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昨年夏に友人の飼っていた猫(マル)が天国へ召されました。子どもがいない友人夫婦にとっては家族同様であったマルが居なくなってお二人ともとても寂しがっていたのですが、特に奥様はいつも一緒にいたこともあって気持ちの落ち込みも激しかったようです。
友人はそんな奥様を見てとても心配していました。
年末に買い物に出かけた際にたまたま開催されていた保護猫の譲渡会でマルとよく似た猫に出会ったのです。奥様はその猫に惹かれてしまい、その猫を引き取りたいと申し出ました。しかし、友人夫婦は還暦世代だったこともあり、夫婦に何かあったときに面倒を見てくれる後見人を付けるようにという条件がありました。
後見人を頼める子どもも友人夫婦にはいません。姪や甥に頼むとしても今後いろいろとペットにはお金がかかることにもなるし、費用を持ってほしいとは言えるわけもありません。
友人は新しく家族となる猫に財産を残したいと考えたのですが、そもそもできるのか。
姪や甥に渡せばいいのだろうけど、やっぱり心配でどうしたらよいかと相談に来ました。
1)ペットに財産を遺せるのか?
現在の日本の法律では動物(ペット)は家財等と同じに「動産」として扱われますので、いくら遺言に書いてもペットに財産を遺すことはできません。
2)ペットの飼育を委託する人に財産を遺す
①ペットの飼育を委託する人に「負担付死因贈与」や「負担付遺贈」で財産を遺すことは可能です。
*「負担付死因贈与」
ペットの飼育をしてもらうことを条件に、贈与者の死亡後に財産を贈与すること。
「負担付遺贈」
ペットの飼育をしてもらう義務を負担させた遺贈
どちらとも遺産をもらう代わりにペットの面倒を見てもらうというものですが、不安要素もあり遺産をもらった人が本当に面倒を見てくれるかどうかは分からないという問題点があります。
②ペット信託®
ペット信託®とは、ペットの飼い主にもしもの事態があった時に備えることができるペットのための信託です。
信託とは自分の財産の一部又は全部を信頼できる人に託して、自分が決めた目的に沿って管理・運用してもらう制度です。この仕組みをペットのために活用して飼い主の入院・施設への入居、および飼い主の死亡後に託した財産でそのペットを飼育してもらう方法です。
姪や甥など親族に飼育を委託できる場合でももちろんですが、ペット信託で飼育を委託できる団体もあるようです。
友人夫婦は姪と相談してペット信託契約を結ぶこととなり、晴れて新しい家族を迎えることができました。
今回のように新たにペットを迎える時ばかりではなく、飼い主が高齢化していく段階で、身近に頼る方がいない飼い主が、自分自身にもしもの事態が起きた際に備える役割がペット信託にはあります。
いつ何が起こるか予想はできないので、大切な家族(ペット)を守るためにも今後の対策は検討したいですね。
一般社団法人親愛信託東京 代表理事 北浦千加