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ご自身やご家族が会社を経営されている場合、将来の事業承継について考える機会もあるのではないでしょうか。
その備えの一つとして、所有する株式を信託財産とする「親愛信託®(家族信託®)」という方法があります。
例えば、父親が所有する自社株式を
「子どもを受託者、父親自身を受益者」として信託するケースです。
この場合、信託契約の内容に応じて、株式の管理や議決権の行使など、
会社経営に関わる権限を受託者である子どもが担い、父親は引き続き配当などの経済的利益を受け取ることができます。
この仕組みの大きなメリットは、父親が認知症などによって判断能力を失った場合でも、信託契約に基づいて子が株式を管理できることです。
経営者の高齢化が進むなか、会社経営の停滞を防ぎ、円滑な事業承継につなげる方法として注目されています。
ただし、株式を信託したからといって、相続税の問題がなくなるわけではありません。
相続が発生すれば、原則としてその株式に係る受益権は相続税の課税対象となります。
その評価に当たっては、財産評価基本通達に基づく「取引相場のない株式」の評価方法が用いられます。
ところが、この評価方法について、会計検査院から、算定された評価額が企業の実態や経済的価値を十分に反映していない可能性があるとの問題提起がなされました。
この指摘を受け、国税庁の有識者会議では、非上場株式の評価方法について見直しが検討されてきました。
そのなかで注目されているのが、企業の収益力を考慮する「残余利益方式」です。
これは従来の評価方法とは異なる考え方を取り入れたもので、具体的な計算方法の検討案も示されています。
新たな評価方法の導入には、慎重な意見もあります。
企業の収益力を重視することで、業績が好調な企業や成長性の高い企業では株式評価額が高くなり、結果として相続税や贈与税の負担が増加する可能性があるためです。
これでは、成長企業の円滑な事業承継をかえって妨げることにもなりかねません。
こうした懸念から、商工会議所をはじめ、経済産業省や中小企業庁などからも意見が示されており、評価方法の見直しについては慎重な検討が求められています。
有識者会議も2026年9月を最後に開催されておらず、今後どのような評価方法が採用されるのか、あるいは現行制度が維持されるのか、引き続き動向を注視する必要があります。
非上場株式の評価方法が今後どのように見直されるかは、現時点では不透明です。
しかし、評価制度の見直しが行われるかどうかにかかわらず、事業承継は経営者にとって避けて通れない重要な課題です。
特に、自社株式の評価額は相続税や贈与税の負担に直結するため、株式の承継方法や時期について計画的に検討することが大切です。
親愛信託®は経営者の認知症対策として有効な選択肢の一つですが、それだけで相続税対策が完結するわけではありません。
経営権の円滑な承継と税負担への対応を両立させるためには、親愛信託®、株式の生前贈与、事業承継税制などを総合的に検討することが重要となります。
制度が変わってから慌てて対応するのではなく、今のうちから自社株式の評価額を把握し、将来の事業承継に備えておくことが大切ではないでしょうか。
これからの暮らしを安心して過ごすために、信頼できる相談先を知っておくことが第一歩です。
地域の窓口は、こちらからご確認いただけます。

令和8年11月6日
一般社団法人 京都民事信託協会
理事 前田 哲士
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