親愛信託®(家族信託・民事信託)Q&A
~人生100年時代、気持ちや暮らしの変化に寄り添う制度~
人生100年時代における資産管理や相続には、変化に対応できる柔軟な仕組みが求められます。信託は、暮らしや心境の変化に合わせて設計・修正が可能な制度です。本記事では、信託の柔軟性がもたらす安心と自由について、具体的な事例を交えてご紹介します。
信託を活用する大きなメリットのひとつは、「将来の変化に柔軟に対応できる仕組み」であることです。
たとえば、こんな場面を想像してみてください:
最初は独り暮らしだった親が、子ども家族と同居を始めた
円満だった夫婦が、後に離婚して別々の道へ進んだ
自宅で暮らしていたが、介護付き施設に移ることになった
これらはすべて「環境の変化」です。
そして、その環境の変化に伴って「心境」も自然と変わっていきます。
信託契約を組んだ当初は「これが最善」と思っていても、時間が経ち、状況が変わることで「今の暮らし方に合わなくなった」と感じることもあるでしょう。
そんなとき、信託は“修正可能”な制度です。
この柔軟性こそが、遺言や遺産分割協議など、他の法的制度と異なる信託の大きな強みです。
ある高齢の女性は、最初に「二人の子どもに均等に財産を相続させたい」と信託を設定していました。
しかし、病気で身体が不自由になったことをきっかけに、長男が同居し、献身的に介護をしてくれるようになります。
やがて女性は、こう考えるようになります。
「この子に、もっと多くの財産を託したい。生活を支えてくれているんだから…」
このように、「気持ちが変わる」ことも信託では想定すべき自然な変化です。
信託は、受益者代理人や受益者変更権者などの「調整役」を制度に組み込むことで、心境や状況の変化にも柔軟に対応できるよう設計可能です。
信託は、単なる「契約通りに運用される機械」ではありません。
本当に大切なのは、委託者が望んだ“目的”を長期的に守ることです。
だからこそ、信託を設計する専門家の役割が重要になります。
将来どんなことが起きるか
本人の意思が変わったとき、どう動けるようにしておくか
これらの想定と準備こそが、信託設計における“プロの仕事”です。
もし将来、本人が認知症などで判断能力を失ってしまったら、通常の契約では変更や対応が難しくなります。
しかし信託には、あらかじめ不測の事態を見越して設計する力があります。
これこそが、家族信託が「人生100年時代のインフラ」と呼ばれる所以です。
人の暮らしや気持ちは、常に変化していきます。
だからこそ、変わることを前提にした制度設計が必要です。
信託の本当の価値は、「その時の本人の思い」に寄り添い続けることができる点にあります。
信託の柔軟性を最大限に活かすことで、「安心」と「自由」が両立する人生設計が可能になるのです。
令和7年5月30日
よつば民事信託とやま 代表理事 前田敏
前田 敏(まえだ さとし)
富山県高岡市で活動する不動産・相続の専門家。前田プランニングオフィス代表/行政書士。
不動産売買や空き家対策、相続・遺言・信託、生前整理、リフォームまで、暮らしと資産に関する幅広い相談にワンストップで対応。「不動産相続の相談窓口」「シニアライフの相談窓口」として地域で信頼を集めています。
保有資格
宅地建物取引士/行政書士/相続診断士/AFP/2級FP技能士/インテリアコーディネーター ほか