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第二款 前受託者の義務等
【前受託者の通知及び保管の義務等】 重要度3
第59条 第56条第1項第3号から第7号までに掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、受託者であった者(以下「前受託者」という。)は、受益者に対し、その旨を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受託者の後見開始など受益者が知り得ない場合もあるであろうから、通知の義務を課しているが、別段の定めも有効である。
2 第56条第1項第3号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、前受託者は、破産管財人に対し、信託財産に属する財産の内容及び所在、信託財産責任負担債務の内容その他の法務省令で定める事項を通知しなければならない。
受託者破産の場合には、破産管財人の関与を求めている。
3 第56条第1項第4号から第7号までに掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、前受託者は、新たな受託者(第64条第1項の規定により信託財産管理者が選任された場合にあっては、信託財産管理者。以下この節において「新受託者等」という。)が信託事務の処理をすることができるに至るまで、引き続き信託財産に属する財産の保管をし、かつ、信託事務の引継ぎに必要な行為をしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その義務を加重することができる。
受託者の任務が終了した後も、必要な範囲で義務の承継(いわゆる権利義務承継)を課しており、別段の定めで「加重」は可能でも「軽減」は不可能とされている。
4 前項の規定にかかわらず、第56条第1項第5号に掲げる事由(第57条第1項の規定によるものに限る。)により受託者の任務が終了した場合には、前受託者は、新受託者等が信託事務の処理をすることができるに至るまで、引き続き受託者としての権利義務を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
受託者辞任の場合は前項とは異なり、別段の定めでもって柔軟に決めることができる。
5 第3項の場合(前項本文に規定する場合を除く。)において、前受託者が信託財産に属する財産の処分をしようとするときは、受益者は、前受託者に対し、当該財産の処分をやめることを請求することができる。ただし、新受託者等が信託事務の処理をすることができるに至った後は、この限りでない。
いわゆる「権利義務承継」の場合、受託者による財産の処分を受益者が制限することができるとしている。(逆に読むと通常時は受益者は受託者の行為を制限できないということになる)
【前受託者の相続人等の通知及び保管の義務等】 重要度3
第60条 第56条第1項第1号又は第2号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合において、前受託者の相続人(法定代理人が現に存する場合にあっては、その法定代理人)又は成年後見人若しくは保佐人(以下この節において「前受託者の相続人等」と総称する。)がその事実を知っているときは、前受託者の相続人等は、知れている受益者に対し、これを通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
非常に珍しく「相続人」や「後見人」が登場するが、これは相続人や後見人が受託者の地位を得て行動するのではなく、あくまでも通知の義務を負うだけの規定である。
2 第56条第1項第1号又は第2号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、前受託者の相続人等は、新受託者等又は信託財産法人管理人が信託事務の処理をすることができるに至るまで、信託財産に属する財産の保管をし、かつ、信託事務の引継ぎに必要な行為をしなければならない。
前項と同じく、受託者の相続人や後見人に「信託財産の保管義務」を課している。
3 前項の場合において、前受託者の相続人等が信託財産に属する財産の処分をしようとするときは、受益者は、これらの者に対し、当該財産の処分をやめることを請求することができる。ただし、新受託者等又は信託財産法人管理人が信託事務の処理をすることができるに至った後は、この限りでない。
前条第5項の規定を準用している。
4 第56条第1項第3号に掲げる事由により受託者の任務が終了した場合には、破産管財人は、新受託者等が信託事務を処理することができるに至るまで、信託財産に属する財産の保管をし、かつ、信託事務の引継ぎに必要な行為をしなければならない。
前項に同じ
5 前項の場合において、破産管財人が信託財産に属する財産の処分をしようとするときは、受益者は、破産管財人に対し、当該財産の処分をやめることを請求することができる。ただし、新受託者等が信託事務の処理をすることができるに至った後は、この限りでない。
前項に同じ
6 前受託者の相続人等又は破産管財人は、新受託者等又は信託財産法人管理人に対し、第1項、第2項又は第4項の規定による行為をするために支出した費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
本来は義務を負わない筈の相続人等を保護するための規定である。
7 第49条第6項及び第7項の規定は、前項の規定により前受託者の相続人等又は破産管財人が有する権利について準用する。
前項までの相続人等に対して、優先弁債権を与えている。