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先日、ある信託の変更登記を申請する機会がありました。
我々専門職の司法書士といえど、信託登記申請をする機会自体がそう多くはありません。ましてや「信託の変更」となると、さらにその上を行くレアケースですので、心して臨みました。
既に組成済のその信託は、信託財産となっている不動産が複数あり、管轄が分かれていました。(仮にA管轄とB管轄とします)
申請する内容自体は共通。しかし、添付書面の原本を取り返さなければならない都合もあって同時には申請せず、
先にA管轄へ申請
還付後にB管轄へ申請
という方法を取りました。
司法書士であれば誰でも経験する方式ですが、こうすると先にA管轄へ申請した際に不備があれば補正指示が来るので、その穴を埋めればB管轄へは安心して申請できます。
仮に補正指示を喰らっても勉強の機会と思い、恐る恐るA管轄へ申請したところ、数日後に無事通りました。
「よかった、自分のやり方は間違っていなかった」と安心し、全く同じ内容でB管轄へ申請をかけたところ――まさかの補正指示。
一体どういう事かと話を聞くと、申請内容の一部が「登記できない種類の事項」で、その部分を外す補正をするようにとのことでした。
しかし、素直には「はい、かしこまりました」とはいきません。A管轄で同じ内容を申請して通り、事後の登記事項証明書も既に出ていることを説明しました。
ところが「それはA管轄登記官のミスによるもので、B管轄とは別」とすげなく扱われました。
その後何度か押し問答をしましたが、最終的にはご依頼人のために多少不格好でも早く終わらせた方が良いと判断。B管轄登記官の補正指示を容れて一部を外し、登記を通しました。
結果として、全く同じ内容で申請したにもかかわらず、内容が一部ずれた信託目録が2通できてしまいました。
実務家は「一生勉強」とはいえ、こうした機会はもう今後ないかもしれません。ある意味では貴重な経験ですが、今後活かす機会があるかどうかは微妙な出来事でした。
信託登記、とりわけ「信託の変更登記」は司法書士にとってもレアケース。
管轄法務局ごとに解釈・運用の違いがあり、結果として同じ申請内容でも異なる結果が生まれることがある。
実務では依頼人の利益を優先し、柔軟な対応が求められる。
このように、信託登記の実務にはまだまだ検討課題が多いと感じます。司法書士や信託業務に携わる方の参考になれば幸いです。
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