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1個のあんパンを独り占めせずに2人で分けると、あんパンの絶対量は変わりませんが、あんパンを食べることができて幸せを感じる人は2人になります。
分けると、いいことがあります。
同様に信託も、ある財産を「名義」と「権利」に分けることによって、たくさんのいいことがあります。
信託については、
がメインの登場人物ですが、当初は委託者と受益者を同一人にすることが一般的です。
要するに「託す人」と「託される人」がいて、前者あるいは前者が指定した人が実質上の所有者(権利を持つ人)で、後者が名目上の所有者(名義を持つ人)。そして後者は、前者のために財産を管理します。
で、どんないいことがあるのか?
ここまでお読みになって、「ちょっと何言っているか分からない」という方のために、ここは私の好きな「あんこ」で信託をご説明させていただきます。
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あんこ好きのX氏が同じくあんこ好きのT氏と、この度「あんこ信託契約」を締結しました。
二人は平均2時間待ちの某有名おはぎ店の行列で前後に並んでいて、待ち時間の間に意気投合したとか。
X氏は「究極のあんこスイーツを腹いっぱい食べたい」という目的で、T氏に金銭を信託します。

この金銭はあくまであんこのため。
もしT氏が、あんこ以外のお菓子がおいしいからといって信託財産で買ってしまったら、即刻、受託者の任を解かれるという条項も、本件の信託契約に入っています。
T氏はX氏のために日本全国津々浦々を巡り、究極のあんこスイーツ(以下、「あんこ」といいます。)を追求します。
あんこを調達するための交通宿泊費も、信託された金銭から支弁できるとされています。
本件もそうですが、当初の委託者と受益者は同一人(X氏)とすることが一般的です。
別の人にすると、財産が実質的にX氏から第三者に移動したことになり、「贈与」とみなされて贈与税が発生するからです。
ちなみにX氏の家族には息子のY氏がいますが、X氏は妻とは離婚しています。
聞けば、元妻さんはあんこが苦手で、ホイップクリーム派。
あんこ派のX氏とは、どうやら相容れなかったようです。
もし当時、あんことホイップがセパレートされたドーナツがあれば、夫婦の未来も少し違っていたのかもしれませんが…
本件信託契約では、X氏に万が一のことがあった場合、X氏の受益権(あんこ資金)はY氏が引き継ぐことになっています。
そうなった場合、受託者のT氏は、今度はY氏のために信託財産を管理していくのです。
受益権がX氏の死亡時に息子のY氏に引き継がれるということは、ちょっと遺言に似ていますよね。
ただ、遺言は遺言者が死亡してからでないと効力が発生しないのに対し、信託の場合は契約時にすでに効力が発生するのが大きな違いです。
遺言の場合は、遺言後~相続発生の間に遺言者が認知症などで判断能力を喪失した場合の対策も別途必要になります(典型的なのが任意後見契約)。
一方、信託の場合、受益者であるX氏が判断能力を喪失して成年後見人が選任されると、X氏の固有財産は成年後見人が管理することになりますが、信託財産については、引き続き受託者であるT氏が信託契約に従って管理します。
そのためT氏は、変わらず信託財産からX氏のためにあんこを買い続けることができます。
ただ、X氏とT氏との間で
「あんこはまだか!?」
「ついさっき食べたところじゃないですか。今日はすでにおはぎを5個食べてますよ」なんて応酬が発生するかも知れませんが…
そしてもう一つ、信託には遺言との大きな違いがあります。
Y氏には妻と子のZちゃん(未成年)がいます。
X氏がもし遺言でY氏にあんこ購入資金を含めた現金を相続させることをしていたとします。
これはこれで良いのですが、遺言で財産の承継先を決められるのは一代限りです。
例えば「(あんこ資金用の)〇〇銀行の△△支店の預貯金をYに相続させ、Yの死亡後はZに相続させる」という遺言はできません。
Y氏が相続したX氏の財産は、相続によってX氏の財産ではなくなり、Y氏自身の財産になるからです。
もし、Y氏に相続が発生した場合は、妻と子Zちゃんが相続することになります。
Y氏の妻はカスタードクリーム派。あんこは苦手なため、X氏は義理の娘であるY氏の妻のことをあまり良く思っていません。
彼女も、自分の価値観を押し付けようとする義父に対して少なからず苦手意識を持っています。
そんなわけで、X氏は自分の財産が義理の娘に行ってほしくないのです。

そこで、本件信託契約においては、X氏の次の受益者をY氏、そのまた次の受益者を孫のZちゃんに指定しています。
遺言ではできなかった数世代にわたる財産承継が、信託では可能となるのですね。
X氏は目に入れても痛くないほどかわいい孫を一流のあんこニストに洗脳、もとい育て上げるべく、全国各地のあんこスイーツをせっせと与えています。そのためにT氏はX氏のために日々全国津々浦々を巡り、究極のあんこスイーツを求めて奔走しているのです。
もっとも、Y氏自身もあんこ好きではありますが、妻の価値観を十二分に尊重しているので夫婦仲はすこぶる円満です。
父の姿から学ぶところもあったのでしょう。
あんこは譲れなくても、夫婦は譲り合いが大事ということでしょうか。知らんけど。
「これでいいのかな」と感じたその時が、考え始めるタイミングです。
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令和8年9月4日
一般社団法人 よ・つ・ば民事信託協会大阪
代表理事 田村 充弘
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将棋、スポーツ観戦、あん活(あんこスイーツ活動)