事業承継対策

社長が認知症になったら、会社はどうなるのでしょうか?
中小企業の経営者であれば、一度は考えてみるべき問題です。
特に創業者が長年経営している会社では、取引先から見ても従業員から見ても、「社長≒会社」というイメージが強いケースが多いでしょう。
ところが法律の観点から「社長」を見てみると、少し違った姿が見えてきます。
オーナー社長には、大きく分けて「二つの顔」があります。
一つは、「代表取締役として会社を経営する顔」。
もう一つは、「株主として会社の重要事項を決める顔」です。
オーナー社長は同一人が社長であり大株主でもあるので、普段はこの二つを意識する場面はあまりありません。
ところが、その社長の判断能力が低下したとき、この「二つの顔」の違いが大きな問題になります。
一つ目は、代表取締役としての顔です。
通常「社長」と聞いてイメージするのはこちらでしょう。
会社を代表して契約をしたり、業務に関する意思決定をしたりするこの「代表取締役」は、認知症になったからといって、その瞬間に当然に代表取締役でなくなるわけではありません。
しかし、症状が進んで経営に際しての適切な判断ができなくなれば、当然、会社の運営にも影響が出てきます。
そこで「それなら後継者を新しい社長にすればいい」と考えるかもしれませんが、そこで社長の「もう一つの顔」が文字通り顔を出します。
中小企業では、代表取締役である社長が、会社の株式の大部分、あるいは一人で全部を保有していることも珍しくありません。
その場合、社長は会社を経営する「代表取締役」であると同時に、会社の重要事項を決定する「大株主」でもあります。
後継者を新たに取締役に選任する場合、原則として株主総会の決議が必要ですが、その議決権の大部分を持っている社長本人の判断能力がすでに低下していたらどうなるでしょうか?

「社長が認知症になったので、後継者を取締役にして会社を任せたい」
そう考えているのに、その後継者を取締役に選ぶための株主総会で、肝心の大株主である社長が議決権を行使できないというインロック状態が起こる可能性があります。
代表取締役としての問題だけを考えていても、株主としての問題が残ってしまうのです。
この「株主としての社長」の将来に備える方法の一つが、「自社株式の信託(株式信託)」です。
株式信託では、社長の判断能力が十分なうちに、保有している自社株式を信頼できる家族などに託す仕組みを作ります。
その際、株式から得られる利益を誰が受け取るのか、議決権をどのように行使するのかなどについて、信託の目的に応じた設計を検討することができます。
例えば、将来会社を継いでもらいたい子や親族を受託者とすることが考えられますが、具体的な設計は会社や家族の状況によって異なります。
将来の事業承継を見据えて、株式の管理方法を決めておくことも可能です。
しかし、株式を信託すればすべて安心というわけでもありません。
株式信託はあくまで「株主としての社長の顔」に備える方法ですので、「代表取締役としての社長の顔」の問題は残ります。
そして何より、社長自身は会社を将来どうしたいのか。
こうした事情を一つずつ確認しながら、会社全体の将来を考える必要があります。
いつでもできるというわけではありません。
だからこそ、元気なうちから検討しておくことが大切です。
病気になってから治療方法を探すこととは少し違います。
「代表取締役としての社長の顔」と「株主としての社長の顔」。
その二つの顔の将来を元気なうちに考えておくことも、大切な事業承継の準備ではないでしょうか。
親愛信託は、そのための選択肢の一つです。

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令和8年9月18日
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