親愛信託と家族会議について
先日、ある相続事例の研究会に参加しました。さまざまな専門家が意見を交わす中で、改めて「家族会議」の重要性を強く感じました。相続は被相続人が残す財産についての話であるにもかかわらず、亡くなった瞬間に相続人全員の共有物となる日本の制度には、少し違和感を覚えることがあります。家族間の話し合いが不足していると、この制度のもとではトラブルが生じやすいのが現実です。
家族会議の重要性
相続をスムーズに進めるためには、被相続人の意向や財産の現状について生前から家族で話し合う場、つまり家族会議が欠かせません。「もめたらどうするの?」という不安があるかもしれませんが、話し合いをしないことでトラブルが発生し、解決に多大な時間と費用がかかることを考えれば、家族会議を避ける選択肢はありません。
家族会議では、推定相続人の立場を考慮しつつも、被相続人自身の意思を最大限尊重することが重要です。本来、相続財産は被相続人のものであり、相続人の共有物になるのはあくまでその後の手続きの話です。被相続人の意思をしっかり受け止め、それを元に合意を形成することが、相続トラブルを防ぐ最良の方法です。
「親愛信託」の可能性
研究会では「民事信託」を直接テーマにした話はありませんでしたが、私はその有効性を再確認しました。家族会議の結果として、親愛信託を活用することで、被相続人の意思を尊重しながら相続後のトラブルを防ぐ仕組みを作ることが可能です。たとえば、認知症対策や、財産管理の明確化、遺留分の調整など、民事信託を上手に使えば、より良い解決策を提供できるケースが多いと感じます。
行政書士としての役割と相続ビジネスの伸びしろ
行政書士としては、お客様に「メニュー方式」で選択肢を提示し、それぞれのメリットやデメリットをしっかり説明した上で、最適解を選んでいただく姿勢が重要です。相続や民事信託の分野ではまだまだ伸びしろがあり、多くの家庭でトラブルを未然に防ぐ手助けができると確信しています。
特に、他士業や専門家との連携(コラボレーション)が鍵を握ると考えます。税理士、司法書士、不動産業者など、それぞれの専門知識を持つプロが連携することで、お客様にとって本当に価値のある提案を実現できるのではないでしょうか。
まとめ
相続は家族にとって大切なイベントですが、正しい準備がなされていないと、家族の絆を傷つける要因にもなり得ます。家族会議を通じて被相続人の意思を確認し、必要に応じて親愛信託を活用することが、これからの相続における課題解決のカギだと感じます。
行政書士として、お客様に寄り添った提案を続けるとともに、他士業とのコラボレーションを通じて、より良い相続支援を提供していきたいと思います。
よつば民事信託とやま
前田敏