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~信託法条文~ 第91条/第92条 よ・つ・ば的解説付

【受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託の特例】

重要度MAX

第91条 受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から30年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。

民法とは異なる財産承継の方法であることを示している最重要条文の一つであり、民法では不可能な受益者連続を認めており、また受益権の消滅・発生は、所有権の世界では絶対に考えられない仕組みであって、信託受益権が民法上の相続の対象とはならないとする有力な根拠となる。

カッコ内の「順次他の者が受益権を取得する仕組み」とは、あまり論じられることがないが、消滅・発生ではない形で受益権が承継されて行く方法を選択することもできるとの定めであると考えられ、これをもって受益権が民法上の相続の対象になるものとは考えられない。

条文の後半は、いわゆる「30年ルール」であるが、あまりにも無制限に受益者連続の規定を有効とすると、半永久的に財産の帰趨が拘束されるため、制限を設けたものらしい。

しかし、「消滅するまでの間、その効力を有する」という文言の解釈については、信託全体が終了するとする説が有力ではあるが、52条などとは違って163条の信託終了事由に挙げられていないことから、単に受益者連続の定めの効力のみが無くなって、信託自体は終了しないとの考え方も成り立つ。

【信託行為の定めによる受益者の権利行使の制限の禁止】 重要度2         

第92条 受益者による次に掲げる権利の行使は、信託行為の定めにより制限することができない。

 この法律の規定による裁判所に対する申立権

 第5条第1項の規定による催告権

 第23条第5項又は第6項の規定による異議を主張する権利

 第24条第1項の規定による支払の請求権

 第27条第1項又は第2項(これらの規定を第75条第4項において準用する場合を含む。)の規定による取消権

 第31条第6項又は第7項の規定による取消権

 第36条の規定による報告を求める権利

 第38条第1項又は第6項の規定による閲覧又は謄写の請求権

 第40条の規定による損失のてん補又は原状の回復の請求権

 第41条の規定による損失のてん補又は原状の回復の請求権

十一 第44条の規定による差止めの請求権

十二 第45条第1項の規定による支払の請求権

十三 第59条第5項の規定による差止めの請求権

十四 第60条第3項又は第5項の規定による差止めの請求権

十五 第61条第1項の規定による支払の請求権

十六 第62条第2項の規定による催告権

十七 第99条第1項の規定による受益権を放棄する権利

十八 第103条第1項又は第2項の規定による受益権取得請求権

十九 第131条第2項の規定による催告権

二十 第138条第2項の規定による催告権

二十一 第187条第1項の規定による交付又は提供の請求権

二十二 第190条第2項の規定による閲覧又は謄写の請求権

二十三 第198条第1項の規定による記載又は記録の請求権

二十四 第226条第1項の規定による金銭のてん補又は支払の請求権

二十五 第228条第1項の規定による金銭のてん補又は支払の請求権

二十六 第254条第1項の規定による損失のてん補の請求権

受益者の権利の行使を保証する条文であるが、限定列挙された以外の権利については行使を制限できるということでもある。