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認知症時代の不動産対策として注目される「親愛信託」

不動産オーナーの高齢化と資産管理

不動産オーナーの高齢化が進む中、賃貸管理や売却、建替え、相続準備をどう進めるかは大きな課題です。

内閣府の令和7年版高齢社会白書では、65歳以上の認知症高齢者は令和4年時点で443.2万人、MCI(軽度認知障害)は558.5万人と推計されており、今後も増加が見込まれています。

こうした中で注目されているのが家族信託(親愛信託)です。


不動産管理と資産凍結対策としての家族信託(親愛信託)

家族信託(親愛信託)は、自宅や賃貸マンション、駐車場、底地などの不動産を、親が元気なうちに子など信頼できる家族へ託し、将来の管理・処分のルールを先に決めておける仕組みです。

認知機能が低下した後に資産凍結のような事態が起こる前に、

  • 賃料の受領

  • 修繕

  • 建替え

  • 売却の可否

  • 売却代金の使途

まで設計できる点に強みがあります。

高齢者の判断能力低下に備える制度としては成年後見制度もありますが、
成年後見は家裁申立てにより開始される制度であり、任意後見は判断能力があるうちに契約しておく制度とされています。


不動産取引で家族信託(親愛信託)が有効な三つの場面

不動産取引の現場で、特に有効なのは三つの場面です。


収益不動産の管理の継続

第一に、収益不動産の管理の継続です。
オーナーが高齢になると、

  • 入退去対応

  • 大規模修繕

  • 賃貸条件の見直し

  • 借換えや売却判断

などが難しくなります。
受託者を子にしておけば、契約で定めた範囲で子が実務を継続しやすくなるというメリットがあります。


売却や組換えの準備

第二に、売却や組換えの準備です。
たとえば、将来介護費用のために賃貸物件を売る可能性があるなら、信託契約に

  • 売却権限
  • 代金管理のルール

を明記しておくことで、判断能力低下後の意思決定の停滞を避けやすくなります。


二次相続まで見据えた承継設計

第三に、承継の道筋を複層的に決めたい場面です。

国税庁も受益者連続型信託の課税ルールを設けており、単なる一次相続だけでなく、その次の承継まで見据えた設計が想定されていることが分かります。

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家族信託(親愛信託)の注意点とよくある誤解

もっとも、家族信託(親愛信託)は万能ではありません。
よくある誤解は、家族信託(親愛信託)を使えば税金が自動的に安くなるというものですが、そうではありません。

国税庁は、

  • 信託に関する権利の移転が相続税・贈与税の課税対象となり得ること
  • 受益者連続型信託には特則があること

    を明示しています。

    また、不動産を動かす以上、登記と登録免許税の検討も不可欠です。

    土地の売買による所有権移転登記は原則1000分の20(2%)

    相続による所有権移転は1000分の4(0.4%)

    とされており、信託終了時の帰属の仕方によって税率の見え方が変わるため、設計段階での確認が重要です。


    さらに、家族信託(親愛信託)では受託者に大きな権限が集まるため、

    • 誰を受託者にするか

    • 受託者が単独で売却できるのか

    • 受益者への報告方法

    • 後継受託者を誰にするか

    • 受託者が亡くなったらどうするか

    まで決めておく必要があります。
    ここが曖昧だと、かえって家族間の紛争の火種になります。

    家族信託(親愛信託)は節税商品ではなく、不動産の管理・処分・承継を止めないための民事的な設計手法と理解するのが適切です。

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    まとめ

    結論として、不動産取引における家族信託(親愛信託)は、「判断能力があるうちに、将来の管理・売却・承継のルールを決めておく」ための有力な手段です。

    とくに、

    • 賃貸不動産を持つ家庭

    • 共有や二次相続で揉めやすい家庭

    • 介護費用のため将来売却の可能性がある家庭

    には相性のよい制度だと考えられます。
    もっとも、

    • 税務

    • 登記

    • 融資

    • 遺留分

    • 受託者の適格性

    など論点は多岐にわたるため、実行に当たっては司法書士・弁護士・税理士などの専門家と連携して設計することが不可欠です。

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    令和8年 3月 20日
    一般社団法人 京都民事信託協会
    理事 辻 訓広

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    執筆者プロフィール

    執筆者のシルエット

    辻 訓広


    ■ 保有資格

    土地家屋調査士