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企業オーナーの株式を社会に遺す① ― 公益信託と株式の新しい活用方法 ―

自社株を公益信託で社会貢献に活用するイメージ

「会社は、無事に後継者へ引き継ぐことができそうだ」

「家族の生活に必要な財産も、ある程度準備できた」

「残りの人生で、自分を育ててくれた地域や社会に恩返しがしたい」

長年にわたり会社を経営してきた企業オーナーの中には、このような想いを持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
企業オーナーが保有する自社株式は、単なる金融資産ではありません。

そこには、

  • 創業者の理念
  • 社員とその家族の生活
  • 顧客や取引先との信頼
  • 長年積み重ねてきた技術やノウハウ
  • 地域社会との関係

など、さまざまなものが込められています。

2026年4月から始まった新しい公益信託制度では、株式を公益信託の財産として活用し、その配当などを社会貢献に役立てる道が広がりました。

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株式を公益信託にする とは?

例えば、ある企業オーナーが、自ら保有する株式の一部を公益信託に託したとします。

受託者はその株式を管理し、会社から支払われる配当金を原資として、

  • 奨学金を支給する
  • 難病や医療の研究を助成する
  • 地域の子どもを支援する
  • 障がいのある方の就労を支援する
  • 文化・芸術活動を支援する
  • 地域の若手経営者や技術者を育成する

といった活動を継続します。
公益信託で株式や配当を社会貢献に活用するイメージ

内閣府が示しているモデルでも、企業オーナーの保有株式を信託財産とし、その配当を難病治療の研究者への助成に充てる仕組みが紹介されています。
この仕組みの特徴は、オーナーが亡くなった後も、株式から生じる利益を公益のために活用できる点にあります。


「財産の承継」だけでなく「思想の承継」へ

一般的な事業承継では、自社株式を誰に引き継ぐかが重要なテーマになります。


後継者である子どもに贈与するのか、相続させるのか、持株会社を設立するのか、事業承継税制を利用するのか。
いずれも重要な検討事項です。

しかし、事業承継で本当に遺したいものは、株式という財産だけでしょうか。

創業者が会社をつくった理由。

困難な時期にも、社員や取引先を守ってきた姿勢。

社会にどのような価値を提供したいと考えてきたのか。

こうした経営理念や創業者の思想も、次世代へ引き継ぐべき大切な財産です。
公益信託を活用して、会社が生み出す利益の一部を継続的に社会へ還元することは、

「この会社は、何のために存在するのか」
という創業者の答えを、形として未来に遺すことにもつながります。

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例えば、このような活用が考えられます

地域に根差して50年にわたり製造業を営んできた企業オーナーがいるとします。
事業は後継者へ承継する一方で、オーナーは、

「地域の若い人に、ものづくりの技術を学んでほしい」

「家庭の経済事情にかかわらず、工業高校や高等専門学校で学べる環境をつくりたい」と考えていたとします。

そこで、経営権の承継に支障が生じない範囲で保有株式の一部を公益信託に託し、その配当金を、地域の学生への奨学金や技術教育の助成に活用する仕組みを検討します。

会社が成長し、配当が増えれば、社会へ還元できる金額も増えていきます。

これは単なる寄附ではありません。

会社の成長と、地域の人材育成をつなぐ仕組みです。
会社で育った人材が、将来、地域の企業や産業を支えるようになれば、創業者の思想は、会社の外にも広がっていきます。

※上記は活用イメージであり、実際の認可や税務上の取扱いを示すものではありません。


次回は「非上場株式」を活用する際のポイントへ

では、中小企業オーナーが保有する非上場株式も、公益信託に活用できるのでしょうか?

次回は、非上場株式を公益信託に活用する場合に考えておきたい、経営支配権・議決権・譲渡制限・配当・税務などのポイントについて詳しく見ていきます。

 

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令和8年8月28日
一般社団法人親愛信託東京
理事 西口 英樹

※本記事は制度の一般的な説明を目的とするものです。実際の公益信託の認可、税務上の取扱い等は、個別の内容に応じて行政庁税務署および専門家にご確認ください。

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執筆者プロフィール

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西口 英樹


■ 保有資格

1級ファイナンシャル・プランニング技能士/プライマリー・プライベートバンカー/宅地建物取引士/事業承継士/相続診断士/M&Aシニアエキスパート


■ 略歴

都市銀行・信託銀行等に通算28年勤務。、10,000社を超える企業の財務分析および1,000件を超える商事信託の組成を通じて、富裕層・経営者への資産承継・資産承継支援に従事。現在は、よつば親愛信託の理事として、民事信託、相続、事業承継、財務コンサルティングを通じ、お客様とご家族の想いに寄り添いながら、複雑な課題にも最後まで伴走することを大切にしています。


■ 事務所情報

JTマネジメント株式会社
所在地:〒103-0027 東京都中央区日本橋3-2-14 新槇町ビル別館第一


■ 得意分野

民事信託を活用した相続・認知症対策/事業承継・自社株対策/経営者・ご家族の資産承継/財務改善・資金調達/M&A・企業組織再編


■ 趣味

愛犬ボーダーコリーとのフリスビー、日本酒、旅行