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先日、相続対策を見据えて親愛信託組成をご検討されているご家族から、以下のような質問がありました。
「アパートを信託財産として信託を組成した後に(委託者兼当初受益者が親御さん、受託者兼第二次受益者がお子さん)、将来的にアパートを修繕する必要が出てきた場合、当該アパートを担保にして銀行から修繕費分の融資をしてもらうことはできるのでしょうか。」
将来的に、といいつつも、老朽化が進んできているので、わりと近い将来に具体的に修繕を検討しているご様子。
不勉強ながら、その場で即答ができなかったので、いったん持ち帰り、よ・つ・ばの河合副代表にも相談してみました。
「理論的には当然に受益権に質権を設定できますが、今の段階で銀行が認めるとは思えません。それよりも最初から根抵当権を設定しておき、受益者が債務者、受託者が設定名義人となる方が現実的と思います。」とのご助言を頂きました。
なるほど。先に根抵当権の借入の「枠」設定をしておき、そのあとに信託を組成する。不動産登記上は、根抵当権の登記が先に入っているため、そのほうが圧倒的に銀行さんの理解は得やすいと考えられます。
通常、銀行さんの抵当権または根抵当権が設定されている不動産について、親愛信託を組成する場合、銀行さんにとっての懸念事項は、すでに設定されている抵当権または根抵当権の効力の影響、という点に尽きると思いますが、
①優先弁済権は、信託登記との関係では影響を及ぼさないという点、
②そもそも「信託」を原因とする所有権移転登記は、不動産についての物権変動を公示するものではなく、当該不動産が信託財産として受託者に帰属していることを公示するための登記であるという点(※)
を示すことで、多くの場合はご理解頂けます。
信託口口座の開設の事前相談時に、先回りして、将来の借入に備えての根抵当権設定登記の相談もしてみようと考えています。
※参考文献:信託登記実務研究会編著『信託登記の実務』日本加除出版
一般社団法人親愛信託名古屋 会員 竹内亮介