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~信託法条文~ 第163条/第164条 よ・つ・ば的解説付

第七章 信託の終了及び清算

第一節 信託の終了

【信託の終了事由】 重要度5                          

第163条 信託は、次条の規定によるほか、次に掲げる場合に終了する。

信託の終了事由を規定する重要な条文。信託の終了原因を限定列挙していると考えるなら、本条に示されていない信託終了事由は存在しないということになる。

 信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったとき。

「信託の目的の達成・不達成」は、やや抽象的な概念であるので、注意が必要。

 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき。

 これが我が国の信託法独自の規定である、いわゆる「1年ルール」であり、この条項があるために自己信託の普及が遅れていると言える。

 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき。

 こちらも「1年ルール」であるが、受託者が欠けている状態でも1年間は信託は終了しないとされていることは、民法上の契約行為では有り得ない規定であり、注目する必要。

 受託者が第52条(第53条第2項及び第54条第4項において準用する場合を含む。)の規定により信託を終了させたとき。

受託者による信託の終了が52条で規定されており、ここで再度信託終了事由として挙げられている。ということは、91条で規定されている「30年ルール」によって信託が終了するという説は根拠を失うことになる。

 信託の併合がされたとき。

 第165条又は第166条の規定により信託の終了を命ずる裁判があったとき。

 信託財産についての破産手続開始の決定があったとき。

 委託者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた場合において、破産法第53条第1項、民事再生法第49条第1項又は会社更生法第61条第1項(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第41条第1項及び第206条第1項において準用する場合を含む。)の規定による信託契約の解除がされたとき。

 信託行為において定めた事由が生じたとき。

親愛信託においては、終了事由は信託行為の中で決めておくべき。

(委託者及び受益者の合意等による信託の終了) 重要度5             

第164条 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。

委託者と受益者の合意で信託を終了することが可能なので、委託者兼受益者の成年後見人による信託の終了が可能とする解釈が成り立ってしまうことに注意しておく必要。

 委託者及び受益者が受託者に不利な時期に信託を終了したときは、委託者及び受益者は、受託者の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。

 前二項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

親愛信託においては、この別段の定めが必須。

 委託者が現に存しない場合には、第1項及び第2項の規定は、適用しない。