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委託者の今後の認知症等への対策として親愛(民事)信託を検討し、実際に信託契約に至るというケースは多いと思います。
実際私もこれまで携わった中で一番多い事例は、認知症等への対策の為の信託契約になります。
しかしながら、信託契約後に実際に委託者が認知症等になり、委託者が判断能力(このコラムでは不正確な言葉ですが分かりやすい為、判断能力という言葉で統一させて頂きます。)を低下又は喪失されてしまったケースというのは、少なくとも私が携わった中ですとこれまではまだ殆ど事例がありません。
理由として考えられるのは、まず、一番最初に私が携わったケースでも契約からまだ5年程度しか経っていないという事があげられると思います。
次に考えられるのは、信託契約時点の委託者の理解力や判断能力が、遺言書作成等に比べかなり高いレベルにある場合が多いという事があげられると思います。
信託契約をするという事は、親愛(民事)信託という新しい制度の中身をある程度理解した上で、自分に必要だと思い契約を結ぼうと思い立ち、さらに信託契約書の中身まで理解ができるという事ですから、契約の段階でかなりの理解力や判断能力を委託者が持ちあわせている事になります。逆にいいますと既に判断能力の低下の兆候がみられる段階での信託契約というのはかなり難しいという事になります。
その為、委託者が、今後認知症等になってしまい判断能力が低下または喪失した場合に備え、信頼のできる受託者と信託契約を結んだものの、実際は委託者の判断能力の低下又は喪失の前に委託者がお亡くなりになり信託契約が終了したというケースがこれまでは多いです。 では、上記のように信託契約を結んだものの、委託者は亡くなられるまで判断能力に問題がなかったというケースの場合、費用と手間をかけてまで信託契約をした意味はなかったのでしょうか?
いえ、私はそうは思いません。委託者は信託契約を結んでおいたからこそ、万が一の場合も信頼のできる自分が選んだ受託者に財産を管理して貰えると安心して契約締結後から亡くなるまでの生活を送ることができます。これだけで、信託契約を結んだ意味はあったといえます。
また私個人としては、まだ数は少ないですが、信託契約後に委託者の判断能力が低下し施設に入所される事になり、受託者が委託者の不動産を売却して諸費用に充てる事ができたといったケースも発生しています。
委託者は、信託契約をする事で、いざという時に繰り出せるいわゆる「伝家の宝刀」を取得する事ができる事になります。
親愛(民事)信託という「伝家の宝刀」を持っているだけで、委託者は安心してその後生活が送れるようになり、さらにいざという時は、その「伝家の宝刀」を抜いて信頼のできる受託者に生活の手助けをして貰う事ができます。
一般社団法人 よつば香川民事信託推進協議会