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~信託法条文~ 第11条/第12条 よ・つ・ば的解説付

(詐害信託の取消し等) 重要度2

第11条 委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、受託者が債権者を害することを知っていたか否かにかかわらず、債権者は、受託者を被告として、民法(明治29年法律第89号)第424条第3項に規定する詐害行為取消請求をすることができる。ただし、受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が、受益者としての指定(信託行為の定めにより又は第89条第1項に規定する受益者指定権等の行使により受益者又は変更後の受益者として指定されることをいう。以下同じ。)を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において債権者を害することを知っていたときに限る。

信託の倒産隔離機能を悪用しようとする事例も有り得るので、民法における詐害行為取消権と同様の債権者の権利を別途に条文で認めており、この点でも信託において当然に民法の規定が準用されるものではないことが示されている。

なお、民法改正に伴い、条文の表現の一部が改正されている。

ここでは善意の受益権取得者を保護している。

 前項の規定による詐害行為取消請求を認容する判決が確定した場合において、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者(委託者であるものを除く。)が当該債権を取得した時において債権者を害することを知らなかったときは、委託者は、当該債権を有する債権者に対し、当該信託財産責任負担債務について弁済の責任を負う。ただし、同項の規定による詐害行為取消請求により受託者から委託者に移転する財産の価額を限度とする。

本項では、取り消し時において善意の信託財産責任負担債務の債権者を保護するため、委託者に責任を負わせている。

 前項の規定の適用については、第49条第1項(第53条第2項及び第54条第4項において準用する場合を含む。)の規定により受託者が有する権利は、金銭債権とみなす。

49条1項は受託者による信託財産からの費用償還の規定であり、取り消された信託に関しての信託報酬などを指すものと思われる。

 委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合において、受益者が受託者から信託財産に属する財産の給付を受けたときは、債権者は、受益者を被告として、民法第424条第3項に規定する詐害行為取消請求をすることができる。ただし、当該受益者(当該受益者が受益権を譲り受けた者である場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)が、受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において債権者を害することを知っていたときに限る。

1項同様、善意の受益者を保護している。

 委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、債権者は、受益者を被告として、その受益権を委託者に譲り渡すことを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

1項の取消権以外にも債権者が受益権の譲渡を求める方法があると規定している。

 民法第426条の規定は、前項の規定による請求権について準用する。

 民法426条には「詐害行為取消請求に係る訴えは、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から二年を経過したときは、提起することができない。行為の時から十年を経過したときも、同様とする。」とある。

 受益者の指定又は受益権の譲渡に当たっては、第1項本文、第4項本文又は第5項前段の規定の適用を不当に免れる目的で、債権者を害することを知らない者(以下この項において「善意者」という。)を無償(無償と同視すべき有償を含む。以下この項において同じ。)で受益者として指定し、又は善意者に対し無償で受益権を譲り渡してはならない。

本条の潜脱目的をもって受益権を無償譲渡することを禁じている。

 前項の規定に違反する受益者の指定又は受益権の譲渡により受益者となった者については、第1項ただし書及び第4項ただし書(第5項後段において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。

前項に続き、本条の潜脱を封じている。

(詐害信託の否認等) 重要度2

第12条 破産者が委託者としてした信託における破産法(平成16年法律第75号)第160条第1項の規定の適用については、同項各号中「これによって利益を受けた者が、その行為の当時」とあるのは「受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が信託法第11条第1項に規定する受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において」と、「知らなかったときは、この限りでない」とあるのは「知っていたときに限る」とする。

 破産法160条は、破産債権者を害する行為を否認できることを定めており、受益者を否認の対象としている。

 ここも民法改正に合わせて条文が改正されている。

 破産者が破産債権者を害することを知って委託者として信託をした場合には、破産管財人は、受益者を被告として、その受益権を破産財団に返還することを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前条第4項ただし書の規定を準用する。

受益者の善意悪意によって扱いを分けている。

 再生債務者が委託者としてした信託における民事再生法(平成11年法律第225号)第127条第1項の規定の適用については、同項各号中「これによって利益を受けた者が、その行為の当時」とあるのは「受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が信託法(平成18年法律第108号)第11条第1項に規定する受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において」と、「知らなかったときは、この限りでない」とあるのは「知っていたときに限る」とする。

民事再生についても前項までと同じ取り扱いを定めている。

 再生債務者が再生債権者を害することを知って委託者として信託をした場合には、否認権限を有する監督委員又は管財人は、受益者を被告として、その受益権を再生債務者財産(民事再生法第12条第1項第1号に規定する再生債務者財産をいう。第25条第4項において同じ。)に返還することを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前条第4項ただし書の規定を準用する。

  前項に同じ

 前二項の規定は、更生会社(会社更生法(平成14年法律第154号)第2条第7項に規定する更生会社又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律(平成8年法律第95号)第169条第7項に規定する更生会社をいう。)又は更生協同組織金融機関(同法第4条第7項に規定する更生協同組織金融機関をいう。)について準用する。この場合において、第3項中「民事再生法(平成11年法律第225号)第127条第1項」とあるのは「会社更生法(平成14年法律第154号)第86条第1項並びに金融機関等の更生手続の特例等に関する法律(平成8年法律第95号)第57条第1項及び第223条第1項」と、「同項各号」とあるのは「これらの規定」と、前項中「再生債権者」とあるのは「更生債権者又は更生担保権者」と、「否認権限を有する監督委員又は管財人」とあるのは「管財人」と、「再生債務者財産(民事再生法第12条第1項第1号に規定する再生債務者財産をいう。第25条第4項において同じ。)」とあるのは「更生会社財産(会社更生法第2条第14項に規定する更生会社財産又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第169条第14項に規定する更生会社財産をいう。)又は更生協同組織金融機関財産(同法第4条第14項に規定する更生協同組織金融機関財産をいう。)」と読み替えるものとする。

会社更生等についても前項までと同じ取り扱いを定めている。