2007年(平成19年)に施行となった信託法の全面改正から12年以上を経過しましたが、未だに基本的な解釈の部分から諸説あり、定まっていない部分が少なくないと思います。
そこで、改めて信託法の条文ごとに、諸説が存在することを前提としながらも、よつばグループが提唱する「親愛信託」の基本的解釈である「性状変換説」の立場でもって分析してみようと思います。
なお、親愛信託の解釈のための分析ですから、明らかに商事信託のみを前提として作られている条文については簡単な説明にとどめ、実際に親愛信託に関係するであろう条文に説明の中心を置きたいと思っております。
まずは第1条と第2条です。
信託の要件、効力等については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。
この条文は、信託法と他の法律との関係を示しているが、民法など他の一般法において「信託」を規定した条文は存在しない(借地借家法や労働基準法等は、民法に存在する同様の規定を排除して優先適用させるためにある)ため、信託法は信託に関する独立した一般法であると解釈できる。
「他の法令に定めるもののほか」という文言は、この法律が一般法であり、この法律に対しての特別法が存在するときには特別法の規定が優先するという意味であると考えられる。
参考
会社法
第1条(趣旨) 会社の設立、組織、運営及び管理については、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。
保険法
第1条(趣旨) 保険に係る契約の成立、効力、履行及び終了については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。
信託法は、同時期に作られた会社法や保険法と非常に類似しており、このことが民法における相続の規定が信託法においては適用されないとする一つの根拠となり得るものと考えられる。
この法律において「信託」とは、次条各号に掲げる方法のいずれかにより、特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。同条において同じ。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう。
この条文が信託という行為の定義である。曖昧な部分が多く、解釈が分かれているが、旧法時代の「要物契約」ではなく、諾成契約的なものであると認められたのは間違いない。
旧法では「本法ニ於テ信託ト称スルハ財産権ノ移転其ノ他ノ処分ヲ為シ他人ヲシテ一定ノ目的ニ従ヒ財産ノ管理又ハ処分ヲ為サシムルヲ謂フ」となっており、委託者から受託者への財産の移転が成立要件となっていたため、これが今の根強く残る「物権変動説」の根拠となっているが、新法においては要件が変更になったため、「性状変換説」の説得力が増大したものと言える。
2 この法律において「信託行為」とは、次の各号に掲げる信託の区分に応じ、当該各号に定めるものをいう。
この条文は、信託を成立させるための「契約」「遺言」「信託宣言」を一つにまとめて「信託行為」と呼んでおり、明らかに民法上の契約及び単独行為の考え方とは異なる概念を作り出している。
3 この法律において「信託財産」とは、受託者に属する財産であって、信託により管理又は処分をすべき一切の財産をいう。
「受託者に属する財産」という文言から、物権変動説を採る者は受託者が財産の所有者であると主張するが、「属する」という文言は必ずしも「所有する」という概念とは一致せず、性状変換説においては「管理に属する」という意味で考える。
4 この法律において「委託者」とは、次条各号に掲げる方法により信託をする者をいう。
「信託をする者」という記載から、最初に信託行為を行う(民法上の財産を信託財産に変換する)ことができるのは委託者のみであると考えられる。
その意味から、委託者とは「元の所有者」を指す言葉であると解釈できる。
そのことから、追加信託という行為は委託者にのみ許される法律行為であると言える。
5 この法律において「受託者」とは、信託行為の定めに従い、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をすべき義務を負う者をいう。
受託者とは、あくまでも信託行為に定められた範囲において必要な行為のみしか行うことができず、かつ信託の目的達成に必要な範囲での義務のみしか負わないと考えられ、これが民法上の代理や後見との明らかな相違点である。
6 この法律において「受益者」とは、受益権を有する者をいう。
次項で受益権について定義されているが、「受益者」は民法上の「債権者」と同一の概念ではない。
7 この法律において「受益権」とは、信託行為に基づいて受託者が受益者に対し負う債務であって信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(以下「受益債権」という。)及びこれを確保するためにこの法律の規定に基づいて受託者その他の者に対し一定の行為を求めることができる権利をいう。
受益権が民法上の「債権」とは異なり、信託法独自の概念であることを示している。
なお、ここで言う受益債権に対する債務者は、実際には「信託財産」であって、受託者個人ではないが、日本の法律上では「財産」自体を債務者とするルールが存在しないので、信託財産を管理する受託者を「名義上の債務者」としていると考えられる。
8 この法律において「固有財産」とは、受託者に属する財産であって、信託財産に属する財産でない一切の財産をいう。
受託者の固有財産は信託とは関係なく存在する「別の財産」であることを示しており、逆に「信託財産に属する財産」は受託者の財産ではないと解釈できる。
9 この法律において「信託財産責任負担債務」とは、受託者が信託財産に属する財産をもって履行する責任を負う債務をいう。
第7項で解説した通り、信託における債務者は実際には「信託財産」であるが、第12項には限定責任信託の規定があり、立法者にも迷いや揺れがあったものと想像される。
10 この法律において「信託の併合」とは、受託者を同一とする二以上の信託の信託財産の全部を一の新たな信託の信託財産とすることをいう。
信託の併合の概念は、信託財産を一つの「法人」であるかのように見ているものであり、法人の合併と同様に複数の信託を併合できると考えている。
11 この法律において「吸収信託分割」とは、ある信託の信託財産の一部を受託者を同一とする他の信託の信託財産として移転することをいい、「新規信託分割」とは、ある信託の信託財産の一部を受託者を同一とする新たな信託の信託財産として移転することをいい、「信託の分割」とは、吸収信託分割又は新規信託分割をいう。
前項で規定されている信託併合の逆パターンであり、やはり信託財産を一つの法人として考えていることが明確に分かる条項である。
12 この法律において「限定責任信託」とは、受託者が当該信託のすべての信託財産責任負担債務について信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う信託をいう。
第9項で示した通り、これが本来の「信託財産責任負担債務」の在り方であるが、日本の法律上も金融制度上も、財産のみを債務者とする制度が存在しないので、ここでも迷いや揺れが生じているようである。
現在の信託法は、昔からの商事信託(金融行為)を前提とした条文と、親愛信託などの個人間での新たな信託のための条文が入り混じっており、両者の根本的な発想が異なるため、非常に分かり辛い構成となっています。
今回からは、親愛信託を前提とする場合の各条文の重要度を下記のように5段階で判断して、条文を区分けしたいと思います。
もちろん、重要度の高い条文であっても親愛信託の実体に合わせるための改訂は必要ですし、重要度の低い条文であっても稀には親愛信託に使われる条文もあるので、注意が必要ですが、重要度ゼロの条文(商事信託以外では全く必要ない条文など)については割愛しても構わないと考えます。
信託法重要度と改正点チェック
信託は、次に掲げる方法のいずれかによってする。
一 特定の者との間で、当該特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の契約(以下「信託契約」という。)を締結する方法
これが一般的な契約で行う信託の方法である。
性状変換説においては、本項の前半で言う「譲渡」や「処分」は、民法上の概念とは異なり、所有権の移転ではなく、管理処分権限等を受託者に託する行為を指し、これも民法上の「契約」の概念とは全く異なるものである。
また本項の後半で言う「処分」は、信託の一部を終了させることや、信託受益権を他者に渡すことではなく、例えば不動産である信託財産を売却して金銭である信託財産に交換するような「両替」的な行為を指しており、用語の使い方に混乱が生じている。
二 特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法
これが遺言信託と呼ばれる信託の方法である。
参考までに、信託銀行等が「遺言信託」という商標で販売しているものは信託ではなく、単なる遺言書預かり業務であり、混乱を生じさせるものである。
「遺言」という文言ではあるが、ここで言う遺言とは、民法上の概念ではなく、あくまでも遺言という形式を借りた信託行為開始のための様式を示しているものであると考えられる。
三 特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)で当該目的、当該財産の特定に必要な事項その他の法務省令で定める事項を記載し又は記録したものによってする方法
これが新信託法で初めて認められた「自己信託」の方法である。
自己信託は「財産権の移転」を伴わないので、信託法改正前には認められておらず、現在でも自己信託を認めないと公言する学者も存在するようであるが、これが最も民法の概念とは異なる信託の特徴を表し、性状変換説の正当性を証明している仕組みと言える。
また、公正証書を使用しない場合でも、受益者が複数存在しているケースでは、委託者とは異なる受益者に通知を発送することによって自己信託が成立すると規定している。
前条第一号に掲げる方法によってされる信託は、委託者となるべき者と受託者となるべき者との間の信託契約の締結によってその効力を生ずる。
旧信託法では「財産の移転」が信託の成立要件であり、信託契約は「要物契約」とされていたが、現行法ではその文言がなくなり、信託は委託者と受託者との合意のみで成立する「諾成契約」となったため、契約成立日が効力発生日となる。
意思表示のみで成立するので、解釈的には契約書自体も不要ということになる。
そして、契約当事者の中に、実際の権利保有者となる受益者が入っていないということも、民法上の契約とは一線を画している部分である。
2 前条第二号に掲げる方法によってされる信託は、当該遺言の効力の発生によってその効力を生ずる。
遺言信託の場合には遺言の効力発生、すなわち委託者の死亡まで効力が発生しないので、信託財産も委託者死亡時点での所有財産に限定されることになり、例えば遺言信託の後も生前の財産処分は自由であり、かつ後から行われた遺言との優先劣後関係も不明となるので、法的には不安定な部分があり、実務的にはあまり勧められない。
ただ、既に存在する信託に、遺言でもって財産を追加する「遺言追加信託(注ぎ込み型信託ともいう)」は有効な手段として活用できる。
3 前条第三号に掲げる方法によってされる信託は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるものによってその効力を生ずる。
一 公正証書又は公証人の認証を受けた書面若しくは電磁的記録(以下この号及び次号において「公正証書等」と総称する。)によってされる場合 当該公正証書等の作成
自己信託の効力発生日は公正証書の作成日となるところが、私文書または口頭での意思の合致による契約の日が効力発生日となる信託契約との相違である。
二 公正証書等以外の書面又は電磁的記録によってされる場合 受益者となるべき者として指定された第三者(当該第三者が二人以上ある場合にあっては、その一人)に対する確定日付のある証書による当該信託がされた旨及びその内容の通知
委託者とは異なる受益者への通知で自己信託を成立させる場合の効力発生日は、この条項だけでは明確ではないが、一般的な解釈としては「確定日付の日」ではなく「通知の到達日」であると考えられる。
4 前三項の規定にかかわらず、信託は、信託行為に停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件の成就又は当該始期の到来によってその効力を生ずる。
例えば「〇〇の事態が発生した時から信託契約の効力が発生する」という規定は有効であるが、例えば「委託者が認知症になったら」というような不確定かつ不明確な条件設定をしてはならない。
第三条第二号に掲げる方法によって信託がされた場合において、当該遺言に受託者となるべき者を指定する定めがあるときは、利害関係人は、受託者となるべき者として指定された者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に信託の引受けをするかどうかを確答すべき旨を催告することができる。ただし、当該定めに停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件が成就し、又は当該始期が到来した後に限る。
遺言信託の場合は、遺言の効力発生段階では、指定された受託者が信託を引き受けるか否かが不明の場合が有り得るので、その際の措置について示しており、ここでいう利害関係人とは、委託者の相続人、遺言執行者、遺言で指定されている受益者などとなる。
しかし、遺言信託は不安定性があるので、あまり親愛信託では用いるべきではなく、本項が問題となることは少ないと考えられる。
2 前項の規定による催告があった場合において、受託者となるべき者として指定された者は、同項の期間内に委託者の相続人に対し確答をしないときは、信託の引受けをしなかったものとみなす。
「相続人」という文言が出てくる、信託法では数少ない条項の一つであるが、受託者が信託の引き受けをすれば、信託財産であって相続財産ではなくなるという意味に取れる。
3 委託者の相続人が現に存しない場合における前項の規定の適用については、同項中「委託者の相続人」とあるのは、「受益者(二人以上の受益者が現に存する場合にあってはその一人、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人)」とする。
親愛信託においては特に考慮する必要のない条文であろう。
第三条第二号に掲げる方法によって信託がされた場合において、当該遺言に受託者の指定に関する定めがないとき、又は受託者となるべき者として指定された者が信託の引受けをせず、若しくはこれをすることができないときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、受託者を選任することができる。
これも親愛信託では有り得ないケースであるが、遺言信託で受託者を決めていない、あるいは指定された受託者が引き受けない場合であっても、裁判所が受託者を選任できるとしており、委託者が相続財産ではなく信託財産としたいという意思を尊重している。
2 前項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。
親愛信託においては特に考慮する必要のない条文であろう。
3 第一項の規定による受託者の選任の裁判に対しては、受益者又は既に存する受託者に限り、即時抗告をすることができる。
重要な利害関係人にのみ即時抗告の権限を認めており、委託者の相続人には認めていないということは、やはり委託者の信託組成意思を優先しているものと思われる。
4 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有する。
親愛信託においては特に考慮する必要のない条文であろう。
信託は、未成年者を受託者としてすることができない。
改正前の条文には「成年被後見人若しくは被保佐人」が入っていたが、株式会社の取締役の欠格要件の緩和や成年後見制度の利用促進の流れを受けて、現行法では受託者になれない者は未成年者のみとなった。
なお、法人ではない任意団体やLLP(有限責任事業組合)が受託者になれるか否かについては、本条のみでは明らかではない。
受託者は、受益者として信託の利益を享受する場合を除き、何人の名義をもってするかを問わず、信託の利益を享受することができない。
信託財産は受託者の財産ではないので、当然の規定であるが、この条文がありながら、債務に関しては受託者個人の財産も引き当てとされるので、信託報酬の受領が前提とはなっていない親愛信託においては、一方的に受託者が不利な立場に、逆に債権者が有利な立場に立つことになり、論理矛盾をきたしているように思える。
法令によりある財産権を享有することができない者は、その権利を有するのと同一の利益を受益者として享受することができない。
例えば他の法律で財産の所有を禁止されている者(一定種類の財産に関しての外国人など)に、別人名義を利用できる信託によって実質的に財産権を保有させる目的で組成された信託などが脱法信託となるとしているが、単に「禁止されている者」が受益者としての地位を得るだけで脱法信託となったり、信託全体が無効になるとは読み取れない。
脱税目的で、本当は所有権移転なのに「信託」として登記する事例があるが、これは脱法信託と言うよりも単に虚偽の登記ということになるであろう。
信託は、訴訟行為をさせることを主たる目的としてすることができない。
例えば、訴訟を抱えた財産を敢えて信託財産とすることによって受託者を訴訟当事者とするような行為を禁止しているが、「主たる目的」としてはならないとあるだけなので、結果的に受託者が訴訟当事者になることは当然に認められる。
本条は、信託法というよりも、弁護士法の脱法を規制する目的が大きいのではと思われる。
委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、受託者が債権者を害することを知っていたか否かにかかわらず、債権者は、受託者を被告として、民法(明治29年法律第89号)第424条第3項に規定する詐害行為取消請求をすることができる。ただし、受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が、受益者としての指定(信託行為の定めにより又は第89条第1項に規定する受益者指定権等の行使により受益者又は変更後の受益者として指定されることをいう。以下同じ。)を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において債権者を害することを知っていたときに限る。
信託の倒産隔離機能を悪用しようとする事例も有り得るので、民法における詐害行為取消権と同様の債権者の権利を別途に条文で認めており、この点でも信託において当然に民法の規定が準用されるものではないことが示されている。
なお、民法改正に伴い、条文の表現の一部が改正されている。
ここでは善意の受益権取得者を保護している。
2 前項の規定による詐害行為取消請求を認容する判決が確定した場合において、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者(委託者であるものを除く。)が当該債権を取得した時において債権者を害することを知らなかったときは、委託者は、当該債権を有する債権者に対し、当該信託財産責任負担債務について弁済の責任を負う。ただし、同項の規定による詐害行為取消請求により受託者から委託者に移転する財産の価額を限度とする。
本項では、取り消し時において善意の信託財産責任負担債務の債権者を保護するため、委託者に責任を負わせている。
3 前項の規定の適用については、第49条第1項(第53条第2項及び第54条第4項において準用する場合を含む。)の規定により受託者が有する権利は、金銭債権とみなす。
49条1項は受託者による信託財産からの費用償還の規定であり、取り消された信託に関しての信託報酬などを指すものと思われる。
4 委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合において、受益者が受託者から信託財産に属する財産の給付を受けたときは、債権者は、受益者を被告として、民法第424条第3項に規定する詐害行為取消請求をすることができる。ただし、当該受益者(当該受益者が受益権を譲り受けた者である場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)が、受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において債権者を害することを知っていたときに限る。
1項同様、善意の受益者を保護している。
5 委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、債権者は、受益者を被告として、その受益権を委託者に譲り渡すことを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
1項の取消権以外にも債権者が受益権の譲渡を求める方法があると規定している。
6 民法第426条の規定は、前項の規定による請求権について準用する。
民法426条には「詐害行為取消請求に係る訴えは、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から二年を経過したときは、提起することができない。行為の時から十年を経過したときも、同様とする。」とある。
7 受益者の指定又は受益権の譲渡に当たっては、第1項本文、第4項本文又は第5項前段の規定の適用を不当に免れる目的で、債権者を害することを知らない者(以下この項において「善意者」という。)を無償(無償と同視すべき有償を含む。以下この項において同じ。)で受益者として指定し、又は善意者に対し無償で受益権を譲り渡してはならない。
本条の潜脱目的をもって受益権を無償譲渡することを禁じている。
8 前項の規定に違反する受益者の指定又は受益権の譲渡により受益者となった者については、第1項ただし書及び第4項ただし書(第5項後段において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。
前項に続き、本条の潜脱を封じている。
破産者が委託者としてした信託における破産法(平成16年法律第75号)第160条第1項の規定の適用については、同項各号中「これによって利益を受けた者が、その行為の当時」とあるのは「受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が信託法第11条第1項に規定する受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において」と、「知らなかったときは、この限りでない」とあるのは「知っていたときに限る」とする。
破産法160条は、破産債権者を害する行為を否認できることを定めており、受益者を否認の対象としている。
ここも民法改正に合わせて条文が改正されている。
2 破産者が破産債権者を害することを知って委託者として信託をした場合には、破産管財人は、受益者を被告として、その受益権を破産財団に返還することを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前条第4項ただし書の規定を準用する。
受益者の善意悪意によって扱いを分けている。
3 再生債務者が委託者としてした信託における民事再生法(平成11年法律第225号)第127条第1項の規定の適用については、同項各号中「これによって利益を受けた者が、その行為の当時」とあるのは「受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が信託法(平成18年法律第108号)第11条第1項に規定する受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において」と、「知らなかったときは、この限りでない」とあるのは「知っていたときに限る」とする。
民事再生についても前項までと同じ取り扱いを定めている。
4 再生債務者が再生債権者を害することを知って委託者として信託をした場合には、否認権限を有する監督委員又は管財人は、受益者を被告として、その受益権を再生債務者財産(民事再生法第12条第1項第1号に規定する再生債務者財産をいう。第25条第4項において同じ。)に返還することを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前条第4項ただし書の規定を準用する。
前項に同じ
5 前二項の規定は、更生会社(会社更生法(平成14年法律第154号)第2条第7項に規定する更生会社又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律(平成8年法律第95号)第169条第7項に規定する更生会社をいう。)又は更生協同組織金融機関(同法第4条第7項に規定する更生協同組織金融機関をいう。)について準用する。この場合において、第3項中「民事再生法(平成11年法律第225号)第127条第1項」とあるのは「会社更生法(平成14年法律第154号)第86条第1項並びに金融機関等の更生手続の特例等に関する法律(平成8年法律第95号)第57条第1項及び第223条第1項」と、「同項各号」とあるのは「これらの規定」と、前項中「再生債権者」とあるのは「更生債権者又は更生担保権者」と、「否認権限を有する監督委員又は管財人」とあるのは「管財人」と、「再生債務者財産(民事再生法第12条第1項第1号に規定する再生債務者財産をいう。第25条第4項において同じ。)」とあるのは「更生会社財産(会社更生法第2条第14項に規定する更生会社財産又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第169条第14項に規定する更生会社財産をいう。)又は更生協同組織金融機関財産(同法第4条第14項に規定する更生協同組織金融機関財産をいう。)」と読み替えるものとする。
会社更生等についても前項までと同じ取り扱いを定めている。
信託の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。
非常に抽象的な条文となっているが、「一般に公正妥当」「会計の慣行」という文意から、商事信託と親愛信託とでは会計に関する取扱いが異なることが前提であると読め、また親愛信託においては29条に基づく受託者の注意義務の軽減を規定しているケースが多いことから、会計についても義務の軽減が可能であると解釈できる。
登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産については、信託の登記又は登録をしなければ、当該財産が信託財産に属することを第三者に対抗することができない。
不動産、特許などは信託に関する登記・登録制度を持っているので、対抗要件を取得することが望ましい。
信託登記を留保するケースも見られるが、特に不動産登記は、登記義務者が行為能力を喪失すると、意思確認が厳格化された昨今、申請ができなくなるので注意が必要である。
受託者は、信託財産に属する財産の占有について、委託者の占有の瑕疵を承継する。
民法の一般条項を準用するとの規定で、例えば時効取得年数の善意と悪意の相違などに影響するが、さほどの問題ではない。
信託行為において信託財産に属すべきものと定められた財産のほか、次に掲げる財産は、信託財産に属する。
一 信託財産に属する財産の管理、処分、滅失、損傷その他の事由により受託者が得た財産
「受託者が得た財産」という表現が微妙であるが、不動産を売却して得た金銭が当然に信託財産となることの根拠とも言える。
二 次条、第18条、第19条(第84条の規定により読み替えて適用する場合を含む。以下この号において同じ。)、第226条第3項、第228条第3項及び第254条第2項の規定により信託財産に属することとなった財産(第18条第1項(同条第3項において準用する場合を含む。)の規定により信託財産に属するものとみなされた共有持分及び第19条の規定による分割によって信託財産に属することとされた財産を含む。)
1項と同様である。
信託財産に属する財産と固有財産若しくは他の信託の信託財産に属する財産との付合若しくは混和又はこれらの財産を材料とする加工があった場合には、各信託の信託財産及び固有財産に属する財産は各別の所有者に属するものとみなして、民法第242条から第248条までの規定を適用する。
財産の付合に関して民法の一般条項を準用するとの規定である。
信託の特性から、受託者名義の財産の中に固有財産と信託財産が混在することになり、それらが付合・混和・加工の対象となった際のルールを定めている。
実際に発生するケースとしては、委託者が認知症等になって行為能力を喪失した後に、建物である信託財産を修繕するために資金が必要となり、受託者が個人として借入(いわゆる受託者借入ではない、適法な本来の借入行為)を行って建物の資産価値を増加させた際などが考えられる。
信託財産に属する財産と固有財産に属する財産とを識別することができなくなった場合(前条に規定する場合を除く。)には、各財産の共有持分が信託財産と固有財産とに属するものとみなす。この場合において、その共有持分の割合は、その識別することができなくなった当時における各財産の価格の割合に応ずる。
2 前項の共有持分は、相等しいものと推定する。
3 前二項の規定は、ある信託の受託者が他の信託の受託者を兼ねる場合において、各信託の信託財産に属する財産を識別することができなくなったとき(前条に規定する場合を除く。)について準用する。この場合において、第1項中「信託財産と固有財産と」とあるのは、「各信託の信託財産」と読み替えるものとする。
前条と同様である。
受託者に属する特定の財産について、その共有持分が信託財産と固有財産とに属する場合には、次に掲げる方法により、当該財産の分割をすることができる。
一 信託行為において定めた方法
二 受託者と受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)との協議による方法
三 分割をすることが信託の目的の達成のために合理的に必要と認められる場合であって、受益者の利益を害しないことが明らかであるとき、又は当該分割の信託財産に与える影響、当該分割の目的及び態様、受託者の受益者との実質的な利害関係の状況その他の事情に照らして正当な理由があるときは、受託者が決する方法
例えば一個の不動産の共有持分の一部が信託財産、一部が受託者の固有財産となっている際に、民法における共有物分割に準じるルールが適用できると定めている。
実務上で共有物分割が発生する可能性があるとすれば、信託法第17・18条に基づく付合・混和・加工により、実質的な共有状態となったものを解消したいケースであろう。
なお、信託法で「固有財産」と表現されているのは「受託者の固有財産」なので、注意が必要である。
2 前項に規定する場合において、同項第2号の協議が調わないときその他同項各号に掲げる方法による分割をすることができないときは、受託者又は受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)は、裁判所に対し、同項の共有物の分割を請求することができる。
3 受託者に属する特定の財産について、その共有持分が信託財産と他の信託の信託財産とに属する場合には、次に掲げる方法により、当該財産の分割をすることができる。
一 各信託の信託行為において定めた方法
二 各信託の受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)の協議による方法
三 各信託について、分割をすることが信託の目的の達成のために合理的に必要と認められる場合であって、受益者の利益を害しないことが明らかであるとき、又は当該分割の信託財産に与える影響、当該分割の目的及び態様、受託者の受益者との実質的な利害関係の状況その他の事情に照らして正当な理由があるときは、各信託の受託者が決する方法
4 前項に規定する場合において、同項第2号の協議が調わないときその他同項各号に掲げる方法による分割をすることができないときは、各信託の受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)は、裁判所に対し、同項の共有物の分割を請求することができる。
2項以下は一般条項について定めており、特に重要ではない。
同一物について所有権及び他の物権が信託財産と固有財産又は他の信託の信託財産とにそれぞれ帰属した場合には、民法第179条第1項本文の規定にかかわらず、当該他の物権は、消滅しない。
信託財産の独立性を示している条文で、例えば所有権名義人と地上権名義人が一致した場合、民法では混同で地上権が消滅するが、信託においては混同が生じないとしており、当然の条項である。
2 所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が信託財産と固有財産又は他の信託の信託財産とにそれぞれ帰属した場合には、民法第179条第2項前段の規定にかかわらず、当該他の権利は、消滅しない。
所有権以外の物権相互に関しても1項と同様の規定を置いている。
3 次に掲げる場合には、民法第520条本文の規定にかかわらず、当該債権は、消滅しない。
一 信託財産に属する債権に係る債務が受託者に帰属した場合(信託財産責任負担債務となった場合を除く。)
二 信託財産責任負担債務に係る債権が受託者に帰属した場合(当該債権が信託財産に属することとなった場合を除く。)
三 固有財産又は他の信託の信託財産に属する債権に係る債務が受託者に帰属した場合(信託財産責任負担債務となった場合に限る。)
四 受託者の債務(信託財産責任負担債務を除く。)に係る債権が受託者に帰属した場合(当該債権が信託財産に属することとなった場合に限る。)
債権に関しても1項と同様の規定を置いている。
次に掲げる権利に係る債務は、信託財産責任負担債務となる。
誤って解釈されている部分も多く、極めて重要な条文である。
そもそも日本の信託法では「債務」は信託の対象とならないことが大原則であり、信託財産責任負担債務とは、その例外をなすものである。
また信託財産責任負担債務の債務者とは、本来は「信託財産」自体であり、すなわち物的有限責任となるべき債務なのであるが、日本の債権法及び金融実務では債務者は必ず「人」であり、財産そのものを債務者とするという発想が存在しないため、結局は名義人である受託者が個人として無限責任を負うという構成となってしまう。
しかし、受託者は信託法第8条でもって信託の利益を享受できないと規定されており、かつ商事信託のように受託者報酬の受領が前提とはされていない親愛信託のスキームにおいて、受託者が無限責任でもって債務を引き受けさせられるのは、いかにも理不尽な話である。
その意味から、本来の信託財産責任負担債務は本条第2項に定める「信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う」とする「限定責任信託」に限るべきである。
しかし、現実には受託者に無限責任を負わせる理不尽な融資が実行されており、本条の抜本的な改正が求められる。
一 受益債権
受益債権は民法上の債権とは異なり、性状変換説においては受託者に託してある受益者本人のものである信託財産を受益者本人が受け取る(受け取った財産は信託から離脱する)という構造になるので、債権という名が付いていても民法上での「請求権」とは全く異なる信託独自の概念となる。
二 信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利
例えば元々あった不動産の瑕疵に対する賠償請求債務などを指すものと思われ、立法者の一部が著書で述べているような「住宅ローン」などは該当しない。
何故なら日本の住宅ローンはアメリカのような「ノン・リコース・ローン(実質的に人ではなくモノが債務者であるローン)」ではなく、不動産とは直接の関係なく債務者個人に貸し出される「リコース・ローン」という仕組みになっており、不動産に関しては抵当権の設定でもって保全しているだけであるからである。
また、よく例として挙げられている「賃貸不動産にかかる敷金」であるが、これは信託契約とは無関係の賃貸借契約から発生するものであるが、賃貸借契約は必ずしも不動産そのものだけを対象としている訳ではなく、かつ信託不動産とは別の金銭で弁済すべき債務であるため、必ずしも本号に定める債務であるとは考えられない。
固定資産税債務も同様で、これも信託契約とは無関係に「所有者個人」に対して発生するものであるから、やはり本号にかかる債務とは言い切れない。
その意味では、本号に該当する債務が実際に何であるかは、実はまだ明らかではないということになる。
三 信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの
ここで言う債務は、信託行為でもって信託財産責任負担債務に指定した債務であると想定されるので、その債務の種類には制限はないが、現行のように受託者個人を債務者として無限責任を負わす仕組みであれば、限定責任債務でない限り、債権者にとっては、どのみち債務者である受託者個人相手の債務となるので、あまり意味をなさない。
四 第103条第1項又は第2項の規定による受益権取得請求権
受益権取得請求権は信託から離脱する受益者に対して信託財産から対価を支払う制度であるから、純粋な信託内での債権債務であり、信託財産責任負担債務と言えよう。
五 信託財産のためにした行為であって受託者の権限に属するものによって生じた権利
ここで言う「信託財産のためにした行為」とは、例えば信託不動産を保全管理あるいは修繕等をするために行った借入などを指しており、受託者が新規に信託財産を追加するために金銭を借り入れる行為、いわゆる「受託者借入」が含まれるという解釈は成り立ち得ない。
六 信託財産のためにした行為であって受託者の権限に属しないもののうち、次に掲げるものによって生じた権利
イ 第27条第1項又は第2項(これらの規定を第75条第4項において準用する場合を含む。ロにおいて同じ。)の規定により取り消すことができない行為(当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が信託財産のためにされたものであることを知らなかったもの(信託財産に属する財産について権利を設定し又は移転する行為を除く。)を除く。)
ロ 第27条第1項又は第2項の規定により取り消すことができる行為であって取り消されていないもの
受託者が権限外で行った行為であっても、債権者保護のために信託財産にも責任が負わされるとする規定である。
七 第31条第6項に規定する処分その他の行為又は同条第7項に規定する行為のうち、これらの規定により取り消すことができない行為又はこれらの規定により取り消すことができる行為であって取り消されていないものによって生じた権利
前号と同じ。
八 受託者が信託事務を処理するについてした不法行為によって生じた権利
受託者が行った不法行為による債務も信託財産にも責任がかかるとしている。
九 第5号から前号までに掲げるもののほか、信託事務の処理について生じた権利
受託者の権限に属するか属さないかに関わらず、信託事務の処理について生じた債務については信託財産にも責任を負わせることとしている。
2 信託財産責任負担債務のうち次に掲げる権利に係る債務について、受託者は、信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う。
この第2項が限定責任信託の規定であり、本来の信託財産責任負担債務である。
一 受益債権
受益債権の性格については諸説あるが、少なくとも受託者個人が無限責任を負う性質の債務ではないことが明らかになっている。
二 信託行為に第216条第1項の定めがあり、かつ、第232条の定めるところにより登記がされた場合における信託債権(信託財産責任負担債務に係る債権であって、受益債権でないものをいう。以下同じ。)
限定責任信託であると登記された債務を指しており、これこそが本来の信託財産責任負担債務であると言える。
三 前二号に掲げる場合のほか、この法律の規定により信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負うものとされる場合における信託債権
四 信託債権を有する者(以下「信託債権者」という。)との間で信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う旨の合意がある場合における信託債権
本号により、債権者との合意で限定責任債務を作ることは可能であるが、実際には日本の債権法、金融制度、そして税制との関係で合意による設定は困難であると思われる。
受託者が固有財産又は他の信託の信託財産(第1号において「固有財産等」という。)に属する財産のみをもって履行する責任を負う債務(第1号及び第2号において「固有財産等責任負担債務」という。)に係る債権を有する者は、当該債権をもって信託財産に属する債権に係る債務と相殺をすることができない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一 当該固有財産等責任負担債務に係る債権を有する者が、当該債権を取得した時又は当該信託財産に属する債権に係る債務を負担した時のいずれか遅い時において、当該信託財産に属する債権が固有財産等に属するものでないことを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がなかった場合
二 当該固有財産等責任負担債務に係る債権を有する者が、当該債権を取得した時又は当該信託財産に属する債権に係る債務を負担した時のいずれか遅い時において、当該固有財産等責任負担債務が信託財産責任負担債務でないことを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がなかった場合
2 前項本文の規定は、第31条第2項各号に掲げる場合において、受託者が前項の相殺を承認したときは、適用しない。
3 信託財産責任負担債務(信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負うものに限る。)に係る債権を有する者は、当該債権をもって固有財産に属する債権に係る債務と相殺をすることができない。ただし、当該信託財産責任負担債務に係る債権を有する者が、当該債権を取得した時又は当該固有財産に属する債権に係る債務を負担した時のいずれか遅い時において、当該固有財産に属する債権が信託財産に属するものでないことを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がなかった場合は、この限りでない。
4 前項本文の規定は、受託者が同項の相殺を承認したときは、適用しない。
信託財産と受託者の固有財産との峻別から、相殺についての民法の一般原則と異なる規定を置いているが、常識的な内容である。
信託財産責任負担債務に係る債権(信託財産に属する財産について生じた権利を含む。次項において同じ。)に基づく場合を除き、信託財産に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売(担保権の実行としてのものを除く。以下同じ。)又は国税滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)をすることができない。
信託財産の独立性を示している条文であるが、性状変換説から見ると至極当然の規定である。
2 第3条第3号に掲げる方法によって信託がされた場合において、委託者がその債権者を害することを知って当該信託をしたときは、前項の規定にかかわらず、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者のほか、当該委託者(受託者であるものに限る。)に対する債権で信託前に生じたものを有する者は、信託財産に属する財産に対し、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売又は国税滞納処分をすることができる。
委託者の債権者を保護するため、詐害的な信託契約の場合に例外を設けている。
なお、民法改正に合わせて、条文の一部が改正されている。
3 第11条第1項ただし書、第7項及び第8項の規定は、前項の規定の適用について準用する。
4 前二項の規定は、第2項の信託がされた時から2年間を経過したときは、適用しない。
取引の安全を考慮して、期間制限を設けている。
5 第1項又は第2項の規定に違反してされた強制執行、仮差押え、仮処分又は担保権の実行若しくは競売に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、民事執行法(昭和54年法律第4号)第38条及び民事保全法(平成元年法律第91号)第45条の規定を準用する。
6 第1項又は第2項の規定に違反してされた国税滞納処分に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、当該異議の主張は、当該国税滞納処分について不服の申立てをする方法でする。
信託財産の独立性を保護している。
前条第5項又は第6項の規定による異議に係る訴えを提起した受益者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において、当該訴えに係る訴訟に関し、必要な費用(訴訟費用を除く。)を支出したとき又は弁護士、弁護士法人、司法書士若しくは司法書士法人に報酬を支払うべきときは、その費用又は報酬は、その額の範囲内で相当と認められる額を限度として、信託財産から支弁する。
信託財産の独立性から当然の規定である。
2 前項の訴えを提起した受益者が敗訴した場合であっても、悪意があったときを除き、当該受益者は、受託者に対し、これによって生じた損害を賠償する義務を負わない。
訴訟の結果に関わらず、信託財産の独立性を保護している。
受託者が破産手続開始の決定を受けた場合であっても、信託財産に属する財産は、破産財団に属しない。
信託財産の独立性を示している。
2 前項の場合には、受益債権は、破産債権とならない。信託債権であって受託者が信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負うものも、同様とする。
受益債権が全て信託財産責任負担債務であり、他の債権とは性格が異なることを示している。
3 第1項の場合には、破産法第252条第1項の免責許可の決定による信託債権(前項に規定する信託債権を除く。)に係る債務の免責は、信託財産との関係においては、その効力を主張することができない。
4 受託者が再生手続開始の決定を受けた場合であっても、信託財産に属する財産は、再生債務者財産に属しない。
5 前項の場合には、受益債権は、再生債権とならない。信託債権であって受託者が信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負うものも、同様とする。
6 第4項の場合には、再生計画、再生計画認可の決定又は民事再生法第235条第1項の免責の決定による信託債権(前項に規定する信託債権を除く。)に係る債務の免責又は変更は、信託財産との関係においては、その効力を主張することができない。
7 前三項の規定は、受託者が更生手続開始の決定を受けた場合について準用する。この場合において、第4項中「再生債務者財産」とあるのは「更生会社財産(会社更生法第2条第14項に規定する更生会社財産又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第169条第14項に規定する更生会社財産をいう。)又は更生協同組織金融機関財産(同法第4条第14項に規定する更生協同組織金融機関財産をいう。)」と、第5項中「再生債権」とあるのは「更生債権又は更生担保権」と、前項中「再生計画、再生計画認可の決定又は民事再生法第235条第1項の免責の決定」とあるのは「更生計画又は更生計画認可の決定」と読み替えるものとする。
破産ばかりでなく、民事再生や会社更生の場合でも信託財産の独立性が守られることになっている。
受託者は、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有する。ただし、信託行為によりその権限に制限を加えることを妨げない。
受託者の権限について、信託目的に沿った内容であることを求めながらも、信託行為によって制限を加えることも可能であることを示しているが、逆に読むと受託者の権限を「信託の目的の達成のために必要な行為」を超えて「無制限」とすることはできないということになることから、受託者のみの判断による信託財産に関係のない借入行為などは不可能であると考えられる。
受託者が信託財産のためにした行為がその権限に属しない場合において、次のいずれにも該当するときは、受益者は、当該行為を取り消すことができる。
受託者は受益者のために働くのであるから、信託の目的に沿わない権限外行為について受益者に取消権を与えている。
なお、取消権であるから、必ずしも受益者は行使する必要はなく、そのまま有効とする選択肢も与えられているということになる。
一 当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が信託財産のためにされたものであることを知っていたこと。
二 当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が受託者の権限に属しないことを知っていたこと又は知らなかったことにつき重大な過失があったこと。
取引の安全を考慮し、受益者の取消権発生には、相手方が悪意重過失であることを求めている。
2 前項の規定にかかわらず、受託者が信託財産に属する財産(第14条の信託の登記又は登録をすることができるものに限る。)について権利を設定し又は移転した行為がその権限に属しない場合には、次のいずれにも該当するときに限り、受益者は、当該行為を取り消すことができる。
一 当該行為の当時、当該信託財産に属する財産について第14条の信託の登記又は登録がされていたこと。
二 当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が受託者の権限に属しないことを知っていたこと又は知らなかったことにつき重大な過失があったこと。
登記や登録を対抗要件とする信託財産に関して別途の規定を置いている。
3 2人以上の受益者のうちの1人が前二項の規定による取消権を行使したときは、その取消しは、他の受益者のためにも、その効力を生ずる。
取消権の単独行使と全体への影響について定めている。
4 第1項又は第2項の規定による取消権は、受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)が取消しの原因があることを知った時から3箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から1年を経過したときも、同様とする。
取引の安全を考慮して、短い時効期間を設けている。
受託者は、次に掲げる場合には、信託事務の処理を第三者に委託することができる。
一 信託行為に信託事務の処理を第三者に委託する旨又は委託することができる旨の定めがあるとき。
信託行為に何も定めていなかった場合には、第三者への委託は制限されることになる。
二 信託行為に信託事務の処理の第三者への委託に関する定めがない場合において、信託事務の処理を第三者に委託することが信託の目的に照らして相当であると認められるとき。
専門業務の専門家への委託や単純作業の下請けなどは信託行為に定めがなくても可能であると読み取れる。
三 信託行為に信託事務の処理を第三者に委託してはならない旨の定めがある場合において、信託事務の処理を第三者に委託することにつき信託の目的に照らしてやむを得ない事由があると認められるとき。
さらに第1項の規制を緩めているので、実質的には専門業務の専門家への委託や単純作業の下請けなどは可能であると考えられる。
受託者は、信託の本旨に従い、信託事務を処理しなければならない。
2 受託者は、信託事務を処理するに当たっては、善良な管理者の注意をもって、これをしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところに
信託行為で何も定めなければ「善管注意義務」となるが、2項ただし書きで明確に義務の軽減を認めているので、親愛信託においては、特に事情がなければ「自己の財産と同一」の注意義務で足りると考えるべきである。ただ、あくまでも「注意をもって」と書いてあるので、全く注意義務をゼロにすることはできないと考えるべきであろう。
受託者は、受益者のため忠実に信託事務の処理その他の行為をしなければならない。
注意義務に比べて忠実義務は抽象的なものであり、その軽重の概念も定められていないので、信託の目的に照らして一般的に忠実な事務処理であれば問題ないものと思われる。
ここでは敢えて「受益者のために」と書いてあり、信託契約の相手方である委託者のためにするのではないことが特徴である。
受託者は、次に掲げる行為をしてはならない。
民法典特有の「利益相反行為」に関する規定であるが、民法の世界では、常に債権者と債務者とは対立関係にあり、互いに自己の利益だけを追求して相手を裏切ることを前提とした「性悪説」で構成されており、親愛信託の世界での前提である「性善説」とは相容れない考え方であるが、条文が存在する限り規制に服することになるので、利益相反行為と見なされないための工夫が必要となる。
一 信託財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を固有財産に帰属させ、又は固有財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を信託財産に帰属させること。
受託者が信託財産を勝手に自分の固有財産にしてしまったり、逆に受託者にとって不要な財産を信託財産に入れてしまったりすることを禁止しており、これは当然の規制である。
二 信託財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を他の信託の信託財産に帰属させること。
商事信託の場合には一人の受託者が複数の信託契約を締結している場合があるので、勝手に別の信託に財産を移すことを禁止している
三 第三者との間において信託財産のためにする行為であって、自己が当該第三者の代理人となって行うもの
自分が受託者になっている信託財産を売却するとか、金銭信託を用いて新たな信託財産を取得するといったケースで、受託者自身が取引の相手方の代理人となれば、信託にとって不利な契約をするであろうという前提から、これを禁止している。
しかし、公正妥当な金額での取引であれば双方に損失は生じないのであるから、これはまさに民法的な性悪説に基づく利益相反行為禁止の代表例である。
四 信託財産に属する財産につき固有財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う債務に係る債権を被担保債権とする担保権を設定することその他第三者との間において信託財産のためにする行為であって受託者又はその利害関係人と受益者との利益が相反することとなるもの
これも性悪説を前提として、受託者が信託ではなく個人の利益を優先させることを防止するための規定である。
2 前項の規定にかかわらず、次のいずれかに該当するときは、同項各号に掲げる行為をすることができる。ただし、第2号に掲げる事由にあっては、同号に該当する場合でも当該行為をすることができない旨の信託行為の定めがあるときは、この限りでない。
この条文が存在するため、親愛信託においては、民法的な利益相反に対する画一的な取り扱いを回避することが可能となる。
一 信託行為に当該行為をすることを許容する旨の定めがあるとき。
「許容」が広く認められるので、親愛信託においては必要に応じて「許容の定め」を置くことになる。
二 受託者が当該行為について重要な事実を開示して受益者の承認を得たとき。
「許容の定め」がない場合でも、受託者と受益者との信頼関係があれば、事前に相談することによって許容されるとしている。
三 相続その他の包括承継により信託財産に属する財産に係る権利が固有財産に帰属したとき。
受託者が二次受益者となった場合などを想定しているものと思われる。
四 受託者が当該行為をすることが信託の目的の達成のために合理的に必要と認められる場合であって、受益者の利益を害しないことが明らかであるとき、又は当該行為の信託財産に与える影響、当該行為の目的及び態様、受託者の受益者との実質的な利害関係の状況その他の事情に照らして正当な理由があるとき。
例えば受託者が個人として信託財産を適正な価格で取得するなど、形式的には「利益相反行為」であっても、現実的には必要な行為であった場合、これを正当な理由として認めるとする規定であり、民法に比べて、かなり柔軟性があると考えられる。
3 受託者は、第1項各号に掲げる行為をしたときは、受益者に対し、当該行為についての重要な事実を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
通知義務であるが、別段の定めによって免除や軽減が可能となっており、親愛信託においては必要な場合には定めを設けておくことになる。
4 第1項及び第2項の規定に違反して第1項第1号又は第2号に掲げる行為がされた場合には、これらの行為は、無効とする。
利益相反行為をしてしまった場合には、取消ではなく「無効」とされる。
5 前項の行為は、受益者の追認により、当該行為の時にさかのぼってその効力を生ずる。
実際に影響を受ける受益者の追認による有効化を認めている。
6 第4項に規定する場合において、受託者が第三者との間において第1項第1号又は第2号の財産について処分その他の行為をしたときは、当該第三者が同項及び第2項の規定に違反して第1項第1号又は第2号に掲げる行為がされたことを知っていたとき又は知らなかったことにつき重大な過失があったときに限り、受益者は、当該処分その他の行為を取り消すことができる。この場合においては、第27条第3項及び第4項の規定を準用する。
絶対無効とすると、取引に入ってしまった第三者に影響を及ぼすので、第三者の「悪意」もしくは「重過失」の場合に限り、受益者に取消権を認めている。
7 第1項及び第2項の規定に違反して第1項第3号又は第4号に掲げる行為がされた場合には、当該第三者がこれを知っていたとき又は知らなかったことにつき重大な過失があったときに限り、受益者は、当該行為を取り消すことができる。この場合においては、第27条第3項及び第4項の規定を準用する。
前項同様に、第三者の「悪意」もしくは「重過失」の場合に限り、受益者に取消権を認めている。
受託者は、受託者として有する権限に基づいて信託事務の処理としてすることができる行為であってこれをしないことが受益者の利益に反するものについては、これを固有財産又は受託者の利害関係人の計算でしてはならない。
これも利益相反行為の一類型として、信託事務の処理について受託者が自己の利益を図ることを禁止している。
2 前項の規定にかかわらず、次のいずれかに該当するときは、同項に規定する行為を固有財産又は受託者の利害関係人の計算ですることができる。ただし、第2号に掲げる事由にあっては、同号に該当する場合でも当該行為を固有財産又は受託者の利害関係人の計算ですることができない旨の信託行為の定めがあるときは、この限りでない。
一 信託行為に当該行為を固有財産又は受託者の利害関係人の計算ですることを許容する旨の定めがあるとき。
二 受託者が当該行為を固有財産又は受託者の利害関係人の計算ですることについて重要な事実を開示して受益者の承認を得たとき。
前条と同じく、別段の定めや受益者の承諾により許容可能としている。
3 受託者は、第1項に規定する行為を固有財産又は受託者の利害関係人の計算でした場合には、受益者に対し、当該行為についての重要な事実を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
これも前条と同じである。
4 第1項及び第2項の規定に違反して受託者が第1項に規定する行為をした場合には、受益者は、当該行為は信託財産のためにされたものとみなすことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
受益者が自分にとって不利と考えた場合に、受託者の行為を信託財産のためにして行為であると見做すことができるという規定である。
5 前項の規定による権利は、当該行為の時から1年を経過したときは、消滅する。
この条項についてのみ、期間制限を設けている。
受益者が2人以上ある信託においては、受託者は、受益者のために公平にその職務を行わなければならない。
当然のことを示している条文であるが、親愛信託においては、受託者が受益権の一部を取得して受益者を兼ねる場合なども想定されていると考えるべきであろう。
受託者は、信託財産に属する財産と固有財産及び他の信託の信託財産に属する財産とを、次の各号に掲げる財産の区分に応じ、当該各号に定める方法により、分別して管理しなければならない。ただし、分別して管理する方法について、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受託者が信託財産と自らの固有財産とを分別管理すべきことは当然であるが、ここでも「別段の定め」が可能であるとされており、親愛信託においては、ケースに応じて柔軟な規定を置くことも考えられる。
一 第14条の信託の登記又は登録をすることができる財産(第3号に掲げるものを除く。) 当該信託の登記又は登録
不動産や特許権などの登記や登録が可能な財産に関しては、登記や登録が受託者の義務となり、この義務は本条第2項の規定により、「別段の定め」で免除できないとされている。
二 第14条の信託の登記又は登録をすることができない財産(次号に掲げるものを除く。) 次のイ又はロに掲げる財産の区分に応じ、当該イ又はロに定める方法
イ 動産(金銭を除く。) 信託財産に属する財産と固有財産及び他の信託の信託財産に属する財産とを外形上区別することができる状態で保管する方法
ロ 金銭その他のイに掲げる財産以外の財産 その計算を明らかにする方法
登記や登録の制度を持たない動産や金銭に関しては、事実上で分別管理ができていれば可としており、必ずしも信託口口座の開設などの特別な取り扱いを求めてはいない。
三 法務省令で定める財産 当該財産を適切に分別して管理する方法として法務省令で定めるもの
特定の社債などを指している。
2 前項ただし書の規定にかかわらず、同項第1号に掲げる財産について第14条の信託の登記又は登録をする義務は、これを免除することができない。
登記や登録に関しては「別段の定め」で免除できないとしているので、逆に読むと親愛信託において受託者の義務として登記や登録を記載しておく必要はないということになる。
第28条の規定により信託事務の処理を第三者に委託するときは、受託者は、信託の目的に照らして適切な者に委託しなければならない。
当然のことを示しているに過ぎないが、信託の目的を十分に認識しておく必要があるということであろう。
2 第28条の規定により信託事務の処理を第三者に委託したときは、受託者は、当該第三者に対し、信託の目的の達成のために必要かつ適切な監督を行わなければならない。
選定した受託者に監督責任を負わせている。
3 受託者が信託事務の処理を次に掲げる第三者に委託したときは、前二項の規定は、適用しない。ただし、受託者は、当該第三者が不適任若しくは不誠実であること又は当該第三者による事務の処理が不適切であることを知ったときは、その旨の受益者に対する通知、当該第三者への委託の解除その他の必要な措置をとらなければならない。
一 信託行為において指名された第三者
二 信託行為において受託者が委託者又は受益者の指名に従い信託事務の処理を第三者に委託する旨の定めがある場合において、当該定めに従い指名された第三者
受託者自らが選定した者ではない場合の免責規定であるが、不適切であった場合の通知義務などを課している。
4 前項ただし書の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
第3項全体が「別段の定め」の対象となる。
委託者又は受益者は、受託者に対し、信託事務の処理の状況並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況について報告を求めることができる。
これも、至極当然のことを示しているに過ぎず、別段の定めも認めていないことから、親愛信託において条文を割いて記載する必要のない事項であると考えられる。
受託者は、信託事務に関する計算並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況を明らかにするため、法務省令で定めるところにより、信託財産に係る帳簿その他の書類又は電磁的記録を作成しなければならない。
これも当たり前のことを示している規定であるが、商事信託と親愛信託とでは受託者の負う責任の度合いが大きく異なるし、また第29条により受託者の責任が軽減されている場合には更に異なる解釈が必要となるものと思われる。
2 受託者は、毎年一回、一定の時期に、法務省令で定めるところにより、貸借対照表、損益計算書その他の法務省令で定める書類又は電磁的記録を作成しなければならない。
親愛信託の場合には、一般的な計算書類で十分であると考えられる。
3 受託者は、前項の書類又は電磁的記録を作成したときは、その内容について受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)に報告しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
別段の定めでもって報告義務を軽減可能と解釈できる。
4 受託者は、第1項の書類又は電磁的記録を作成した場合には、その作成の日から10年間(当該期間内に信託の清算の結了があったときは、その日までの間。次項において同じ。)、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。ただし、受益者(2人以上の受益者が現に存する場合にあってはそのすべての受益者、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人。第6項ただし書において同じ。)に対し、当該書類若しくはその写しを交付し、又は当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供したときは、この限りでない。
受益者に対して書類を交付すれば保存義務がなくなるとされている。
5 受託者は、信託財産に属する財産の処分に係る契約書その他の信託事務の処理に関する書類又は電磁的記録を作成し、又は取得した場合には、その作成又は取得の日から10年間、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
前項に同じ
6 受託者は、第2項の書類又は電磁的記録を作成した場合には、信託の清算の結了の日までの間、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。ただし、その作成の日から10年間を経過した後において、受益者に対し、当該書類若しくはその写しを交付し、又は当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供したときは、この限りでない。
前項に同じ
2 受益者は、受託者に対し、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
一 前条第1項又は第5項の書類の閲覧又は謄写の請求
二 前条第1項又は第5項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
本条は、受益者と受託者とが利害対立する商事信託を前提とした規定であると思われ、親愛信託において問題とすべき論点ではない。
2 前項の請求があったときは、受託者は、次のいずれかに該当すると認められる場合を除き、これを拒むことができない。
一 当該請求を行う者(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
二 請求者が不適当な時に請求を行ったとき。
三 請求者が信託事務の処理を妨げ、又は受益者の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
四 請求者が当該信託に係る業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。
五 請求者が前項の規定による閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求したとき。
六 請求者が、過去2年以内において、前項の規定による閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。
3 前項(第1号及び第2号を除く。)の規定は、受益者が2人以上ある信託のすべての受益者から第1項の請求があったとき、又は受益者が1人である信託の当該受益者から同項の請求があったときは、適用しない。
4 信託行為において、次に掲げる情報以外の情報について、受益者が同意をしたときは第1項の規定による閲覧又は謄写の請求をすることができない旨の定めがある場合には、当該同意をした受益者(その承継人を含む。以下この条において同じ。)は、その同意を撤回することができない。
一 前条第2項の書類又は電磁的記録の作成に欠くことのできない情報その他の信託に関する重要な情報
二 当該受益者以外の者の利益を害するおそれのない情報
5 受託者は、前項の同意をした受益者から第1項の規定による閲覧又は謄写の請求があったときは、前項各号に掲げる情報に該当する部分を除き、これを拒むことができる。
6 利害関係人は、受託者に対し、次に掲げる請求をすることができる。
一 前条第2項の書類の閲覧又は謄写の請求
二 前条第2項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
1 受益者が2人以上ある信託においては、受益者は、受託者に対し、次に掲げる事項を相当な方法により開示することを請求することができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
一 他の受益者の氏名又は名称及び住所
二 他の受益者が有する受益権の内容
本条は、不特定多数の受益者が存在する商事信託を前提とした規定であると思われ、親愛信託において問題とすべき論点ではない。
2 前項の請求があったときは、受託者は、次のいずれかに該当すると認められる場合を除き、これを拒むことができない。
一 当該請求を行う者(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
二 請求者が不適当な時に請求を行ったとき。
三 請求者が信託事務の処理を妨げ、又は受益者の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
四 請求者が前項の規定による開示によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき。
五 請求者が、過去2年以内において、前項の規定による開示によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。
3 前二項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受託者がその任務を怠ったことによって次の各号に掲げる場合に該当するに至ったときは、受益者は、当該受託者に対し、当該各号に定める措置を請求することができる。ただし、第2号に定める措置にあっては、原状の回復が著しく困難であるとき、原状の回復をするのに過分の費用を要するとき、その他受託者に原状の回復をさせることを不適当とする特別の事情があるときは、この限りでない。
一 信託財産に損失が生じた場合 当該損失のてん補
二 信託財産に変更が生じた場合 原状の回復
本条も受託者が「業」として行う商事信託を前提とした規定であると思われるが、「別段の定め」を認めていないことから、親愛信託においても適用はされてしまうので、注意が必要である。
2 受託者が第28条の規定に違反して信託事務の処理を第三者に委託した場合において、信託財産に損失又は変更を生じたときは、受託者は、第三者に委託をしなかったとしても損失又は変更が生じたことを証明しなければ、前項の責任を免れることができない。
受託者が選定した第三者についても受託者に責任を負わせる規定である。
3 受託者が第30条、第31条第1項及び第2項又は第32条第1項及び第2項の規定に違反する行為をした場合には、受託者は、当該行為によって受託者又はその利害関係人が得た利益の額と同額の損失を信託財産に生じさせたものと推定する。
忠実義務違反や利益相反行為によって発生した損害についての責任規定である。
4 受託者が第34条の規定に違反して信託財産に属する財産を管理した場合において、信託財産に損失又は変更を生じたときは、受託者は、同条の規定に従い分別して管理をしたとしても損失又は変更が生じたことを証明しなければ、第1項の責任を免れることができない。
分別管理義務違反によって発生した損害についての責任規定である。
法人である受託者の理事、取締役若しくは執行役又はこれらに準ずる者は、当該法人が前条の規定による責任を負う場合において、当該法人が行った法令又は信託行為の定めに違反する行為につき悪意又は重大な過失があるときは、受益者に対し、当該法人と連帯して、損失のてん補又は原状の回復をする責任を負う。
本条も商事信託を前提とした規定であると思われ、親愛信託において問題とすべき論点ではないが、親愛信託においても一般社団法人などが受託者の地位を担うケースでは関係してくる可能性はある。
2 受益者は、次に掲げる責任を免除することができる。
一 第40条の規定による責任
二 前条の規定による責任
親愛信託においては、受益者と受託者との間に信頼関係があるのが前提なので、万一の事故があったとしても、本条によって免責すれば問題とはならない。
第40条の規定による責任に係る債権の消滅時効は、債務の不履行によって生じた責任に係る債権の消滅時効の例による。
受託者の損失てん補責任について民法の消滅時効を準用する条項なので、民法改正により変更になっているということである。
2 第41条の規定による責任に係る債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 受益者が当該債権を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
二 当該債権を行使することができる時から10年間行使しないとき。
受託者法人の役員の連帯責任については別の規定を定めている。
3 第40条又は第41条の規定による責任に係る受益者の債権の消滅時効は、受益者が受益者としての指定を受けたことを知るに至るまでの間(受益者が現に存しない場合にあっては、信託管理人が選任されるまでの間)は、進行しない。
「知ってから」時効スタートとする規定である。
4 前項に規定する債権は、受託者がその任務を怠ったことによって信託財産に損失又は変更が生じた時から20年を経過したときは、消滅する。
時効とは別の「除斥期間」について定めており、民法の一般原則が準用されている。
3 受託者が法令若しくは信託行為の定めに違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって信託財産に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、受益者は、当該受託者に対し、当該行為をやめることを請求することができる。
本来は商事信託の受託者の行為を差止めるための条項であるが、別段の定めが認められていないことから、親愛信託においても適用されることになるので、注意が必要である。
2 受託者が第33条の規定に違反する行為をし、又はこれをするおそれがある場合において、当該行為によって一部の受益者に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該受益者は、当該受託者に対し、当該行為をやめることを請求することができる。
受益者が複数存在する場合の公平義務違反の差止めであるが、前項同様の注意は必要である。
1 第40条、第41条又は前条の規定による請求に係る訴えを提起した受益者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において、当該訴えに係る訴訟に関し、必要な費用(訴訟費用を除く。)を支出したとき又は弁護士、弁護士法人、司法書士若しくは司法書士法人に報酬を支払うべきときは、その費用又は報酬は、その額の範囲内で相当と認められる額を限度として、信託財産から支弁する。
2 前項の訴えを提起した受益者が敗訴した場合であっても、悪意があったときを除き、当該受益者は、受託者に対し、これによって生じた損害を賠償する義務を負わない。
紛争を前提とした規定であり、親愛信託には馴染まない。
受託者の信託事務の処理に関し、不正の行為又は法令若しくは信託行為の定めに違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由があるときは、受益者は、信託事務の処理の状況並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができる。
2 前項の申立てがあった場合には、裁判所は、これを不適法として却下する場合を除き、検査役を選任しなければならない。
3 第1項の申立てを却下する裁判には、理由を付さなければならない。
4 第1項の規定による検査役の選任の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
5 第2項の検査役は、信託財産から裁判所が定める報酬を受けることができる。
6 前項の規定による検査役の報酬を定める裁判をする場合には、受託者及び第2項の検査役の陳述を聴かなければならない。
7 第5項の規定による検査役の報酬を定める裁判に対しては、受託者及び第2項の検査役に限り、即時抗告をすることができる。
前条に同じ。
前条第2項の検査役は、その職務を行うため必要があるときは、受託者に対し、信託事務の処理の状況並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況について報告を求め、又は当該信託に係る帳簿、書類その他の物件を調査することができる。
2 前条第2項の検査役は、必要な調査を行い、当該調査の結果を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録(法務省令で定めるものに限る。)を裁判所に提供して報告をしなければならない。
3 裁判所は、前項の報告について、その内容を明瞭にし、又はその根拠を確認するため必要があると認めるときは、前条第2項の検査役に対し、更に前項の報告を求めることができる。
4 前条第2項の検査役は、第2項の報告をしたときは、受託者及び同条第1項の申立てをした受益者に対し、第2項の書面の写しを交付し、又は同項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供しなければならない。
5 受託者は、前項の規定による書面の写しの交付又は電磁的記録に記録された事項の法務省令で定める方法による提供があったときは、直ちに、その旨を受益者(前条第1項の申立てをしたものを除く。次項において同じ。)に通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
6 裁判所は、第2項の報告があった場合において、必要があると認めるときは、受託者に対し、同項の調査の結果を受益者に通知することその他の当該報告の内容を周知するための適切な措置をとるべきことを命じなければならない。
紛争を前提とした規定であり、親愛信託には馴染まない。
受託者は、信託事務を処理するのに必要と認められる費用を固有財産から支出した場合には、信託財産から当該費用及び支出の日以後におけるその利息(以下「費用等」という。)の償還を受けることができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受託者が固有財産から信託に関する費用を支出した場合の償還の規定で、親愛信託でも適用されるが、本条では別段の定めが広く認められているので、ケースに応じて信託契約の内容を調整することが可能となっている。
2 受託者は、信託事務を処理するについて費用を要するときは、信託財産からその前払を受けることができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
必要費用の前払いも認めている。
3 受託者は、前項本文の規定により信託財産から費用の前払を受けるには、受益者に対し、前払を受ける額及びその算定根拠を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
前払いのルールを定めているが、信頼関係の強い親愛信託においては重要視する必要はないであろう。
4 第1項又は第2項の規定にかかわらず、費用等の償還又は費用の前払は、受託者が第40条の規定による責任を負う場合には、これを履行した後でなければ、受けることができない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受託者の損失補てん義務との関係であるが、これも親愛信託では問題にならないであろう。
5 第1項又は第2項の場合には、受託者が受益者との間の合意に基づいて当該受益者から費用等の償還又は費用の前払を受けることを妨げない。
信託財産だけではなく受益者個人の財産からの前払いも認めており、個人間で行う親愛信託の実務に即した規定であると思われる。
受託者は、前条第1項又は第2項の規定により信託財産から費用等の償還又は費用の前払を受けることができる場合には、その額の限度で、信託財産に属する金銭を固有財産に帰属させることができる。
償還や前払いの場合の規定で、当然のことを定めている。
2 前項に規定する場合において、必要があるときは、受託者は、信託財産に属する財産(当該財産を処分することにより信託の目的を達成することができないこととなるものを除く。)を処分することができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
金銭信託が足りない場合などにおいて、信託財産の処分を認めている。
3 第1項に規定する場合において、第31条第2項各号のいずれかに該当するときは、受託者は、第1項の規定により有する権利の行使に代えて、信託財産に属する財産で金銭以外のものを固有財産に帰属させることができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
利益相反行為の許容によって受託者が信託財産を取得する場合には、金銭以外の信託財産を直接取得できるとする規定である。
4 第1項の規定により受託者が有する権利は、信託財産に属する財産に対し強制執行又は担保権の実行の手続が開始したときは、これらの手続との関係においては、金銭債権とみなす。
信託財産に対して受託者が持つ債権として一定の保護がされている。
5 前項の場合には、同項に規定する権利の存在を証する文書により当該権利を有することを証明した受託者も、同項の強制執行又は担保権の実行の手続において、配当要求をすることができる。
受託者も債権の範囲においては他の債権者と同等の権利が認められている。
6 各債権者(信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者に限る。以下この項及び次項において同じ。)の共同の利益のためにされた信託財産に属する財産の保存、清算又は配当に関する費用等について第1項の規定により受託者が有する権利は、第4項の強制執行又は担保権の実行の手続において、他の債権者(当該費用等がすべての債権者に有益でなかった場合にあっては、当該費用等によって利益を受けていないものを除く。)の権利に優先する。この場合においては、その順位は、民法第307条第1項に規定する先取特権と同順位とする。
公平の観点から、受託者の持つ債権に一定範囲での優先権を認めている。
7 次の各号に該当する費用等について第1項の規定により受託者が有する権利は、当該各号に掲げる区分に応じ、当該各号の財産に係る第4項の強制執行又は担保権の実行の手続において、当該各号に定める金額について、他の債権者の権利に優先する。
一 信託財産に属する財産の保存のために支出した金額その他の当該財産の価値の維持のために必要であると認められるもの その金額
二 信託財産に属する財産の改良のために支出した金額その他の当該財産の価値の増加に有益であると認められるもの その金額又は現に存する増価額のいずれか低い金額
前項の優先権に関する具体的規定である。
受託者は、信託財産責任負担債務を固有財産をもって弁済した場合において、これにより前条第1項の規定による権利を有することとなったときは、当該信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者に代位する。この場合においては、同項の規定により受託者が有する権利は、その代位との関係においては、金銭債権とみなす。
信託財産責任負担債務においては、我が国では受託者が個人として債務者となる構成しか取れないため、受託者が個人財産からの弁済を余儀なくされるケースが考えられ、その場合には弁済先の債権者の権利を引き継ぐことが可能として救済の一つとしているのではないかと考えられるが、実際に受託者が個人財産から弁済をするケースでは信託財産は既に破綻している可能性が高いので、実効性は薄いのではないかと思われる。
2 前項の規定により受託者が同項の債権者に代位するときは、受託者は、遅滞なく、当該債権者の有する債権が信託財産責任負担債務に係る債権である旨及びこれを固有財産をもって弁済した旨を当該債権者に通知しなければならない。
前項のケースにおける具体的取り扱いを定めている。
受託者は、第49条第1項の規定により受託者が有する権利が消滅するまでは、受益者又は第182条第1項第2号に規定する帰属権利者に対する信託財産に係る給付をすべき債務の履行を拒むことができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
償還や前払いの場合の規定で、同時履行を求めているが、やはり対立関係が前提の商事信託のための規定であると思われる。
受託者は、第48条第1項又は第2項の規定により信託財産から費用等の償還又は費用の前払を受けるのに信託財産(第49条第2項の規定により処分することができないものを除く。第1号及び第4項において同じ。)が不足している場合において、委託者及び受益者に対し次に掲げる事項を通知し、第2号の相当の期間を経過しても委託者又は受益者から費用等の償還又は費用の前払を受けなかったときは、信託を終了させることができる。
一 信託財産が不足しているため費用等の償還又は費用の前払を受けることができない旨
二 受託者の定める相当の期間内に委託者又は受益者から費用等の償還又は費用の前払を受けないときは、信託を終了させる旨
受託者の固有財産を守るための規定であり、信託法では珍しく、一方当事者による信託終了を認めているので、親愛信託においても利用の場面があるのかも知れない。
なお、この終了事由は第163条第4項に引用されており、引用されていない第91条とは異なる取り扱いとなっている。
2 委託者が現に存しない場合における前項の規定の適用については、同項中「委託者及び受益者」とあり、及び「委託者又は受益者」とあるのは、「受益者」とする。
常識的な条項であるが、委託者不存在の信託が有り得るということを条文上で示している規定でもある。
3 受益者が現に存しない場合における第1項の規定の適用については、同項中「委託者及び受益者」とあり、及び「委託者又は受益者」とあるのは、「委託者」とする。
受益者が存しない信託は親愛信託の前提にはないが、ここでは委託者に責任を負わせているので、注意が必要である。
4 第48条第1項又は第2項の規定により信託財産から費用等の償還又は費用の前払を受けるのに信託財産が不足している場合において、委託者及び受益者が現に存しないときは、受託者は、信託を終了させることができる。
これも受託者による信託終了を可能とする規定である。
受託者は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める損害の額について、信託財産からその賠償を受けることができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
一 受託者が信託事務を処理するため自己に過失なく損害を受けた場合 当該損害の額
二 受託者が信託事務を処理するため第三者の故意又は過失によって損害を受けた場合(前号に掲げる場合を除く。) 当該第三者に対し賠償を請求することができる額
2 第48条第4項及び第5項、第49条(第6項及び第7項を除く。)並びに前二条の規定は、前項の規定による信託財産からの損害の賠償について準用する。
受託者の固有財産を守るための規定であるが、別段の定めを認めているので、柔軟な規定を作ることも可能である。
受託者は、信託の引受けについて商法(明治32年法律第48号)第512条の規定の適用がある場合のほか、信託行為に受託者が信託財産から信託報酬(信託事務の処理の対価として受託者の受ける財産上の利益をいう。以下同じ。)を受ける旨の定めがある場合に限り、信託財産から信託報酬を受けることができる。
親愛信託においても、信託行為に定めることによって受託者が報酬を受けることが可能となる根拠条文である。
2 前項の場合には、信託報酬の額は、信託行為に信託報酬の額又は算定方法に関する定めがあるときはその定めるところにより、その定めがないときは相当の額とする。
もし信託行為に報酬額の定めがなくとも「相当の額」を受領できると定めている。
3 前項の定めがないときは、受託者は、信託財産から信託報酬を受けるには、受益者に対し、信託報酬の額及びその算定の根拠を通知しなければならない。
定めがなくても報酬は受領できるとしているが、やはり事前に定めておくべきであろう。
4 第48条第4項及び第5項、第49条(第6項及び第7項を除く。)、第51条並びに第52条並びに民法第648条第2項及び第3項並びに第648条の2の規定は、受託者の信託報酬について準用する。
費用の償還や前払いについて本条を準用している。
なお、民法改正に合わせて、条文の一部が改正されている。
担保権が信託財産である信託において、信託行為において受益者が当該担保権によって担保される債権に係る債権者とされている場合には、担保権者である受託者は、信託事務として、当該担保権の実行の申立てをし、売却代金の配当又は弁済金の交付を受けることができる。
担保権を信託財産とすることを信託法では認めており、担保権にかかる債権自体が信託財産とされていなくても、受託者は信託事務として担保権の実行が可能としているが、親愛信託において想定される場面ではない。
受託者の任務は、信託の清算が結了した場合のほか、次に掲げる事由によって終了する。ただし、第2号又は第3号に掲げる事由による場合にあっては、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
一 受託者である個人の死亡
受託者の死亡が任務終了事由とされているところから、受託者の地位は一身専属で相続の対象にならないことが明確になっている。
二 受託者である個人が後見開始又は保佐開始の審判を受けたこと。
第7条の改正によって、成年被後見人や被保佐人は受託者になることができるようになったが、本条では一応は任務終了とした上で、別段の定めでもって受託者の地位を継続させることができるとしている。
三 受託者(破産手続開始の決定により解散するものを除く。)が破産手続開始の決定を受けたこと。
受託者の破産は、財産管理能力の喪失と捉えられているが、前号同様に別段の定めでもって受託者の地位を継続させることができるとしている。
四 受託者である法人が合併以外の理由により解散したこと。
個人受託者の死亡とパラレルな規定であり、合併では任務終了しないことが明確にされている。
五 次条の規定による受託者の辞任
六 第58条の規定による受託者の解任
辞任と解任は当然の終了事由である。
七 信託行為において定めた事由
信託行為でもって自由に任務終了事由を定めることが可能とされている。
2 受託者である法人が合併をした場合における合併後存続する法人又は合併により設立する法人は、受託者の任務を引き継ぐものとする。受託者である法人が分割をした場合における分割により受託者としての権利義務を承継する法人も、同様とする。
合併と会社分割について、その形態に関係なく受託者の地位を承継するとの規定である。
3 前項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
別段の定めでもって合併や会社分割による承継を封じることも可能である。
4 第1項第3号に掲げる事由が生じた場合において、同項ただし書の定めにより受託者の任務が終了しないときは、受託者の職務は、破産者が行う。
別段の定めによって、破産後も受託者としての地位を継続させる余地を残している。
5 受託者の任務は、受託者が再生手続開始の決定を受けたことによっては、終了しない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
再生手続きは破産とは異なるので、別段の定めがない限り受託者の地位は継続する。
6 前項本文に規定する場合において、管財人があるときは、受託者の職務の遂行並びに信託財産に属する財産の管理及び処分をする権利は、管財人に専属する。保全管理人があるときも、同様とする。
再生手続きにおいて管財人が選任された場合には、意思決定は管財人に委ねられることとなる。
7 前二項の規定は、受託者が更生手続開始の決定を受けた場合について準用する。この場合において、前項中「管財人があるとき」とあるのは、「管財人があるとき(会社更生法第74条第2項(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第47条及び第213条において準用する場合を含む。)の期間を除く。)」と読み替えるものとする。
会社更生についても、同様の規定が準用されるとしている。従って、破産でも再生でも更生でもない任意整理の場合には、受託者に地位に影響を及ぼさないということになる。
受託者は、委託者及び受益者の同意を得て、辞任することができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受託者は別段の定めがない限り、委託者及び受益者の同意がなければ辞任できないとされており、親愛信託においては委託者の関与が困難な場合が少なくないので、別段の定めを置くべき事項となる。
2 受託者は、やむを得ない事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。
例外的に裁判所の許可を辞任の要件としている。
3 受託者は、前項の許可の申立てをする場合には、その原因となる事実を疎明しなければならない。
疎明であるから、証明とは違って必ずしも厳格な理由は必要ない。
4 第2項の許可の申立てを却下する裁判には、理由を付さなければならない。
5 第2項の規定による辞任の許可の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
裁判手続き上の規定である。
6 委託者が現に存しない場合には、第1項本文の規定は、適用しない。
「現に存しない場合」とは、委託者の地位が消滅した後などを指しており、「第1項本文を適用しない」の解釈について、受益者のみの同意で良いのか、受益者の同意も不要なのかは明らかではないので、やはり別段の定めを置くべきところであろう。
委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、受託者を解任することができる。
委託者と受益者が合意すれば、いつでも受託者は解任できるということなので、この条項が適用されるなら、成年後見人が委託者と受益者に代わって受託者を解任することが可能という解釈も可能となるなど、受託者の地位が不安定になってしまうので、注意が必要である。 ただし、財産的地位である受益者はともかくとして、財産とは無関係である委託者の地位を成年後見人が代理できるか否かについては議論の必要がある。
2 委託者及び受益者が受託者に不利な時期に受託者を解任したときは、委託者及び受益者は、受託者の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
これは商事信託の受託者を想定している条項であると思われる。
3 前二項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
解任権の濫用を回避するためにも、別段の定めは必須であろう。
4 受託者がその任務に違反して信託財産に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、委託者又は受益者の申立てにより、受託者を解任することができる。
5 裁判所は、前項の規定により受託者を解任する場合には、受託者の陳述を聴かなければならない。
6 第4項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。
7 第4項の規定による解任の裁判に対しては、委託者、受託者又は受益者に限り、即時抗告をすることができる。
裁判による解任の規定であり、親愛信託には馴染まない。
8 委託者が現に存しない場合には、第1項及び第2項の規定は、適用しない。
前条第6項と同様である。
第56条第1項第3号から第7号までに掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、受託者であった者(以下「前受託者」という。)は、受益者に対し、その旨を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受託者の後見開始など受益者が知り得ない場合もあるであろうから、通知の義務を課しているが、別段の定めも有効である。
2 第56条第1項第3号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、前受託者は、破産管財人に対し、信託財産に属する財産の内容及び所在、信託財産責任負担債務の内容その他の法務省令で定める事項を通知しなければならない。
受託者破産の場合には、破産管財人の関与を求めている。
3 第56条第1項第4号から第7号までに掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、前受託者は、新たな受託者(第64条第1項の規定により信託財産管理者が選任された場合にあっては、信託財産管理者。以下この節において「新受託者等」という。)が信託事務の処理をすることができるに至るまで、引き続き信託財産に属する財産の保管をし、かつ、信託事務の引継ぎに必要な行為をしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その義務を加重することができる。
受託者の任務が終了した後も、必要な範囲で義務の承継(いわゆる権利義務承継)を課しており、別段の定めで「加重」は可能でも「軽減」は不可能とされている。
4 前項の規定にかかわらず、第56条第1項第5号に掲げる事由(第57条第1項の規定によるものに限る。)により受託者の任務が終了した場合には、前受託者は、新受託者等が信託事務の処理をすることができるに至るまで、引き続き受託者としての権利義務を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
受託者辞任の場合は前項とは異なり、別段の定めでもって柔軟に決めることができる。
5 第3項の場合(前項本文に規定する場合を除く。)において、前受託者が信託財産に属する財産の処分をしようとするときは、受益者は、前受託者に対し、当該財産の処分をやめることを請求することができる。ただし、新受託者等が信託事務の処理をすることができるに至った後は、この限りでない。
いわゆる「権利義務承継」の場合、受託者による財産の処分を受益者が制限することができるとしている。(逆に読むと通常時は受益者は受託者の行為を制限できないということになる)
第56条第1項第1号又は第2号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、前受託者の相続人(法定代理人が現に存する場合にあっては、その法定代理人)又は成年後見人若しくは保佐人(以下この節において「前受託者の相続人等」と総称する。)がその事実を知っているときは、前受託者の相続人等は、知れている受益者に対し、これを通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
非常に珍しく「相続人」や「後見人」が登場するが、これは相続人や後見人が受託者の地位を得て行動するのではなく、あくまでも通知の義務を負うだけの規定である。
2 第56条第1項第1号又は第2号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、前受託者の相続人等は、新受託者等又は信託財産法人管理人が信託事務の処理をすることができるに至るまで、信託財産に属する財産の保管をし、かつ、信託事務の引継ぎに必要な行為をしなければならない。
前項と同じく、受託者の相続人や後見人に「信託財産の保管義務」を課している。
3 前項の場合において、前受託者の相続人等が信託財産に属する財産の処分をしようとするときは、受益者は、これらの者に対し、当該財産の処分をやめることを請求することができる。ただし、新受託者等又は信託財産法人管理人が信託事務の処理をすることができるに至った後は、この限りでない。
前条第5項の規定を準用している。
4 第56条第1項第3号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、破産管財人は、新受託者等が信託事務を処理することができるに至るまで、信託財産に属する財産の保管をし、かつ、信託事務の引継ぎに必要な行為をしなければならない。
前項に同じ
5 前項の場合において、破産管財人が信託財産に属する財産の処分をしようとするときは、受益者は、破産管財人に対し、当該財産の処分をやめることを請求することができる。ただし、新受託者等が信託事務の処理をすることができるに至った後は、この限りでない。
前項に同じ
6 前受託者の相続人等又は破産管財人は、新受託者等又は信託財産法人管理人に対し、第1項、第2項又は第4項の規定による行為をするために支出した費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
本来は義務を負わない筈の相続人等を保護するための規定である。
7 第49条第6項及び第7項の規定は、前項の規定により前受託者の相続人等又は破産管財人が有する権利について準用する。
前項までの相続人等に対して、優先弁債権を与えている。
第59条第5項又は前条第3項若しくは第5項の規定による請求に係る訴えを提起した受益者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において、当該訴えに係る訴訟に関し、必要な費用(訴訟費用を除く。)を支出したとき又は弁護士、弁護士法人、司法書士若しくは司法書士法人に報酬を支払うべきときは、その費用又は報酬は、その額の範囲内で相当と認められる額を限度として、信託財産から支弁する。
2 前項の訴えを提起した受益者が敗訴した場合であっても、悪意があったときを除き、当該受益者は、受託者に対し、これによって生じた損害を賠償する義務を負わない。
訴訟が前提の規定なので、親愛信託とは馴染まない。
第56条第1項各号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、信託行為に新たな受託者(以下「新受託者」という。)に関する定めがないとき、又は信託行為の定めにより新受託者となるべき者として指定された者が信託の引受けをせず、若しくはこれをすることができないときは、委託者及び受益者は、その合意により、新受託者を選任することができる。
信託行為に新たな受託者の選任に関する別段の定めがない状況で、もし受託者が不在となった際のルールを決めており、委託者と受益者の合意で新受託者を決定できるとしている。
2 第56条第1項各号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、信託行為に新受託者となるべき者を指定する定めがあるときは、利害関係人は、新受託者となるべき者として指定された者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就任の承諾をするかどうかを確答すべき旨を催告することができる。ただし、当該定めに停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件が成就し、又は当該始期が到来した後に限る。
親愛信託の場合には新受託者候補者が知らなかったり、就任を拒否するケースは考えにくいが、催告の規定を定めている。
3 前項の規定による催告があった場合において、新受託者となるべき者として指定された者は、同項の期間内に委託者及び受益者(2人以上の受益者が現に存する場合にあってはその1人、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人)に対し確答をしないときは、就任の承諾をしなかったものとみなす。
第5条の遺言信託の受託者に対する規定を準用している。
4 第1項の場合において、同項の合意に係る協議の状況その他の事情に照らして必要があると認めるときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、新受託者を選任することができる。
裁判所による選任も可能とされている。
5 前項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。
6 第4項の規定による新受託者の選任の裁判に対しては、委託者若しくは受益者又は現に存する受託者に限り、即時抗告をすることができる。
7 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有する。
訴訟手続きに関する規定である。
8 委託者が現に存しない場合における前各項の規定の適用については、第1項中「委託者及び受益者は、その合意により」とあるのは「受益者は」と、第3項中「委託者及び受益者」とあるのは「受益者」と、第4項中「同項の合意に係る協議の状況」とあるのは「受益者の状況」とする。
ここでも委託者不在の状況を想定した規定が置かれている。
第56条第1項各号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、新受託者が選任されておらず、かつ、必要があると認めるときは、新受託者が選任されるまでの間、裁判所は、利害関係人の申立てにより、信託財産管理者による管理を命ずる処分(以下この款において「信託財産管理命令」という。)をすることができる。
2 前項の申立てを却下する裁判には、理由を付さなければならない。
3 裁判所は、信託財産管理命令を変更し、又は取り消すことができる。
4 信託財産管理命令及び前項の規定による決定に対しては、利害関係人に限り、即時抗告をすることができる。
おそらく商事信託の場合の信託会社の倒産などを想定した裁判手続きの規定である。
裁判所は、信託財産管理命令をする場合には、当該信託財産管理命令において、信託財産管理者を選任しなければならない。
2 前項の規定による信託財産管理者の選任の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
3 裁判所は、第1項の規定による信託財産管理者の選任の裁判をしたときは、直ちに、次に掲げる事項を公告しなければならない。
一 信託財産管理者を選任した旨
二 信託財産管理者の氏名又は名称
4 前項第2号の規定は、同号に掲げる事項に変更を生じた場合について準用する。
5 信託財産管理命令があった場合において、信託財産に属する権利で登記又は登録がされたものがあることを知ったときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、信託財産管理命令の登記又は登録を嘱託しなければならない。
6 信託財産管理命令を取り消す裁判があったとき、又は信託財産管理命令があった後に新受託者が選任された場合において当該新受託者が信託財産管理命令の登記若しくは登録の抹消の嘱託の申立てをしたときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、信託財産管理命令の登記又は登録の抹消を嘱託しなければならない。
前条に同じ。
前受託者が前条第1項の規定による信託財産管理者の選任の裁判があった後に信託財産に属する財産に関してした法律行為は、信託財産との関係においては、その効力を主張することができない。
2 前受託者が前条第1項の規定による信託財産管理者の選任の裁判があった日にした法律行為は、当該裁判があった後にしたものと推定する。
これも、おそらく商事信託の場合の信託会社の倒産などを想定した裁判手続きの規定である。
第64条第1項の規定により信託財産管理者が選任された場合には、受託者の職務の遂行並びに信託財産に属する財産の管理及び処分をする権利は、信託財産管理者に専属する。
2 2人以上の信託財産管理者があるときは、これらの者が共同してその権限に属する行為をしなければならない。ただし、裁判所の許可を得て、それぞれ単独にその職務を行い、又は職務を分掌することができる。
3 2人以上の信託財産管理者があるときは、第三者の意思表示は、その1人に対してすれば足りる。
4 信託財産管理者が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。
一 保存行為
二 信託財産に属する財産の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
5 前項の規定に違反して行った信託財産管理者の行為は、無効とする。ただし、信託財産管理者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
6 信託財産管理者は、第2項ただし書又は第4項の許可の申立てをする場合には、その原因となる事実を疎明しなければならない。
7 第2項ただし書又は第4項の許可の申立てを却下する裁判には、理由を付さなければならない。
8 第2項ただし書又は第4項の規定による許可の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
前条に同じ。
信託財産管理者は、就職の後直ちに信託財産に属する財産の管理に着手しなければならない。
これも、おそらく商事信託の場合の信託会社の倒産などを想定した手続きの規定である。
信託財産に関する訴えについては、信託財産管理者を原告又は被告とする。
前条に同じ。
信託財産管理者は、その職務を行うに当たっては、受託者と同一の義務及び責任を負う。
これも、おそらく商事信託の場合の信託会社の倒産などを想定した手続きの規定である。
第57条第2項から第5項までの規定は信託財産管理者の辞任について、第58条第4項から第7項までの規定は信託財産管理者の解任について、それぞれ準用する。この場合において、第57条第2項中「やむを得ない事由」とあるのは、「正当な事由」と読み替えるものとする。
前条に同じ。
信託財産管理者は、信託財産から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。
2 前項の規定による費用又は報酬の額を定める裁判をする場合には、信託財産管理者の陳述を聴かなければならない。
3 第1項の規定による費用又は報酬の額を定める裁判に対しては、信託財産管理者に限り、即時抗告をすることができる。
これも、おそらく商事信託の場合の信託会社の倒産などを想定した手続きの規定である。
第77条の規定は、信託財産管理者の選任後に新受託者が就任した場合について準用する。この場合において、同条第1項中「受益者(2人以上の受益者が現に存する場合にあってはそのすべての受益者、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人)」とあり、同条第2項中「受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人。次項において同じ。)」とあり、及び同条第3項中「受益者」とあるのは「新受託者」と、同条第2項中「当該受益者」とあるのは「当該新受託者」と読み替えるものとする。
前条に同じ。
第66条の規定は、受託者の職務を代行する者を選任する仮処分命令により選任された受託者の職務を代行する者について準用する。
これも、おそらく商事信託の場合の信託会社の倒産などを想定した手続きの規定である。
第56条第1項第1号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、信託財産は、法人とする。
2 前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、信託財産法人管理人による管理を命ずる処分(第6項において「信託財産法人管理命令」という。)をすることができる。
3 第63条第2項から第4項までの規定は、前項の申立てに係る事件について準用する。
4 新受託者が就任したときは、第1項の法人は、成立しなかったものとみなす。ただし、信託財産法人管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。
5 信託財産法人管理人の代理権は、新受託者が信託事務の処理をすることができるに至った時に消滅する。
6 第64条の規定は信託財産法人管理命令をする場合について、第66条から第72条までの規定は信託財産法人管理人について、それぞれ準用する。
前条に同じ。
第56条第1項各号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、新受託者が就任したときは、新受託者は、前受託者の任務が終了した時に、その時に存する信託に関する権利義務を前受託者から承継したものとみなす。
受託者が交替するまでにタイムラグが生じた場合には、原則として新受託者が遡及して権利義務を承継したものと見做すとしている。
2 前項の規定にかかわらず、第56条第1項第5号に掲げる事由(第57条第1項の規定によるものに限る。)により受託者の任務が終了した場合(第59条第4項ただし書の場合を除く。)には、新受託者は、新受託者等が就任した時に、その時に存する信託に関する権利義務を前受託者から承継したものとみなす。
受託者辞任の場合には、例外として新受託者就任時に権利義務を承継したものと見做される。
3 前二項の規定は、新受託者が就任するに至るまでの間に前受託者、信託財産管理者又は信託財産法人管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。
タイムラグの間に為された行為の有効性を保証している。
4 第27条の規定は、新受託者等が就任するに至るまでの間に前受託者がその権限に属しない行為をした場合について準用する。
受益者による受託者の違反行為の取消権に関しての準用規定である。
5 前受託者(その相続人を含む。以下この条において同じ。)が第40条の規定による責任を負う場合又は法人である前受託者の理事、取締役若しくは執行役若しくはこれらに準ずる者(以下この項において「理事等」と総称する。)が第41条の規定による責任を負う場合には、新受託者等又は信託財産法人管理人は、前受託者又は理事等に対し、第40条又は第41条の規定による請求をすることができる。
損失てん補責任に関しての準用規定である。
6 前受託者が信託財産から費用等の償還若しくは損害の賠償を受けることができ、又は信託報酬を受けることができる場合には、前受託者は、新受託者等又は信託財産法人管理人に対し、費用等の償還若しくは損害の賠償又は信託報酬の支払を請求することができる。ただし、新受託者等又は信託財産法人管理人は、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。
費用償還などに対する準用規定である。
7 第48条第4項並びに第49条第6項及び第7項の規定は、前項の規定により前受託者が有する権利について準用する。
前項に同じ
8 新受託者が就任するに至るまでの間に信託財産に属する財産に対し既にされている強制執行、仮差押え若しくは仮処分の執行又は担保権の実行若しくは競売の手続は、新受託者に対し続行することができる。
強制執行などに関する準用規定である。
9 前受託者は、第6項の規定による請求に係る債権の弁済を受けるまで、信託財産に属する財産を留置することができる。
前受託者の権利を保護する規定である。
前条第1項又は第2項の規定により信託債権に係る債務が新受託者に承継された場合にも、前受託者は、自己の固有財産をもって、その承継された債務を履行する責任を負う。ただし、信託財産に属する財産のみをもって当該債務を履行する責任を負うときは、この限りでない。
前受託者が負っている債務について、受託者の交替によっても消滅せず、引き続き前受託者が責任を負うとする規定である。
2 新受託者は、前項本文に規定する債務を承継した場合には、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。
前受託者が引き続き債務を負うということから、新受託者は債務を承継せず、信託財産でもってのみ弁済をすれば良いとされている。
この条文は、信託と債務との関係性が非常に微妙であり、我が国の債権法の常識では律せられないことを示しており、重要な内容である。
新受託者等が就任した場合には、前受託者は、遅滞なく、信託事務に関する計算を行い、受益者(2人以上の受益者が現に存する場合にあってはそのすべての受益者、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人)に対しその承認を求めるとともに、新受託者等が信託事務の処理を行うのに必要な信託事務の引継ぎをしなければならない。
受託者交替の際の手続きを規定しており、別段の定めが認められていないところから、親愛信託でも一応は押さえておくべき事項である。
2 受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人。次項において同じ。)が前項の計算を承認した場合には、同項の規定による当該受益者に対する信託事務の引継ぎに関する責任は、免除されたものとみなす。ただし、前受託者の職務の執行に不正の行為があったときは、この限りでない。
この規定は受益者が存在しない信託を前提としており、親愛信託とは馴染まない。
3 受益者が前受託者から第1項の計算の承認を求められた時から1箇月以内に異議を述べなかった場合には、当該受益者は、同項の計算を承認したものとみなす。
形式的な見做し規定である。
前条の規定は、第56条第1項第1号又は第2号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合における前受託者の相続人等及び同項第3号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合における破産管財人について準用する。
破産前提の規定であり、親愛信託とは馴染まない。
受託者が2人以上ある信託においては、信託財産は、その合有とする。
受託者複数の信託の場合、受託者個々に「持分」はなく、「合有」であることを示しており、ここでも受託者が民法上の所有権者とは異なる地位であることが証明されている。
受託者が2人以上ある信託においては、信託事務の処理については、受託者の過半数をもって決する。
受託者複数の場合は、会社の業務執行のように、基本的には過半数決議としている。
2 前項の規定にかかわらず、保存行為については、各受託者が単独で決することができる。
保存行為については決議を免除している。
3 前二項の規定により信託事務の処理について決定がされた場合には、各受託者は、当該決定に基づいて信託事務を執行することができる。
意思決定と実際の信託事務の執行を区別している。
4 前三項の規定にかかわらず、信託行為に受託者の職務の分掌に関する定めがある場合には、各受託者は、その定めに従い、信託事務の処理について決し、これを執行する。
親愛信託で複数受託者を採用する際には、本項による定めを作っておく必要があると思われる。
5 前二項の規定による信託事務の処理についての決定に基づく信託財産のためにする行為については、各受託者は、他の受託者を代理する権限を有する。
6 前各項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
ここでも別段の定めを優先しているので、親愛信託で複数受託者を採用する際には注意しなければならない。
7 受託者が2人以上ある信託においては、第三者の意思表示は、その1人に対してすれば足りる。ただし、受益者の意思表示については、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受託者複数の場合の外部の第三者との関係を定めており、内部の存在である受益者と区別している。
前条第4項に規定する場合には、信託財産に関する訴えについて、各受託者は、自己の分掌する職務に関し、他の受託者のために原告又は被告となる。
受託者複数の場合の訴訟に関する規定を決めている。
受託者が2人以上ある信託においては、各受託者は、信託行為に別段の定めがある場合又はやむを得ない事由がある場合を除き、他の受託者に対し、信託事務(常務に属するものを除く。)の処理についての決定を委託することができない。
受託者複数の場合の他方への委託の制限を定めている。
受託者が2人以上ある信託において、信託事務を処理するに当たって各受託者が第三者に対し債務を負担した場合には、各受託者は、連帯債務者とする。
受託者複数の場合の債務の負担に関する規定を決めており、ここでも我が国の債権法との矛盾点が見られる。
2 前項の規定にかかわらず、信託行為に受託者の職務の分掌に関する定めがある場合において、ある受託者がその定めに従い信託事務を処理するに当たって第三者に対し債務を負担したときは、他の受託者は、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。ただし、当該第三者が、その債務の負担の原因である行為の当時、当該行為が信託事務の処理としてされたこと及び受託者が2人以上ある信託であることを知っていた場合であって、信託行為に受託者の職務の分掌に関する定めがあることを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がなかったときは、当該他の受託者は、これをもって当該第三者に対抗することができない。
受託者複数の場合の債務に関しての債権者を保護する規定を決めている。
受託者が2人以上ある信託における第19条の規定の適用については、同条第1項中「場合には」とあるのは「場合において、当該信託財産に係る信託に受託者が2人以上あるときは」と、同項第2号中「受託者」とあるのは「固有財産に共有持分が属する受託者」と、同項第3号中「受託者の」とあるのは「固有財産に共有持分が属する受託者の」と、同条第2項中「受託者」とあるのは「固有財産に共有持分が属する受託者」と、同条第3項中「場合には」とあるのは「場合において、当該信託財産に係る信託又は他の信託財産に係る信託に受託者が2人以上あるときは」と、同項第3号中「受託者の」とあるのは「各信託財産の共有持分が属する受託者の」と、「受託者が決する」とあるのは「受託者の協議による」と、同条第4項中「第2号」とあるのは「第2号又は第3号」とする。
受託者複数の場合の共有物分割に関する規定を決めている。
受託者が2人以上ある信託において、2人以上の受託者がその任務に違反する行為をしたことにより第40条の規定による責任を負う場合には、当該行為をした各受託者は、連帯債務者とする。
2 受託者が2人以上ある信託における第40条第1項及び第41条の規定の適用については、これらの規定中「受益者」とあるのは、「受益者又は他の受託者」とする。
3 受託者が2人以上ある信託において第42条の規定により第40条又は第41条の規定による責任が免除されたときは、他の受託者は、これらの規定によれば当該責任を負うべき者に対し、当該責任の追及に係る請求をすることができない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
4 受託者が2人以上ある信託における第44条の規定の適用については、同条第1項中「受益者」とあるのは「受益者又は他の受託者」と、同条第2項中「当該受益者」とあるのは「当該受益者又は他の受託者」とする。
受託者複数の場合の任務違反責任に関する規定を決めており、親愛信託においては想定できないケースである。
受託者が2人以上ある信託における第59条の規定の適用については、同条第1項中「受益者」とあるのは「受益者及び他の受託者」と、同条第3項及び第4項中「受託者の任務」とあるのは「すべての受託者の任務」とする。
2 受託者が2人以上ある信託における第60条の規定の適用については、同条第1項中「受益者」とあるのは「受益者及び他の受託者」と、同条第2項及び第4項中「受託者の任務」とあるのは「すべての受託者の任務」とする。
3 受託者が2人以上ある信託における第74条第1項の規定の適用については、同項中「受託者の任務」とあるのは、「すべての受託者の任務」とする。
4 受託者が2人以上ある信託においては、第75条第1項及び第2項の規定にかかわらず、その1人の任務が第56条第1項各号に掲げる事由により終了した場合には、その任務が終了した時に存する信託に関する権利義務は他の受託者が当然に承継し、その任務は他の受託者が行う。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受託者複数の場合の受託者変更に関する規定を決めている。
受託者が2人以上ある信託における第163条第3号の規定の適用については、同号中「受託者が欠けた場合」とあるのは、「すべての受託者が欠けた場合」とする。
2 受託者が2人以上ある信託においては、受託者の一部が欠けた場合であって、前条第4項ただし書の規定によりその任務が他の受託者によって行われず、かつ、新受託者が就任しない状態が1年間継続したときも、信託は、終了する。
受託者複数の場合の信託終了などに関する規定を決めている。
信託行為の定めにより受益者となるべき者として指定された者(次条第1項に規定する受益者指定権等の行使により受益者又は変更後の受益者として指定された者を含む。)は、当然に受益権を取得する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
信託行為によって受益者となった者が、当人の承諾などなくとも当然に受益権を取得すると規定しており、受益権が宙に浮かないようにしているが、別段の定めが認められていることから、他の方法での承継も可能と読み取れる。
2 受託者は、前項に規定する受益者となるべき者として指定された者が同項の規定により受益権を取得したことを知らないときは、その者に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受託者の義務として受益者となる者への通知が必要としている。
受益者を指定し、又はこれを変更する権利(以下この条において「受益者指定権等」という。)を有する者の定めのある信託においては、受益者指定権等は、受託者に対する意思表示によって行使する。
民法と異なる財産の管理・承継方法の規定として最も典型的な内容を示している、最重要条文の一つである。
「指定権者」「変更権者」として信託行為で指名された者が、受益者指定権及び受益者変更権という、民法上の所有権では絶対に有り得ない、財産権者を当事者の同意なくして移動させる権利を行使できるとしており、これこそが信託の本質なのである
2 前項の規定にかかわらず、受益者指定権等は、遺言によって行使することができる。
遺言を使って「指定権」「変更権」を行使することもできるとしている。
3 前項の規定により遺言によって受益者指定権等が行使された場合において、受託者がこれを知らないときは、これにより受益者となったことをもって当該受託者に対抗することができない。
遺言で受益者の指定や変更があった場合の特則であるが、一般的には使われないものと思われる。
4 受託者は、受益者を変更する権利が行使されたことにより受益者であった者がその受益権を失ったときは、その者に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
「受益者変更権」は受益者の意思に関係なく行使されるので、受託者に通知義務を課しているが、別段の定めも認容している。
5 受益者指定権等は、相続によって承継されない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
「指定権」「変更権」は一身専属権であることを示している。
6 受益者指定権等を有する者が受託者である場合における第1項の規定の適用については、同項中「受託者」とあるのは、「受益者となるべき者」とする。
受託者が「指定権者」「変更権者」となることも許容されており、要するに誰でも指定権者や変更権者になり得るということである。
次の各号に掲げる信託においては、当該各号の委託者は、受益者を変更する権利を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
この条文は、以前は「遺言代用信託」と呼ばれており、現在では一般的となった承継型の信託行為を指している。
信託法の構成からは89条によって受益者は随時変更できるものであり、本条各項の要件に該当する委託者には受益者変更権が与えられているとされているため、法的には委託者が随時に受益者を変更することができることになっている。
ただ、実務的には生前贈与になる受益者変更権が行使されることは稀であろうし、別段の定めでもって受益者変更権の行使をさせないことも可能である。
一 委託者の死亡の時に受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得する旨の定めのある信託
これが一般的な承継型信託の仕組みである。
すなわち、一般的な親愛信託契約においては、委託者は受益者変更権を持っているということになる。
二 委託者の死亡の時以後に受益者が信託財産に係る給付を受ける旨の定めのある信託
先に受益者を変更しておき、その「給付を受ける権利」のみを留保しておく形であるが、この方法では先に権利移転が生じて課税の対象となるため、まず実務では用いられない。
2 前項第2号の受益者は、同号の委託者が死亡するまでは、受益者としての権利を有しない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
前項第2号の受益者は、完全な受益権を保有しているとは言えないので、別段の定めがない限り受益者としての権利を有しないとしているが、実務で用いられることはないであろう。
受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から30年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。
民法とは異なる財産承継の方法であることを示している最重要条文の一つであり、民法では不可能な受益者連続を認めており、また受益権の消滅・発生は、所有権の世界では絶対に考えられない仕組みであって、信託受益権が民法上の相続の対象とはならないとする有力な根拠となる。
カッコ内の「順次他の者が受益権を取得する仕組み」とは、あまり論じられることがないが、消滅・発生ではない形で受益権が承継されて行く方法を選択することもできるとの定めであると考えられ、これをもって受益権が民法上の相続の対象になるものとは考えられない。
条文の後半は、いわゆる「30年ルール」であるが、あまりにも無制限に受益者連続の規定を有効とすると、半永久的に財産の帰趨が拘束されるため、制限を設けたものらしい。
しかし、「消滅するまでの間、その効力を有する」という文言の解釈については、信託全体が終了するとする説が有力ではあるが、52条などとは違って163条の信託終了事由に挙げられていないことから、単に受益者連続の定めの効力のみが無くなって、信託自体は終了しないとの考え方も成り立つ。
受益者による次に掲げる権利の行使は、信託行為の定めにより制限することができない。
一 この法律の規定による裁判所に対する申立権
二 第5条第1項の規定による催告権
三 第23条第5項又は第6項の規定による異議を主張する権利
四 第24条第1項の規定による支払の請求権
五 第27条第1項又は第2項(これらの規定を第75条第4項において準用する場合を含む。)の規定による取消権
六 第31条第6項又は第7項の規定による取消権
七 第36条の規定による報告を求める権利
八 第38条第1項又は第6項の規定による閲覧又は謄写の請求権
九 第40条の規定による損失のてん補又は原状の回復の請求権
十 第41条の規定による損失のてん補又は原状の回復の請求権
十一 第44条の規定による差止めの請求権
十二 第45条第1項の規定による支払の請求権
十三 第59条第5項の規定による差止めの請求権
十四 第60条第3項又は第5項の規定による差止めの請求権
十五 第61条第1項の規定による支払の請求権
十六 第62条第2項の規定による催告権
十七 第99条第1項の規定による受益権を放棄する権利
十八 第103条第1項又は第2項の規定による受益権取得請求権
十九 第131条第2項の規定による催告権
二十 第138条第2項の規定による催告権
二十一 第187条第1項の規定による交付又は提供の請求権
二十二 第190条第2項の規定による閲覧又は謄写の請求権
二十三 第198条第1項の規定による記載又は記録の請求権
二十四 第226条第1項の規定による金銭のてん補又は支払の請求権
二十五 第228条第1項の規定による金銭のてん補又は支払の請求権
二十六 第254条第1項の規定による損失のてん補の請求権
受益者の権利の行使を保証する条文であるが、限定列挙された以外の権利については行使を制限できるということでもある。
受益者は、その有する受益権を譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
原則として受益権の譲渡は自由である。
2 前項の規定にかかわらず、受益権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の信託行為の定め(以下この項において「譲渡制限の定め」という。)は、その譲渡制限の定めがされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。
別段の定めでもって受益権の譲渡を制限や禁止することが可能であり、これが「信託の制限機能」の根拠となる。
善意の第三者に対抗できないとしているのは、取引の安全を考えての措置であると考えられるが、今般の民法改正に応じて改正されている条項である。
受益権の譲渡は、譲渡人が受託者に通知をし、又は受託者が承諾をしなければ、受託者その他の第三者に対抗することができない。
民法の債権譲渡の対抗要件の規定を準用している。
2 前項の通知及び承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、受託者以外の第三者に対抗することができない。
前項に同じ。
受託者は、前条第1項の通知又は承諾がされるまでに譲渡人に対し生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。
前条と同じく、債権譲渡の規定を準用している。
相続により受益権が承継された場合において、民法第900条及び第901条の規定により算定した相続分を超えて当該受益権を承継した共同相続人が当該受益権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該受益権を承継した場合にあっては、当該受益権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして受託者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が受託者に通知をしたものとみなして、同法第899条の2第1項の規定を適用する。
民法改正を受けて新設された条文である。
信託行為に基づく受益権の移動は「相続」ではないが、これを相続と見るとする考え方も根強く残っているので、それに配慮した条文ではないかと思われる。
敢えて「相続による受益権が承継された場合」と表記することによって結論を回避しているようであるが、そもそも信託法の立法的な部分からの解釈の揺れが感じられる条文である。
受益者は、その有する受益権に質権を設定することができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 前項の規定にかかわらず、受益権の質入れを禁止し、又は制限する旨の信託行為の定め(以下この項において「質入制限の定め」という。)は、その質入制限の定めがされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった質権者その他の第三者に対抗することができる。
受益権は譲渡と同様に質入も可能としており、また別段の定めによる質入の制限や禁止も可能としている。
なお、民法改正に合わせて、条文の一部が改正されている。
受益権を目的とする質権は、次に掲げる金銭等(金銭その他の財産をいう。以下この条及び次条において同じ。)について存在する。
一 当該受益権を有する受益者が受託者から信託財産に係る給付として受けた金銭等
二 第103条第6項に規定する受益権取得請求によって当該受益権を有する受益者が受ける金銭等
三 信託の変更による受益権の併合又は分割によって当該受益権を有する受益者が受ける金銭等
四 信託の併合又は分割(信託の併合又は信託の分割をいう。以下同じ。)によって当該受益権を有する受益者が受ける金銭等
五 前各号に掲げるもののほか、当該受益権を有する受益者が当該受益権に代わるものとして受ける金銭等
受益権は民法上の債権とは性質が異なるので、質権の効力に関しても受益権全体ではなく、金銭給付を受けられる権利に限定されている。
すなわち、受託者に対する意思表示などの、金銭給付とは異なる権利については、質権の対象とはならないということである。
受益権の質権者は、前条の金銭等(金銭に限る。)を受領し、他の債権者に先立って自己の債権の弁済に充てることができる。
質権者の権利行使の対象を金銭のみに限定している。
2 前項の債権の弁済期が到来していないときは、受益権の質権者は、受託者に同項に規定する金銭等に相当する金額を供託させることができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。
弁済期未到来分について、質権者の救済措置を講じている。
受益者は、受託者に対し、受益権を放棄する旨の意思表示をすることができる。ただし、受益者が信託行為の当事者である場合は、この限りでない。
受益権は所有権とは異なり「放棄」が可能であるとしている。「受益者が信託行為の当事者」というのは、委託者が当初受益者を兼ねているケースが想定され、その場合には放棄は認められない。
2 受益者は、前項の規定による意思表示をしたときは、当初から受益権を有していなかったものとみなす。ただし、第三者の権利を害することはできない。
放棄が認められるのは、信託行為の当事者ではない受益者であるから、信託行為で指定された二次受益者や、受益者指定権者によって指定された受益者を指すと考えられ、放棄により当初から受益者にはならないとされている。「第三者の権利を害する」とは、受益権が既に差押えの対象となっているケースなどが想定される。
受益債権に係る債務については、受託者は、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。
受益債権とは信託財産から発生する受益者の財産的権利であるから、信託財産のみから履行されるのは当然であり、受託者が個人の財産で履行する義務を負うことはなく、21条第2項に対応している。
受益債権は、信託債権に後れる。
信託財産に対する債権者が受益者よりも優先されるとの規定で、株式会社の株主と債権者との関係に似ており、信託終了後の清算時には問題になるであろう。
受益債権の消滅時効は、次項及び第3項に定める事項を除き、債権の消滅時効の例による。
物権的性質を持つ「受益権」とは異なり、「受益債権」は単なる債権であるから、民法の消滅時効に準じるとしている。
2 受益債権の消滅時効は、受益者が受益者としての指定を受けたことを知るに至るまでの間(受益者が現に存しない場合にあっては、信託管理人が選任されるまでの間)は、進行しない。
受益者となったことを知らないケースも考えられるので、そのための措置と思われる。なお、民法上の債権では、相続によって債権者となった者が債権者であることを知らなくても時効は成立するので、その点でも民法との差異が見られる。
3 受益債権の消滅時効は、次に掲げる場合に限り、援用することができる。
一 受託者が、消滅時効の期間の経過後、遅滞なく、受益者に対し受益債権の存在及びその内容を相当の期間を定めて通知し、かつ、受益者からその期間内に履行の請求を受けなかったとき。
二 消滅時効の期間の経過時において受益者の所在が不明であるとき、その他信託行為の定め、受益者の状況、関係資料の滅失その他の事情に照らして、受益者に対し前号の規定による通知をしないことについて正当な理由があるとき。
受託者による時効援用のルールであるが、商事信託の世界の話であろう。
4 受益債権は、これを行使することができる時から20年を経過したときは、消滅する。
除斥期間の規定である。
次に掲げる事項に係る信託の変更(第3項において「重要な信託の変更」という。)がされる場合には、これにより損害を受けるおそれのある受益者は、受託者に対し、自己の有する受益権を公正な価格で取得することを請求することができる。ただし、第1号又は第2号に掲げる事項に係る信託の変更がされる場合にあっては、これにより損害を受けるおそれのあることを要しない。
一 信託の目的の変更
二 受益権の譲渡の制限
三 受託者の義務の全部又は一部の減免(当該減免について、その範囲及びその意思決定の方法につき信託行為に定めがある場合を除く。)
四 受益債権の内容の変更(当該内容の変更について、その範囲及びその意思決定の方法につき信託行為に定めがある場合を除く。)
五 信託行為において定めた事項
基本的には商事信託で、受託者が一部の受益者に不利になる決定をした場合に、受益者が受託者に対して受益権の買取を求めることができるとする規定であり、株式会社の株主の買取請求権と似ている。
2 信託の併合又は分割がされる場合には、これらにより損害を受けるおそれのある受益者は、受託者に対し、自己の有する受益権を公正な価格で取得することを請求することができる。ただし、前項第1号又は第2号に掲げる事項に係る変更を伴う信託の併合又は分割がされる場合にあっては、これらにより損害を受けるおそれのあることを要しない。
3 前二項の受益者が、重要な信託の変更又は信託の併合若しくは信託の分割(以下この章において「重要な信託の変更等」という。)の意思決定に関与し、その際に当該重要な信託の変更等に賛成する旨の意思を表示したときは、前二項の規定は、当該受益者については、適用しない。
4 受託者は、重要な信託の変更等の意思決定の日から20日以内に、受益者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。
一 重要な信託の変更等をする旨
二 重要な信託の変更等がその効力を生ずる日(次条第1項において「効力発生日」という。)
三 重要な信託の変更等の中止に関する条件を定めたときは、その条件
5 前項の規定による通知は、官報による公告をもって代えることができる。
6 第1項又は第2項の規定による請求(以下この款において「受益権取得請求」という。)は、第4項の規定による通知又は前項の規定による公告の日から20日以内に、その受益権取得請求に係る受益権の内容を明らかにしてしなければならない。
7 受益権取得請求をした受益者は、受託者の承諾を得た場合に限り、その受益権取得請求を撤回することができる。
8 重要な信託の変更等が中止されたときは、受益権取得請求は、その効力を失う。
受益者と受託者との対立が前提とされていない親愛信託で問題になることはないであろう。
受益権取得請求があった場合において、受益権の価格の決定について、受託者と受益者との間に協議が調ったときは、受託者は、受益権取得請求の日から60日を経過する日(その日までに効力発生日が到来していない場合にあっては、効力発生日)までにその支払をしなければならない。
2 受益権の価格の決定について、受益権取得請求の日から30日以内に協議が調わないときは、受託者又は受益者は、その期間の満了の日後30日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。
3 裁判所は、前項の規定により価格の決定をする場合には、同項の申立てをすることができる者の陳述を聴かなければならない。
4 第2項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。
5 第2項の規定による価格の決定の裁判に対しては、申立人及び同項の申立てをすることができる者に限り、即時抗告をすることができる。
6 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有する。
7 前条第7項の規定にかかわらず、第2項に規定する場合において、受益権取得請求の日から60日以内に同項の申立てがないときは、その期間の満了後は、受益者は、いつでも、受益権取得請求を撤回することができる。
8 第1項の受託者は、裁判所の決定した価格に対する同項の期間の満了の日後の利息をも支払わなければならない。
9 受託者は、受益権の価格の決定があるまでは、受益者に対し、当該受託者が公正な価格と認める額を支払うことができる。
10 受益権取得請求に係る受託者による受益権の取得は、当該受益権の価格に相当する金銭の支払の時に、その効力を生ずる。
11 受益証券(第185条第1項に規定する受益証券をいう。以下この章において同じ。)が発行されている受益権について受益権取得請求があったときは、当該受益証券と引換えに、その受益権取得請求に係る受益権の価格に相当する金銭を支払わなければならない。
12 受益権取得請求に係る債務については、受託者は、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。ただし、信託行為又は当該重要な信託の変更等の意思決定において別段の定めがされたときは、その定めるところによる。
13 前条第1項又は第2項の規定により受託者が受益権を取得したときは、その受益権は、消滅する。ただし、信託行為又は当該重要な信託の変更等の意思決定において別段の定めがされたときは、その定めるところによる。
前条と同じく、受益者と受託者との対立が前提とされていない親愛信託で問題になることはないであろう。
受益者が2人以上ある信託における受益者の意思決定(第92条各号に掲げる権利の行使に係るものを除く。)は、すべての受益者の一致によってこれを決する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受益者の意思決定に関する原則は全員一致だが、別段の定めを認めている。
2 前項ただし書の場合において、信託行為に受益者集会における多数決による旨の定めがあるときは、次款の定めるところによる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
3 第1項ただし書又は前項の規定にかかわらず、第42条の規定による責任の免除に係る意思決定の方法についての信託行為の定めは、次款の定めるところによる受益者集会における多数決による旨の定めに限り、その効力を有する。
4 第1項ただし書及び前二項の規定は、次に掲げる責任の免除については、適用しない。
一 第42条の規定による責任の全部の免除
二 第42条第1号の規定による責任(受託者がその任務を行うにつき悪意又は重大な過失があった場合に生じたものに限る。)の一部の免除
三 第42条第2号の規定による責任の一部の免除
この条文も商事信託を前提としている。
受益者集会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。
2 受益者集会は、受託者(信託監督人が現に存する場合にあっては、受託者又は信託監督人)が招集する。
商事信託以外で受益者集会が関係する可能性はないであろう。
受益者は、受託者(信託監督人が現に存する場合にあっては、受託者又は信託監督人)に対し、受益者集会の目的である事項及び招集の理由を示して、受益者集会の招集を請求することができる。
2 次に掲げる場合において、信託財産に著しい損害を生ずるおそれがあるときは、前項の規定による請求をした受益者は、受益者集会を招集することができる。
一 前項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合
二 前項の規定による請求があった日から8週間以内の日を受益者集会の日とする受益者集会の招集の通知が発せられない場合
受益者集会のルールを定めており、商事信託以外で関係する可能性はないであろう。
受益者集会を招集する者(以下この款において「招集者」という。)は、受益者集会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 受益者集会の日時及び場所
二 受益者集会の目的である事項があるときは、当該事項
三 受益者集会に出席しない受益者が電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。以下この款において同じ。)によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
四 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
受益者集会のルールを定めており、商事信託以外で関係する可能性はないであろう。
受益者集会を招集するには、招集者は、受益者集会の日の2週間前までに、知れている受益者及び受託者(信託監督人が現に存する場合にあっては、知れている受益者、受託者及び信託監督人)に対し、書面をもってその通知を発しなければならない。
2 招集者は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、同項の通知を受けるべき者の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該招集者は、同項の書面による通知を発したものとみなす。
3 前二項の通知には、前条各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
4 無記名式の受益証券が発行されている場合において、受益者集会を招集するには、招集者は、受益者集会の日の3週間前までに、受益者集会を招集する旨及び前条各号に掲げる事項を官報により公告しなければならない。
受益者集会のルールを定めており、商事信託以外で関係する可能性はないであろう。
招集者は、前条第1項の通知に際しては、法務省令で定めるところにより、知れている受益者に対し、議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(以下この条において「受益者集会参考書類」という。)及び受益者が議決権を行使するための書面(以下この款において「議決権行使書面」という。)を交付しなければならない。
2 招集者は、前条第2項の承諾をした受益者に対し同項の電磁的方法による通知を発するときは、前項の規定による受益者集会参考書類及び議決権行使書面の交付に代えて、これらの書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし、受益者の請求があったときは、これらの書類を当該受益者に交付しなければならない。
3 招集者は、前条第4項の規定による公告をした場合において、受益者集会の日の1週間前までに無記名受益権(無記名式の受益証券が発行されている受益権をいう。第8章において同じ。)の受益者の請求があったときは、直ちに、受益者集会参考書類及び議決権行使書面を当該受益者に交付しなければならない。
4 招集者は、前項の規定による受益者集会参考書類及び議決権行使書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、受益者の承諾を得て、これらの書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該招集者は、同項の規定によるこれらの書類の交付をしたものとみなす。
受益者集会のルールを定めており、商事信託以外で関係する可能性はないであろう。
招集者は、第108条第3号に掲げる事項を定めた場合には、第109条第2項の承諾をした受益者に対する電磁的方法による通知に際して、法務省令で定めるところにより、受益者に対し、議決権行使書面に記載すべき事項を当該電磁的方法により提供しなければならない。
2 招集者は、第108条第3号に掲げる事項を定めた場合において、第109条第2項の承諾をしていない受益者から受益者集会の日の1週間前までに議決権行使書面に記載すべき事項の電磁的方法による提供の請求があったときは、法務省令で定めるところにより、直ちに、当該受益者に対し、当該事項を電磁的方法により提供しなければならない。
受益者集会のルールを定めており、商事信託以外で関係する可能性はないであろう。
受益者は、受益者集会において、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定めるものに応じて、議決権を有する。
一 各受益権の内容が均等である場合 受益権の個数
二 前号に掲げる場合以外の場合 受益者集会の招集の決定の時における受益権の価格
2 前項の規定にかかわらず、受益権が当該受益権に係る信託の信託財産に属するときは、受託者は、当該受益権については、議決権を有しない。
受益者集会のルールを定めており、商事信託以外で関係する可能性はないであろう。
受益者集会の決議は、議決権を行使することができる受益者の議決権の過半数を有する受益者が出席し、出席した当該受益者の議決権の過半数をもって行う。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる事項に係る受益者集会の決議は、当該受益者集会において議決権を行使することができる受益者の議決権の過半数を有する受益者が出席し、出席した当該受益者の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって行わなければならない。
一 第42条の規定による責任の免除(第105条第4項各号に掲げるものを除く。)
二 第136条第1項第1号に規定する合意
三 第143条第1項第1号に規定する合意
四 第149条第1項若しくは第2項第1号に規定する合意又は同条第3項に規定する意思表示
五 第151条第1項又は第2項第1号に規定する合意
六 第155条第1項又は第2項第1号に規定する合意
七 第159条第1項又は第2項第1号に規定する合意
八 第164条第1項に規定する合意
3 前二項の規定にかかわらず、第103条第1項第2号から第4号までに掲げる事項(同号に掲げる事項にあっては、受益者間の権衡に変更を及ぼすものを除く。)に係る重要な信託の変更等に係る受益者集会の決議は、当該受益者集会において議決権を行使することができる受益者の半数以上であって、当該受益者の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって行わなければならない。
4 前三項の規定にかかわらず、第103条第1項第1号又は第4号に掲げる事項(同号に掲げる事項にあっては、受益者間の権衡に変更を及ぼすものに限る。)に係る重要な信託の変更等に係る受益者集会の決議は、総受益者の半数以上であって、総受益者の議決権の四分の三以上に当たる多数をもって行わなければならない。
5 受益者集会は、第108条第2号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。
受益者集会のルールを定めており、商事信託以外で関係する可能性はないであろう。
受益者は、代理人によってその議決権を行使することができる。この場合においては、当該受益者又は代理人は、代理権を証明する書面を招集者に提出しなければならない。
2 前項の代理権の授与は、受益者集会ごとにしなければならない。
3 第1項の受益者又は代理人は、代理権を証明する書面の提出に代えて、政令で定めるところにより、招集者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該受益者又は代理人は、当該書面を提出したものとみなす。
4 受益者が第109条第2項の承諾をした者である場合には、招集者は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。
受益者集会のルールを定めており、商事信託以外で関係する可能性はないであろう。
受益者集会に出席しない受益者は、書面によって議決権を行使することができる。
2 書面による議決権の行使は、議決権行使書面に必要な事項を記載し、法務省令で定める時までに当該記載をした議決権行使書面を招集者に提出して行う。
3 前項の規定により書面によって行使した議決権は、出席した議決権者の行使した議決権とみなす。
受益者集会のルールを定めており、商事信託以外で関係する可能性はないであろう。
電磁的方法による議決権の行使は、政令で定めるところにより、招集者の承諾を得て、法務省令で定める時までに議決権行使書面に記載すべき事項を、電磁的方法により当該招集者に提供して行う。
2 受益者が第109条第2項の承諾をした者である場合には、招集者は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。
3 第1項の規定により電磁的方法によって行使した議決権は、出席した議決権者の行使した議決権とみなす。
受益者集会のルールを定めており、商事信託以外で関係する可能性はないであろう。
受益者は、その有する議決権を統一しないで行使することができる。この場合においては、受益者集会の日の3日前までに、招集者に対しその旨及びその理由を通知しなければならない。
2 招集者は、前項の受益者が他人のために受益権を有する者でないときは、当該受益者が同項の規定によりその有する議決権を統一しないで行使することを拒むことができる。
受益者集会のルールを定めており、商事信託以外で関係する可能性はないであろう。
受託者(法人である受託者にあっては、その代表者又は代理人。次項において同じ。)は、受益者集会に出席し、又は書面により意見を述べることができる。
2 受益者集会又は招集者は、必要があると認めるときは、受託者に対し、その出席を求めることができる。この場合において、受益者集会にあっては、これをする旨の決議を経なければならない。
受益者集会のルールを定めており、商事信託以外で関係する可能性はないであろう。
受益者集会においてその延期又は続行について決議があった場合には、第108条及び第109条の規定は、適用しない。
受益者集会のルールを定めており、商事信託以外で関係する可能性はないであろう。
受益者集会の議事については、招集者は、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。
受益者集会のルールを定めており、商事信託以外で関係する可能性はないであろう。
受益者集会の決議は、当該信託のすべての受益者に対してその効力を有する。
受益者集会のルールを定めており、商事信託以外で関係する可能性はないであろう。
受益者集会に関する必要な費用を支出した者は、受託者に対し、その償還を請求することができる。
2 前項の規定による請求に係る債務については、受託者は、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。
受益者集会のルールを定めており、商事信託以外で関係する可能性はないであろう。
信託行為においては、受益者が現に存しない場合に信託管理人となるべき者を指定する定めを設けることができる。
「受益者が現に存しない信託」は、親愛信託においては、契約の不備で受益者の指定を誤ってしまったケースくらいしか考えられず、また受託者に課税されることから、あってはならないケースであるが、その場合の措置として信託管理人を置くことができるとしている。
また、信託管理人関係の条文は、後で出てくる信託監督人や受益者代理人の条文に多く引用されている。
2 信託行為に信託管理人となるべき者を指定する定めがあるときは、利害関係人は、信託管理人となるべき者として指定された者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就任の承諾をするかどうかを確答すべき旨を催告することができる。ただし、当該定めに停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件が成就し、又は当該始期が到来した後に限る。
3 前項の規定による催告があった場合において、信託管理人となるべき者として指定された者は、同項の期間内に委託者(委託者が現に存しない場合にあっては、受託者)に対し確答をしないときは、就任の承諾をしなかったものとみなす。
4 受益者が現に存しない場合において、信託行為に信託管理人に関する定めがないとき、又は信託行為の定めにより信託管理人となるべき者として指定された者が就任の承諾をせず、若しくはこれをすることができないときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、信託管理人を選任することができる。
5 前項の規定による信託管理人の選任の裁判があったときは、当該信託管理人について信託行為に第1項の定めが設けられたものとみなす。
6 第4項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。
7 第4項の規定による信託管理人の選任の裁判に対しては、委託者若しくは受託者又は既に存する信託管理人に限り、即時抗告をすることができる。
8 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有する。
信託管理人を置くことになった場合の規定である。
次に掲げる者は、信託管理人となることができない。
一 未成年者
二 当該信託の受託者である者
信託管理人を置くことになった場合の規定であるが、受託者が信託管理人を兼務できないとしている。なお、改正前は成年被後見人と被保佐人も欠格事由とされていた。
信託管理人は、受益者のために自己の名をもって受益者の権利に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
2 2人以上の信託管理人があるときは、これらの者が共同してその権限に属する行為をしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
3 この法律の規定により受益者に対してすべき通知は、信託管理人があるときは、信託管理人に対してしなければならない。
信託管理人を置くことになった場合の規定である。
信託管理人は、善良な管理者の注意をもって、前条第1項の権限を行使しなければならない。
2 信託管理人は、受益者のために、誠実かつ公平に前条第1項の権限を行使しなければならない。
信託管理人を置くことになった場合の規定である。
信託管理人は、その事務を処理するのに必要と認められる費用及び支出の日以後におけるその利息を受託者に請求することができる。
2 信託管理人は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める損害の額について、受託者にその賠償を請求することができる。
一 信託管理人がその事務を処理するため自己に過失なく損害を受けた場合 当該損害の額
二 信託管理人がその事務を処理するため第三者の故意又は過失によって損害を受けた場合(前号に掲げる場合を除く。) 当該第三者に対し賠償を請求することができる額
3 信託管理人は、商法第512条の規定の適用がある場合のほか、信託行為に信託管理人が報酬を受ける旨の定めがある場合に限り、受託者に報酬を請求することができる。
4 前三項の規定による請求に係る債務については、受託者は、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。
5 第3項の場合には、報酬の額は、信託行為に報酬の額又は算定方法に関する定めがあるときはその定めるところにより、その定めがないときは相当の額とする。
6 裁判所は、第123条第4項の規定により信託管理人を選任した場合には、信託管理人の報酬を定めることができる。
7 前項の規定による信託管理人の報酬の裁判があったときは、当該信託管理人について信託行為に第3項の定め及び第5項の報酬の額に関する定めがあったものとみなす。
8 第6項の規定による信託管理人の報酬の裁判をする場合には、受託者及び信託管理人の陳述を聴かなければならない。
9 第6項の規定による信託管理人の報酬の裁判に対しては、受託者及び信託管理人に限り、即時抗告をすることができる。
信託管理人を置くことになった場合の規定である。
第56条の規定は、信託管理人の任務の終了について準用する。この場合において、同条第1項第5号中「次条」とあるのは「第128条第2項において準用する次条」と、同項第6号中「第58条」とあるのは「第128条第2項において準用する第58条」と読み替えるものとする。
2 第57条の規定は信託管理人の辞任について、第58条の規定は信託管理人の解任について、それぞれ準用する。
信託管理人を置くことになった場合の規定である。
第62条の規定は、前条第1項において準用する第56条第1項各号の規定により信託管理人の任務が終了した場合における新たな信託管理人(次項において「新信託管理人」という。)の選任について準用する。
2 新信託管理人が就任した場合には、信託管理人であった者は、遅滞なく、新信託管理人がその事務の処理を行うのに必要な事務の引継ぎをしなければならない。
3 前項の信託管理人であった者は、受益者が存するに至った後においてその受益者となった者を知ったときは、遅滞なく、当該受益者となった者に対しその事務の経過及び結果を報告しなければならない。
信託管理人を置くことになった場合の規定である。
信託管理人による事務の処理は、次に掲げる事由により終了する。ただし、第2号に掲げる事由による場合にあっては、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
一 受益者が存するに至ったこと。
二 委託者が信託管理人に対し事務の処理を終了する旨の意思表示をしたこと。
三 信託行為において定めた事由
2 前項の規定により信託管理人による事務の処理が終了した場合には、信託管理人であった者は、遅滞なく、受益者に対しその事務の経過及び結果を報告しなければならない。ただし、受益者が存するに至った後においてその受益者となった者を知った場合に限る。
信託管理人を置くことになった場合の規定である。
信託行為においては、受益者が現に存する場合に信託監督人となるべき者を指定する定めを設けることができる。
信託監督人は親愛信託においても活用される場面があり、必要な場合は信託行為で指定しておく。
2 信託行為に信託監督人となるべき者を指定する定めがあるときは、利害関係人は、信託監督人となるべき者として指定された者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就任の承諾をするかどうかを確答すべき旨を催告することができる。ただし、当該定めに停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件が成就し、又は当該始期が到来した後に限る。
信託監督人は受益者のように自動的に地位を持つのではなく、株式会社の役員のように就任承諾が必要という建付けになっている。
3 前項の規定による催告があった場合において、信託監督人となるべき者として指定された者は、同項の期間内に委託者(委託者が現に存しない場合にあっては、受託者)に対し確答をしないときは、就任の承諾をしなかったものとみなす。
就任承諾は明示的にしなければならないとされている。
4 受益者が受託者の監督を適切に行うことができない特別の事情がある場合において、信託行為に信託監督人に関する定めがないとき、又は信託行為の定めにより信託監督人となるべき者として指定された者が就任の承諾をせず、若しくはこれをすることができないときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、信託監督人を選任することができる。
5 前項の規定による信託監督人の選任の裁判があったときは、当該信託監督人について信託行為に第1項の定めが設けられたものとみなす。
6 第4項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。
7 第4項の規定による信託監督人の選任の裁判に対しては、委託者、受託者若しくは受益者又は既に存する信託監督人に限り、即時抗告をすることができる。
8 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有する。
裁判所に信託監督人を決めて貰うことも可能としている。
信託監督人は、受益者のために自己の名をもって第92条各号(第17号、第18号、第21号及び第23号を除く。)に掲げる権利に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受益者が受託者に対して何らかの行為を求める権利を、信託監督人が受益者に代わって実行できるとしている。
しかし、親愛信託において、信託監督人の役割は別段の定めで決めることも有り得るので、実際には様々なパターンが考えられる。
2 2人以上の信託監督人があるときは、これらの者が共同してその権限に属する行為をしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
複数の信託監督人が存在するケースも想定されている。
信託監督人は、善良な管理者の注意をもって、前条第1項の権限を行使しなければならない。
2 信託監督人は、受益者のために、誠実かつ公平に前条第1項の権限を行使しなければならない。
信託監督人の義務については別段の定めは許されていない。
第56条の規定は、信託監督人の任務の終了について準用する。この場合において、同条第1項第5号中「次条」とあるのは「第134条第2項において準用する次条」と、同項第6号中「第58条」とあるのは「第134条第2項において準用する第58条」と読み替えるものとする。
2 第57条の規定は信託監督人の辞任について、第58条の規定は信託監督人の解任について、それぞれ準用する。
受託者に関する規定が準用されている。
第62条の規定は、前条第1項において準用する第56条第1項各号の規定により信託監督人の任務が終了した場合における新たな信託監督人(次項において「新信託監督人」という。)の選任について準用する。
2 新信託監督人が就任した場合には、信託監督人であった者は、遅滞なく、受益者に対しその事務の経過及び結果を報告し、新信託監督人がその事務の処理を行うのに必要な事務の引継ぎをしなければならない。
受託者に関する規定が準用されている。
信託監督人による事務の処理は、信託の清算の結了のほか、次に掲げる事由により終了する。ただし、第1号に掲げる事由による場合にあっては、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
委託者と受益者との合意があれば、信託監督人を実質的に解任することが可能とされているので、これを回避するためには別段の定めが必要となる。
一 委託者及び受益者が信託監督人による事務の処理を終了する旨の合意をしたこと。
二 信託行為において定めた事由
2 前項の規定により信託監督人による事務の処理が終了した場合には、信託監督人であった者は、遅滞なく、受益者に対しその事務の経過及び結果を報告しなければならない。
3 委託者が現に存しない場合には、第1項第1号の規定は、適用しない。
受託者に関する規定が準用されている。
第124条及び第127条の規定は、信託監督人について準用する。この場合において、同条第6項中「第123条第4項」とあるのは、「第131条第4項」と読み替えるものとする。
受託者は信託監督人を兼務できないとしているが、当然の事であろう。
信託行為においては、その代理する受益者を定めて、受益者代理人となるべき者を指定する定めを設けることができる。
受益者代理人は原則として受益者ごとに決めることになっているが、複数の受益者に対して一人の受益者代理人が指定されることも妨げられてはいない。
2 信託行為に受益者代理人となるべき者を指定する定めがあるときは、利害関係人は、受益者代理人となるべき者として指定された者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就任の承諾をするかどうかを確答すべき旨を催告することができる。ただし、当該定めに停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件が成就し、又は当該始期が到来した後に限る。
3 前項の規定による催告があった場合において、受益者代理人となるべき者として指定された者は、同項の期間内に委託者(委託者が現に存しない場合にあっては、受託者)に対し確答をしないときは、就任の承諾をしなかったものとみなす。
信託監督人の規定が準用されている。
受益者代理人は、その代理する受益者のために当該受益者の権利(第42条の規定による責任の免除に係るものを除く。)に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受益者代理人は、「受託者の責任免除」という信託の根幹に関わる事項以外の、受益者が持つ全ての権利行使ができるので、もし制限の必要があるなら別段の定めを置いておく必要がある。
2 受益者代理人がその代理する受益者のために裁判上又は裁判外の行為をするときは、その代理する受益者の範囲を示せば足りる。
受益者代理人は個別の代理権ではなく、包括的な権限を持つことを示している。
3 1人の受益者につき2人以上の受益者代理人があるときは、これらの者が共同してその権限に属する行為をしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受益者代理人が複数存在することも想定されている。
4 受益者代理人があるときは、当該受益者代理人に代理される受益者は、第92条各号に掲げる権利及び信託行為において定めた権利を除き、その権利を行使することができない。
受益者代理人が存在するときには、受益者は一部の事項以外の権利行使が一切できなくなるので、もし受益者に権限を残すニーズがあるなら、別段の定めを置いておく必要がある。
受益者代理人は、善良な管理者の注意をもって、前条第1項の権限を行使しなければならない。
2 受益者代理人は、その代理する受益者のために、誠実かつ公平に前条第1項の権限を行使しなければならない。
受益者代理人の義務についても、別段の定めでもって軽減することはできない。
第56条の規定は、受益者代理人の任務の終了について準用する。この場合において、同条第1項第5号中「次条」とあるのは「第141条第2項において準用する次条」と、同項第6号中「第58条」とあるのは「第141条第2項において準用する第58条」と読み替えるものとする。
2 第57条の規定は受益者代理人の辞任について、第58条の規定は受益者代理人の解任について、それぞれ準用する。
受託者に関する規定が準用されている。
第62条の規定は、前条第1項において準用する第56条第1項各号の規定により受益者代理人の任務が終了した場合における新たな受益者代理人(次項において「新受益者代理人」という。)の選任について準用する。この場合において、第62条第2項及び第4項中「利害関係人」とあるのは、「委託者又は受益者代理人に代理される受益者」と読み替えるものとする。
2 新受益者代理人が就任した場合には、受益者代理人であった者は、遅滞なく、その代理する受益者に対しその事務の経過及び結果を報告し、新受益者代理人がその事務の処理を行うのに必要な事務の引継ぎをしなければならない。
受託者に関する規定が準用されている。
受益者代理人による事務の処理は、信託の清算の結了のほか、次に掲げる事由により終了する。ただし、第1号に掲げる事由による場合にあっては、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
この条文の書き方から見ると、受益者代理人の職務は信託終了だけでは終わらず、清算決了まで継続するということになる。
一 委託者及び受益者代理人に代理される受益者が受益者代理人による事務の処理を終了する旨の合意をしたこと。
二 信託行為において定めた事由
2 前項の規定により受益者代理人による事務の処理が終了した場合には、受益者代理人であった者は、遅滞なく、その代理した受益者に対しその事務の経過及び結果を報告しなければならない。
3 委託者が現に存しない場合には、第1項第1号の規定は、適用しない。
受託者に関する規定が準用されている。
第124条及び第127条第1項から第5項までの規定は、受益者代理人について準用する。
受託者に関する規定が準用されている。
信託行為においては、委託者がこの法律の規定によるその権利の全部又は一部を有しない旨を定めることができる。
委託者の権利については、信託行為開始後は財産的部分がなくなり、監視的な部分のみになるので、権利自体を持たせるか否かを信託行為で決めることができるとされている。
2 信託行為においては、委託者も次に掲げる権利の全部又は一部を有する旨を定めることができる。
本来は信託における財産権者である受益者の権利であるが、必要によっては一部を委託者にも持たせても良いとする規定である。
一 第23条第5項又は第6項の規定による異議を主張する権利
二 第27条第1項又は第2項(これらの規定を第75条第4項において準用する場合を含む。)の規定による取消権
三 第31条第6項又は第7項の規定による取消権
四 第32条第4項の規定による権利
五 第38条第1項の規定による閲覧又は謄写の請求権
六 第39条第1項の規定による開示の請求権
七 第40条の規定による損失のてん補又は原状の回復の請求権
八 第41条の規定による損失のてん補又は原状の回復の請求権
九 第44条の規定による差止めの請求権
十 第46条第1項の規定による検査役の選任の申立権
十一 第59条第5項の規定による差止めの請求権
十二 第60条第3項又は第5項の規定による差止めの請求権
十三 第226条第1項の規定による金銭のてん補又は支払の請求権
十四 第228条第1項の規定による金銭のてん補又は支払の請求権
十五 第254条第1項の規定による損失のてん補の請求権
3 前項第1号、第7号から第9号まで又は第11号から第15号までに掲げる権利について同項の信託行為の定めがされた場合における第24条、第45条(第226条第6項、第228条第6項及び第254条第3項において準用する場合を含む。)又は第61条の規定の適用については、これらの規定中「受益者」とあるのは、「委託者又は受益者」とする。
4 信託行為においては、受託者が次に掲げる義務を負う旨を定めることができる。
一 この法律の規定により受託者が受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人。次号において同じ。)に対し通知すべき事項を委託者に対しても通知する義務
二 この法律の規定により受託者が受益者に対し報告すべき事項を委託者に対しても報告する義務
三 第77条第1項又は第184条第1項の規定により受託者がする計算の承認を委託者に対しても求める義務
5 委託者が2人以上ある信託における第1項、第2項及び前項の規定の適用については、これらの規定中「委託者」とあるのは、「委託者の全部又は一部」とする。
親愛信託においては、委託者に権利を持たせる必要はないものと思われる。
委託者の地位は、受託者及び受益者の同意を得て、又は信託行為において定めた方法に従い、第三者に移転することができる。
「委託者の地位」は財産権でもなく人格権でもない極めて微妙なもので、敢えて言うなら信託が無効となった際に所有権が戻ってくる対象でしかないが、本条では第三者への委託者の地位の移転の方法を示している。
2 委託者が2人以上ある信託における前項の規定の適用については、同項中「受託者及び受益者」とあるのは、「他の委託者、受託者及び受益者」とする。
第3条第2号に掲げる方法によって信託がされた場合には、委託者の相続人は、委託者の地位を相続により承継しない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
遺言信託の場合には、信託スタートの段階で委託者は死亡していることになるが、委託者の地位を相続人が承継しないとしており、この条文だけでは、委託者の地位が相続によって移転するのか否かについては明確になっていない。
第90条第1項各号に掲げる信託において、その信託の受益者が現に存せず、又は同条第2項の規定により受益者としての権利を有しないときは、委託者が第145条第2項各号に掲げる権利を有し、受託者が同条第4項各号に掲げる義務を負う。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
承継型信託において受益者が存在しない場合に委託者が受益者の持つべき権利を有するとしているが、現実には極めてレアなケースであると考えられる。
信託の変更は、委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。この場合においては、変更後の信託行為の内容を明らかにしてしなければならない。
信託行為の大原則として、当事者である委託者と受託者、財産権者である受益者の合意があれば自由に変更が可能としている。
2 前項の規定にかかわらず、信託の変更は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定めるものによりすることができる。この場合において、受託者は、第1号に掲げるときは委託者に対し、第2号に掲げるときは委託者及び受益者に対し、遅滞なく、変更後の信託行為の内容を通知しなければならない。
一 信託の目的に反しないことが明らかであるとき 受託者及び受益者の合意
委託者が定めた信託の目的に反しないなら、委託者を外しての変更も可としている。
二 信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるとき 受託者の書面又は電磁的記録によってする意思表示
受益者の利益に適合する内容であれば、受託者単独でも変更可としている。
3 前二項の規定にかかわらず、信託の変更は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める者による受託者に対する意思表示によってすることができる。この場合において、第2号に掲げるときは、受託者は、委託者に対し、遅滞なく、変更後の信託行為の内容を通知しなければならない。
一 受託者の利益を害しないことが明らかであるとき 委託者及び受益者
二 信託の目的に反しないこと及び受託者の利益を害しないことが明らかであるとき 受益者
委託者、受益者側からの変更も可としている。
4 前三項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
親愛信託においては、別段の定めでもって信託変更のルールを決めておくべきであろう。
5 委託者が現に存しない場合においては、第1項及び第3項第1号の規定は適用せず、第2項中「第1号に掲げるときは委託者に対し、第2号に掲げるときは委託者及び受益者に対し」とあるのは、「第2号に掲げるときは、受益者に対し」とする。
信託行為の当時予見することのできなかった特別の事情により、信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めが信託の目的及び信託財産の状況その他の事情に照らして受益者の利益に適合しなくなるに至ったときは、裁判所は、委託者、受託者又は受益者の申立てにより、信託の変更を命ずることができる。
2 前項の申立ては、当該申立てに係る変更後の信託行為の定めを明らかにしてしなければならない。
3 裁判所は、第1項の申立てについての裁判をする場合には、受託者の陳述を聴かなければならない。ただし、不適法又は理由がないことが明らかであるとして申立てを却下する裁判をするときは、この限りでない。
4 第1項の申立てについての裁判には、理由の要旨を付さなければならない。
5 第1項の申立てについての裁判に対しては、委託者、受託者又は受益者に限り、即時抗告をすることができる。
6 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有する。
訴訟前提の条文であるため、親愛信託とは馴染まないと思われる。
信託の併合は、従前の各信託の委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。この場合においては、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
一 信託の併合後の信託行為の内容
二 信託行為において定める受益権の内容に変更があるときは、その内容及び変更の理由
三 信託の併合に際して受益者に対し金銭その他の財産を交付するときは、当該財産の内容及びその価額
関係者全員の合意があれば、信託の併合は会社の合併のように自由にできるとされており、基本的には商事信託のための条文であるが、親愛信託においてもニーズが全くないというものではないと思われる。
四 信託の併合がその効力を生ずる日
五 その他法務省令で定める事項
2 前項の規定にかかわらず、信託の併合は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定めるものによってすることができる。この場合において、受託者は、第1号に掲げるときは委託者に対し、第2号に掲げるときは委託者及び受益者に対し、遅滞なく、同項各号に掲げる事項を通知しなければならない。
一 信託の目的に反しないことが明らかであるとき 受託者及び受益者の合意
二 信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるとき 受託者の書面又は電磁的記録によってする意思表示
3 前二項の規定にかかわらず、各信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
4 委託者が現に存しない場合においては、第1項の規定は適用せず、第2項中「第1号に掲げるときは委託者に対し、第2号に掲げるときは委託者及び受益者に対し」とあるのは、「第2号に掲げるときは、受益者に対し」とする。
信託併合の手続きを示しているが、別段の定めを許しているので、親愛信託においては簡易な信託併合を行うことも可能である。
信託の併合をする場合には、従前の信託の信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者は、受託者に対し、信託の併合について異議を述べることができる。ただし、信託の併合をしても当該債権者を害するおそれのないことが明らかであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により同項の債権者の全部又は一部が異議を述べることができる場合には、受託者は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、同項の債権者で知れているものには、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第2号の期間は、1箇月を下ることができない。
一 信託の併合をする旨
二 前項の債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
三 その他法務省令で定める事項
3 前項の規定にかかわらず、法人である受託者は、公告(次に掲げる方法によるものに限る。)をもって同項の規定による各別の催告に代えることができる。
一 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
二 電子公告(公告の方法のうち、電磁的方法(会社法(平成17年法律第86号)第2条第34号に規定する電磁的方法をいう。)により不特定多数の者が公告すべき内容である情報の提供を受けることができる状態に置く措置であって同号に規定するものをとる方法をいう。次節において同じ。)
4 第1項の債権者が第2項第2号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該信託の併合について承認をしたものとみなす。
5 第1項の債権者が第2項第2号の期間内に異議を述べたときは、受託者は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等(信託会社及び信託業務を営む金融機関(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(昭和18年法律第43号)第1条第1項の認可を受けた金融機関をいう。)をいう。次節において同じ。)に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該信託の併合をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。
債権者の異議に関して、株式会社の合併の規定と似た内容を示しているが、親愛信託においては問題となる条文ではない。
信託の併合がされた場合において、従前の信託の信託財産責任負担債務であった債務は、信託の併合後の信託の信託財産責任負担債務となる。
会社の合併と同じく、当然の事を示している条文である。
信託の併合がされた場合において、前条に規定する従前の信託の信託財産責任負担債務のうち信託財産限定責任負担債務(受託者が信託財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う信託財産責任負担債務をいう。以下この章において同じ。)であるものは、信託の併合後の信託の信託財産限定責任負担債務となる。
前条に同じ
吸収信託分割は、委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。この場合においては、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
会社の吸収分割と同様に吸収信託分割の規定を示しており、信託併合と同様に関係者全員の合意で可能としているが、吸収信託分割は信託併合よりも受益者に与える影響が大きい場合が多いと思われるので、やや厳格な規定となっている。親愛信託においても適用される場面が全くないとは言えない。
一 吸収信託分割後の信託行為の内容
二 信託行為において定める受益権の内容に変更があるときは、その内容及び変更の理由
三 吸収信託分割に際して受益者に対し金銭その他の財産を交付するときは、当該財産の内容及びその価額
四 吸収信託分割がその効力を生ずる日
五 移転する財産の内容
六 吸収信託分割によりその信託財産の一部を他の信託に移転する信託(以下この款において「分割信託」という。)の信託財産責任負担債務でなくなり、分割信託からその信託財産の一部の移転を受ける信託(以下「承継信託」という。)の信託財産責任負担債務となる債務があるときは、当該債務に係る事項
七 その他法務省令で定める事項
2 前項の規定にかかわらず、吸収信託分割は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定めるものによってすることができる。この場合において、受託者は、第1号に掲げるときは委託者に対し、第2号に掲げるときは委託者及び受益者に対し、遅滞なく、同項各号に掲げる事項を通知しなければならない。
一 信託の目的に反しないことが明らかであるとき 受託者及び受益者の合意
二 信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるとき 受託者の書面又は電磁的記録によってする意思表示
3 前二項の規定にかかわらず、各信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
4 委託者が現に存しない場合においては、第1項の規定は適用せず、第2項中「第1号に掲げるときは委託者に対し、第2号に掲げるときは委託者及び受益者に対し」とあるのは、「第2号に掲げるときは、受益者に対し」とする。
信託併合と同様に、手続きの方法を示している。
吸収信託分割をする場合には、分割信託又は承継信託の信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者は、受託者に対し、吸収信託分割について異議を述べることができる。ただし、吸収信託分割をしても当該債権者を害するおそれのないことが明らかであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により同項の債権者の全部又は一部が異議を述べることができる場合には、受託者は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、同項の債権者で知れているものには、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第2号の期間は、1箇月を下ることができない。
一 吸収信託分割をする旨
二 前項の債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
三 その他法務省令で定める事項
3 前項の規定にかかわらず、法人である受託者は、公告(次に掲げる方法によるものに限る。)をもって同項の規定による各別の催告に代えることができる。
一 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
二 電子公告
4 第1項の債権者が第2項第2号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該吸収信託分割について承認をしたものとみなす。
5 第1項の債権者が第2項第2号の期間内に異議を述べたときは、受託者は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該吸収信託分割をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。
これも信託併合と同様に債権者保護手続きを示しているが、親愛信託とは無関係であろう。
吸収信託分割がされた場合において、第155条第1項第6号の債務は、吸収信託分割後の分割信託の信託財産責任負担債務でなくなり、吸収信託分割後の承継信託の信託財産責任負担債務となる。この場合において、分割信託の信託財産限定責任負担債務であった債務は、承継信託の信託財産限定責任負担債務となる。
会社分割と同じく、当然の事を示している条文である。
第156条第1項の規定により異議を述べることができる債権者(同条第2項の規定により各別の催告をしなければならないものに限る。)は、同条第2項の催告を受けなかった場合には、吸収信託分割前から有する次の各号に掲げる債権に基づき、受託者に対し、当該各号に定める財産をもって当該債権に係る債務を履行することを請求することもできる。ただし、第1号に定める財産に対しては吸収信託分割がその効力を生ずる日における承継信託の移転を受ける財産の価額を、第2号に定める財産に対しては当該日における分割信託の信託財産の価額を限度とする。
一 分割信託の信託財産責任負担債務に係る債権(第155条第1項第6号の債務に係る債権を除く。) 吸収信託分割後の承継信託の信託財産に属する財産
二 承継信託の信託財産責任負担債務に係る債権(第155条第1項第6号の債務に係る債権に限る。) 吸収信託分割後の分割信託の信託財産に属する財産
債権者の異議に関して、会社分割の規定と似た内容を示しているが、親愛信託においては問題となる条文ではない。
新規信託分割は、委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。この場合においては、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
会社の新設分割と同様に新設信託分割の規定を示しており、やはり関係者全員の合意で可能としている。親愛信託においては、例えば各種の財産を一つの信託で組成してしまった後で一部の財産を別の信託に移したいというニーズが考えられ、吸収分割よりも適用される場面が多いのではないかと思われる。
一 新規信託分割後の信託行為の内容
二 信託行為において定める受益権の内容に変更があるときは、その内容及び変更の理由
三 新規信託分割に際して受益者に対し金銭その他の財産を交付するときは、当該財産の内容及びその価額
四 新規信託分割がその効力を生ずる日
五 移転する財産の内容
六 新規信託分割により従前の信託の信託財産責任負担債務でなくなり、新たな信託の信託財産責任負担債務となる債務があるときは、当該債務に係る事項
七 その他法務省令で定める事項
2 前項の規定にかかわらず、新規信託分割は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定めるものによってすることができる。この場合において、受託者は、第1号に掲げるときは委託者に対し、第2号に掲げるときは委託者及び受益者に対し、遅滞なく、同項各号に掲げる事項を通知しなければならない。
一 信託の目的に反しないことが明らかであるとき 受託者及び受益者の合意
二 信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるとき 受託者の書面又は電磁的記録によってする意思表示
3 前二項の規定にかかわらず、各信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
4 委託者が現に存しない場合においては、第1項の規定は適用せず、第2項中「第1号に掲げるときは委託者に対し、第2号に掲げるときは委託者及び受益者に対し」とあるのは、「第2号に掲げるときは、受益者に対し」とする。
吸収信託分割の規定とほぼパラレルである。
新規信託分割をする場合には、従前の信託の信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者は、受託者に対し、新規信託分割について異議を述べることができる。ただし、新規信託分割をしても当該債権者を害するおそれのないことが明らかであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により同項の債権者の全部又は一部が異議を述べることができる場合には、受託者は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、同項の債権者で知れているものには、各別に催告しなければならない。ただし、第2号の期間は、1箇月を下ることができない。
一 新規信託分割をする旨
二 前項の債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
三 その他法務省令で定める事項
3 前項の規定にかかわらず、法人である受託者は、公告(次に掲げる方法によるものに限る。)をもって同項の規定による各別の催告に代えることができる。
一 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
二 電子公告
4 第1項の債権者が第2項第2号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該新規信託分割について承認をしたものとみなす。
5 第1項の債権者が第2項第2号の期間内に異議を述べたときは、受託者は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該新規信託分割をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。
債権者の異議に関して、会社分割の規定と似た内容を示しているが、親愛信託においては問題となる条文ではない。
新規信託分割がされた場合において、第159条第1項第6号の債務は、新規信託分割後の従前の信託の信託財産責任負担債務でなくなり、新規信託分割後の新たな信託の信託財産責任負担債務となる。この場合において、従前の信託の信託財産限定責任負担債務であった債務は、新たな信託の信託財産限定責任負担債務となる。
会社分割と同じく、当然の事を示している条文である。
第160条第1項の規定により異議を述べることができる債権者(同条第2項の規定により各別の催告をしなければならないものに限る。)は、同条第2項の催告を受けなかった場合には、新規信託分割前から有する次の各号に掲げる債権に基づき、受託者に対し、当該各号に定める財産をもって当該債権に係る債務を履行することを請求することもできる。ただし、第1号に定める財産に対しては新規信託分割がその効力を生ずる日における新たな信託の信託財産の価額を、第2号に定める財産に対しては当該日における従前の信託の信託財産の価額を限度とする。
一 従前の信託の信託財産責任負担債務に係る債権(第159条第1項第6号の債務に係る債権を除く。) 新規信託分割後の新たな信託の信託財産に属する財産
二 新たな信託の信託財産責任負担債務に係る債権となった債権(第159条第1項第6号の債務に係る債権に限る。) 新規信託分割後の従前の信託の信託財産に属する財産
債権者の異議に関して、会社分割の規定と似た内容を示している。
信託は、次条の規定によるほか、次に掲げる場合に終了する。
信託の終了事由を規定する重要な条文である。信託の終了原因を限定列挙していると考えるなら、本条に示されていない信託終了事由は存在しないということになる。
一 信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったとき。
「信託の目的の達成・不達成」は、やや抽象的な概念であるので、注意が必要である。
二 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき。
これが我が国の信託法独自の規定である、いわゆる「1年ルール」であり、この条項があるために自己信託の普及が遅れていると言える。
三 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき。
こちらも「1年ルール」であるが、受託者が欠けている状態でも1年間は信託は終了しないとされていることは、民法上の契約行為では有り得ない規定であり、注目する必要がある。
四 受託者が第52条(第53条第2項及び第54条第4項において準用する場合を含む。)の規定により信託を終了させたとき。
受託者による信託の終了が52条で規定されており、ここで再度信託終了事由として挙げられている。ということは、91条で規定されている「30年ルール」によって信託が終了するという説は根拠を失うことになる。
五 信託の併合がされたとき。
六 第165条又は第166条の規定により信託の終了を命ずる裁判があったとき。
七 信託財産についての破産手続開始の決定があったとき。
八 委託者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた場合において、破産法第53条第1項、民事再生法第49条第1項又は会社更生法第61条第1項(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第41条第1項及び第206条第1項において準用する場合を含む。)の規定による信託契約の解除がされたとき。
九 信託行為において定めた事由が生じたとき。
親愛信託においては、終了事由は信託行為の中で決めておくべきであろう。
委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。
委託者と受益者の合意で信託を終了することが可能なので、委託者兼受益者の成年後見人による信託の終了が可能とする解釈が成り立ってしまうことに注意しておく必要がある。
2 委託者及び受益者が受託者に不利な時期に信託を終了したときは、委託者及び受益者は、受託者の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
3 前二項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
親愛信託においては、この別段の定めが必須となる。
4 委託者が現に存しない場合には、第1項及び第2項の規定は、適用しない。
信託行為の当時予見することのできなかった特別の事情により、信託を終了することが信託の目的及び信託財産の状況その他の事情に照らして受益者の利益に適合するに至ったことが明らかであるときは、裁判所は、委託者、受託者又は受益者の申立てにより、信託の終了を命ずることができる。
2 裁判所は、前項の申立てについての裁判をする場合には、受託者の陳述を聴かなければならない。ただし、不適法又は理由がないことが明らかであるとして申立てを却下する裁判をするときは、この限りでない。
3 第1項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。
4 第1項の申立てについての裁判に対しては、委託者、受託者又は受益者に限り、即時抗告をすることができる。
5 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有する。
訴訟を前提とした規定である。
裁判所は、次に掲げる場合において、公益を確保するため信託の存立を許すことができないと認めるときは、法務大臣又は委託者、受益者、信託債権者その他の利害関係人の申立てにより、信託の終了を命ずることができる。
一 不法な目的に基づいて信託がされたとき。
二 受託者が、法令若しくは信託行為で定めるその権限を逸脱し若しくは濫用する行為又は刑罰法令に触れる行為をした場合において、法務大臣から書面による警告を受けたにもかかわらず、なお継続的に又は反覆して当該行為をしたとき。
2 裁判所は、前項の申立てについての裁判をする場合には、受託者の陳述を聴かなければならない。ただし、不適法又は理由がないことが明らかであるとして申立てを却下する裁判をするときは、この限りでない。
3 第1項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。
4 第1項の申立てについての裁判に対しては、同項の申立てをした者又は委託者、受託者若しくは受益者に限り、即時抗告をすることができる。
5 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有する。
6 委託者、受益者、信託債権者その他の利害関係人が第1項の申立てをしたときは、裁判所は、受託者の申立てにより、同項の申立てをした者に対し、相当の担保を立てるべきことを命ずることができる。
7 受託者は、前項の規定による申立てをするには、第1項の申立てが悪意によるものであることを疎明しなければならない。
8 民事訴訟法(平成8年法律第109号)第75条第5項及び第7項並びに第76条から第80条までの規定は、第6項の規定により第1項の申立てについて立てるべき担保について準用する。
訴訟を前提とした規定である。
裁判所その他の官庁、検察官又は吏員は、その職務上前条第1項の申立て又は同項第2号の警告をすべき事由があることを知ったときは、法務大臣にその旨を通知しなければならない。
親愛信託とは無縁の規定である。
裁判所は、第166条第1項の申立てについての裁判をする場合には、法務大臣に対し、意見を求めなければならない。
2 法務大臣は、裁判所が前項の申立てに係る事件について審問をするときは、当該審問に立ち会うことができる。
3 裁判所は、法務大臣に対し、第1項の申立てに係る事件が係属したこと及び前項の審問の期日を通知しなければならない。
4 第1項の申立てを却下する裁判に対しては、第166条第4項に規定する者のほか、法務大臣も、即時抗告をすることができる。
親愛信託とは無縁の規定である。
裁判所は、第166条第1項の申立てがあった場合には、法務大臣若しくは委託者、受益者、信託債権者その他の利害関係人の申立てにより又は職権で、同項の申立てにつき決定があるまでの間、信託財産に関し、管理人による管理を命ずる処分(次条において「管理命令」という。)その他の必要な保全処分を命ずることができる。
2 裁判所は、前項の規定による保全処分を変更し、又は取り消すことができる。
3 第1項の規定による保全処分及び前項の規定による決定に対しては、利害関係人に限り、即時抗告をすることができる。
親愛信託とは無縁の規定である。
裁判所は、管理命令をする場合には、当該管理命令において、管理人を選任しなければならない。
2 前項の管理人は、裁判所が監督する。
3 裁判所は、第1項の管理人に対し、信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況の報告をし、かつ、その管理の計算をすることを命ずることができる。
4 第64条から第72条までの規定は、第1項の管理人について準用する。この場合において、第65条中「前受託者」とあるのは、「受託者」と読み替えるものとする。
5 信託財産に属する権利で登記又は登録がされたものに関し前条第1項の規定による保全処分(管理命令を除く。)があったときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、当該保全処分の登記又は登録を嘱託しなければならない。
6 前項の規定は、同項に規定する保全処分の変更若しくは取消しがあった場合又は当該保全処分が効力を失った場合について準用する。
親愛信託とは無縁の規定である。
裁判所が第169条第1項の規定による保全処分をした場合には、非訟事件の手続の費用は、受託者の負担とする。当該保全処分について必要な費用も、同様とする。
2 前項の保全処分又は第169条第1項の申立てを却下する裁判に対して即時抗告があった場合において、抗告裁判所が当該即時抗告を理由があると認めて原裁判を取り消したときは、その抗告審における手続に要する裁判費用及び抗告人が負担した前審における手続に要する裁判費用は、受託者の負担とする。
親愛信託とは無縁の規定である。
利害関係人は、裁判所書記官に対し、第170条第3項の報告又は計算に関する資料の閲覧を請求することができる。
2 利害関係人は、裁判所書記官に対し、前項の資料の謄写又はその正本、謄本若しくは抄本の交付を請求することができる。
3 前項の規定は、第1項の資料のうち録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、これらの物について利害関係人の請求があるときは、裁判所書記官は、その複製を許さなければならない。
4 法務大臣は、裁判所書記官に対し、第1項の資料の閲覧を請求することができる。
5 民事訴訟法第91条第5項の規定は、第1項の資料について準用する。
親愛信託とは無縁の規定である。
裁判所は、第166条第1項の規定により信託の終了を命じた場合には、法務大臣若しくは委託者、受益者、信託債権者その他の利害関係人の申立てにより又は職権で、当該信託の清算のために新受託者を選任しなければならない。
2 前項の規定による新受託者の選任の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
3 第1項の規定により新受託者が選任されたときは、前受託者の任務は、終了する。
4 第1項の新受託者は、信託財産から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。
5 前項の規定による費用又は報酬の額を定める裁判をする場合には、第1項の新受託者の陳述を聴かなければならない。
6 第4項の規定による費用又は報酬の額を定める裁判に対しては、第1項の新受託者に限り、即時抗告をすることができる。
親愛信託とは無縁の規定である。
信託が終了した場合には、当該信託を承継信託とする吸収信託分割は、することができない。
親愛信託とは無縁の規定である。
信託は、当該信託が終了した場合(第163条第5号に掲げる事由によって終了した場合及び信託財産についての破産手続開始の決定により終了した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)には、この節の定めるところにより、清算をしなければならない。
会社の解散と清算の関係と同じく、信託は終了しても、その後に清算が必要であることを示している。
信託は、当該信託が終了した場合においても、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。
清算が決了しない限り、信託財産は民法上の所有権には戻らないということで、ここでも会社の清算と同じ考え方をしている。
信託が終了した時以後の受託者(以下「清算受託者」という。)は、次に掲げる職務を行う。
会社の取締役と清算人の関係と同じく、清算受託者という地位を認めており、一般的には信託終了時の受託者がスライドするが、受託者とは別の地位なので、別の者が就任することも可能であると考えられる。
一 現務の結了
二 信託財産に属する債権の取立て及び信託債権に係る債務の弁済
三 受益債権(残余財産の給付を内容とするものを除く。)に係る債務の弁済
四 残余財産の給付
会社の清算人の職務と同様である。
清算受託者は、信託の清算のために必要な一切の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
清算受託者は、会社の清算人と同じく、既に信託は終了しているため、信託の目的に沿った職務はできず、清算に関する行為のみが許される。
2 清算受託者は、次に掲げる場合には、信託財産に属する財産を競売に付することができる。
一 受益者又は第182条第1項第2号に規定する帰属権利者(以下この条において「受益者等」と総称する。)が信託財産に属する財産を受領することを拒み、又はこれを受領することができない場合において、相当の期間を定めてその受領の催告をしたとき。
二 受益者等の所在が不明である場合
3 前項第1号の規定により信託財産に属する財産を競売に付したときは、遅滞なく、受益者等に対しその旨の通知を発しなければならない。
4 損傷その他の事由による価格の低落のおそれがある物は、第2項第1号の催告をしないで競売に付することができる。
一般的には清算決了後は帰属権利者に信託財産は引き渡されるが、例外を設けている。
清算中の信託において、信託財産に属する財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算受託者は、直ちに信託財産についての破産手続開始の申立てをしなければならない。
2 信託財産についての破産手続開始の決定がされた場合において、清算受託者が既に信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者に支払ったものがあるときは、破産管財人は、これを取り戻すことができる。
清算受託者の職務に関する規定で、債務超過の場合の取り扱いを定めている。
清算受託者は、条件付債権、存続期間が不確定な債権その他その額が不確定な債権に係る債務を弁済することができる。この場合においては、これらの債権を評価させるため、裁判所に対し、鑑定人の選任の申立てをしなければならない。
2 前項の場合には、清算受託者は、同項の鑑定人の評価に従い同項の債権に係る債務を弁済しなければならない。
3 第1項の鑑定人の選任の手続に関する費用は、清算受託者の負担とする。当該鑑定人による鑑定のための呼出し及び質問に関する費用についても、同様とする。
4 第1項の申立てを却下する裁判には、理由を付さなければならない。
5 第1項の規定による鑑定人の選任の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
6 前各項の規定は、清算受託者、受益者、信託債権者及び第182条第1項第2号に規定する帰属権利者の間に別段の合意がある場合には、適用しない。
清算受託者の職務に関する一般的な規定である。
清算受託者は、第177条第2号及び第3号の債務を弁済した後でなければ、信託財産に属する財産を次条第2項に規定する残余財産受益者等に給付することができない。ただし、当該債務についてその弁済をするために必要と認められる財産を留保した場合は、この限りでない。
清算受託者の職務に関する一般的規定である。
残余財産は、次に掲げる者に帰属する。
一 信託行為において残余財産の給付を内容とする受益債権に係る受益者(次項において「残余財産受益者」という。)となるべき者として指定された者
信託行為に「残余財産の給付を受ける受益者」として指定された者を指すが、親愛信託においては事項の帰属権利者を使うのが一般的である。
二 信託行為において残余財産の帰属すべき者(以下この節において「帰属権利者」という。)となるべき者として指定された者
信託の清算決了後の残余財産を取得する者で、帰属権利者が取得した段階で、信託財産は民法上の財産に戻ることになる。
2 信託行為に残余財産受益者若しくは帰属権利者(以下この項において「残余財産受益者等」と総称する。)の指定に関する定めがない場合又は信託行為の定めにより残余財産受益者等として指定を受けた者のすべてがその権利を放棄した場合には、信託行為に委託者又はその相続人その他の一般承継人を帰属権利者として指定する旨の定めがあったものとみなす。
このような「みなし規定」が存在しているということは、帰属権利者が残余財産を取得するまでは、その財産は信託財産であり、民法上の相続財産ではないということである。
3 前二項の規定により残余財産の帰属が定まらないときは、残余財産は、清算受託者に帰属する。
民法上の財産となる場合には権利者不明では困るので、最終的な財産取得者として清算受託者を指定している。
信託行為の定めにより帰属権利者となるべき者として指定された者は、当然に残余財産の給付をすべき債務に係る債権を取得する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
「残余財産の給付をすべき債務に係る債権」という用語が微妙であるが、別段の定めがない限り、信託の清算決了と同時に帰属権利者が財産を取得すると考えて差し支えないであろう。
2 第88条第2項の規定は、前項に規定する帰属権利者となるべき者として指定された者について準用する。
帰属権利者が自分の権利の存在を知らない場合に、清算受託者に通知義務を課している。
3 信託行為の定めにより帰属権利者となった者は、受託者に対し、その権利を放棄する旨の意思表示をすることができる。ただし、信託行為の定めにより帰属権利者となった者が信託行為の当事者である場合は、この限りでない。
受益権放棄の規定を準用している。
4 前項本文に規定する帰属権利者となった者は、同項の規定による意思表示をしたときは、当初から帰属権利者としての権利を取得していなかったものとみなす。ただし、第三者の権利を害することはできない。
前項に同じ
5 第100条及び第102条の規定は、帰属権利者が有する債権で残余財産の給付をすべき債務に係るものについて準用する。
信託財産のみでもって給付するということである。
6 帰属権利者は、信託の清算中は、受益者とみなす。
この「みなし規定」が存在するので、清算期間中も受益者が存しない信託とはならない。
清算受託者は、その職務を終了したときは、遅滞なく、信託事務に関する最終の計算を行い、信託が終了した時における受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)及び帰属権利者(以下この条において「受益者等」と総称する。)のすべてに対し、その承認を求めなければならない。
2 受益者等が前項の計算を承認した場合には、当該受益者等に対する清算受託者の責任は、免除されたものとみなす。ただし、清算受託者の職務の執行に不正の行為があったときは、この限りでない。
3 受益者等が清算受託者から第1項の計算の承認を求められた時から1箇月以内に異議を述べなかった場合には、当該受益者等は、同項の計算を承認したものとみなす。
清算受託者の職務終了に関する一般的規定である。
信託行為においては、この章の定めるところにより、一又は二以上の受益権を表示する証券(以下「受益証券」という。)を発行する旨を定めることができる。
2 前項の規定は、当該信託行為において特定の内容の受益権については受益証券を発行しない旨を定めることを妨げない。
3 第1項の定めのある信託(以下「受益証券発行信託」という。)においては、信託の変更によって前二項の定めを変更することはできない。
4 第1項の定めのない信託においては、信託の変更によって同項又は第2項の定めを設けることはできない。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定であるが、親愛信託でも受益証券を発行できない訳ではないという部分に注意が必要かもしれない。
受益証券発行信託の受託者は、遅滞なく、受益権原簿を作成し、これに次に掲げる事項(以下この章において「受益権原簿記載事項」という。)を記載し、又は記録しなければならない。
一 各受益権に係る受益債権の内容その他の受益権の内容を特定するものとして法務省令で定める事項
二 各受益権に係る受益証券の番号、発行の日、受益証券が記名式か又は無記名式かの別及び無記名式の受益証券の数
三 各受益権に係る受益者(無記名受益権の受益者を除く。)の氏名又は名称及び住所
四 前号の受益者が各受益権を取得した日
五 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
第185条第2項の定めのある受益権の受益者は、受益証券発行信託の受託者に対し、当該受益者についての受益権原簿に記載され、若しくは記録された受益権原簿記載事項を記載した書面の交付又は当該受益権原簿記載事項を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。
2 前項の書面には、受益証券発行信託の受託者(法人である受託者にあっては、その代表者。次項において同じ。)が署名し、又は記名押印しなければならない。
3 第1項の電磁的記録には、受益証券発行信託の受託者が法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
4 受益証券発行信託の受託者が2人以上ある場合における前二項の規定の適用については、これらの規定中「受益証券発行信託の受託者」とあるのは、「受益証券発行信託の
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券発行信託の受託者は、受益権原簿管理人(受益証券発行信託の受託者に代わって受益権原簿の作成及び備置きその他の受益権原簿に関する事務を行う者をいう。以下同じ。)を定め、当該事務を行うことを委託することができる。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券発行信託の受託者は、一定の日(以下この条において「基準日」という。)を定めて、基準日において受益権原簿に記載され、又は記録されている受益者(以下この条において「基準日受益者」という。)をその権利を行使することができる者と定めることができる。
2 前項の規定は、無記名受益権の受益者については、適用しない。
3 基準日を定める場合には、受益証券発行信託の受託者は、基準日受益者が行使することができる権利(基準日から3箇月以内に行使するものに限る。)の内容を定めなければならない。
4 受益証券発行信託の受託者は、基準日を定めたときは、当該基準日の2週間前までに、当該基準日及び前項の規定により定めた事項を官報に公告しなければならない。ただし、信託行為に当該基準日及び基準日受益者が行使することができる権利の内容について定めがあるときは、この限りでない。
5 第1項、第3項及び前項本文の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券発行信託の受託者は、受益権原簿をその住所(当該受託者が法人である場合(受益権原簿管理人が現に存する場合を除く。)にあってはその主たる事務所、受益権原簿管理人が現に存する場合にあってはその営業所)に備え置かなければならない。
2 委託者、受益者その他の利害関係人は、受益証券発行信託の受託者に対し、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
一 受益権原簿が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二 受益権原簿が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
3 前項の請求があったときは、受益証券発行信託の受託者は、次のいずれかに該当すると認められる場合を除き、これを拒むことができない。
一 当該請求を行う者(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
二 請求者が不適当な時に請求を行ったとき。
三 請求者が信託事務の処理を妨げ、又は受益者の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
四 請求者が前項の規定による閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき。
五 請求者が、過去2年以内において、前項の規定による閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。
4 第186条第3号又は第4号に掲げる事項(第185条第2項の定めのない受益権に係るものに限る。)について第2項の請求があった場合において、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券発行信託の受託者が受益者に対してする通知又は催告は、受益権原簿に記載し、又は記録した当該受益者の住所(当該受益者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該受託者に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。
2 前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。
3 受益証券発行信託の受益権が2人以上の者の共有に属するときは、共有者は、受益証券発行信託の受託者が受益者に対してする通知又は催告を受領する者1人を定め、当該受託者に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければならない。この場合においては、その者を受益者とみなして、前二項の規定を適用する。
4 前項の規定による共有者の通知がない場合には、受益証券発行信託の受託者が受益権の共有者に対してする通知又は催告は、そのうちの1人に対してすれば足りる。
5 この法律の規定により受益証券発行信託の受託者が無記名受益権の受益者に対してすべき通知は、当該受益者のうち当該受託者に氏名又は名称及び住所の知れている者に対してすれば足りる。この場合においては、当該受託者は、その通知すべき事項を官報に公告しなければならない。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
無記名受益権の受益者は、受益証券発行信託の受託者その他の者に対しその権利を行使しようとするときは、その受益証券を当該受託者その他の者に提示しなければならない。
2 無記名受益権の受益者は、受益者集会において議決権を行使しようとするときは、受益者集会の日の1週間前までに、その受益証券を第108条に規定する招集者に提示しなければならない。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券発行信託の受益権が2人以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該受益権についての権利を行使する者1人を定め、受益証券発行信託の受託者に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該受益権についての権利を行使することができない。ただし、当該受託者が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券発行信託の受益権(第185条第2項の定めのある受益権を除く。)の譲渡は、当該受益権に係る受益証券を交付しなければ、その効力を生じない。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券発行信託の受益権の譲渡は、その受益権を取得した者の氏名又は名称及び住所を受益権原簿に記載し、又は記録しなければ、受益証券発行信託の受託者に対抗することができない。
2 第185条第2項の定めのある受益権に関する前項の規定の適用については、同項中「受託者」とあるのは、「受託者その他の第三者」とする。
3 第1項の規定は、無記名受益権については、適用しない。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券の占有者は、当該受益証券に係る受益権を適法に有するものと推定する。
2 受益証券の交付を受けた者は、当該受益証券に係る受益権についての権利を取得する。ただし、その者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りでない。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券発行信託の受託者は、次の各号に掲げる場合には、法務省令で定めるところにより、当該各号の受益権の受益者に係る受益権原簿記載事項を受益権原簿に記載し、又は記録しなければならない。
一 受益証券発行信託の受益権を取得した場合において、当該受益権が消滅しなかったとき。
二 前号の受益証券発行信託の受益権を処分したとき。
2 受益証券発行信託の受託者は、信託の変更によって受益権の併合がされた場合には、併合された受益権について、その受益権の受益者に係る受益権原簿記載事項を受益権原簿に記載し、又は記録しなければならない。
3 受益証券発行信託の受託者は、信託の変更によって受益権の分割がされた場合には、分割された受益権について、その受益権の受益者に係る受益権原簿記載事項を受益権原簿に記載し、又は記録しなければならない。
4 前三項の規定は、無記名受益権については、適用しない。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券発行信託の受益権を受益証券発行信託の受託者以外の者から取得した者(当該受託者を除く。)は、受益証券発行信託の受託者に対し、当該受益権に係る受益権原簿記載事項を受益権原簿に記載し、又は記録することを請求することができる。
2 前項の規定による請求は、利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定める場合を除き、その取得した受益権の受益者として受益権原簿に記載され、若しくは記録された者又はその相続人その他の一般承継人と共同してしなければならない。
3 前二項の規定は、無記名受益権については、適用しない。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券発行信託の受益権(第185条第2項の定めのある受益権を除く。)の質入れは、当該受益権に係る受益証券を交付しなければ、その効力を生じない。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券発行信託の受益権(第185条第2項の定めのある受益権を除く。)の質権者は、継続して当該受益権に係る受益証券を占有しなければ、その質権をもって受益証券発行信託の受託者その他の第三者に対抗することができない。
2 第185条第2項の定めのある受益権の質入れは、その質権者の氏名又は名称及び住所を受益権原簿に記載し、又は記録しなければ、受益証券発行信託の受託者その他の第三者に対抗することができない。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券発行信託の受益権に質権を設定した者は、受益証券発行信託の受託者に対し、次に掲げる事項を受益権原簿に記載し、又は記録することを請求することができる。
一 質権者の氏名又は名称及び住所
二 質権の目的である受益権
2 前項の規定は、無記名受益権については、適用しない。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
前条第1項各号に掲げる事項が受益権原簿に記載され、又は記録された質権者(以下この節において「登録受益権質権者」という。)は、受益証券発行信託の受託者に対し、当該登録受益権質権者についての受益権原簿に記載され、若しくは記録された同項各号に掲げる事項を記載した書面の交付又は当該事項を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。
2 前項の書面には、受益証券発行信託の受託者(法人である受託者にあっては、その代表者。次項において同じ。)が署名し、又は記名押印しなければならない。
3 第1項の電磁的記録には、受益証券発行信託の受託者が法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
4 受益証券発行信託の受託者が2人以上ある場合における前二項の規定の適用については、これらの規定中「受益証券発行信託の受託者」とあるのは、「受益証券発行信託のすべての受託者」とする。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券発行信託の受託者が登録受益権質権者に対してする通知又は催告は、受益権原簿に記載し、又は記録した当該登録受益権質権者の住所(当該登録受益権質権者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該受託者に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。
2 前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券発行信託の受託者は、信託の変更によって受益権の併合がされた場合において、当該受益権を目的とする質権の質権者が登録受益権質権者であるときは、併合された受益権について、その質権者の氏名又は名称及び住所を受益権原簿に記載し、又は記録しなければならない。
2 受益証券発行信託の受託者は、信託の変更によって受益権の分割がされた場合において、当該受益権を目的とする質権の質権者が登録受益権質権者であるときは、分割された受益権について、その質権者の氏名又は名称及び住所を受益権原簿に記載し、又は記録しなければならない。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券発行信託の受託者は、前条第1項に規定する場合には、併合された受益権に係る受益証券を登録受益権質権者に引き渡さなければならない。
2 受益証券発行信託の受託者は、前条第2項に規定する場合には、分割された受益権に係る受益証券を登録受益権質権者に引き渡さなければならない。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
第185条第2項の定めのある受益権で他の信託の信託財産に属するものについては、当該受益権が信託財産に属する旨を受益権原簿に記載し、又は記録しなければ、当該受益権が信託財産に属することを受益証券発行信託の受託者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の受益権が属する他の信託の受託者は、受益証券発行信託の受託者に対し、当該受益権が信託財産に属する旨を受益権原簿に記載し、又は記録することを請求することができる。
3 受益権原簿に前項の規定による記載又は記録がされた場合における第187条の規定の適用については、同条第1項中「第185条第2項の定めのある受益権の受益者」とあるのは「第206条第1項の受益権が属する他の信託の受託者」と、「当該受益者」とあるのは「当該受益権」と、「記録された受益権原簿記載事項」とあるのは「記録された受益権原簿記載事項(当該受益権が信託財産に属する旨を含む。)」とする。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券発行信託の受託者は、信託行為の定めに従い、遅滞なく、当該受益権に係る受益証券を発行しなければならない。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券発行信託の受益者は、受益証券発行信託の受託者に対し、当該受益者の有する受益権に係る受益証券の所持を希望しない旨を申し出ることができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
2 前項の規定による申出は、その申出に係る受益権の内容を明らかにしてしなければならない。この場合において、当該受益権に係る受益証券が発行されているときは、当該受益者は、当該受益証券を受益証券発行信託の受託者に提出しなければならない。
3 第1項の規定による申出を受けた受益証券発行信託の受託者は、遅滞なく、前項前段の受益権に係る受益証券を発行しない旨を受益権原簿に記載し、又は記録しなければならない。
4 受益証券発行信託の受託者は、前項の規定による記載又は記録をしたときは、第2項前段の受益権に係る受益証券を発行することができない。
5 第2項後段の規定により提出された受益証券は、第3項の規定による記載又は記録をした時において、無効となる。
6 第1項の規定による申出をした受益者は、いつでも、受益証券発行信託の受託者に対し、第2項前段の受益権に係る受益証券を発行することを請求することができる。この場合において、同項後段の規定により提出された受益証券があるときは、受益証券の発行に要する費用は、当該受益者の負担とする。
7 前各項の規定は、無記名受益権については、適用しない。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券には、次に掲げる事項及びその番号を記載し、受益証券発行信託の受託者(法人である受託者にあっては、その代表者)がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
一 受益証券発行信託の受益証券である旨
二 当初の委託者及び受益証券発行信託の受託者の氏名又は名称及び住所
三 記名式の受益証券にあっては、受益者の氏名又は名称
四 各受益権に係る受益債権の内容その他の受益権の内容を特定するものとして法務省令で定める事項
五 受益証券発行信託の受託者に対する費用等の償還及び損害の賠償に関する信託行為の定め
六 信託報酬の計算方法並びにその支払の方法及び時期
七 記名式の受益証券をもって表示される受益権について譲渡の制限があるときは、その旨及びその内容
八 受益者の権利の行使に関する信託行為の定め(信託監督人及び受益者代理人に係る事項を含む。)
九 その他法務省令で定める事項
2 受益証券発行信託の受託者が2人以上ある場合における前項の規定の適用については、同項中「受益証券発行信託の受託者」とあるのは、「受益証券発行信託のすべての受託者」とする。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券が発行されている受益権の受益者は、いつでも、その記名式の受益証券を無記名式とし、又はその無記名式の受益証券を記名式とすることを請求することができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券は、非訟事件手続法(平成23年法律第51号)第100条に規定する公示催告手続によって無効とすることができる。
2 受益証券を喪失した者は、非訟事件手続法第106条第1項に規定する除権決定を得た後でなければ、その再発行を請求することができない。
3 受益証券を喪失した者が非訟事件手続法第114条に規定する公示催告の申立てをしたときは、当該受益証券を喪失した者は、相当の担保を供して、受益証券発行信託の受託者に当該受益証券に係る債務を履行させることができる。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券発行信託においては、第29条第2項ただし書の規定にかかわらず、信託行為の定めにより同項本文の義務を軽減することはできない。
2 受益証券発行信託においては、第35条第4項の規定は、適用しない。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券発行信託においては、第92条第1号、第5号、第6号及び第8号の規定にかかわらず、次に掲げる権利の全部又は一部について、総受益者の議決権の百分の三(これを下回る割合を信託行為において定めた場合にあっては、その割合。以下この項において同じ。)以上の割合の受益権を有する受益者又は現に存する受益権の総数の百分の三以上の数の受益権を有する受益者に限り当該権利を行使することができる旨の信託行為の定めを設けることができる。
一 第27条第1項又は第2項(これらの規定を第75条第4項において準用する場合を含む。)の規定による取消権
二 第31条第6項又は第7項の規定による取消権
三 第38条第1項の規定による閲覧又は謄写の請求権
四 第46条第1項の規定による検査役の選任の申立権
2 受益証券発行信託においては、第92条第1号の規定にかかわらず、次に掲げる権利の全部又は一部について、総受益者の議決権の十分の一(これを下回る割合を信託行為において定めた場合にあっては、その割合。以下この項において同じ。)以上の割合の受益権を有する受益者又は現に存する受益権の総数の十分の一以上の数の受益権を有する受益者に限り当該権利を行使することができる旨の信託行為の定めを設けることができる。
一 第150条第1項の規定による信託の変更を命ずる裁判の申立権
二 第165条第1項の規定による信託の終了を命ずる裁判の申立権
3 受益証券発行信託において、第39条第1項の規定による開示が同条第3項の信託行為の定めにより制限されているときは、前二項の規定は、適用しない。
4 受益証券発行信託においては、第92条第11号の規定にかかわらず、6箇月(これを下回る期間を信託行為において定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き受益権を有する受益者に限り第44条第1項の規定による差止めの請求権を行使することができる旨の信託行為の定めを設けることができる。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益者が2人以上ある受益証券発行信託においては、信託行為に別段の定めがない限り、信託行為に受益者の意思決定(第92条各号に掲げる権利の行使に係るものを除く。)は第4章第3節第2款の定めるところによる受益者集会における多数決による旨の定めがあるものとみなす。
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
受益証券発行信託においては、この法律の規定による委託者の権利のうち次に掲げる権利は、受益者がこれを行使する。
一 第36条の規定による報告を求める権利
二 第58条第4項(第134条第2項及び第141条第2項において準用する場合を含む。)、第62条第4項(第135条第1項及び第142条第1項において準用する場合を含む。)、第63条第1項、第74条第2項、第131条第4項、第150条第1項、第165条第1項、第166条第1項、第169条第1項又は第173条第1項の規定による申立権
三 第62条第2項、第131条第2項又は第138条第2項の規定による催告権
四 第172条第1項、第2項又は第3項後段の規定による閲覧、謄写若しくは交付又は複製の請求権
五 第190条第2項の規定による閲覧又は謄写の請求権
商事信託以外では使われる可能性が全くない規定である。
限定責任信託は、信託行為においてそのすべての信託財産責任負担債務について受託者が信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う旨の定めをし、第232条の定めるところにより登記をすることによって、限定責任信託としての効力を生ずる。
限定責任信託に関する規定を定めており、これこそが本来の信託の形であるので、親愛信託においても活用が考えられるため、確認しておく必要がある。
2 前項の信託行為においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 限定責任信託の目的
二 限定責任信託の名称
三 委託者及び受託者の氏名又は名称及び住所
四 限定責任信託の主たる信託事務の処理を行うべき場所(第3節において「事務処理地」という。)
五 信託財産に属する財産の管理又は処分の方法
六 その他法務省令で定める事項
条文自体は商事信託を前提としているように見えるが、親愛信託においても信託行為で規定することによって限定責任信託を組成することができる。
限定責任信託においては、信託財産責任負担債務(第21条第1項第8号に掲げる権利に係る債務を除く。)に係る債権に基づいて固有財産に属する財産に対し強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売又は国税滞納処分をすることはできない。
2 前項の規定に違反してされた強制執行、仮差押え、仮処分又は担保権の実行若しくは競売に対しては、受託者は、異議を主張することができる。この場合においては、民事執行法第38条及び民事保全法第45条の規定を準用する。
3 第1項の規定に違反してされた国税滞納処分に対しては、受託者は、異議を主張することができる。この場合においては、当該異議の主張は、当該国税滞納処分について不服の申立てをする方法でする。
限定責任信託であるから、当然の規定である。
限定責任信託には、その名称中に限定責任信託という文字を用いなければならない。
2 何人も、限定責任信託でないものについて、その名称又は商号中に、限定責任信託であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。
3 何人も、不正の目的をもって、他の限定責任信託であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。
4 前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって事業に係る利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある限定責任信託の受託者は、その利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
商事信託を前提としている規定であり、名称を制限することで限定責任信託であることを公示させようとしているが、親愛信託においても名称を付けることは可能である。
受託者は、限定責任信託の受託者として取引をするに当たっては、その旨を取引の相手方に示さなければ、これを当該取引の相手方に対し主張することができない。
債権者にとっては限定責任信託であるか否かは利害に関係するので、受託者に公示の義務を課している。
この章の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする。
2 この章の規定により登記すべき事項につき故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。
限定責任信託については登記を対抗要件とすることによって、債権者を保護している。
第216条第1項の定めを廃止する旨の信託の変更がされ、第235条の終了の登記がされたときは、その変更後の信託については、この章の規定は、適用しない。
限定責任信託の終了についても債権者の利害が関係するので、登記でもって本章の規定の適用の可否を分けている。
限定責任信託における帳簿その他の書類又は電磁的記録の作成、内容の報告及び保存並びに閲覧及び謄写については、第37条及び第38条の規定にかかわらず、次項から第9項までに定めるところによる。
2 受託者は、法務省令で定めるところにより、限定責任信託の会計帳簿を作成しなければならない。
3 受託者は、限定責任信託の効力が生じた後速やかに、法務省令で定めるところにより、その効力が生じた日における限定責任信託の貸借対照表を作成しなければならない。
4 受託者は、毎年、法務省令で定める一定の時期において、法務省令で定めるところにより、限定責任信託の貸借対照表及び損益計算書並びにこれらの附属明細書その他の法務省令で定める書類又は電磁的記録を作成しなければならない。
5 受託者は、前項の書類又は電磁的記録を作成したときは、その内容について受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)に報告しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
6 受託者は、第2項の会計帳簿を作成した場合には、その作成の日から10年間(当該期間内に信託の清算の結了があったときは、その日までの間。次項において同じ。)、当該会計帳簿(書面に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては当該電磁的記録、電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては当該書面)を保存しなければならない。ただし、受益者(2人以上の受益者が現に存する場合にあってはそのすべての受益者、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人。第8項において同じ。)に対し、当該書類若しくはその写しを交付し、又は当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供したときは、この限りでない。
7 受託者は、信託財産に属する財産の処分に係る契約書その他の信託事務の処理に関する書類又は電磁的記録を作成し、又は取得した場合には、その作成又は取得の日から10年間、当該書類又は電磁的記録(書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては当該電磁的記録、電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては当該書面)を保存しなければならない。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
8 受託者は、第3項の貸借対照表及び第4項の書類又は電磁的記録(以下この項及び第224条第2項第1号において「貸借対照表等」という。)を作成した場合には、信託の清算の結了の日までの間、当該貸借対照表等(書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては当該電磁的記録、電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては当該書面)を保存しなければならない。ただし、その作成の日から10年間を経過した後において、受益者に対し、当該書類若しくはその写しを交付し、又は当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供したときは、この限りでない。
9 限定責任信託における第38条の規定の適用については、同条第1項各号中「前条第1項又は第5項」とあるのは「第222条第2項又は第7項」と、同条第4項第1号及び第6項各号中「前条第2項」とあるのは「第222条第3項又は第4項」とする。
限定責任信託の受託者に対して、通常よりも重い義務を課しているようである。
裁判所は、申立てにより又は職権で、訴訟の当事者に対し、前条第2項から第4項までの書類の全部又は一部の提出を命ずることができる。
訴訟前提の規定である。
限定責任信託において、受託者が信託事務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該受託者は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
2 限定責任信託の受託者が、次に掲げる行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、受託者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
一 貸借対照表等に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
二 虚偽の登記
三 虚偽の公告
3 前二項の場合において、当該損害を賠償する責任を負う他の受託者があるときは、これらの者は、連帯債務者とする。
限定責任信託の受託者に対して、通常よりも重い義務を課しているようである。
限定責任信託においては、受益者に対する信託財産に係る給付は、その給付可能額(受益者に対し給付をすることができる額として純資産額の範囲内において法務省令で定める方法により算定される額をいう。以下この節において同じ。)を超えてすることはできない。
限定責任信託の受益者に対して、給付の制限を掛けている。
受託者が前条の規定に違反して受益者に対する信託財産に係る給付をした場合には、次の各号に掲げる者は、連帯して(第2号に掲げる受益者にあっては、現に受けた個別の給付額の限度で連帯して)、当該各号に定める義務を負う。ただし、受託者がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
一 受託者 当該給付の帳簿価額(以下この節において「給付額」という。)に相当する金銭の信託財産に対するてん補の義務
二 当該給付を受けた受益者 現に受けた個別の給付額に相当する金銭の受託者に対する支払の義務
2 受託者が前項第1号に定める義務の全部又は一部を履行した場合には、同項第2号に掲げる受益者は、当該履行された金額に同号の給付額の同項第1号の給付額に対する割合を乗じて得た金額の限度で同項第2号に定める義務を免れ、受益者が同号に定める義務の全部又は一部を履行した場合には、受託者は、当該履行された金額の限度で同項第1号に定める義務を免れる。
3 第1項(第2号に係る部分に限る。)の規定により受益者から受託者に対し支払われた金銭は、信託財産に帰属する。
4 第1項に規定する義務は、免除することができない。ただし、当該給付をした日における給付可能額を限度として当該義務を免除することについて総受益者の同意がある場合は、この限りでない。
5 第1項本文に規定する場合において、同項第1号の義務を負う他の受託者があるときは、これらの者は、連帯債務者とする。
6 第45条の規定は、第1項の規定による請求に係る訴えについて準用する。
限定責任信託の受託者に対して、受益者への過剰給付があった場合の填補義務を課しているようである。
前条第1項本文に規定する場合において、当該給付を受けた受益者は、給付額が当該給付をした日における給付可能額を超えることにつき善意であるときは、当該給付額について、受託者からの求償の請求に応ずる義務を負わない。
2 前条第1項本文に規定する場合には、信託債権者は、当該給付を受けた受益者に対し、給付額(当該給付額が当該信託債権者の債権額を超える場合にあっては、当該債権額)に相当する金銭を支払わせることができる。
限定責任信託における受益者と債権者との利益の調整を図っているようである。
受託者が受益者に対する信託財産に係る給付をした場合において、当該給付をした日後最初に到来する第222条第4項の時期に欠損額(貸借対照表上の負債の額が資産の額を上回る場合において、当該負債の額から当該資産の額を控除して得た額をいう。以下この項において同じ。)が生じたときは、次の各号に掲げる者は、連帯して(第2号に掲げる受益者にあっては、現に受けた個別の給付額の限度で連帯して)、当該各号に定める義務を負う。ただし、受託者がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
一 受託者 その欠損額(当該欠損額が給付額を超える場合にあっては、当該給付額)に相当する金銭の信託財産に対するてん補の義務
二 当該給付を受けた受益者 欠損額(当該欠損額が現に受けた個別の給付額を超える場合にあっては、当該給付額)に相当する金銭の受託者に対する支払の義務
2 受託者が前項第1号に定める義務の全部又は一部を履行した場合には、同項第2号に掲げる受益者は、当該履行された金額に同号の給付額の同項第1号の給付額に対する割合を乗じて得た金額の限度で同項第2号に定める義務を免れ、受益者が同号に定める義務の全部又は一部を履行した場合には、受託者は、当該履行された金額の限度で同項第1号に定める義務を免れる。
3 第1項(第2号に係る部分に限る。)の規定により受益者から受託者に対し支払われた金銭は、信託財産に帰属する。
4 第1項に規定する義務は、総受益者の同意がなければ、免除することができない。
5 第1項本文に規定する場合において、同項第1号の義務を負う他の受託者があるときは、これらの者は、連帯債務者とする。
6 第45条の規定は、第1項の規定による請求に係る訴えについて準用する。
本条も、限定責任信託の受託者に対して、受益者への過剰給付があった場合の責任を示しているようである。
限定責任信託の清算受託者は、その就任後遅滞なく、信託債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている信託債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、2箇月を下ることができない。
2 前項の規定による公告には、当該信託債権者が当該期間内に申出をしないときは清算から除斥される旨を付記しなければならない。
限定責任信託の清算受託者に義務を課している。
限定責任信託の清算受託者は、前条第1項の期間内は、清算中の限定責任信託の債務の弁済をすることができない。この場合において、清算受託者は、その債務の不履行によって生じた責任を免れることができない。
2 前項の規定にかかわらず、清算受託者は、前条第1項の期間内であっても、裁判所の許可を得て、少額の債権、清算中の限定責任信託の信託財産に属する財産につき存する担保権によって担保される債権その他これを弁済しても他の債権者を害するおそれがない債権に係る債務について、その弁済をすることができる。この場合において、当該許可の申立ては、清算受託者が2人以上あるときは、その全員の同意によってしなければならない。
3 清算受託者は、前項の許可の申立てをする場合には、その原因となる事実を疎明しなければならない。
4 第2項の許可の申立てを却下する裁判には、理由を付さなければならない。
5 第2項の規定による弁済の許可の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
前条に続き、限定責任信託の清算受託者の職務を規定している。
清算中の限定責任信託の信託債権者(知れているものを除く。)であって第229条第1項の期間内にその債権の申出をしなかったものは、清算から除斥される。
2 前項の規定により清算から除斥された信託債権者は、給付がされていない残余財産に対してのみ、弁済を請求することができる。
3 2人以上の受益者がある場合において、清算中の限定責任信託の残余財産の給付を受益者の一部に対してしたときは、当該受益者の受けた給付と同一の割合の給付を当該受益者以外の受益者に対してするために必要な財産は、前項の残余財産から控除する。
限定責任信託の清算時のルールを定めている。
信託行為において第216条第1項の定めがされたときは、限定責任信託の定めの登記は、2週間以内に、次に掲げる事項を登記してしなければならない。
一 限定責任信託の目的
二 限定責任信託の名称
三 受託者の氏名又は名称及び住所
四 限定責任信託の事務処理地
五 第64条第1項(第74条第6項において準用する場合を含む。)の規定により信託財産管理者又は信託財産法人管理人が選任されたときは、その氏名又は名称及び住所
六 第163条第9号の規定による信託の終了についての信託行為の定めがあるときは、その定め
七 会計監査人設置信託(第248条第3項に規定する会計監査人設置信託をいう。第240条第3号において同じ。)であるときは、その旨及び会計監査人の氏名又は名称
限定責任信託に関する登記のルールを定めている。
限定責任信託の事務処理地に変更があったときは、2週間以内に、旧事務処理地においてはその変更の登記をし、新事務処理地においては前条各号に掲げる事項を登記しなければならない。
2 同一の登記所の管轄区域内において限定責任信託の事務処理地に変更があったときは、その変更の登記をすれば足りる。
3 前条各号(第4号を除く。)に掲げる事項に変更があったときは、2週間以内に、その変更の登記をしなければならない。
限定責任信託に関する登記のルールを定めている。
限定責任信託の受託者の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分命令又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされたときは、その事務処理地において、その登記をしなければならない。
限定責任信託に関する裁判所による登記のルールを定めている。
第163条(第6号及び第7号に係る部分を除く。)若しくは第164条第1項若しくは第3項の規定により限定責任信託が終了したとき、又は第216条第1項の定めを廃止する旨の信託の変更がされたときは、2週間以内に、終了の登記をしなければならない。
限定責任信託に関する登記のルールを定めている。
限定責任信託が終了した場合において、限定責任信託が終了した時における受託者が清算受託者となるときは、終了の日から、2週間以内に、清算受託者の氏名又は名称及び住所を登記しなければならない。
2 信託行為の定め又は第62条第1項若しくは第4項若しくは第173条第1項の規定により清算受託者が選任されたときも、前項と同様とする。
3 第233条第3項の規定は、前二項の規定による登記について準用する。
限定責任信託に関する登記のルールを定めている。
限定責任信託の清算が結了したときは、第184条第1項の計算の承認の日から、2週間以内に、清算結了の登記をしなければならない。
限定責任信託に関する登記のルールを定めている。
限定責任信託の登記に関する事務は、限定責任信託の事務処理地を管轄する法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所が管轄登記所としてつかさどる。
2 登記所に、限定責任信託登記簿を備える。
限定責任信託に関する登記のルールを定めている。
第232条及び第233条の規定による登記は受託者の申請によって、第235条から第237条までの規定による登記は清算受託者の申請によってする。
2 前項の規定にかかわらず、信託財産管理者又は信託財産法人管理人が選任されている場合には、第232条及び第233条の規定による登記(第246条の規定によるものを除く。)は、信託財産管理者又は信託財産法人管理人の申請によってする。
限定責任信託に関する登記のルールを定めている。
限定責任信託の定めの登記の申請書には、次に掲げる書面を添付しなければならない。
一 限定責任信託の信託行為を証する書面
二 受託者が法人であるときは、当該法人の登記事項証明書。ただし、当該登記所の管轄区域内に当該法人の本店又は主たる事務所がある場合を除く。
三 会計監査人設置信託においては、次に掲げる書面
イ 就任を承諾したことを証する書面
ロ 会計監査人が法人であるときは、当該法人の登記事項証明書。ただし、当該登記所の管轄区域内に当該法人の主たる事務所がある場合を除く。
ハ 会計監査人が法人でないときは、第249条第1項に規定する者であることを証する書面
限定責任信託に関する登記のルールを定めている。
事務処理地の変更又は第232条各号(第4号を除く。)に掲げる事項の変更の登記の申請書には、事務処理地の変更又は登記事項の変更を証する書面を添付しなければならない。
2 法人である新受託者の就任による変更の登記の申請書には、前条第2号に掲げる書面を添付しなければならない。
3 会計監査人の就任による変更の登記の申請書には、前条第3号ロ又はハに掲げる書面を添付しなければならない。
限定責任信託に関する登記のルールを定めている。
限定責任信託の終了の登記の申請書には、その事由の発生を証する書面を添付しなければならない。
限定責任信託に関する登記のルールを定めている。
次の各号に掲げる者が清算受託者となった場合の清算受託者の登記の申請書には、当該各号に定める書面を添付しなければならない。
一 信託行為の定めにより選任された者 次に掲げる書面
イ 当該信託行為の定めがあることを証する書面
ロ 選任された者が就任を承諾したことを証する書面
二 第62条第1項の規定により選任された者 次に掲げる書面
イ 第62条第1項の合意があったことを証する書面
ロ 前号ロに掲げる書面
三 第62条第4項又は第173条第1項の規定により裁判所が選任した者 その選任を証する書面
2 第240条(第2号に係る部分に限る。)の規定は、清算受託者が法人である場合の清算受託者の登記について準用する。
限定責任信託に関する登記のルールを定めている。
清算受託者の退任による変更の登記の申請書には、退任を証する書面を添付しなければならない。
2 第236条第1項に規定する事項の変更の登記の申請書には、登記事項の変更を証する書面を添付しなければならない。
3 第241条第2項の規定は、法人である清算受託者の就任による変更の登記について準用する。
限定責任信託に関する登記のルールを定めている。
清算結了の登記の申請書には、第184条第1項の計算の承認があったことを証する書面を添付しなければならない。
限定責任信託に関する登記のルールを定めている。
次に掲げる場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、限定責任信託の事務処理地を管轄する登記所にその登記を嘱託しなければならない。
一 次に掲げる裁判があったとき。
イ 第58条第4項(第70条(第74条第6項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定による受託者又は信託財産管理者若しくは信託財産法人管理人の解任の裁判
ロ 第64条第1項(第74条第6項において準用する場合を含む。)の規定による信託財産管理者又は信託財産法人管理人の選任の裁判
二 次に掲げる裁判が確定したとき。
イ 前号イに掲げる裁判を取り消す裁判
ロ 第165条又は第166条の規定による信託の終了を命ずる裁判
限定責任信託に関する登記のルールを定めている。
限定責任信託の登記については、商業登記法(昭和38年法律第125号)第2条から第5条まで、第7条から第15条まで、第17条(第3項を除く。)、第18条から第19条の3まで、第20条第1項及び第2項、第21条から第24条まで、第26条、第27条、第51条から第53条まで、第71条第1項、第132条から第137条まで並びに第139条から第148条まで並びに民事保全法第56条の規定を準用する。この場合において、商業登記法第51条第1項中「本店」とあるのは「事務処理地(信託法(平成18年法律第108号)第216条第2項第4号に規定する事務処理地をいう。以下同じ。)」と、「移転した」とあるのは「変更した」と、同項並びに同法第52条第2項、第3項及び第5項中「新所在地」とあるのは「新事務処理地」と、同法第51条第1項及び第2項並びに第52条中「旧所在地」とあるのは「旧事務処理地」と、同法第71条第1項中「解散」とあるのは「限定責任信託の終了」と、民事保全法第56条中「法人を代表する者その他法人の役員」とあるのは「限定責任信託の受託者又は清算受託者」と、「法人の本店又は主たる事務所の所在地(外国法人にあっては、各事務所の所在地)」とあるのは「限定責任信託の事務処理地(信託法(平成18年法律第108号)第216条第2項第4号に規定する事務処理地をいう。)」と読み替えるものとする。
限定責任信託に関する登記のルールを定めている。
受益証券発行信託である限定責任信託(以下「受益証券発行限定責任信託」という。)においては、信託行為の定めにより、会計監査人を置くことができる。
2 受益証券発行限定責任信託であって最終の貸借対照表(直近の第222条第4項の時期において作成された貸借対照表をいう。)の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であるものにおいては、会計監査人を置かなければならない。
3 第1項の信託行為の定めのある信託及び前項に規定する信託(以下「会計監査人設置信託」と総称する。)においては、信託行為に会計監査人を指定する定めを設けなければならない。
受益証券発行限定責任信託のルールを定めている。
会計監査人は、公認会計士(外国公認会計士(公認会計士法(昭和23年法律第103号)第16条の2第5項に規定する外国公認会計士をいう。)を含む。第3項第2号において同じ。)又は監査法人でなければならない。
2 会計監査人に選任された監査法人は、その社員の中から会計監査人の職務を行うべき者を選定し、これを受託者に通知しなければならない。この場合においては、次項第2号に掲げる者を選定することはできない。
3 次に掲げる者は、会計監査人となることができない。
一 公認会計士法の規定により、第222条第4項に規定する書類又は電磁的記録について監査をすることができない者
二 受託者若しくはその利害関係人から公認会計士若しくは監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者又はその配偶者
三 監査法人でその社員の半数以上が前号に掲げる者であるもの
受益証券発行限定責任信託のルールを定めている。
会計監査人設置信託において、会計監査人が欠けたときは、委託者及び受益者は、会計監査人が欠けた時から2箇月以内に、その合意により、新たな会計監査人(以下この条において「新会計監査人」という。)を選任しなければならない。
2 前項に規定する場合において、委託者が現に存しないとき、又は会計監査人が欠けた時から2箇月を経過しても同項の合意が調わないときは、新会計監査人の選任は、受益者のみでこれをすることができる。
3 前二項に規定する場合において、受益者が2人以上あるときは、受託者(信託監督人が現に存する場合にあっては、受託者又は信託監督人)は、前二項の規定により新会計監査人を選任するため、遅滞なく、受益者集会を招集しなければならない。
4 第1項又は第2項の規定により新会計監査人が選任されたときは、当該新会計監査人について信託行為に第248条第3項の定めが設けられたものとみなす。
5 会計監査人が欠けた場合には、辞任により退任した会計監査人は、新会計監査人が選任されるまで、なお会計監査人としての権利義務を有する。
受益証券発行限定責任信託のルールを定めている。
第57条第1項本文の規定は会計監査人の辞任について、第58条第1項及び第2項の規定は会計監査人の解任について、それぞれ準用する。
受益証券発行限定責任信託のルールを定めている。
会計監査人は、第222条第4項の書類又は電磁的記録を監査する。この場合において、会計監査人は、法務省令で定めるところにより、会計監査報告を作成しなければならない。
2 会計監査人は、いつでも、次に掲げるものの閲覧及び謄写をし、又は受託者に対し、会計に関する報告を求めることができる。
一 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面
二 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したもの
3 会計監査人は、その職務を行うに当たっては、次のいずれかに該当する者を使用してはならない。
一 第249条第3項第1号又は第2号に掲げる者
二 受託者又はその利害関係人
三 受託者又はその利害関係人から公認会計士又は監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者
4 会計監査人設置信託における第222条第4項、第5項及び第8項の規定の適用については、同条第4項中「作成しなければ」とあるのは「作成し、第252条第1項の会計監査を受けなければ」と、同条第5項中「その内容」とあるのは「その内容及び会計監査報告」と、同条第8項中「作成した場合には」とあるのは「作成し、第252条第1項の会計監査を受けた場合には」と、「当該書面)」とあるのは「当該書面)及び当該会計監査報告」とする。
受益証券発行限定責任信託のルールを定めている。
会計監査人は、その職務を行うに当たっては、善良な管理者の注意をもって、これをしなければならない。
受益証券発行限定責任信託のルールを定めている。
会計監査人がその任務を怠ったことによって信託財産に損失が生じた場合には、受益者は、当該会計監査人に対し、当該損失のてん補をすることを請求することができる。
2 前項の規定による損失のてん補として会計監査人が受託者に対し交付した金銭その他の財産は、信託財産に帰属する。
3 第42条(第1号に係る部分に限る。)並びに第105条第3項及び第4項(第3号を除く。)の規定は第1項の規定による責任の免除について、第43条の規定は第1項の規定による責任に係る債権について、第45条の規定は第1項の規定による請求に係る訴えについて、それぞれ準用する。この場合において、第105条第4項第2号中「受託者がその任務」とあるのは、「会計監査人がその職務」と読み替えるものとする。
受益証券発行限定責任信託のルールを定めている。
会計監査人設置信託において、会計監査人がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該会計監査人は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
2 会計監査人設置信託の会計監査人が、第252条第1項の会計監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項について虚偽の記載又は記録をしたときも、前項と同様とする。ただし、会計監査人が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
3 前二項の場合において、当該損害を賠償する責任を負う他の会計監査人があるときは、これらの者は、連帯債務者とする。
受益証券発行限定責任信託のルールを定めている。
第127条第1項から第5項までの規定は、会計監査人の費用及び支出の日以後におけるその利息、損害の賠償並びに報酬について準用する。
受益証券発行限定責任信託のルールを定めている。
会計監査人設置信託に係る信託行為に第214条の別段の定めがない場合における第118条の規定の適用については、同条第1項中「同じ。)」とあるのは「同じ。)及び会計監査人」と、同条第2項中「受託者」とあるのは「受託者又は会計監査人」とする。
受益証券発行限定責任信託のルールを定めている。
受益者の定め(受益者を定める方法の定めを含む。以下同じ。)のない信託は、第3条第1号又は第2号に掲げる方法によってすることができる。
受益者の定めのない「目的信託」のルールを定めており、自己信託では目的信託は作り得ないとされている。
2 受益者の定めのない信託においては、信託の変更によって受益者の定めを設けることはできない。
目的信託としてスタートした信託を通常の信託へと変更することを禁じている。
3 受益者の定めのある信託においては、信託の変更によって受益者の定めを廃止することはできない。
前項に同じ
4 第3条第2号に掲げる方法によって受益者の定めのない信託をするときは、信託管理人を指定する定めを設けなければならない。この場合においては、信託管理人の権限のうち第145条第2項各号(第6号を除く。)に掲げるものを行使する権限を制限する定めを設けることはできない。
遺言信託の方法で目的信託をスタートするには、先に信託管理人の定めが必要としている。
5 第3条第2号に掲げる方法によってされた受益者の定めのない信託において信託管理人を指定する定めがない場合において、遺言執行者の定めがあるときは、当該遺言執行者は、信託管理人を選任しなければならない。この場合において、当該遺言執行者が信託管理人を選任したときは、当該信託管理人について信託行為に前項前段の定めが設けられたものとみなす。
遺言執行者に信託管理人の選任の職務を課している。
6 第3条第2号に掲げる方法によってされた受益者の定めのない信託において信託管理人を指定する定めがない場合において、遺言執行者の定めがないとき、又は遺言執行者となるべき者として指定された者が信託管理人の選任をせず、若しくはこれをすることができないときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、信託管理人を選任することができる。この場合において、信託管理人の選任の裁判があったときは、当該信託管理人について信託行為に第4項前段の定めが設けられたものとみなす。
最後の手段として、裁判所による信託管理人の選任も認めている。
7 第123条第6項から第8項までの規定は、前項の申立てについての裁判について準用する。
8 第3条第2号に掲げる方法によってされた受益者の定めのない信託において、信託管理人が欠けた場合であって、信託管理人が就任しない状態が1年間継続したときは、当該信託は、終了する。
ここでも「1年ルール」を準用している。
受益者の定めのない信託の存続期間は、20年を超えることができない。
目的信託の存続期間に20年という規制を置き、長期間にわたり財産権の帰趨が不明となることを避けようとしている。
第3条第1号に掲げる方法によってされた受益者の定めのない信託においては、委託者(委託者が2人以上ある場合にあっては、そのすべての委託者)が第145条第2項各号(第6号を除く。)に掲げる権利を有する旨及び受託者が同条第4項各号に掲げる義務を負う旨の定めが設けられたものとみなす。この場合においては、信託の変更によってこれを変更することはできない。
目的信託では受益者が存在しないことから、委託者の権利を失わせないようにしている。
2 第3条第2号に掲げる方法によってされた受益者の定めのない信託であって、第258条第5項後段又は第6項後段の規定により同条第4項前段の定めが設けられたものとみなされるものにおいては、信託の変更によって信託管理人の権限のうち第145条第2項各号(第6号を除く。)に掲げるものを行使する権限を制限することはできない。
遺言によって目的信託が組成された場合の規定を置いている。
受益者の定めのない信託に関する次の表の上欄に掲げるこの法律の規定の適用については、これらの規定中同表の中欄に掲げる字句は、同表の下欄に掲げる字句とする。
第19条第1項第3号及び第3項第3号 | 受益者の利益を害しない | 信託の目的の達成の支障とならない |
---|---|---|
受益者との | 信託の目的に関して有する | |
第19条第3項第2号 | 各信託の受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)の協議 | 受益者の定めのない信託の信託管理人と他の信託の受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)との協議又は受益者の定めのない各信託の信託管理人の協議 |
第30条 | 受益者 | 信託の目的の達成 |
第31条第1項第4号 | 受託者又はその利害関係人と受益者との利益が相反する | 受託者又はその利害関係人の利益となり、かつ、信託の目的の達成の支障となる |
第31条第2項第4号 | 受益者の利益を害しない | 信託の目的の達成の支障とならない |
受益者との | 信託の目的に関して有する | |
第32条第1項 | 受益者の利益に反する | 信託の目的の達成の支障となる |
第37条第4項ただし書 | 受益者 | 委託者 |
信託管理人。 | 信託管理人又は委託者。 | |
第37条第6項ただし書 | 受益者 | 委託者 |
第38条第2項第3号 | 受益者の共同の利益を害する | 信託の目的の達成を妨げる |
第57条第1項 | 委託者及び受益者 | 委託者(信託管理人が現に存する場合にあっては、委託者及び信託管理人) |
第58条第1項 | 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により | 委託者は、いつでも(信託管理人が現に存する場合にあっては、委託者及び信託管理人は、いつでも、その合意により) |
第58条第2項 | 委託者及び受益者が | 委託者(信託管理人が現に存する場合にあっては、委託者及び信託管理人)が |
委託者及び受益者は | 委託者は | |
第62条第1項 | 委託者及び受益者は、その合意により | 委託者は(信託管理人が現に存する場合にあっては、委託者及び信託管理人は、その合意により) |
第62条第3項 | 委託者及び受益者(2人以上の受益者が現に存する場合にあってはその1人、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人) | 委託者(信託管理人が現に存する場合にあっては、委託者及び信託管理人) |
第62条第4項 | 同項の合意に係る協議の状況 | 委託者の状況(信託管理人が現に存する場合にあっては、同項の合意に係る協議の状況) |
第62条第8項 | 「受益者は」 | 「信託管理人は」 |
「受益者」 | 「信託管理人」 | |
「受益者の状況」 | 「信託管理人の状況」 | |
第125条第1項 | 受益者のために | 信託の目的の達成のために |
第126条第2項 | 受益者 | 信託の目的の達成 |
第146条第1項 | 受託者及び受益者 | 受託者 |
第146条第2項 | 他の委託者、受託者及び受益者 | 他の委託者及び受託者 |
第149条第1項 | 委託者、受託者及び受益者 | 委託者及び受託者(信託管理人が現に存する場合にあっては、委託者、受託者及び信託管理人) |
第149条第2項(第1号を除く。) | 委託者及び受益者 | 委託者(信託管理人が現に存する場合にあっては、委託者及び信託管理人) |
信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合すること | 信託の目的の達成のために必要であること | |
第149条第3項第1号 | 委託者及び受益者 | 委託者(信託管理人が現に存する場合にあっては、委託者及び信託管理人) |
第149条第5項 | 、受益者に対し | 、信託管理人に対し |
第150条第1項 | 受益者の利益に適合しなくなる | 信託の目的の達成の支障となる |
第151条第1項 | 委託者、受託者及び受益者 | 委託者及び受託者(信託管理人が現に存する場合にあっては、委託者、受託者及び信託管理人) |
第151条第2項(第1号を除く。) | 委託者及び受益者 | 委託者(信託管理人が現に存する場合にあっては、委託者及び信託管理人) |
信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合すること | 信託の目的の達成のために必要であること | |
第151条第4項 | 、受益者に対し | 、信託管理人に対し |
第155条第1項 | 委託者、受託者及び受益者 | 委託者及び受託者(信託管理人が現に存する場合にあっては、委託者、受託者及び信託管理人) |
第155条第2項(第1号を除く。) | 委託者及び受益者 | 委託者(信託管理人が現に存する場合にあっては、委託者及び信託管理人) |
信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合すること | 信託の目的の達成のために必要であること | |
第155条第4項 | 、受益者に対し | 、信託管理人に対し |
第159条第1項 | 委託者、受託者及び受益者 | 委託者及び受託者(信託管理人が現に存する場合にあっては、委託者、受託者及び信託管理人) |
第159条第2項(第1号を除く。) | 委託者及び受益者 | 委託者(信託管理人が現に存する場合にあっては、委託者及び信託管理人) |
信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合すること | 信託の目的の達成のために必要であること | |
第159条第4項 | 、受益者に対し | 、信託管理人に対し |
第164条第1項 | 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により | 委託者は、いつでも(信託管理人が現に存する場合にあっては、委託者及び信託管理人は、いつでも、その合意により) |
第164条第2項 | 委託者及び受益者が | 委託者(信託管理人が現に存する場合にあっては、委託者及び信託管理人)が |
委託者及び受益者は | 委託者は | |
第165条第1項 | 受益者の利益に適合する | 相当となる |
第222条第6項ただし書 | 受益者 | 委託者 |
信託管理人。 | 信託管理人又は委託者。 | |
第222条第8項ただし書 | 受益者 | 委託者 |
第243条第1項第2号イ | 合意 | 委託者の意思表示(信託管理人が現に存する場合にあっては、委託者及び信託管理人の合意) |
2 受益者の定めのない信託に係る受託者の費用等、損害の賠償及び信託報酬については、第48条第5項(第53条第2項及び第54条第4項において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。
3 受益者の定めのない信託に係る信託の変更については、第149条第2項第1号及び第3項第2号の規定は、適用しない。
4 受益者の定めのない信託に係る信託の併合については、第151条第2項第1号の規定は、適用しない。
5 受益者の定めのない信託に係る信託の分割については、第155条第2項第1号及び第159条第2項第1号の規定は、適用しない。
条文の整合に関する規定である。
この法律の規定による非訟事件は、この条に特別の定めがある場合を除き、受託者の住所地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
2 受託者が2人以上ある場合における前項の規定の適用については、同項中「住所地」とあるのは、「いずれかの住所地」とする。
3 受託者の任務の終了後新受託者の就任前におけるこの法律の規定による裁判所に対する申立てに係る事件は、前受託者の住所地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
4 受託者が2人以上ある場合における前項の規定の適用については、同項中「受託者の任務」とあるのは、「すべての受託者の任務」とし、前受託者が2人以上ある場合における同項の規定の適用については、同項中「住所地」とあるのは、「いずれかの住所地」とする。
5 第6条第1項又は第258条第6項の申立てに係る事件は、遺言者の最後の住所地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
訴訟手続きの規定である。
この法律の規定による非訟事件については、非訟事件手続法第40条及び第57条第2項第2号の規定は、適用しない。
訴訟手続きの規定である。
この法律に定めるもののほか、この法律の規定による非訟事件の手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
訴訟手続きの規定である。
この法律の規定(第152条第2項、第156条第2項、第160条第2項及び第229条第1項を除く。)による公告は、受託者(受託者の任務の終了後新受託者の就任前にあっては、前受託者)が法人である場合には、当該法人における公告の方法(公告の期間を含む。)によりしなければならない。
公告に関する規定である。
会社法その他の法律の規定によりある法人が組織変更、合併その他の行為をするときは当該法人の債権者が当該行為について公告、催告その他の手続を経て異議を述べることができることとされている場合において、法人である受託者が当該行為をしようとするときは、受託者が信託財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者は、当該行為についてこれらの手続を経て異議を述べることができる債権者に含まれないものとする。
2 会社法その他の法律の規定による法人の事業の譲渡に関する規定の適用については、第3条第3号に掲げる方法によってする信託は、その適用の対象となる行為に含まれるものとする。ただし、当該法律に別段の定めがあるときは、この限りでない。
公告に関する規定である。
次に掲げる者が、その職務に関して、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。これによって不正の行為をし、又は相当の行為をしないときは、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処する。
一 受益証券発行限定責任信託の受託者(前受託者又は清算受託者を含む。以下同じ。)
二 受益証券発行限定責任信託の信託財産管理者
三 受益証券発行限定責任信託の民事保全法第56条に規定する仮処分命令により選任された受託者の職務を代行する者
四 受益証券発行限定責任信託の信託財産法人管理人
五 受益証券発行限定責任信託の信託管理人
六 受益証券発行限定責任信託の信託監督人
七 受益証券発行限定責任信託の受益者代理人
八 受益証券発行限定責任信託の検査役
九 会計監査人
2 前項に規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。
3 第1項の場合において、犯人の収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
罰則に関する規定である。
前条第1項の罪は、日本国外においてこれらの罪を犯した者にも適用する。
2 前条第2項の罪は、刑法(明治40年法律第45号)第2条の例に従う。
罰則に関する規定である。
第267条第1項に規定する者が法人であるときは、同項の規定は、その行為をした取締役、執行役その他業務を執行する役員又は支配人に対してそれぞれ適用する。
罰則に関する規定である。
受託者、第60条第1項に規定する前受託者の相続人等、信託財産管理者、民事保全法第56条に規定する仮処分命令により選任された受託者の職務を代行する者、信託財産法人管理人、信託管理人、信託監督人、受益者代理人又は検査役は、次のいずれかに該当する場合には、100万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。
一 この法律の規定による公告若しくは通知をすることを怠ったとき、又は不正の公告若しくは通知をしたとき。
二 この法律の規定による開示をすることを怠ったとき。
三 この法律の規定に違反して、正当な理由がないのに、書類又は電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写を拒んだとき。
四 この法律の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
五 この法律の規定による調査を妨げたとき。
六 第37条第1項、第2項若しくは第5項の書類若しくは電磁的記録又は第120条の議事録(信託行為に第4章第3節第2款の定めるところによる受益者集会における多数決による旨の定めがある場合に限る。)を作成せず、若しくは保存せず、又はこれらに記載し、若しくは記録すべき事項を記載せず、若しくは記録せず、若しくは虚偽の記載若しくは記録をしたとき。
七 第152条第2項若しくは第5項、第156条第2項若しくは第5項又は第160条第2項若しくは第5項の規定に違反して、信託の併合又は分割をしたとき。
八 第179条第1項の規定に違反して、破産手続開始の申立てをすることを怠ったとき。
九 第181条の規定に違反して、清算中の信託財産に属する財産の給付をしたとき。
2 受益証券発行信託の受託者、信託財産管理者、民事保全法第56条に規定する仮処分命令により選任された受託者の職務を代行する者、信託財産法人管理人、信託監督人又は受益権原簿管理人は、次のいずれかに該当する場合には、100万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。
一 第120条の議事録(信託行為に第214条の別段の定めがない場合に限る。)又は第186条の受益権原簿を作成せず、若しくは保存せず、又はこれらに記載し、若しくは記録すべき事項を記載せず、若しくは記録せず、若しくは虚偽の記載若しくは記録をしたとき。
二 第187条第1項又は第202条第1項の規定に違反して、書面の交付又は電磁的記録の提供を拒んだとき。
三 第190条第1項の規定に違反して、第186条の受益権原簿を備え置かなかったとき。
四 第207条の規定に違反して、遅滞なく、受益証券を発行しなかったとき。
五 第209条の規定に違反して、受益証券に記載すべき事項を記載せず、又は虚偽の記載をしたとき。
3 限定責任信託の受託者、信託財産管理者、民事保全法第56条に規定する仮処分命令により選任された受託者の職務を代行する者又は信託財産法人管理人は、次のいずれかに該当する場合には、100万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。
一 第9章第3節の規定による登記をすることを怠ったとき。
二 第222条第2項の会計帳簿、同条第3項の貸借対照表又は同条第4項若しくは第7項の書類若しくは電磁的記録を作成せず、若しくは保存せず、又はこれらに記載し、若しくは記録すべき事項を記載せず、若しくは記録せず、若しくは虚偽の記載若しくは記録をしたとき。
三 清算の結了を遅延させる目的で、第229条第1項の期間を不当に定めたとき。
四 第230条第1項の規定に違反して、債務の弁済をしたとき。
4 会計監査人設置信託の受託者、信託財産管理者、民事保全法第56条に規定する仮処分命令により選任された受託者の職務を代行する者、信託財産法人管理人又は信託監督人は、第250条第3項の規定に違反して、会計監査人の選任の手続をすることを怠ったときは、100万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。
罰則に関する規定である。
次のいずれかに該当する者は、100万円以下の過料に処する。
一 第218条第1項の規定に違反して、限定責任信託の名称中に限定責任信託という文字を用いなかった者
二 第218条第2項の規定に違反して、限定責任信託であると誤認されるおそれのある文字をその名称又は商号中に使用した者
三 第218条第3項の規定に違反して、他の限定責任信託であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用した者
罰則に関する規定である。
1 この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(自己信託に関する経過措置)
2 第三条第三号の規定は、この法律の施行の日から起算して一年を経過する日までの間は、適用しない。
(受益者の定めのない信託に関する経過措置)
3 受益者の定めのない信託(学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他公益を目的とするものを除く。)は、別に法律で定める日までの間、当該信託に関する信託事務を適正に処理するに足りる財産的基礎及び人的構成を有する者として政令で定める法人以外の者を受託者としてすることができない。
4 前項の別に法律で定める日については、受益者の定めのない信託のうち学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他公益を目的とする信託に係る見直しの状況その他の事情を踏まえて検討するものとし、その結果に基づいて定めるものとする。
附 則 (平成二三年五月二五日法律第五三号)
この法律は、新非訟事件手続法の施行の日から施行する。
附 則 (平成二五年五月三一日法律第二八号) 抄
この法律は、番号利用法の施行の日から施行する。
附 則 (平成二六年六月二七日法律第九一号) 抄
この法律は、会社法の一部を改正する法律の施行の日から施行する。
変更の経緯などを示している。
信託法重要度と改正点チェック(★は改訂された条文、●は別段の定めを認めている条文)
重要度5 親愛信託でも常に認識しておく必要がある、特に重要な条文。
重要度4 親愛信託では常に使わる訳ではないが、基本項目として重要な条文
重要度3 親愛信託ではあまり使われないが、一応は必要と思われる条文
重要度2 親愛信託ではほぼ使われることはない条文
重要度1 親愛信託とは全く無関係な条文
第1章 総則
(趣旨)第1条 重要度5
(定義)第2条 重要度5
(信託の方法)第3条 重要度5
(信託の効力の発生)第4条 重要度5
(遺言信託における信託の引受けの催告)第5条 重要度3
(遺言信託における裁判所による受託者の選任)第6条 重要度2
★(受託者の資格)第7条 重要度5
(受託者の利益享受の禁止)第8条 重要度5
(脱法信託の禁止)第9条 重要度2
(訴訟信託の禁止) 第10条 重要度2
★(詐害信託の取消し等)第11条 重要度2
★(詐害信託の否認等)第12条 重要度2
(会計の原則)第13条 重要度4
第二章 信託財産等
(信託財産に属する財産の対抗要件)第14条 重要度3
(信託財産に属する財産の占有の瑕疵の承継)第15条 重要度2
(信託財産の範囲)第16条 重要度4
(信託財産に属する財産の付合等)第17条 重要度4
第18条 重要度4
(信託財産と固有財産等とに属する共有物の分割)第19条 重要度3
(信託財産に属する財産についての混同の特例)第20条 重要度3
(信託財産責任負担債務の範囲)第21条 重要度MAX
(信託財産に属する債権等についての相殺の制限)第22条 重要度2
(信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等)第23条 重要度3
(費用又は報酬の支弁等)第24条 重要度2
(信託財産と受託者の破産手続等との関係等)第25条 重要度2
第三章 受託者等
第一節 受託者の権限
●(受託者の権限の範囲)第26条 重要度4
(受託者の権限違反行為の取消し)第27条 重要度3
(信託事務の処理の第三者への委託)第28条 重要度3
第二節 受託者の義務等
●(受託者の注意義務)第29条 重要度5
(忠実義務)第30条 重要度3
●(利益相反行為の制限)第31条 重要度4
●第32条 重要度2
(公平義務)第33条 重要度3
●(分別管理義務)第34条 重要度4
●(信託事務の処理の委託における第三者の選任及び監督に関する義務)第35条 重要度2
(信託事務の処理の状況についての報告義務)第36条 重要度2
●(帳簿等の作成等、報告及び保存の義務)第37条 重要度3
(帳簿等の閲覧等の請求)第38条 重要度2
●(他の受益者の氏名等の開示の請求)第39条 重要度1
第三節 受託者の責任等
(受託者の損失てん補責任等)第40条 重要度3
(法人である受託者の役員の連帯責任)第41条 重要度2
(損失てん補責任等の免除)第42条 重要度2
★(損失塡補責任等に係る債権の期間の制限)第43条 重要度2
(受益者による受託者の行為の差止め)第44条 重要度3
(費用又は報酬の支弁等)第45条 重要度1
(検査役の選任)第46条 重要度1
●第47条 重要度1
第四節 受託者の費用等及び信託報酬等
●(信託財産からの費用等の償還等)第48条 重要度4
●(費用等の償還等の方法)第49条 重要度2
(信託財産責任負担債務の弁済による受託者の代位)第50条 重要度4
●(費用等の償還等と同時履行)第51条 重要度2
(信託財産が費用等の償還等に不足している場合の措置)第52条 重要度3
●(信託財産からの損害の賠償)第53条 重要度2
(受託者の信託報酬)第54条 重要度4
(受託者による担保権の実行)第55条 重要度1
第五節 受託者の変更等
第一款 受託者の任務の終了
●★(受託者の任務の終了事由)第56条 重要度5
●(受託者の辞任)第57条 重要度5
●(受託者の解任)第58条 重要度5
第二款 前受託者の義務等
●(前受託者の通知及び保管の義務等)第59条 重要度3
●(前受託者の相続人等の通知及び保管の義務等)第60条 重要度3
(費用又は報酬の支弁等)第61条 重要度1
第三款 新受託者の選任
第62条 重要度4
第四款 信託財産管理者等
(信託財産管理命令)第63条 重要度1
(信託財産管理者の選任等)第64条 重要度1
(前受託者がした法律行為の効力)第65条 重要度1
(信託財産管理者の権限)第66条 重要度1
(信託財産に属する財産の管理)第67条 重要度1
(当事者適格)第68条 重要度1
(信託財産管理者の義務等)第69条 重要度1
(信託財産管理者の辞任及び解任)第70条 重要度1
(信託財産管理者の報酬等)第71条 重要度1
(信託財産管理者による新受託者への信託事務の引継ぎ等)第72条 重要度1
(受託者の職務を代行する者の権限)第73条 重要度1
(受託者の死亡により任務が終了した場合の信託財産の帰属等)第74条 重要度1
第五款 受託者の変更に伴う権利義務の承継等
(信託に関する権利義務の承継等)第75条 重要度2
(承継された債務に関する前受託者及び新受託者の責任)第76条 重要度4
(前受託者による新受託者等への信託事務の引継ぎ等)第77条 重要度3
(前受託者の相続人等又は破産管財人による新受託者等への信託事務の引継ぎ等)第78条 重要度1
第六節 受託者が二人以上ある信託の特例
(信託財産の合有)第79条 重要度3
●(信託事務の処理の方法)第80条 重要度3
(職務分掌者の当事者適格)第81条 重要度2
●(信託事務の処理についての決定の他の受託者への委託)第82条 重要度3
(信託事務の処理に係る債務の負担関係)第83条 重要度3
(信託財産と固有財産等とに属する共有物の分割の特例)第84条 重要度1
●(受託者の責任等の特例)第85条 重要度2
●(受託者の変更等の特例)第86条 重要度2
(信託の終了の特例)第87条 重要度2
第四章 受益者等
第一節 受益者の権利の取得及び行使
●(受益権の取得)第88条 重要度3
●(受益者指定権等)第89条 重要度MAX
●(委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定めのある信託等の特例)第90条 重要度5
(受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託の特例)第91条 重要度MAX
(信託行為の定めによる受益者の権利行使の制限の禁止)第92条 重要度2
第二節 受益権等
第一款 受益権の譲渡等
●(受益権の譲渡性)第93条 重要度4
(受益権の譲渡の対抗要件)第94条 重要度3
(受益権の譲渡における受託者の抗弁)第95条 重要度2
★(共同相続における受益権の承継の対抗要件)第95条の2 重要度5
●(受益権の質入れ)第96条 重要度4
(受益権の質入れの効果)第97条 重要度3
第98条 重要度2
第二款 受益権の放棄
第99条 重要度3
第三款 受益債権
(受益債権に係る受託者の責任)第100条 重要度3
(受益債権と信託債権との関係)第101条 重要度2
(受益債権の期間の制限)第102条 重要度2
第四款 受益権取得請求権
●(受益権取得請求)第103条 重要度1
●(受益権の価格の決定等)第104条 重要度1
第三節 二人以上の受益者による意思決定の方法の特例
第一款 総則
●第105条 重要度1
第二款 受益者集会
(受益者集会の招集)第106条 重要度1
(受益者による招集の請求)第107条 重要度1
(受益者集会の招集の決定)第108条 重要度1
(受益者集会の招集の通知)第109条 重要度1
(受益者集会参考書類及び議決権行使書面の交付等)第110条 重要度1
第111条 重要度1
(受益者の議決権)第112条 重要度1
(受益者集会の決議)第113条 重要度1
(議決権の代理行使)第114条 重要度1
(書面による議決権の行使)第115条 重要度1
(電磁的方法による議決権の行使)第116条 重要度1
(議決権の不統一行使)第117条 重要度1
(受託者の出席等)第118条 重要度1
(延期又は続行の決議)第119条 重要度1
(議事録)第120条 重要度1
(受益者集会の決議の効力)第121条 重要度1
(受益者集会の費用の負担)第122条 重要度1
第四節 信託管理人等
第一款 信託管理人
(信託管理人の選任)第123条 重要度2
★(信託管理人の資格)第124条 重要度2
●(信託管理人の権限)第125条 重要度1
(信託管理人の義務)第126条 重要度1
(信託管理人の費用等及び報酬)第127条 重要度1
(信託管理人の任務の終了)第128条 重要度1
(新信託管理人の選任等)第129条 重要度1
●(信託管理人による事務の処理の終了等)第130条 重要度1
第二款 信託監督人
(信託監督人の選任)第131条 重要度4
●(信託監督人の権限)第132条 重要度4
(信託監督人の義務)第133条 重要度3
(信託監督人の任務の終了)第134条 重要度3
(新信託監督人の選任等)第135条 重要度3
●(信託監督人による事務の処理の終了等)第136条 重要度3
(信託管理人に関する規定の準用)第137条 重要度2
第三款 受益者代理人
(受益者代理人の選任)第138条 重要度4
●(受益者代理人の権限等)第139条 重要度5
(受益者代理人の義務)第140条 重要度3
(受益者代理人の任務の終了)第141条 重要度3
(新受益者代理人の選任等)第142条 重要度3
●(受益者代理人による事務の処理の終了等)第143条 重要度3
(信託管理人に関する規定の準用)第144条 重要度3
第五章 委託者
(委託者の権利等)第145条 重要度4
(委託者の地位の移転)第146条 重要度4
●(遺言信託における委託者の相続人)第147条 重要度4
●(委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定めのある信託等の特例)第148条 重要度2第六章 信託の変更、併合及び分割
第一節 信託の変更
●(関係当事者の合意等)第149条 重要度4
(特別の事情による信託の変更を命ずる裁判)第150条 重要度1
第二節 信託の併合
●(関係当事者の合意等)第151条 重要度3
(債権者の異議)第152条 重要度1
(信託の併合後の信託の信託財産責任負担債務の範囲等)第153条 重要度2
第154条 重要度2
第三節 信託の分割
第一款 吸収信託分割
●(関係当事者の合意等)第155条 重要度2
(債権者の異議)第156条 重要度1
(吸収信託分割後の分割信託及び承継信託の信託財産責任負担債務の範囲等)第157条 重要度2
第158条 重要度1
第二款 新規信託分割
●(関係当事者の合意等)第159条 重要度2
(債権者の異議)第160条 重要度1
(新規信託分割後の従前の信託及び新たな信託の信託財産責任負担債務の範囲等)第161条 重要度2
第162条 重要度1
第七章 信託の終了及び清算
第一節 信託の終了
●(信託の終了事由)第163条 重要度5
●(委託者及び受益者の合意等による信託の終了)第164条 重要度5
(特別の事情による信託の終了を命ずる裁判)第165条 重要度1
(公益の確保のための信託の終了を命ずる裁判)第166条 重要度1
(官庁等の法務大臣に対する通知義務)第167条 重要度1
(法務大臣の関与)第168条 重要度1
(信託財産に関する保全処分)第169条 重要度1
第170条 重要度1
(保全処分に関する費用の負担)第171条 重要度1
(保全処分に関する資料の閲覧等)第172条 重要度1
(新受託者の選任)第173条 重要度1
(終了した信託に係る吸収信託分割の制限)第174条 重要度1
第二節 信託の清算
(清算の開始原因)第175条 重要度4
(信託の存続の擬制)第176条 重要度4
(清算受託者の職務)第177条 重要度4
●(清算受託者の権限等)第178条 重要度4
(清算中の信託財産についての破産手続の開始)第179条 重要度2
(条件付債権等に係る債務の弁済)第180条 重要度2
(債務の弁済前における残余財産の給付の制限)第181条 重要度2
(残余財産の帰属)第182条 重要度4
●(帰属権利者)第183条 重要度4
(清算受託者の職務の終了等)第184条 重要度2
第八章 受益証券発行信託の特例
第一節 総則
(受益証券の発行に関する信託行為の定め)第185条 重要度1
(受益権原簿)第186条 重要度1
(受益権原簿記載事項を記載した書面の交付等)第187条 重要度1
(受益権原簿管理人)第188条 重要度1
●(基準日)第189条 重要度1
●(受益権原簿の備置き及び閲覧等)第190条 重要度1
(受益者に対する通知等)第191条 重要度1
(無記名受益権の受益者による権利の行使)第192条 重要度1
(共有者による権利の行使)第193条 重要度1
第二節 受益権の譲渡等の特例
(受益証券の発行された受益権の譲渡)第194条 重要度1
(受益証券発行信託における受益権の譲渡の対抗要件)第195条 重要度1
(権利の推定等)第196条 重要度1
(受益者の請求によらない受益権原簿記載事項の記載又は記録)第197条 重要度1
(受益者の請求による受益権原簿記載事項の記載又は記録)第198条 重要度1
(受益証券の発行された受益権の質入れ) 第199条 重要度1
(受益証券発行信託における受益権の質入れの対抗要件)第200条 重要度1
(質権に関する受益権原簿の記載等)第201条 重要度1
(質権に関する受益権原簿の記載事項を記載した書面の交付等)第202条 重要度1
(登録受益権質権者に対する通知等)第203条 重要度1
(受益権の併合又は分割に係る受益権原簿の記載等)第204条 重要度1
第205条 重要度1
(受益証券の発行されない受益権についての対抗要件等)第206条 重要度1
第三節 受益証券
(受益証券の発行)第207条 重要度1
●(受益証券不所持の申出)第208条 重要度1
(受益証券の記載事項)第209条 重要度1
●(記名式と無記名式との間の転換)第210条 重要度1
(受益証券の喪失)第211条 重要度1
第四節 関係当事者の権利義務等の特例
(受益証券発行信託の受託者の義務の特例)第212条 重要度1
(受益者の権利行使の制限に関する信託行為の定めの特例)第213条 重要度1
(2人以上の受益者による意思決定の方法の特例)第214条 重要度1
(委託者の権利の特例)第215条 重要度1
第九章 限定責任信託の特例
第一節 総則
(限定責任信託の要件)第216条 重要度4
(固有財産に属する財産に対する強制執行等の制限)第217条 重要度2
(限定責任信託の名称等)第218条 重要度2
(取引の相手方に対する明示義務)第219条 重要度2
(登記の効力)第220条 重要度3
(限定責任信託の定めを廃止する旨の信託の変更)第221条 重要度2
第二節 計算等の特例
●(帳簿等の作成等、報告及び保存の義務等の特例)第222条 重要度2
(裁判所による提出命令)第223条 重要度1
(受託者の第三者に対する責任)第224条 重要度2
(受益者に対する信託財産に係る給付の制限)第225条 重要度3
(受益者に対する信託財産に係る給付に関する責任)第226条 重要度2
(受益者に対する求償権の制限等)第227条 重要度2
(欠損が生じた場合の責任)第228条 重要度2
(債権者に対する公告)第229条 重要度2
(債務の弁済の制限)第230条 重要度2
(清算からの除斥)第231条 重要度2
第三節 限定責任信託の登記
(限定責任信託の定めの登記)第232条 重要度2
(変更の登記)第233条 重要度2
(職務執行停止の仮処分命令等の登記)第234条 重要度1
(終了の登記)第235条 重要度2
(清算受託者の登記)第236条 重要度2
(清算結了の登記)第237条 重要度2
(管轄登記所及び登記簿)第238条 重要度2
(登記の申請)第239条 重要度2
(限定責任信託の定めの登記の添付書面)第240条 重要度2
(変更の登記の添付書面)第241条 重要度2
(終了の登記の添付書面)第242条 重要度2
(清算受託者の登記の添付書面)第243条 重要度2
(清算受託者に関する変更の登記の添付書面)第244条 重要度2
(清算結了の登記の添付書面)第245条 重要度1
(裁判による登記の嘱託)第246条 重要度1
(商業登記法及び民事保全法の準用)第247条 重要度1
第十章 受益証券発行限定責任信託の特例
(会計監査人の設置等)第248条 重要度1
(会計監査人の資格等)第249条 重要度1
(会計監査人が欠けた場合の措置)第250条 重要度1
(会計監査人の辞任及び解任)第251条 重要度1
(会計監査人の権限等)第252条 重要度1
(会計監査人の注意義務)第253条 重要度1
(会計監査人の損失てん補責任等)第254条 重要度1
(会計監査人の第三者に対する責任)第255条 重要度1
(会計監査人の費用等及び報酬)第256条 重要度1
(受益者集会の特例)第257条 重要度1
第十一章 受益者の定めのない信託の特例
(受益者の定めのない信託の要件)第258条 重要度3
(受益者の定めのない信託の存続期間)第259条 重要度2
(受益者の定めのない信託における委託者の権利)第260条 重要度2
(この法律の適用関係)第261条 重要度1
第十二章 雑則
第一節 非訟
(信託に関する非訟事件の管轄)第262条 重要度1
(信託に関する非訟事件の手続の特例)第263条 重要度1
(最高裁判所規則)第264条 重要度1
第二節 公告等
(法人である受託者についての公告の方法)第265条 重要度1
●(法人である受託者の合併等についての公告の手続等の特例)第266条 重要度1
第十三章 罰則
(受益証券発行限定責任信託の受託者等の贈収賄罪)第267条 重要度1
(国外犯)第268条 重要度1
(法人における罰則の適用)第269条 重要度1
●(過料に処すべき行為)第270条 重要度1
第271条 重要度1