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「信託の活用について思うこと」

 私は、これまで信託の組成について、自分がイニシアチブをとって関わることがほとんどありませんでした。

 よ・つ・ば親愛信託こうちの他のメンバーや知り合いの弁護士が作成した信託契約書に基づいて信託の登記申請をさせていただくというのが、信託との関わりの大半です。

 そんな私でも、相談者の話を伺う中で、ここは信託を使った方がいいのでは?と思ったケースがいくつかあります。

 一つは、複数人の親族が自社株を持ち合っており、かつ株価がそれなりに高額になっているケースで、議決権の集約を目的とする売買、贈与を行うので、議事録等の関係書類の作成について相談を受けたというものです。株を購入するにあたり、高額の買取資金を用意する必要があり、また贈与について、相当な額の贈与税が発生するというものでした。

 信託を活用して、議決権だけを受託者に移転させれば、一度に高額な買取資金や贈与税の納税資金を用意する必要はないのでは?と思ったのですが、私が関与をした時には、県外から来たコンサルの指導のもと方針が決まってしまっていました。

 もう一つのケースは、収益物件を所有する親が高齢となり、今後の修繕や賃貸契約の締結、場合によっては処分の必要が生じるかもしれないが、物忘れも増えてきており認知症の不安があるという方でした。制約のきつい成年後見制度は利用したくないということで、信託も検討してはどうかというお話をしましたが、信託は金がかかるというイメージをもっている方で、それ以上は話を聞いてもらえませんでした。

 私が、勉強不足ということもあり、積極的に信託活用のメリットの説明ができないということも原因ですが、高知では、信託の活用があまり進んでいない原因の一つとして、信託口座開設のハードルが非常に高いということが挙げられます。

 信託口座の開設を認めている銀行もその銀行が提携しているコンサルを通した案件でないと信託口座の開設ができないことになっているようで、そうなると我々の出番はないということになってしまいます。

 今後は、誰でもが親愛信託を活用できるような社会にできるよう、よつばグループの皆さんと一緒に勉強していきたいと思います。

 一般社団法人よ・つ・ば親愛信託こうち 理事 伊藤 真