~信託法条文~ 第55条/第56条 よ・つ・ば的解説付

(受託者による担保権の実行)重要度1 

第55条

担保権が信託財産である信託において、信託行為において受益者が当該担保権によって担保される債権に係る債権者とされている場合には、担保権者である受託者は、信託事務として、当該担保権の実行の申立てをし、売却代金の配当又は弁済金の交付を受けることができる。

 担保権を信託財産とすることを信託法では認めており、担保権にかかる債権自体が信託財産とされていなくても、受託者は信託事務として担保権の実行が可能としているが、親愛信託において想定される場面ではない。

第五節 受託者の変更等

第一款 受託者の任務の終了

(受託者の任務の終了事由) 重要度5     

第56条 受託者の任務は、信託の清算が結了した場合のほか、次に掲げる事由によって終了する。ただし、第2号又は第3号に掲げる事由による場合にあっては、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

 受託者である個人の死亡

受託者の死亡が任務終了事由とされているところから、受託者の地位は一身専属で相続の対象にならないことが明確になっている。

 受託者である個人が後見開始又は保佐開始の審判を受けたこと。

第7条の改正によって、成年被後見人や被保佐人は受託者になることができるようになったが、本条では一応は任務終了とした上で、別段の定めでもって受託者の地位を継続させることができるとしている。

 受託者(破産手続開始の決定により解散するものを除く。)が破産手続開始の決定を受けたこと。

受託者の破産は、財産管理能力の喪失と捉えられているが、前号同様に別段の定めでもって受託者の地位を継続させることができるとしている。

 受託者である法人が合併以外の理由により解散したこと。

個人受託者の死亡とパラレルな規定であり、合併では任務終了しないことが明確にされている。

 次条の規定による受託者の辞任

 第58条の規定による受託者の解任

 辞任と解任は当然の終了事由である。

 信託行為において定めた事由

 信託行為でもって自由に任務終了事由を定めることが可能とされている。

 受託者である法人が合併をした場合における合併後存続する法人又は合併により設立する法人は、受託者の任務を引き継ぐものとする。受託者である法人が分割をした場合における分割により受託者としての権利義務を承継する法人も、同様とする。

 合併と会社分割について、その形態に関係なく受託者の地位を承継するとの規定である。

 前項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

 別段の定めでもって合併や会社分割による承継を封じることも可能である。

 第1項第3号に掲げる事由が生じた場合において、同項ただし書の定めにより受託者の任務が終了しないときは、受託者の職務は、破産者が行う。

別段の定めによって、破産後も受託者としての地位を継続させる余地を残している。

 受託者の任務は、受託者が再生手続開始の決定を受けたことによっては、終了しない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

再生手続きは破産とは異なるので、別段の定めがない限り受託者の地位は継続する。

 前項本文に規定する場合において、管財人があるときは、受託者の職務の遂行並びに信託財産に属する財産の管理及び処分をする権利は、管財人に専属する。保全管理人があるときも、同様とする。

 再生手続きにおいて管財人が選任された場合には、意思決定は管財人に委ねられることとなる。

 前二項の規定は、受託者が更生手続開始の決定を受けた場合について準用する。この場合において、前項中「管財人があるとき」とあるのは、「管財人があるとき(会社更生法第74条第2項(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第47条及び第213条において準用する場合を含む。)の期間を除く。)」と読み替えるものとする。

会社更生についても、同様の規定が準用されるとしている。従って、破産でも再生でも更生でもない任意整理の場合には、受託者に地位に影響を及ぼさないということになる。

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