具合がありますので、不動産の相続のときは、一人に名義を集中させるケースが増えています。

ただ、土地の名義人になれなかった相続人に支払う代償金が集まらず、やむを得ず共有にすることもあるでしょう。

お金がそろった後、名義を一人に集中させたくても、売買だとやはり売却費用がかかり、共有相手に贈与をすれば贈与税がかかり、また不動産取得税の負担もあります。

ただ、やはり共有不動産の名義を一人に集中させたい、そんな場合、親愛信託を使う方法があります。

贈与税、不動産取得税の負担がなく、名義だけを一人に集中させるのです。

共有状態の解消に親愛信託が使える

一人に名義を集中させるとき、すなわち信託契約をするとき登記が必要になります。

ただ、登記の際に必要な登録免許税は同じような名義移転である売買や贈与に比べて安いです。

登記の際必要な登録免許税

・売買…不動産評価額の1000分の15※軽減税率(2023年3月31日までの間に登記を受ける場合)

・贈与…不動産評価額の1000分の20

・信託…建物の場合は不動産評価額の1000分の4、土地の場合は不動産評価額の1000分の3

では、共有者が、一人の受託者に不動産の持分を親愛信託した場合、利益の分け方はどうなるでしょうか。

共有状態解消信託した不動産を賃貸借した場合

実は、賃貸借しても売却しても、利益の分け方は、「信託契約書で定めます。」

受益者である共有者が、その持分の範囲で金銭を受託者から受け取ることができる、というような形で決めることが多いです。

ただ、

・共有者のひとりにお金をどんどん浪費してしまう人がいる

・身内で借金を抱えている人がいる

等々、お金を簡単に渡さない方がいいと思われる方がいた場合はどうでしょうか。

そのままお金を渡すことがその人の為にならない場合もあります。

そういう場合に、親愛信託をして「受益権」とすることで、お金をむやみに渡さないようにすることも可能です。

親愛信託をすると、元々持っていた不動産の持分が、「受益権」に変ります。

「受益権」はややわかりにくい概念ですが、信託した財産をもとにした「権利」です。

信託する前の所有権も(持分権も)「権利」ですが、信託した後の「受益権」も権利です。

所有権はその物を色々と管理をしたり、保全をしたりという義務も伴いますが、「受益権」だけを持っている場合は、その物にたいして何か義務を果たさないといけない、ということはなくなります。(物について、管理したり保全したりの義務を果たすのは「受託者」です)

受益権は権利そのものではありますが、信託契約書によって、その権利の内容を決めることができます。

従いまして、お金をそのまま渡す…という【以外】の、「受益権」の内容を信託契約で決めることができます。(勿論、お金をそのまま渡す、という決め方もできます。)

その「受益権の内容」のカスタマイズについては、お客様のご事情、ご希望をお伺いし(プライベートなことを色々と聞かせていただきますが、秘密保持義務を厳守いたしますので、ご安心してお話しください)、当法人(組合)には経験に基づいたノウハウにより提案させていただいております。

例えば、信託不動産を貸すなどして賃借金などのお金が生じた時、受益者に対してすぐに金銭で渡すのでなく、お客様の希望により、

・金銭を年額で支払う

・売却するまでプールしておく

・受益者から請求があったとき(上限額を予め定めて)はじめて請求額分を支払う、

・上限額として生活費程度の金額を毎月渡すが、入院費等で使う場合には制限をつけない

等々、契約書に定めておくことができます。

また、共有者全員が親愛信託をして名義人を一人に集約すると、売却などの処分行為がその受託者の判断で行えます。

(もしも、受託者一人で全部決められるのはいやだな、とお考えの方がおられる場合、同意又は承諾する権利をその方がお元気な間、行使してもらって売却する、ということも可能です。)

共有状態解消信託した不動産を売却した場合

親愛信託した不動産を売却した場合、信託財産が不動産から、金銭に変わることになります。

(必ずしも売却により信託が終了するわけではありません。)

共有状態が不便なので、親愛信託をしたわけですから、信託財産が不動産の共有持分から金銭に変ったら信託を終了させる契約をすることが多いです(そのまま金銭信託に移行させることもできます。)。

信託を終了させると、「清算」、清算が終わったら、残った財産(残余財産)は、信託契約上残余財産を持つことに決まっている人(残余財産帰属権利者、最後の受益者を残余財産帰属権利者とする取り決めが多いです)が所有することとなります。

上記の場合は、売買にかかった費用等を清算して、受託者報酬を払うことに決まっていた場合はそれを支払い、残った金銭を元の受益者が受け取る、と言う流れになるでしょう。

まとめ

共有状態のまま、共有者が全員元気で、海外に行っている人や行方不明者もおらず、売買できるということもあります。

ただ、そうでない場合は、親愛信託で名義を集約することで、課税負担等を最低限にして、慌てて安値で処分をすることなく、良い売買先をじっくり探したり、お金に困った共有者が先駆けて不動産業者に持分を売って、共有者に「赤の他人」が入り込むことを防ぐことができます。

不動産共有をされている方だけでなく、不動産共有状態にこれからなりそうだという方は是非、導入のご検討をしていただければと思います。当組合又は社団までご相談ください。

よ・つ・ば親愛信託ちば 理事 望月亜矢子


広島銀行での信託口口座の作成について

2022年10月1日より、広島銀行で信託口口座を作成する際に、手数料55,000円(消費税込)がかかることになりました。これからは、無料で信託口口座の作成ができませんのでご注意ください。お客様に費用を伝えられる際には、注意をしましょう。

また、信託口口座を作成するためには、本店・支店を問わず、事前予約が必要となります。

(こちらは、コロナ禍になってからだと思います。)

広島銀行に事前予約のお電話をされる際には、民事信託の専用口座を作成したいとお電話でお伝えしたら伝わりやすいと思います。

必要書類につきましては、信託契約公正証書等、お客様の本人確認書類、通帳印等が必要となります。本人確認書類で、顔写真付きのものがない場合には、印鑑証明書とご実印を持参すれば本人確認書類に代えられるそうです。

手続きにつきましては当日中に完結せず、申請(必要書類提出)後暫くすると、信託口口座用の通帳・カードが書留等で受託者宛に送られてきます。

皆さまのご参考になれば幸いです。

一般社団法人よつば民事信託協会ひろしま 代表理事 茂木武志

家族の幸せをつなぐ。親愛信託
~よつば民事信託とやまの活動事例です。~

◇「民事信託をいかに活用するか?その一つが、実家相続。

社会問題となっております。人生100年時代、大認知症時代。少子化。

空き家問題は大きな課題となっております。

◇空き家問題、実家相続問題からアプローチします。

もちろん、不動産固有の問題点も有りますが、一番効果のあるのが、民事信託、親愛信託を

使えば、民法、相続法ではできない事ができると言う気づきです。

◇連続信託。もちろん認知症対策も必要です。信託が間に合わない場合には贈与(相続時

精算課税)を使います。

一代で終了する信託。一般的には「家族信託」で

親しまれていますが・・・これでも充分使えます。メリットも多いのですが

成年後見制度の変わりに信託を使う?・・それだけではない。

連続信託はこう使う。相談事例が最も多いケースです。

父まだ意思能力はある。母親と長男、長女が登場人物。

相談者「遺言書を作成した方が良いですよね」

私「そうですね。遺言書があれば相続人で揉めなくて済みます」

 「しかし、遺言書はお父様がお亡くなりになって始めて効力があります。

  認知症になられて、資産が凍結してしまうと、例えば介護資金を出そうと

  思ってもできなくなります。銀行は成年後見制度を使えばと言いますが」

 「もっといい方法があれば検討されますか?」

相談者「そんないい方法ってありますか?魔法の杖?」

私 「そうです。魔法の杖です。親愛信託と言います」

相談者「はじめて聞きました。信託銀行? どんな風に使うのですか?」

私「信託銀行では有りません。家族が家族のために使える信託です。」

 「ところで、お父様がお亡くなりになり、遺言書がなくて、相続人で

  遺産分割協議をする場面になりました。ところがお母様が認知症に

  なっておられます。どうしたら良いでしょうか?」

相談者「銀行は成年後見の申請をしてくださいと言っていました」

私「成年後見制度についてのメリット、デイメリットの説明は省略しますが、

  連続信託を使えばこの問題は解決します。

  連続信託は信託法の世界ではできますが、民法の世界ではできません。」

相談者「是非教えてください。魔法の杖ですね」

私「お父様が認知症になられる前に、委託者はお父様です。息子様を受託者とします。

  一次受益者はお父様。連続信託で二次受益者をお母様にし、お母様がお亡くなりに

  なられたら受益権の最終帰属権者を受託者である息子様にして信託を終了させます。

  

  専門用語ばかりですので、もう少しわかり易く説明します。」

  

 「お父様の信託契約でお父様がお亡くなりになられたら、二次受益者をお母様にします。受託者は息子様です。お母様がお亡くなりになられたら、受益権は息子様に継がれ、信託はここで終了します。。これが連続信託です。」

 

「お父様がお亡くなるになり、お母様が施設に入られました。家は空き家になります。

  そんなときに住まなくなった家を処分して、介護資金に充てたいですよね。

  それを叶えるのが親愛信託の連続信託機能です。」

相談者「なんとなく理解しました。遺言書と成年後見だけではないのですね。魔法の杖

    です。」

◇こんな風にクライアントのご相談を受け、問題解決をします。

最初は「空き家心配」「遺言書と成年後見制度」でしたが、

「信託の説明をすると、魔法の杖ですねと民法以外の解決ツールがある事を

 理解されます」

 その後は、料金、手続きにかかる日数の質問になります。

決して「最初から信託ありき」ではありません。

相談プロセスの中で信託についてのメリットの気づきとなります。

一般社団法人よつば民事信託とやま 理事 前田敏

傾聴とは?

私が⽇頃⾏政書⼠として相談業務を⾏う中で、意識しているのが、「傾聴
する」ことです。
「傾聴」とは…
相⼿のいうことを否定せず、⽿も⼼も傾けて、相⼿の話を「聴く」会話技
術を指します。意識すべきなのは、相⼿に共感し、信頼していると⽰すこ
と。
(コトバンクから引⽤)
⽿だけでなく⼼も傾けて、相⼿に共感し信頼していると⽰す。
⾔葉で表すと簡単なようで、実際にはなかなか難しいです。
こちら側が信頼していると⽰すからこそ、それを相⼿側が感じて受け⽌め
てくれたならば、話しづらいこともお話してくださるのだなと。
ご相談内容はさまざまですが、⾝近な⽅々との深いお悩みなどであれば、
なおさらです。
限られた時間の中で、傾聴することを意識しながら相談を受けていく。
お話をお聴きしていく中で、解決できること、できないことが整理されて
いく中で、その解決⽅法の⼀つとして、信託が候補としてあがることがあ
ります。
その際に、親愛信託をご提案させていただきます。
お困りごとの解決策に親愛信託がお役に⽴てるかもしれません。
お近くのよつばグループ各社団へご相談ください。
よつばグループは
来⽉10⽉より、毎⽉4⽇を「よつばの⽇」として、セミナーを開催いたしま
す。
松尾陽⼦代表が、講師として全国のよつばグループを巡ります。
第1回のリアル開催は東京。
リアルとオンラインのハイブリッド開催です。
初⼼者セミナーと実務者セミナーの2本⽴てで実施します。
セミナーのお申込みはこちらから
https://shinai-trust.peatix.com
皆様のご参加、お待ちしております。


よ•つ•ば親愛信託普及連合 理事 林 直美

自分の財産のゆくえ

信託法を学んで一番驚いたのは、自分の死後の財産のゆくえを、相続法とは違う方法で決められることです。

例えば、子供のいない夫婦で、大切な妻に自分の全財産を相続させるという遺言を作成すると、後にその妻が亡くなった場合、その財産はもともとのその財産を築いた夫の親族にではなく、妻の兄弟や甥姪に渡ることになります。夫が祖先から受け継いだ財産であっても、一旦妻の所有となれば、夫側に戻ることはありません。これが民法の規定です。

 仕事柄、様々な遺産争いを見ますが、不動産を含む夫側の遺産について、妻側の相続人が争うことを何とも理不尽に感じてきました。

 ところが、信託法では、一旦妻に渡しても、妻の死後は妻の親族にではなく、自分の親族に戻すことができるのです。

 これは、妻に渡すのが所有権ではなく、受益権だからです。

 この説明が少し難しいのですが、基本的な登場人物は3名です。財産名義人=委託者。その財産から利益を受ける人=受益者。財産名義人である委託者から財産を預かって管理(運用、処分も)し、利益を受益者に渡す人=受託者。財産名義人は「委託者」という名前になり、財産を預かって管理から処分までできてしまう人は「受託者」と言います。そして信託した財産については「所有権者」というものが存在しなくなります。

 具体的にいうと、賃貸アパートの所有者である夫=委託者が、自分の信頼する自分の弟の娘(姪)=受託者に、不動産の管理を依頼する内容の契約をします。=信託契約。この時点で、「所有者」は「委託者」となります。自分が生きている間は、アパートの家賃は自分に振り込まれるように=当初受益者、自分の死後は妻に家賃が振り込まれるように=後継受益者。そして、妻の死後は、信託を終了させて、そのアパートの所有権を復活させて、受託者であった姪を所有権者とします。=帰属権利者。

 妻が亡くなっても信託を終了させないような設計も出来ます。姪を第三次受益者、姪の子を第四次受益者にする、という風に。

 しかし、あまりに長い契約期間とすると、本当にそれが実現できるのか、法律や税制が変わればどうなるのか等、不確定要素が増えていきます。

 ですので、信託の組成を誰に依頼するかが本当に大切になります。

 まずは、ご自分がどうしたいのかのびのび考えて下さい。私達よつばグループのコンサルタントが協力し合って、その希望をしっかりと叶えるために全力でサポート致します。

 親愛信託を使って、相続法に縛られることのない財産のゆくえの可能性を広げましょう。

一般社団法人よ・つ・ば民事信託協会大阪  理事 濵田誠子

健康寿命と親愛信託

先日、厚生労働省が発表した『令和3年簡易生命表の概要(R4.7.29厚生労働省)』によると平均寿命が、男性81.47歳、女性87.57歳となり平均寿命(2021)と健康寿命(2019)との差は、男性8.79年、女性12.19年となっています。一方、健康寿命は、2019年時点で男性72.68歳、女性75.38歳となり下記の図表は2016年のデータですが、この健康寿命をいかに伸ばすかが大きな課題になっております。

              (図-1厚生労働省平均寿命と健康寿命e-ヘルスネット引用)

それでは、平均寿命と健康寿命を見てみましょう。

2016年における我が国の平均寿命は男性80.98歳、女性87.14歳であり、健康寿命とはそれぞれ約9年、約12年の差があります。平均寿命とは「0歳における平均余命」のことで、一方、健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のこといい、平均寿命と健康寿命の差は日常生活に制限のある「不健康な期間」を意味し、その期間は、2016年では男性8.84年、女性12.35年となっています。

又、厚生労働省第23回生命表(完全生命表)の概要によれば、死亡最多年齢は、男性88歳、女性93歳で、死亡最多年齢とは、10万人の出生者が生命表上の年齢別死亡率に従って死亡していくとした場合の死亡数をみた場合に第23回生命表において、男性88歳、女性93歳でピークを迎えた後、死亡年齢は急激に減少しているとしています。

又、寿命中位数(出生者の半数が生存すると期待される年数)は、第23回生命表において、男性84.51歳、女性90.55歳である。(厚労省第23回生命表(完全生命表)の概要より抜粋)

下記の図は、2016年時の平均寿命と健康寿命の男女別年齢差を表した図である。(図-2(厚労省e-ヘルスネットより))

(図-2厚生労働省平均寿命と健康寿命e-ヘルスネット引用)

それでは、男女別に90歳を迎える者の割合を見てみると2021年度集計で、男性の28.1%女性でなんと52.6%が90歳を迎えることができています。(図-3)男性の4人に1、女性の2人に1人が90歳を迎えることができていますが、95歳となると男性10.1%女性27.1%と急激に下がることがわかります。

平均寿命が延伸したことにより、生命表上の特定の年齢まで生存する割合も年々上がっています。

(図-3厚生労働省令和3年簡易生命表の概要より作成)

このように、男性の3割近く、女性の過半数以上の方が90歳まで生存する状況であり、いかに健康年齢を延ばすことが重要であることがわかります。

そして、相続対策として多くの方が遺言書を書いたから安心と考えがちですが、遺言書は、あくまでご本人が死亡された後の対策でありご本人が生存されているときの効力はありません。

その点において、親愛信託をはじめとする信託を活用することによりご本人が生存している期間の介護費用やご本人の財産をご本人の健康寿命を延伸するために使用することができる親愛信託が今後益々重要になっていくものと考えます。

本人死亡後の二代、三代先と連続した信託財産の管理運用処分も可能となりますし、生前のご自身の健康寿命延伸のための身体的、精神的健康を維持する費用から死亡後に至るまで効力のある親愛信託契約を組成し、家族に限定せず、信じて託す信託制度を普及するために日々普及活動を推進致したいと考えます。

一般社団法人親愛信託東京 理事 髙橋恒夫

あとの祭り

テレビ番組等で相続にからむ問題を取り上げるようになって久しいが、いまだに問題が起こってから相談に来られる方が結構います。

事前に手を打っておけば・・・相談に来られた時は手遅れ。あとの祭り。

ほとんどの方が口をそろえて言うのが、

「こんなことになるとは思わなかった」

家族が仲がいいから、長男を信じて任せてあるから、自分なりに対策をしていたんだけど、というのが大体の理由。

家族が仲がいいというのが一番あてにならくて、親が生きている間は親が重しになってそれぞれが気を使ったり、体裁をかんがえたりで本音を言っていない場合が多いけど、親という重しがなくなったとたんにそれぞれが勝手なことを言い出すようになる。

事前に相続について家族で相談しておけば、それぞれがどのように考えているのか、少なくとも揉め事になりそうかぐらいは感じ取ることができると思う。

長男に・・・、自分で・・・、というのも同じで、事前にちゃんとした対策を考えることができていれば「こんなことになるとは思わなかった」という結果になることをかなりの確率で防ぐことができる。

そんな時に専門家を交えて相談をしてみるというのが一番有効な方法だが、具体的に何を頼んだらいいのか、どこに相談したらいいかわからないという人がほとんどでしょう。

もちろん、当事者がそこまで意識していないというのが大きな理由でもあるが、専門家がいろんな対策を知っていながらこっちから積極的に接点を持とうとしないというのも大きな理由の一つではないだろうか(自らの反省もある)。

相続・財産の承継についてとり得る対策、何もしなかった時、不十分だった時のリスク、そういいことの啓蒙をもっとしていくべきだなと思う。

せめて定期的なセミナーぐらいは開催すること、これぐらいのことしか思いつかない自分が情けないですが。

一般社団法人親愛信託名古屋 理事 相馬保宏

親愛信託 よ・つ・ば ブログ

 昨年、信託の実務に触れることが出来たのは、よ・つ・ば高知で受任した

1件の案件でした。それが、令和4年に入ってからは5件、信託の相談に関

わることができ、うち1件ではありますが、受任をして無事手続き完了まで

至りました。5件という数字が多いのか少ないのか、判断がつきませんが、

昨年よりは確実に市民の方々に信託が浸透しているように伺えます。

そんな中、お客様と面談や電話相談でお話をさせて頂いた際、自分の不甲斐

なさを実感させられます。

 「今の私たちのケースで信託をすることのメリットは何ですか」

という直球の質問に対し、納得して頂ける返答が出来ず不受任となったり、

 「不動産だけ信託するから、信託口口座は作らないで出来ないか」

という質問に対しても、うまく説明することが出来ませんでした。

せっかく信託の相談が増えているのに、専門家を名乗る自分がその状況に対

応出来ないのでは本末転倒なので、もっと知識と経験を積んでおかないと、と

つくづく思い知らされました。

  一般社団法人よ・つ・ば親愛信託こうち 理事 北浜 直樹

生命保険信託について

保険金をお届けした「その後」を考えたことがありますか?

保険金を受け取った遺族が、必ずしもそのお金を通常の生活費や学費に使われていないという現実があるのです。

では、お金は受け取っているのにどうしてそのようなことになるのでしょうか。

その理由として①急にみたことが無い大金を目にして気が大きくなった

       ②保険金を当てにする周りの人々がいる

       ③詐欺にあう 等

が挙げられます。

これらの問題を解決する手段の一つとして生命保険信託という方法があります。

生命保険信託の仕組みは、委託者(契約者)と受託者(信託会社または信託銀行)が信託契約をし、受託者が受益者(保険金受取人)に適切に保険金をお届けするというものです。

例えば

  • 受取人の財産管理能力に不安がある(お子様が幼い、障害がある、両親が高齢、浪費癖があるなど)

一括支払いではなく、月〇〇万円といった分割支払いを設定する。受取人の年齢に応じて受取額を変更する設定にしておくことも可能。

  • 相続とは違う順番でお金を渡したい(お子様がいない夫婦、夫婦同時死亡時など)

  保険金を渡す順番や交付期間を事前に設定することが可能。  生命保険信託は、組み合わせ次第で様々なケースに対応することが可能であり、大切な人に想いを確実に届けることができるのではないでしょうか。

よつば民事信託協会ひろしま 理事 加川浩司

障がいのある子の「親なき後」の備えについて

障がいのある子どもを抱える親御さんにとって、自分たち親が亡くなった後の子どもの生活についてはずっと考える続ける心配事や願いだと思います。

自分が亡くなった後、残された子どもの生活、行く末が心配。

子どもが生涯幸せに暮らしていけるよう、自分達が元気なうちに、子どもの将来の生活準備をしておきたい。

従来の制度ではこのような心配や願いを解決する有効な対策があまりありませんでしたが、「家族信託」の制度を利用することで、子を思う親の悩みや願いといった「親亡き後問題」も解決しやすくなります。

障がい等で、自分では財産の管理を十分にできない人のため、法的な仕組みの財産管理が「家族信託」です。

「家族信託」は契約で始まります。遺言のように親が亡くなった後ではなく、生前から財産管理を他人に任せられるということです

親亡き後、残された障害をもつ子どもの財産を管理してくれる兄弟、姉妹等信頼できる親族に、あらかじめ財産を託しておきます。

そして、親が亡くなった後に、その財産の管理を託された親族が子どもの生活のために財産を渡していきます。残した財産を子どもが一度に受け取るのではなく、信託契約にもとづき託された家族から定期的に受け取る形にすることで適切な財産管理が可能になります。

更に家族信託だけなく成年後見制度を併用することで、家族信託では任すことのできない身上監護についても対応が可能となります。

障がいのある子どもの「親亡き後問題」は、家族信託や成年後見制度等、必要に応じていくつかの制度を利用することで解決していきましょう。

一般社団法人親愛信託東京 代表理事 北浦千加